2026年4月の人事労務タスク|在職老齢年金、食事補助の見直しを社労士が解説
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こんにちは。社会保険労務士法人名南経営の大津です。今年は桜の開花が例年より早く、春分の日の三連休以降、お花見に出かけた方も多いのではないでしょうか。4月は新入社員の入社に加え、多くの法改正なども行なわれます。対応漏れがないよう、チェックリストを活用し、確実に対応を進めていってください。
4月のHRチェックリスト
毎年4月はさまざまな法律が改正されます。今年の傾向としては、労働基準法や育児・介護休業法などの大型改正はないものの、実務に影響のある細かい改正が複数ありますので注意が必要です。それでは法改正以外にも求められる実務も含め、4月のチェックリストを確認していきましょう。

以下では各項目のポイントについて解説します。
(1)新入社員の円滑な配属、早期離職防止のフォロー
4月に新入社員を迎え入れるのは人事にとって大きな喜びですが、同時に早期離職という心配の種を抱え込むことにもなります。エン・ジャパンが実施した「『早期離職』実態調査(2025)」では、以下の結果が出ています。
- 57%の企業で入社半年以内での早期離職があった
- 69%の企業で入社者の離職、定着率に課題を感じている

早期離職の防止のためには、上司や人事などとの定期面談やメンター制度の運用などさまざまな対策があります。新入社員にとっては生活の環境が大きく変わる不安定な時期です。変化に円滑に適応できるような支援を進め、早期離職やメンタルヘルス不調などの問題の防止を図っていきましょう。
(2)女性活躍推進法にもとづく情報公表義務拡大の対応
女性活躍推進法が改正され、4月より従業員数101名以上の企業に求められている情報公表の項目が拡大されました。

この改正により、企業の従業員数の区分ごとに以下の情報公表が求められます。新たな項目を漏らさず、確実に対応していきましょう。
【従業員規模別の情報公表義務項目】
公表項目 | 常用労働者数101〜300人 | 常用労働者数301人以上 |
|---|---|---|
男女間賃金差異 | 必須(New!) | 必須 |
女性管理職比率 | 必須(New!) | 必須(New!) |
女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績 | 表(1)(2)から1項目以上 | 表(1)から1項目以上 |
職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績 | 表(2)から1項目以上 |

なお、この情報公表については、従業員数100人以下の企業は努力義務の対象とされています。
(3)社会保険料率および雇用保険料率改定に伴う給与計算対応
社会保険料(健康保険・介護保険)については3月分(4月控除分)、雇用保険料については4月分から保険料率が変更されます。
まず社会保険料率の変更については、先月の記事で取り上げていますので、2026年3月のHRチェックリストの「(3)4月控除分から始まる健康・介護保険料率変更への対応」をご覧ください。
一方、雇用保険料率については以下の表のとおり、労働者負担分と事業主負担分がそれぞれ1,000分の0.5(0.05%)ずつ引き下げられています。

社会保険料、雇用保険料ともに4月分の給与計算から変更が必要となりますので、確実に対応しましょう。
(4)労働保険の年度更新
労働保険(労災保険・雇用保険)の保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間(これを「保険年度」といいます)を単位として計算されます。その額はすべての労働者(雇用保険については被保険者)に支払われる賃金の総額に、その事業ごとに定められた保険料率を乗じて算定されます。
労働保険では、保険年度ごとに概算で保険料を納付し、保険年度末に賃金総額が確定した後に精算する仕組みとなっています。事業主は、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と新年度の概算保険料を納付するための申告・納付の手続きが必要です。この手続きが労働保険の年度更新と呼ばれます。
今年度の年度更新期間は、6月2日(月)から7月10日(木)までです。3月分の給与計算が確定すれば賃金の集計作業を実施できますので、早めに対応を進めましょう。

(5)労働安全衛生法および作業環境測定法の改正対応
4月に労働安全衛生法および作業環境測定法の改正が施行されました。今回の改正は「営業秘密である成分に係る代替化学品名等の通知」や「特定機械等の製造許可及び製造時等検査制度の見直し」など製造現場に関わる内容が中心となっています。
すべての企業において求められる事項としては、「高年齢労働者の労働災害防止の努力義務」が挙げられます。この改正により、事業者には高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善、作業管理などの必要な措置を講じることが努力義務とされています。いずれも高年齢労働者の労働災害の防止を図る目的です。
具体的には「高年齢者の労働災害防止のための指針」を参考にして、対応を進めていきましょう。

(参考)「労働安全衛生法及び作業環境測定法改正の主なポイントについて」- 厚生労働省
(参考)「「高年齢者の労働災害防止のための指針」について(公示)」- 厚生労働省
(参考)「安全・衛生」- 厚生労働省
(6)「治療と就業の両立支援」努力義務への対応
医学の進歩や高齢者雇用の増加により、がんなどの病気を治療しながら働く従業員が増加しています。このような環境を背景に労働施策総合推進法が改正され、4月から職場における治療と就業の両立支援の取り組みが、事業主の努力義務になりました。
「治療と就業の両立支援指針(令和8年厚生労働省告示第28号)」では、疾病を抱える労働者の治療と就業の両立を支援するための措置に関し、適切かつ有効な実施を図るために必要な事項が定められています。治療と就業の両立支援を進める際には、本指針にもとづき、以下の措置を講じることが望まれます。
- 事業主の方針表明
- 研修等を通じた意識啓発
- 相談窓口の明確化・社内の支援体制の整備
- 社内制度(休暇制度・勤務制度)の整備

具体的には、厚生労働省からさまざまなツールが提供されていますので、そうしたツールを活用し、対応を進めるとよいでしょう。
4月の重要トピック
4月の各種改正のなかで、人事制度等にも大きな影響を与える2つの事項について、重要トピックとして解説します。
トピック1 在職老齢年金制度の支給停止調整額の引き上げ(重要度:★★★★☆)
年金をもらいながら働く人は、在職老齢年金制度により年金の一部または全部が支給停止される場合があります。在職老齢年金制度の対象となるのは、厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受ける60歳以上の人です。基本月額と総報酬月額相当額に応じ、年金額の全部または一部が支給停止されることがあります。
2026年4月からこの年金が減額になる基準額(賃金と老齢厚生年金の合計)が引き上げられました。
- 2026年3月以前:総報酬月額相当額と老齢厚生年金の基本月額の合計が51万円を上回る場合
- 2026年4月以降:総報酬月額相当額と老齢厚生年金の基本月額の合計が65万円を上回る場合

今回の見直しは、平均寿命・健康寿命が延びるなか、働き続けることを希望する高齢者の人の活躍を後押しし、より働きやすい仕組みを整えるのが趣旨となっています。人手不足の昨今、高齢者の活用は多くの企業において重要なテーマといえます。
今回の改正を踏まえ、高齢者の雇用条件の見直しなど活躍を促進するための仕組みづくりを進めたいところです。
トピック2 食事の現物支給に係る非課税限度額の引き上げ(重要度★★★☆☆)
最近の物価高によりコンビニのおにぎりも200円台が普通という時代になっています。そこで注目されるのが、企業による福利厚生の充実です。
福利厚生といえば、かつてはリゾートホテルなど余暇を充実させるような内容が多く見られました。ですが、近年は社宅などの住宅支援や育児や介護と仕事の両立などの「より生活に密着したもの」が重視される時代となっています。こうした流れのなか、4月からは食事の現物支給にかかる非課税限度額が引き上げられます。
食事の現物支給については、以下の2つの要件を満たすときは食事の支給により受ける経済的利益はないものとされ、非課税扱いになっています(所得税基本通達36-38の2)。
- 当該役員又は使用人から実際に徴収している対価の額が、当該食事の価額の50%相当額以上である
- 当該食事の価額からその実際に徴収している対価の額を控除した残額が月額3,500円以下である
このうち「2.」の非課税限度額についてはこれまで月額3,500円とされていましたが、4月からは月額7,500円に引き上げられました。
賃上げをしても、なかなか手取りが増えないという声が多く聞かれるなか、非課税の仕組みを活用して食事補助を拡充する動きが見られます。社員の実質的な手取りを増やす仕組みであり、採用活用におけるアピール材料にもなる内容です。今後検討してみるとよいでしょう。
(参考)「食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて」- 国税庁
最繁忙期こそ着実に。4月の対応を乗り越えよう
このように4月は新入社員の受け入れに加え、さまざまな法改正への対応なども求められる最繁忙期となります。その他、春闘の結果を受けた賃上げの対応なども求められます。体調には注意して、確実に仕事を進めていきましょう。














