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11,000人規模の遠鉄グループ、人事労務工数4,000時間削減!

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目次

SmartHRでは経営者・人事担当者の皆さまを対象としたセミナーを定期的に開催しています。今回登壇したのは、遠鉄システムサービスの河合さん、藤田さんです。

本セミナーでは、11,000人の従業員を抱える遠鉄グループ全体の人事労務デジタル化の取り組みについてお話を伺いました。本記事では講演内容をお届けします。

多くの方にご来場いただき、オンライン・オフラインのハイブリッド形式で実施している会場の様子

(会場には多くの方にご来場いただき、オンライン・オフラインのハイブリッド形式で実施しました)

  • 河合昭文さん

    遠鉄システムサービス株式会社 グループ情報システム部 グループシステム2課 課長

    グループの人事給与のシステム開発・運用担当として長年活躍。ホストコンピュータのダウンサイジングから給与システムのパッケージ導入、人事関連の電子化まで幅広い経験をもつ。現在はSmartHRを含む人事・労務系のシステム導入・活用を推進している。

  • 藤田和代さん

    遠鉄システムサービス株式会社 グループ情報システム部 グループシステム2課 係長

    遠州鉄道の本社人事部から遠鉄システムサービスに出向。SmartHRをはじめとする人事労務関連の電子化推進に従事。

従業員11,000人規模の煩雑な書類運用

静岡県浜松市を拠点に、鉄道事業や不動産事業、リテール事業など多彩な事業を展開するグループ17社を有し、11,000人の従業員を抱える遠鉄グループ。そのなかで遠鉄システムサービスはグループのICT推進を手掛けています。

人事労務においては、グループ各社に配置された総務人事担当が給与計算などの業務を担い、遠鉄システムサービスではグループ全体の給与計算のチェックや社会保険の手続き、システム開発・運用を担当しています。河合さん、藤田さんが所属するグループ情報システム部は、グループ各社の総務人事担当と連携しながら、システム面からの業務改善を実現してきました。

2017年に遠鉄グループは人事労務業務の改善に向け、本格的なデジタル化の検討を始めました。当時の主な課題は大きく3つありました。

  • 紙の処理が多くの時間がかかる(上長承認、拠点間の書類のやりとり)

  • 処理が複雑で属人化している

  • マイナンバーなど個人情報の漏洩リスク

河合さん「従来は各社で利用する業務システムがバラバラで、同じ情報を複数システムに登録する必要がありました。さらに紙で提出される書類も多く、複数の業務システム間の情報連携を人力で担っているような状況でした」

システム導入にあたって、グループ全体の人事労務の洗い出しや各種申請のペーパーレス化検討など、各社の人事労務担当者にヒアリングを実施しました。その後、6社のシステムを比較検討し、SmartHRを選択したといいます。

藤田さん「SmartHRは人事労務領域におけるリーディングカンパニーとして、豊富な実績がありました。また、わかりやすいユーザーインターフェースや社会保険・雇用保険の電子申請対応やマイナンバー収集機能などの豊富な機能、他システムとの連携性なども大きな選定理由でした」

登壇された遠鉄システムサービスの藤田さん

対面サポートなど、従業員に寄り添う導入施策

11,000人規模の組織でのシステム導入は一筋縄ではいきませんでした。業種も働き方もさまざまなグループ17社の全従業員11,000人に対し、SmartHRの活用どのように浸透、定着させるかは重要なポイントでした。

藤田さんSmartHR導入は目的ではなく、手段です。人事労務の課題を改善するためには、全従業員がSmartHRを使えることが大前提となります。まずはSmartHRを知ってもらい、操作に慣れてもらう必要がありました」

同社はまず従業員のメールアドレスを収集し、SmartHRに従業員を招待するところから始めました。導入時期がちょうど年末調整の時期だったため招待と同時並行で進めたといいます。

藤田さん「操作に不安がある従業員に向けて、確定申告会場のような形式でサポート会場を開設しました。2週間程度の会期を設け、場所を変えながら実施し、できるだけ多くの従業員がサポートを受けられるようにしました。導入と年末調整を同時に進めていくのはかなり大変だったのですが、全員がSmartHRに触れる機会を早期につくれたという意味では正解だったと感じています

書類20万枚、工数4,000時間を削減

SmartHRの導入によりペーパーレスを実現しただけでなく、各種申請のフロントがSmartHRに集約されました。これにより各社の総務人事の業務負担、とくにチェック業務は大幅に削減されたそうです。

河合さん「たとえば給与明細や年末調整の場合、SmartHR導入前は、従業員からの申請を受けて各社の総務人事担当者が内容をチェックし、システムへの登録、計算処理、結果の印刷、配布という流れでした。導入後は、従業員からの申請がSmartHRを通じて直接人事システムと連携され、給与明細は自動的に従業員に配信されます

年末調整業務

  • 紙の削減:27,000枚
  • 書類準備・配布回収時間の削減:30時間
  • 申告書チェック作業の削減:320時間

給与業務

  • 紙の削減:176,000枚(給与・賞与・源泉徴収票)
  • 印刷・仕分け時間の削減:480時間
  • その他明細(持ち株会残高、配当金、医療費通知など)の配布時間削減:150時間

入退社手続きの電子化

  • 年間2,000人規模の入退社に対応
  • 紙の削減:16,000枚
  • 記入作業時間の削減:3,000時間
  • ハローワークなどでの手続き時間削減:84時間

※すべて年間の削減数

導入から6年が経過した現在、SmartHRの活用を通して、大きな変化を実感していると河合さんは言います。

河合さん「従業員全体のデジタルスキルが向上し、SmartHRが電子申請のプラットフォームとして定着しました。当グループはバス、タクシーの乗務員、介護職や販売員など現場業務の方も多いのですが、ITリテラシーは徐々に向上していると感じます」

また、グループ各社の総務人事担当との情報連携が円滑になり、テレワーク環境に対応するなど働き方の多様化にも寄与しています。コミュニケーションの面でも、各社の従業員との直接的なやり取りが可能になり、情報伝達の確実性が向上しました。

河合さん「今後も新たな取り組みを始める際に、SmartHRを通じて従業員とのやりとりがスムーズにできると考えています」

登壇された遠鉄システムサービスの河合さん

SmartHRの活用領域を広げていく──、遠鉄グループが描く「これから」

6年間にわたってサービスを活用し続けている理由について、河合さんはサポート体制の充実を挙げます。

河合さん「SmartHRは常にユーザーの意見に耳を傾けようとする印象があります。たとえば年末調整については、毎年1月に振り返りの場を設け、各社から要望や課題を抽出しています。すぐに解決できない課題もありますが、取捨選択しながら、製品改善に確実に活かされています」

年末調整に関しては、毎年の改善サイクルが確立されています。各社での運用状況を確認し、現場の声を丁寧に拾い上げることで、より使いやすい機能の実現につながっています。

藤田さん「年末調整のサポート会場を毎年開設しているのですが、高齢の従業員が多いこともあり、給与収入と年金収入の両方がある方への対応に苦労していました。年金所得は年齢と受けとる年金の額によって控除額が決まっているのですが、本人が入力する画面では手作業で計算する必要があったのです。改善を要望し続けたところ、昨年に機能として実装していただきました」

SmartHR営業担当の堀さんは、遠鉄グループとの長年の関係性についてこう語ります。

堀さん「新機能リリースの際は必ずユーザーヒアリングを実施しているのですが、遠鉄さまには毎回、製品の改善につながる貴重なご意見をいただいています。実は社内の開発チームからも、まず遠鉄さんにヒアリングしてほしいという声が上がるほどで、この6年で多くのこと学ばせてもらったと感じています

今後、遠鉄システムサービスは、新機能の情報収集やシステム連携の検証を重ねていくといいます。最終的には、従業員の情報をSmartHRに一本化することを目指し、グループ全体の業務改善を進めていく構えです。

遠鉄グループの事例からは、大規模組織での人事労務デジタル化成功には、従業員の受容度に合わせた展開が重要であることがわかります。また、各社担当者との定期的な振り返りや改善要望の集約と反映など、現場との密なコミュニケーションも成功の鍵となっています。

登壇された遠鉄システムサービスの河合さんと藤田さん

人事労務効率化に取り組む担当者の交流会

講演後は来場者同士での交流会を実施しました。遠鉄システムサービスの事例に触発され、自社の人事労務のデジタル化に向けた取り組みについて、活発な意見交換が行なわれました。

来場者同士での交流会で、自社の人事労務のデジタル化に向けた取り組みについて、活発な意見交換が行なわれた様子

河合さん、藤田さんも交流会に参加し、来場者からの質問に丁寧に答える姿が見られました。とくに、全従業員へのサポート体制の構築方法や、複数拠点間での情報連携の実践例について、具体的な質問が多く寄せられていました。

笑顔でお話されている藤田さん
笑顔でお話されている河合さん

今後もSmartHRではDXの推進など、人事領域の課題やテーマにした場をお届けしています。ぜひイベント情報もチェックしてみてください。

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