正式裁判に指名停止・・・「電通事件」への措置は長時間労働の抑止力となるか?
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この1年大きく話題となった電通の過労死事件。
今もなお、メディアで日々取り沙汰されているこの問題。最近のニュースとしては、経産省が、電通に対して7月11日から8月10日までの1ヶ月間、新たな補助金や新規契約を停止する措置をとりました(*1)。
これは具体的にどのような措置で、よくあることなのか?
この1年大きく話題となった電通の過労死事件。
今もなお、メディアで日々取り沙汰されているこの問題。最近のニュースとしては、経産省が、電通に対して7月11日から8月10日までの1ヶ月間、新たな補助金や新規契約を停止する措置をとりました(*1)。
これは具体的にどのような措置で、よくあることなのか?
また、今回の措置が、今後企業や社会、そして働き方を変えるターニングポイントとなるかについて、考えてみたいと思います。
また、今回の措置が、今後企業や社会、そして働き方を変えるターニングポイントとなるかについて、考えてみたいと思います。
新規契約1ヶ月停止や補助金交付停止は厳しい対処か?
冒頭で触れたとおり、経産省は、電通に対して1ヶ月間、新たな補助金や新規契約を停止する措置を取りました。なお既に契約した事業は、引き続き請け負うということです。
この措置により、電通にどのくらいの損害額が生じるのかは、不透明です。
しかしながら、この措置が、テレビや新聞などマスコミに取り上げられることは、一部上場企業にとっては、企業イメージの大きなマイナスであることは間違いありません。
厚生労働省は東京地検が略式起訴したことを受け、内部規定に基づいて2018年1月6日までの6ヶ月間(*2)、環境省も2017年8月10日まで指名停止としました(*3)。
さらに、農林水産省、国土交通省も同様の措置を取る方針で、指名停止が拡がっています。
今回の措置は「異例」 また東京簡裁は略式起訴でなく正式裁判を決定
この度の電通への措置は、よくあることなのでしょうか?
単刀直入に言って、「異例」といえるでしょう。
また、違法残業により過労死問題を繰り返す電通に対して、東京簡裁は、書面審理だけで刑を言い渡す略式起訴は不相当と判断し、正式な裁判を開くことを決定しました(*4)。
これも指名停止と併せて異例な措置といえるでしょう。
「電通事件」の一連の流れは長時間労働の抑止力となるか?
電通過労死事件を受けて、厚生労働省では昨年度末に、以下3つの「過労死等ゼロ緊急対策」を打ち出しています(*5)。
1. 違法な長時間労働を許さない取組強化
2. メンタルヘルス・パワハラ防止対策取組強化
3. 社会全体で過労死等ゼロを目指す取組強化
この緊急対策は、長時間労働による過労死には、セットとなっているパワハラ防止も含まれます。
また、発注側にも協力を求めている点で、今までにない具体的なものとなっており、国の本気度がうかがえます。
しかしながら、つい先日も新国立競技場の建設現場で働いていた新入社員が過労自殺した事件が明るみになりました(*6)。
残業を過少申告していましたが、実態は睡眠時間3時間、残業時間200時間超で、パワハラもあり、電通事件と類似する事件です。
一方で、世論の流れは少しずつ変わってきているのも事実ではないでしょうか?
抑止力が働かないようであれば、より厳格化の措置、あるいは勤務間インターバル規制などが施行されていくことでしょう。
命と健康に変わるものはありません!
【参照】
*1:労働基準法違反事業者に対する経済産業省所管補助金交付等の停止及び契約に係る指名停止措置を講じました – 経済産業省
*2:電通を6カ月間、指名停止 労基法違反で略式起訴 – 毎日新聞
*3:平成29年度指名停止等の運用状況一覧 – 環境省
*4:電通の略式起訴は「不相当」 東京簡裁、正式裁判を決定 – 朝日新聞デジタル
*5:「過労死等ゼロ」緊急対策 – 厚生労働省
*6:新国立で過労自殺、時間外200時間を会社「把握せず」 – 日経コンストラクション