人員配置の最適化をスムーズに進める方法。ポイントや基本の手順を紹介
- 公開日
この記事でわかること
- 人員配置の種類
- 人員配置を最適化する際のポイント
- 実施の手順
- 最適化に活用できるツール
目次
人員配置は、事業目標の達成や人材育成の推進、組織全体の業務効率化など、さまざまな目的に寄与する重要な取り組みです。適材適所の配置を実現するには、事業や組織の状況に応じて、繰り返し最適化を図ることが大切です。
ここでは、人員配置の基本をおさらいしたうえで、最適化のポイントや実施の手順、おすすめのツールを紹介します。
そもそも人員配置とは?
人員配置とは、採用や異動、昇進・昇格など、従業員の配置を決めるタレントマネジメントを指します。
似た意味をもつ言葉に、人事配置や人材配置、適正配置などがあります。いずれも人材を適正なポジションに配置する意味で用いられます。
人員配置の目的
企業が人員配置を実施する目的は、大きく2つあります。
(1)組織の事業計画・目的達成のため
人員配置の最大の目的は、経営目標や事業目標の達成です。達成に必要な人材の確保やチームでの効率的な業務遂行のために、組織体制の変更や人員整理、採用などを行います。
(2)従業員の成長や活躍促進および人材流出の防止
従業員の能力や経歴にあった適材適所の配置を実現できると、従業員は働きがいを感じやすくなり、モチベーション向上やさらなる成長が期待できます。仕事に対するモチベーションは定着率にも影響します。人材流出を防ぐためにも、従業員の納得度の高い人員配置は欠かせません。
人員配置の5つの種類
人員配置にはいくつか種類があります。ここでは、代表的な5つの人員配置について説明します。
人員配置の種類 | 内容 |
---|---|
採用 | 外部から新しい人材を入れ、配置する方法。新卒採用では基本的に研修を一通り終えたあとで配属先を決定するが、中途採用では経歴やスキルを考慮し、適切な部署へ配置するのが一般的。 |
異動 | 自社内の従業員を部署替えや異動により再配置する方法で、人員配置のもっとも多いケース。一定期間ごとにローテーションを変える社風、部署の拡大・縮小などさまざまな理由で実施される。 |
昇進・昇格 | 従業員をより上位の役職に配置する方法。誰かの昇進・昇格により空いたポジションには、新たな人材を配置するケースがほとんど。この繰り返しが若手の人材成長につながり、組織全体の活性化が期待できる。 |
雇用形態の変化 | 会社都合や従業員自身の希望で契約職員から正社員、あるいは正社員から契約職員やパートタイマーに雇用形態を変更する方法。雇用形態の変更とともに、より従業員が働きやすい部署へ人員配置を実施されるケースも。 |
リストラ・雇い止め | 事業の規模縮小などの理由によるリストラや雇い止めも人員配置の一例。ただし、解雇は企業の人員配置にとって最終手段。人材の流出を防ぎ既存従業員のリテンションを維持するためにも、可能な限り避けるのが無難と考えられる。 また、実施後はいままでよりも少ない従業員で業務を遂行するため、負担に偏りが生じないか注意も必要。 |
人事異動については、こちらの記事で詳しく解説していますので、興味のある方はあわせてご覧ください。
人員配置最適化の必要性
以下の理由から、人材配置を最適化する必要性は高まっています。
生産年齢人口の減少
総務省の「令和4年版 情報通信白書」によると、15歳から64歳までの生産年齢人口は減少の一途をたどっています。2050年には5,275万人となり、2021年の7,450万人に対して29.2%も減少する見込みです。
限られた人員のパフォーマンスを引き出し、組織の生産性を最大化するために、人員配置の最適化はより重要になります。
リモートワーク環境での異動によるパフォーマンス低下
株式会社リクルートマネジメントソリューションズが実施した「コロナ禍における人事の課題認識」では、コロナ禍において、異動後のパフォーマンス低下が問題になりやすい傾向が指摘されています。
考えられる原因として、対面でのコミュニケーションの減少やリモートワークによる多面的な人材情報の不足が挙げられました。
後述のとおり人員配置の最適化には、従業員の経歴や能力の把握、入念なシミュレーション、配置後のケアなどのステップが含まれます。これらのステップを押さえた適材適所の配置は、従業員のパフォーマンス維持、向上につながります。
一人ひとりに寄り添う人材配置は、リモートワーク環境において、いっそう求められていると言えます。
人員配置の最適化がもたらす3つの効果
人員配置の最適化により企業・従業員双方が得られる効果を3つ紹介します。
(1)従業員のモチベーション・定着率向上
スキルや適性を考慮した適材適所の配置は、従業員にとって働きやすさや仕事の充実感につながります。
また、株式会社AlbaLinkが実施した「入社1年以内に会社を辞めた理由」の調査では、1位の「人間関係が悪い」につづいて、「仕事内容が合わなかった」が2位となっていました。
人員配置によって人間関係や業務内容のミスマッチを解消できれば、早期退職の防止や企業への定着率向上も望めるでしょう。
【参考】【入社1年以内に会社を辞めた理由ランキング】男女333人アンケート調査-訳あり物件買い取りプロ】
(2)業務効率化・生産性向上
適材適所の配置は、従業員一人ひとりのパフォーマンスの最大化やチームの連携強化に寄与します。業務の効率化や生産性の向上が期待できるでしょう。
(3)採用コスト・人件費の削減
異動にせよ、採用にせよ、人員配置後は新しい組織やチームに慣れ、活躍するまでの教育に時間や労力がかかるものです。むやみに配置転換を繰り返すのは、企業・従業員双方にとって負担となります。
適切な人員配置によって再配置の必要を最小限に抑えられると、採用や異動にともなう教育コストの削減につながります。
また、従業員を適切な部署・チームに配置し、余剰人材が生じるのを防げれば、人件費の最適化も期待できるでしょう。
人員配置を最適化する際のポイント
人員配置の基本を踏まえて、最適化の前提として押さえるべきポイントと進めるうえでのポイントを紹介します。
前提として押さえるべきポイント
(1)法的な注意点の確認
一般的に企業の人事権は広く認められており、従業員は配属・異動などの人事命令を拒否できません。なお、異動の根拠が不明瞭な場合、労働契約違反に該当する場合、人事権濫用と判断されるなどの場合は、その限りではありません。企業は、就業規則に人事異動についての規定をあらかじめ明記しておく必要があります。
(2)従業員の意向のヒアリング
人事異動についての規定を就業規則に明記しており、法的問題がなかったとしても、従業員の意見を尊重した人員配置の検討は大切です。異動後の業務内容や勤務条件だけでなく、異動の理由や企業としての期待を丁寧に説明し、意向をヒアリングしましょう。従業員の理解を得ることで、労使間のトラブルに発展する可能性も低くなります。
最適化を進めるうえでのポイント
(1)客観的な事実にもとづく配置検討
人員配置の最適化には、従業員の経歴や勤務状況、スキル・資格など、客観的な事実にもとづく検討・判断が大切です。担当者の勘や経験のみに頼った人員配置では、仮に事業目標や計画に貢献できていたとしても、別の担当者が再現しづらく、持続的に成果を創出するのは難しくなります。また、曖昧な理由にもとづく異動は、従業員自身はもちろん、社内の関係部署からの納得も得づらいでしょう。
(2)従業員の実績やスキルなど人事データの一元化
事実にもとづき人員配置を最適化するには、従業員の職種やスキル、資格、過去の評価など、さまざまなデータを把握・参照する必要があります。これらのデータを異なる複数のツールで管理している場合、一元的に管理できる環境を整えることで、より効率的かつ効果的に最適化を進められます。
(3)配置変更後の定期的な見直し
最適化を実施した後は、求めていた効果が得られたかに加えて、異動した従業員の満足度や異動元・異動先のチームに問題が生じていないかなど、複数の観点から振り返りを実施しましょう。
人員配置を最適化する手順
人員配置を最適化する手順は、配置の目的や理由によってさまざまですが、以下では基本的な手順を紹介します。
(1)現状の人員を整理する
人員配置表を作成し、現在の人員を整理・把握します。人員配置表については、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
(2)それぞれの部署の課題を把握する
各部署にヒアリングなどを実施し、課題を洗い出します。具体的には、人員不足や人員過剰、人材のスキル不足、部署・チーム内のスキルの偏りなどが挙げられます。
部署へのヒアリングにおいては、課題解決の優先度もあわせて確認しておくと、配置の優先度を判断しやすくなるでしょう。
(3)どのような人員配置が必要か検討する
(2)で可視化された課題解決に対して、どのような人員配置が必要か検討します。たとえば、特定の部署の人手不足が著しい場合、外部採用を行なうか、内部の人材を異動させるのか、当初の人員計画や予算・コストも踏まえて検討していきます。
(4)配置シミュレーションを実施する
配置の種類が整理できたら、配置シミュレーションを実施します。配置に必要なデータを一括で管理・活用できる人員配置システムを活用すればで、より効率的にシミュレーションを進められます。
(5)結果をもとに各部署へヒアリング・相談する
シミュレーションの結果を関係部署に展開します。客観的なデータにもとづく結果と、現場の生の声をあわせた検討により、現場の実情とかい離した配置を避けることができます。
(6)人員配置の変更を実施する
ヒアリングの結果に問題がなければ、人員配置変更を実施します。
(7)配置変更後の効果を確認、必要なケアを実施する
実施後は、事業目標の達成や業務効率化、従業員の成長など、期待した効果が得られているかを確認しましょう。想定した結果が出せていないのであれば、原因の調査や再配置の検討も必要です。また、異動した従業員が環境変化によるストレスを抱えていないかを確認し、フォロー面談などの施策も実施します。
人員配置の最適化で成果を出すうえでの課題
多くの企業がぶつかる人事データ活用の壁
人員配置の最適化が成果につながるのか、不安に感じる人もいるかもしれません。
株式会社SmartHRとHR総研社が共同で実施した「人事異動・配置転換の実施」についてのアンケートでは、配置による成果が出ているかどうかについて、29%の企業が「成果が出ていない」と回答しています。
「成果が出ていない」と回答した企業のうち「戦略的な取組ができていない」割合が59%と最多で、ついで「データにもとづいた客観的な取り組みができていない」「データよりも経験や勘が重視されることがある」がそれぞれ48%でした。
さらに「人事異動・配置転換に効果があった」という企業でも、現在の人事異動・配置転換についての課題として、36%が「戦略的に取り組めていない」、34%が「データにもとづいた客観的な取り組みができていない」「データより経験や勘が重視されることがある」と回答しました。
回答結果からは、人員配置によって成果を出すにはデータが鍵となること、成果の有無に関わらず、さらなるデータ活用の必要性を感じている企業が多いことがわかります。
企業における人事データの三大疾病
データ活用の代表的な課題を、Zホールディングス株式会社 Zアカデミア 学長の伊藤羊一さんは、以下の三大疾病で表現しています。自社にあてはまるという方も多いのではないでしょうか。
- ばらばら病:業務や部署ごとにデータがばらばらで、どこに何があるのかがわからない状態
- ぐちゃぐちゃ病:入力間違いが多いなど、記載方法がぐちゃぐちゃで整理に時間がかかる状態
- まちまち病:データの取り方や取得タイミングがまちまちで連続して使える項目が少い
成果につながる人員配置の最適化を実現
三大疾病の克服には、従業員の部署や役職、性別、雇用形態といった労務データ、資格や等級、評価結果といった人事データを、正確かつ最新の状態で収集・蓄積する人事データベースが欠かせません。
また、収集したデータを別々のツールで管理するのではなく、単一のツールで一元的に管理することも大切になります。そこで有用なのがSmartHRです。
SmartHRでは、労務データや人事データを一元的に管理し、配置シミュレーションや従業員サーベイによる配置変更後の効果測定に簡単に活用できます。
また、入社手続きなどを通して、従業員の労務データが収集・更新され、人事データベースが自然と整備されていきます。先述の「三大疾病」を克服し、データにもとづく戦略的な人員配置を実現できるのです。
SmartHRのタレントマネジメントについてはこちらで詳しく紹介していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
なかでも「配置シミュレーション」機能は、従業員の顔写真をドラッグ&ドロップする直感的な操作が特徴です。作成した配置案をSmartHRに取り込み、データベースや組織図にワンストップで反映できます。
SmartHRの配置シミュレーションについては、こちらで詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
人員配置の最適化には定期的な組織状況の見直しが欠かせません。そして、組織や従業員の状況把握には、最新の人事データを適切に管理・活用できる環境が必要です。ツールなどを活用し、事業や組織の状況に応じた人員配置最適化を目指しましょう。
FAQ
Q1. 人員配置は、なぜ最適化する必要があるのですか?
組織全体の事業計画・目的達成のために人員配置を最適化する必要があります。また、適材適所の配置が従業員の成長や定着率向上につながり、人材流出を防ぐ効果も期待できます。
Q2. 人員配置を最適化するポイントはなんですか?
どのような種類の人員配置でも実施に伴いコストや従業員の負担が発生します。労使間トラブルを避けるためにも、法的な注意点の確認や関連部署、従業員への十分なヒアリングを忘れないようにしましょう。