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組織に多様性と成長機会を。SmartHRが取り組む初の「新卒採用」

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従業員1人ひとりがもつ能力を最大限に発揮するタレントマネジメントをより力強く推進していくため、SmartHRでは創業から10年余が経過した現在、初の「新卒採用」を本格化させています。本記事では、新卒採用の具体的な取り組みや得られた手応えなどついて、採用担当の3人に話を聞きました。

多様性と成長機会をつくるために新卒採用をスタート

最初に、SmartHRで新卒採用を始めた経緯について教えてください。

西巻

採用部門のマネージャーを担当する西巻です。SmartHRは2022年よりwell-workingをキャッチフレーズに「労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる」というコーポレートミッションを掲げています。その実現に向けて、マルチプロダクト戦略に全社一丸で取り組みながら、着実で連続的な成長にとどまらず、非連続の成長と持続可能な組織運営が必要だと考えました。
その文脈で、組織における多様性や適切な成長機会を従業員により提供できる体制づくりの一環として、新卒採用を本格化させています。

プロダクト・コーポレートHRBP本部 採用部の西巻典子

SmartHRは中途入社の社員のみで構成されています(2025年1月時点)。新卒採用で入社する方々にどのような期待をしていますか?

西巻

新卒入社の皆さんにお会いして感じるのは、「無限の可能性」です。SmartHRにこれまでなかった価値観や変化を積極的に生み出して、中途入社の社員たちに刺激を与えてもらいたいです。
私たちは労働にまつわる複雑な社会課題の解決を目指して、さまざまなプロダクトを提供しています。ですから、社会人生活をまだ経験していない新卒ならではのふとしたアイデアや疑問などが、新たなシナジーを生むかもしれません。

ご自身が就職活動していたころと、今の学生の印象に違いはありますか?

西巻

インターネットが一層浸透してさまざまな情報にアクセスしやすくなったためか、「組織で働く」ことに対する理解力や順応力が高い学生が多いですね。また、スキルを身につけなければ社会変化に対応できないという危機感も伝わってきます。

浅井

ビジネス部門の新卒採用を担当する浅井です。ここ数年の新卒世代は、学生生活の大部分をコロナ禍で過ごした方がほとんどです。だからこそ、何事にもチャレンジ意欲が高く、就職活動や社会人生活でも「人生で何を実現したいか」と深く思考する方が多いと思います。

ビジネスHRBP本部 採用部 ビジネス新卒採用ユニットの浅井政樹

入倉

プロダクト部門の新卒採用を担当する入倉です。私の世代では、主に待遇面を企業選びの軸にする傾向がありましたが、最近は「会社のビジョンと自分の考えが一致しているか」など、価値観のマッチングを軸に就職活動する学生が多い印象ですね。

プロダクト・コーポレートHRBP本部 採用部 プロダクト新卒採用ユニットの入倉里咲

時代によって学生像も変化するのですね。SmartHRは新卒採用では後発ですが、それゆえの工夫などはありますか?

西巻

社員数も1,300名を超える規模になり、各種オンボーディングの体制はもちろん、ミッション、ビジョン、バリューを浸透させるさまざまな研修や評価制度も充実させてきました。この段階で新卒社員が入社しても、会社のカルチャーの軸がぶれないと自負しています。

そのうえで、「顧客ファーストでプロダクトに向き合う」「遊び心をもって仕事に取り組む」「オープンかつフラットな関係性」などのSmartHRらしさが伝わるよう、採用活動を行なっています。

新卒採用で求めるのは「カルチャーに共感してくれる人材」

新卒採用を実施するうえでどのような点に苦労しましたか?

入倉

私が担当するプロダクト部門では、1回目は2025年4月に入社する0期生を、2回目は2026年4月に入社する1期生を採用するために、過去2回の新卒採用を行ないました。

しかし1期生の採用に関わる社内メンバー全員が、SmartHRでの新卒採用の業務はほぼ未経験だったのは大きな懸念でした。業務に入る前に、0期生の採用に関する社内資料を読み込んで課題を整理したり、過去の採用に関わったメンバーにヒアリングを重ねたりするなどして、1期生の採用方針を策定しました。

社内にある知見を活かしたのですね。新卒採用に関する社内外への発信は、どのように行ないましたか?

入倉

社外向け施策では新卒採用イベントなどに参加して、そこで5分間の会社プレゼンを複数回実施しました。会社の認知拡大はもちろん、学生により”響く”内容を意識して毎回反省点を洗い出しながら、改善を繰り返しました。

5分間ですと、メッセージを絞る必要がありそうですね。

入倉

はい、主に3つのポイントに絞ってお伝えしました。1つ目はスケールアップ企業であるゆえの成長性がある点、2つ目は労働にまつわる複雑な社会課題の解決に貢献できる点、3つ目は技術力が高いエンジニアと一緒に働ける点です。

社内向け施策では各種定例会で新卒採用をアジェンダにして、面接、新卒採用イベント、後述するインターンシップに協力してくれるメンバーを募るなど、1つひとつ地道に準備しました。

浅井さんが担当するビジネス部門はいかがでしょうか?

浅井

社外の発信に関しては、人事・労務は、実際に就業経験がないと業務イメージをつかむのが難しい分野なので、そこをイメージしていただくのに苦労しましたね。

また、弊社に新卒社員のロールモデルがまだないため、西巻さんが話していたSmartHRらしさや、入倉さんが話していたプレゼン内容などのメッセージを含めつつ、一緒に会社やキャリアプランをつくっていける未来志向の方に入社してほしいとお伝えしました。

対社内については、これまで自分が担当してきた中途採用と比べて、新卒採用は社内で巻き込む人員もより多く必要だったのも印象的です。

実際にどんなメンバーを巻き込んだのですか?

西巻

メンバーレイヤーだけでなく、CEOの芹澤さんやCOOの倉橋さんに登場してもらい、就活生のキャリアを一緒に考えるイベントコンテンツを企画・実施しました。

経営陣にはインターンシップにも参加いただいていますし、SmartHRが新卒採用にかける本気度が学生の方にも伝わったのではないかと思います。

CxOも参加したキャリアイベントのイベントレポートの様子(詳しくはこちら

まさに会社一丸となった取り組みですね!

浅井

本当にさまざまなレイヤーの方に協力いただきました。

そのほか、SmartHRと同じ人事・労務やタレマネ領域の競合他社や、新卒採用における人気企業の取り組みを勉強するなどしました。ただし、SmartHRで再現性を持たせることを念頭に、学生をとにかく集めるのではなく、あくまでカルチャーに共感してくれる人を集めることを優先しました。

実際の選考ではどのような点を重視したのですか?

入倉

プロダクト部門ではバリューの体現を重視しており、これは新卒採用も中途採用も変わりません。SmartHRはユーザーにいいプロダクトを届けることを大事にしているので、たとえば入社希望者が技術を磨きたい意向のみもっていても、SmartHRで働く意義にはなりにくい。会社のカルチャーを守り、大切に育てていくためにも、この点は強く意識しました。

浅井

ビジネス部門でも、同じくバリューの体現を大切にしています。

それ以外では、社内で活躍する人材が有する共通要素を分析し、その資質をもっているかどうか面接で慎重に見極めました。新卒採用では、とくに「チャレンジ精神」「他者を巻き込む力」「変革力」などに注目しています。

中途採用と変わらない部分と、意識的に変えた部分があるのですね。

西巻

新卒採用は組織にとって「未来への投資」であり、すぐに即戦力になるかどうかではない視点でも見なければならないのは、中途採用と大きく異なります。

実際に、インターンシップなども盛んに行なわれているため、経験者と比べても遜色ない高いスキルをもつ学生もいました。しかし、1期生が入社するのは2026年4月なので、すぐすぐの即戦力を求めるなら中途採用の枠を増やすべきという結論になるでしょう。

新卒社員に求めるのは、数年後に成し遂げたい未来を一緒に作っていけるポテンシャルがあるかどうかです。そこから考えた人材要件を選考基準に落とし込みました。

インターンシップでは、よりリアルな仕事体験を提供

新卒採用ではインターンシップも実施したのですよね。

浅井

8月と9月にサマーインターンを開催しました。オフィスで社員の働く姿を見てもらいながら、学生の皆さんにはグループワークに取り組んでいただきました。

ビジネス部門では「SmartHRの新規事業を考えてください」 というテーマで、グループワークを通して3つのバリューを身に付けてもらえるように設計しました。参加した学生を3つのグループに分ける際、メンターとして各班に1人ずつVP(Vice President)と人事担当者が参加するようにメンバー分けしました。成果の発表時にはCxOにも参加してもらい、かなり鋭い質問が飛ぶなど白熱した雰囲気になりましたね。

プロダクト部門のインターンシップはいかがでしょう?

入倉

企画を詰めている段階で参加予定の学生にヒアリングしたところ、「プロダクト開発の雰囲気を知りたい」という要望が多く寄せられました。そこで「社内公募ができるアプリ開発」をテーマに、プロダクトエンジニアの仕事を4日間に凝縮体験できる内容でインターンシップを実施しました。SmartHRのプロダクト開発ではエンジニアがヒアリングのためにユーザー企業を直接訪問したり、スプリントレビュー(※1)を設けたりしますが、それらを4日間のプログラムに組み込んでSmartHRのエンジニアの働き方をリアルに体験いただきました。また、希望者にはインターンシップ後のカシュ(※2)にも参加いただいています。

※1 スプリントの完了時、ステークホルダーに開発内容を紹介し、フィードバックを得る場やイベント
※2 オフィス冷蔵庫のドリンクを無料で飲めるSmartHRの社内制度

参加された学生からの感想で、印象的だったものはありますか?

浅井

他社を含め、複数のインターンシップに参加した経験をもつある学生から「今まで参加したインターンのなかで一番良かった」と感想をいただきました。結果として、インターンシップ参加者の8割以上が選考に進んでくれました。

8割はすごい成果ですね。

浅井

役員含め、インターンシップ参加者をひとりの人間としてフラットに接し、何を聞かれてもきちんと答えるオープンなカルチャーが高評価につながったのだと考えています。

インターンシップの内容とは直接的には関係ありませんが、SmartHRでは年齢にかかわらずどの社員も敬語で会話します。そんなやりとりから垣間見える会社のカルチャーを好意的に受け止めてくれた学生も少なくなかったのではないかと思います。

西巻

浅井さんが話したコミュニケーションスタイルをはじめ、会社のカルチャーはさまざまな部署と一緒につくり上げていくものだと考えています。

育成文化についても同じで、中途入社と比べて新卒入社はティーチングやコーチングなどにより高い技術を求められるため、新卒社員にしっかりと向き合うための研修制度も検討中です。

新卒社員の社会人キャリアのスタートをお預かりする覚悟をもって、私たちも日々の採用活動に臨んでいます。

新卒だけでなく、会社全体の成長を目指す

新卒採用を行なったことで、既存の社員にポジティブな影響はありましたか?

入倉

現在、2025年4月入社の0期生の方々がアルバイトとして実際にチームに入って働いてくれています。そこでの働きぶりを見て、「仕事を任せられる」という認識が社内に広がっているんです。この流れを受けて、2024年8月に新設されたAIインテグレーションユニットでも新卒採用を始める予定が出てくるなど、今後、SmartHR内で新卒採用を拡大する動きが見え始めています。

実際の動きとして現れているのですね。マインド面でなにか変化などはありますか?

浅井

新卒採用を行なうことで、既存の社員も「未来志向」をもついい機会になると思っています。

面接などで学生の皆さんは真っ直ぐな想いを全力でぶつけてくれます。その熱意に応えるため、育成文化を醸成しながらきちんと制度に落とし込み、よりよいパフォーマンスをあげ事業貢献につなげることが、新卒社員のキャリアにとっても会社にとっても重要です。

選考に関わったり、新卒社員を受け入れたりする部署の方たちだけでなく、会社全体にその空気感を波及させていきたいです。

西巻

なんだろう、学生の皆さんと接していると単純に「元気」をもらえますよね(笑)。インターンシップ後、社員のテンションが上がっている様子を見たときは、本当にいい刺激になっているのだと思いました。

SmartHRでは新卒採用プロジェクトを「新卒と一緒に育つプロジェクト」という意味を込めて「NEW PRO」と名付けています。既存の社員にポジティブな影響が出ているのだとすると、目的に沿ったアクションができていると実感できます。

企業と学生、双方にとって本質的にいい出会いを追求する

最後に、新卒採用に関するみなさんの今後の展望や想いについてお聞かせください。

入倉

繰り返しになりますが、新卒採用の選考では学生の皆さんとSmartHRが大切にする軸が重なっているかを重視しながら、今後は新卒採用でさらに選ばれる会社となるべく、SmartHRの認知拡大を目指して採用活動を継続していきたいです。

浅井

短期的にはカルチャーに共感してくれる方に1人でも多く入社いただきたい考えですが、中長期ではその積み重ねで「新卒採用のあり方」を変えられないかと考えています。

あえて言うと、新卒採用はやっぱりめちゃくちゃ大変でして。他社の新卒採用の担当者の方とも意見交換する機会があるのですが、皆さん「時間がいくらあっても足りない」と話しています。それは学生にとっても同じで、双方にとって今の新卒採用が本来あるべき姿なのかと問いかけることがしばしばありました。

企業と学生、どちらの立場からも本質的にいい出会いになるよう新卒採用の形を変えていきたいのですが、これはSmartHR単体では達成できない規模感の話です。もう少しアイデアが具体化したら、近しい業界や共感してくださる方を巻き込んでアクションしていきたいです。

西巻

浅井さんの話にも通じることかもしれませんが、冒頭にお伝えした「well-working」を採用面から促進したいと常々考えています。そのためには、成長実感や自己実現の機会があり、やりがいをもって働ける環境をどこまでつくっていけるかが課題です。

いつの時代にも早期離職する新卒社員は一定数いて、働くことに希望をもてない人も多いと聞きますが、弊社に入社する新卒社員には決してそんな思いをさせたくありません。SmartHRの採用メソッドで優れた事例をつくれたら、他社にも参考にしていただけて、ひいては新卒入社の方が生き生きと働ける社会が実現するかもしれない。そう信じて、今後も日々の採用活動にあたっていきます。

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