人事データは成長の武器。アパホテルに学ぶ「大企業の労務DX」
- 公開日
目次
- 鵜澤 麻子 氏
アパホテル株式会社 人事部チーフマネージャー
2007年にアパホテル株式会社に新卒入社しホテルの現場運営を経験。2008年より本部に異動し複数の部署を経験後、2010年より人事部へ。以来、一貫して給与計算、労務管理、勤怠管理といった人事の基幹業務に携わり専門性を深める。同部署でチームリーダーを務めた後、現在は人事労務システムの刷新プロジェクトを牽引。最近では安否確認システムの導入や勤怠管理システムの切り替えも実現するなど、人事領域のDX推進に尽力している。
- 近藤 龍成 氏
アパホテル株式会社 人事部アシスタントマネージャー
2017年にアパホテル株式会社に新卒入社後、ホテルの新規開業やリゾート施設での接客など、多様な現場を経験。その後、各ホテルの売上最大化を目指し、ITスーパーバイザー補佐として予約サイトの管理などを担当。2020年より人事部へ異動し、中途採用担当を経て現在は労務管理などの実務を担当。豊富な現場経験を活かし、従業員に寄り添った人事を目指している。
アパホテル株式会社は、ホテル事業を中心に多角的に事業を展開するアパグループの中核を担う企業です。『新都市型ホテル』という独創的なコンセプトで業界を牽引する『アパホテル』を筆頭に、『the b hotels』や北米の『Coast Hotels』を傘下に加えるなど多角的にホテル事業を展開。グループとして総合都市開発事業にも注力し、マンションやテナントビルの開発から運営までを一貫して手がけています。
多岐にわたる事業展開により大規模な人員を抱えるアパホテルでは、人事・労務業務の負担増大が大きな課題でした。この記事では、同社がSmartHRの導入でどのように紙運用から脱却し、人事・労務業務の効率化を成し遂げたのかをご紹介します。
事業拡大のスピードに合わせ、バックオフィスの効率化も急務に

(鵜澤さん)
SmartHR導入前の課題を教えてください。
鵜澤さん
導入前の最大の課題は、紙運用により、本社人事部だけでなく、現場の従業員の工数も増えていたことでした。当社は事業拡大により人員が増えており、管理者側の手続きもそれに比例して増加していました。ゲストの時間を奪わない『Time is life』を掲げる当社として、従業員の時間価値も最大化すべく、ペーパーレス化による生産性向上を決断しました。
課題の一番の原因は、入退社手続き・人事評価の紙運用です。本部が情報を手作業で差し込み、PDFで共有したあと、郵送して原本を返送してもらう二重三重の手間が発生していました。とくに流動性の高いアルバイトクルーの人事評価(等級認定)手続きにかかる労力は、非常に大きいものでした。当社には2,000室を超えるホテルもあり、事業所もそのぶん大きくなります。そうすると承認者も増え、人事評価がどんどん複雑になっていきました。
管理者側での手作業が増えるにつれ、高い正確性を維持するための確認業務や心理的プレッシャーが大きくなっていました。手作業によって業務の属人化が進み、担当者が変わったときの教育にも手間がかかります。現場で働く従業員にとっても書類の提出先がわかりづらく、人事・労務担当者への問い合わせも頻繁に発生していました。
導入前は、従業員情報を他社のデータベース管理ソフトで管理していましたが、事業の急拡大と人員増加に伴い、よりスピーディーで正確な管理体制への移行が必要となっていました。また、東京の人事部と金沢の事務センターで人事情報が別々に管理されていることもあり、全社横断でのリアルタイムな情報把握を目指して情報の統合を決断。ペーパーレス化による業務効率化と合わせ、新たなシステム選定を開始しました。
ホテルという業種柄、多店舗展開で老若男女問わずあらゆる方々がいらっしゃり、入退社の頻度も不定期となると、現場も本部も負荷が大きかったのですね。
SmartHRは多機能を兼ね備えた「最強の武器」
SmartHR選定の決め手はどのような点でしたか?
鵜澤さん
システム選定のきっかけは、他社から電子雇用契約のトライアルのお声がけをいただいたことでした。これを機に、電子化すべき業務全体を整理し、システムを選定しました。
必要な機能が分散していると、複数のシステム導入が必要となり、管理コストが増大します。従業員が多く異動も多い当社にとって、複数システムの導入・連携は、メンテナンスや管理のコストが膨大になります。
最終的に、必要とする機能がすべて1つのシステムに揃っているのはSmartHRだけでした。また、SmartHRは安定した導入実績があります。常に人事データを更新し続けられ、かつ最新の人事データを1か所に蓄積できるSmartHRは、当社の課題をクリアする「最強の武器」になると判断し、これが導入の決め手になりました。

SmartHRのある1年間
現場の使いやすさの点では、どのように検証されたのでしょうか?
鵜澤さん
トライアルを利用した際に、従業員がマニュアルを読まずとも最初から最後まで手続きが完了できる点が非常に重要なポイントでした。問い合わせが増えてしまうと工数が減らないため、初見でも迷いなく操作できるという手応えも導入の決め手となりました。
段階的導入でスムーズな定着を実現

導入後、どのように運用をされたのでしょうか?
鵜澤さん
当社のシステム構成のなかで、SmartHRは労務管理とタレントマネジメントの基盤となる「従業員データベース」として機能しています。グループ統合テナント(グループ全体を統合したサービス利用環境)を作成し、そこから各社手続き用のテナント(各社のサービス利用環境)に情報を紐づける形式を取っています。
われわれのミッションである「従業員、管理者ともに、人事に関する手続きをわかりやすく効率的に行う」を実現するため、人事に関する手続きはすべてSmartHRへ集約し、手続きの漏れの防止を目標としています。勤怠管理や安否確認など周辺システムとの連携も強化し、従業員マスタを1か所に集約し、メンテナンスを限定できたことは、大きな効率化につながっています。

講演資料をもとに当社作成
鵜澤さん
従業員数が多いため、無理のないよう段階的に導入を進めていきました。2023年4月に導入準備を開始し、5月にSmartHRの導入支援をサポートしている株式会社TECO Design(※)の協力のもと、既存のデータベース管理ソフトからSmartHRへ従業員データを移行しました。こちらと並行して、人事評価の仕組みづくりも進めていきました。
その後、8月に社員アカウントを招待してSmartHRの利用を開始し、9月にはホテル部門の人事評価の締めにあわせて、操作マニュアル公開と勉強会を実施しました。
10月にはアルバイトクルーのアカウントを招待し、年末にかけて年末調整の準備、新入社員の入社書類手続きの準備、アルバイトクルーの等級認定の仕組みづくりと、順次機能を拡大していきました。人事評価やアルバイトクルーの等級認定の仕組みづくりについては、従業員データの準備に引き続きTECO Designにサポートいただきました。
※TECO Designの導入支援は、SmartHRが提携する設定代行パートナーによる有償サービスです。 お客様側でSmartHRの設定工数の捻出が難しい場合や、導入までのスケジュールが短期で追加の体制構築が必要な場合に、確実に運用を開始するための戦略的な選択として活用されます。

講演資料をもとに当社作成
こうしてご契約から導入、機能拡大までを俯瞰してみると、本当に無理なく、現場の従業員さまも人事・労務担当者さまも段階的に理解を深めていきながら、導入・運用されているとわかりました。
導入効果を最大にした「3種類のマニュアル」

計画的な導入拡大のなかでも、人事・労務担当者さまのご負担や導入を進めるうえで迷われた点、現場の従業員さまからの戸惑いの声などもあったのではないでしょうか。
近藤さん
SmartHR導入後は、たしかにいくつかチャレンジがありました。大きく分けて「従業員データの移行」「機能の理解」「マニュアルの整備」の3つです。
従業員データの整理・移行では、導入前は従業員データを他社の管理ソフトや拠点ごとのファイルで管理していたため、今回の一元化にあたり、データの入力規則や管理項目を全社統一の基準(スタンダード)へ再構築する必要がありました。この部分はTECO Designさんにサポートいただき、ずいぶん整備できたと思います。
データの移行作業はチャレンジングなものでしたが、必要なデータと不要なデータを取捨選択するプロセスを通じて、会社にとって本当に必要な人事データの棚卸しができ、今後の活用における財産になったと感じています。
機械的にデータ移行を進めるのではなく、これまでの運用が正しいのかを見つめなおす機会にされたのですね。とてもすばらしい姿勢だと思いました。
近藤さん
はい、おっしゃるとおりです。従業員データの整理・移行と同じくらい、SmartHR各種機能の理解にも真剣に取り組みました。導入時には、従業員データの登録をドロップダウンリストでしてもらうのか、フリーテキストで入力してもらうのか、資格証明書などのPDFデータを読み込ませるのかといった手順まで決めておかなければなりません。フリーテキスト形式だと表記揺れやミスが想定される一方で、ドロップダウンリスト形式だとこちらが用意した以外の回答ができません。どちらの方法にもメリットとデメリットがあり、この点は今でも細かく調整するほど奥が深いところだと感じています。
機能理解を進めるにあたっては、ヘルプセンターやSmartHRスクール(※)を活用して勉強し、運用に迷うときにはタレントマネジメント機能のご担当者さまにもご協力いただきました。
※オンラインでSmartHRの使い方を無料で学べるeラーニングコンテンツ

SmartHRの導入にあたって、3種類のマニュアルを作成されたと聞きました。詳しく教えてください。
近藤さん
おっしゃるとおり、3種類のマニュアルを作成しました。1つ目は人事評価のマニュアルです。人事評価の制度を説明するマニュアルはすでにあったのですが、SmartHRの導入にあたって操作に特化したマニュアルを新たに作り、それをもとに勉強会を実施しました。役員に対しては1on1で丁寧なレクチャーを実施し、理解と協力を得ました。
2つ目が、新入社員向けの入社手続きマニュアルです。入社手続きにあたっては、契約書を作成・回収する文書配付機能、卒業証明書などのPDFデータを添付して回収する従業員情報申請機能、そしてマイナンバーを収集・保管するマイナンバー管理機能を使用しています。この3つの機能について、新入社員が回答に迷わないように、手順や注意点を丁寧に記載しました。また、600名を超える内定者に現場配属前の段階で操作に慣れてもらうため、オンライン操作説明会を開催しました。そのおかげで、入社書類をスムーズに回収できたと思います。
3つ目は、従業員情報申請機能のマニュアルです。これは、既存社員が通勤手当の申請や住所変更の申請をスムーズに行なうためのマニュアルです。人事評価のマニュアルと同じく操作方法に特化しており、どの事業所の誰が、誰を承認者に選ぶのかといった運用面にも触れています。
マニュアルの整備は大変でしたが、何千人もいる社員からの問い合わせ対応を効率化したり、運用が属人化したりしないよう多くの従業員に使ってもらうためには非常に重要でした。評価者、被評価者、内定者などの対象者別の操作方法をまとめたマニュアルを作成し、従業員が自力でSmartHRを操作できるようにしました。
鵜澤さん
SmartHRの導入により、定性・定量両面で大きな成果があらわれています。まず定量面では、人事評価では紙9,600枚、作業コスト16時間の削減、新入社員600名に対する入社手続きでは紙4,200枚、作業コスト16時間の削減を達成しました。

講演資料をもとに当社作成
鵜澤さん
定性面では、従業員から「人事評価について、従業員から『手続きがスムーズになり、本来の業務に集中できるようになった』との声が多くあがっています。当初より意識してきた、業務効率化による従業員の負担軽減をしっかり実現できました。SmartHRスクールなどの活用によって、人事部に配属された新しいスタッフへの教育も、より効率的に行なえるようになったと思います。
人事・労務関連の手続きが効率化されたのも、うれしい成果でした。600名を超える内定者の入社関係書類をオンライン完結で回収できるようになり、東京本社だけでなく金沢の別拠点でも確認できるようになりました。これによって、単純にマンパワーが増加しました。ペーパーレス化によって、人事評価シートの紛失リスクや保管コストがなくなったのにも満足しています。
こうした成果によってミッションを達成できたのが、何よりの成功だと感じています。

料金プラン
SmartHRは初期導入費用もサポート費用も無料。プランと契約人数に応じた料金しかいただきません。
目的に合わせて選べる3つのプランをご用意しています。
人事データの活用で最適な人員配置を目指す

SmartHRの活用や人事・労務業務の効率化について、今後の展望を教えてください。
近藤さん
SmartHR導入の最終的なゴールは、業務効率化ではありません。今後は、蓄積された人事データを活用する次のステップに進んでいきます。労務管理の分野では非常に多くの機能を活用している一方で、タレントマネジメントの分野については未着手の部分が多くあります。こちらも活用して、データに基づいた配置業務や異動を実現したいと考えています。
他部署への展開も、実現したいことのひとつです。現在は東京の人事部と金沢の事務センターでの活用が主ですが、慶弔関係を取り扱う総務部まで権限を拡大し、手続きの窓口をSmartHRに集約したいです。従業員にとっても、「人事・総務関係のことならSmartHRを見ればいい」と安心できる環境になるのがベストだと思っています。
中長期的には、システム連携の効率化も進めていきたいです。SmartHRを基幹のデータベースとして勤怠システムや給与計算システムとAPI連携させ、RPAの活用も並行しながら一部残っている手作業を効率化していく予定です。
鵜澤さん
SmartHRの定着において欠かせないのが、導入支援をいただいたTECO Designの存在です。SmartHRからのご紹介で採用したのですが、導入におけるメンター的存在となってくださり、依頼して本当によかったです。
ツールの導入には必ず一定期間負荷がかかります。従業員数が多く、通常業務も並行して行なわなければならない企業ではなおさらです。導入初期はプロに頼って、とにかく運用をスタートさせることが大事だと感じました。運用がはじまってからも、予期せぬトラブルがつきものです。困ったときに頼れるプロがいることは、大きな壁を乗り越える力になります。新しい視点でのアドバイスをもらえ、非常に参考になりました。
鵜澤さん
人事評価の導入をご担当くださったSmartHRの佐山さまにも、大変お世話になりました。とくに等級認定の設定においては、当社の要望に対して複数パターンのご提案をいただき、各パターンのメリットとデメリットを教えていただきました。メリットを前面にしたプレゼンではなく、実際にシステムを使うわれわれの立場に立って、納得して選択できるように尽力してくださいました。

鵜澤さん
一部の機能において、「ここはSmartHRではなく、現状の機能のほうがいいかもしれない」とご提案もありました。このご提案があったから、自分たちの目的がブレてしまっていたと気づけたと思っています。SmartHRはあくまでも業務効率化の手段なのに、いつの間にかSmartHRを使うことが目的になってしまう瞬間が何度かありました。佐山さまはこうしたときにいつも本来の目的に軸を戻してくださる存在でした。SmartHRという最強の武器を最大限に生かす提案をしてくださる、最強のパートナーだと感じています。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

(鵜澤さん、近藤さん、ほかSmartHR従業員など)
業務効率化にとどまらず、グループ全体の人事データ活用にSmartHRを活かしてくださり、うれしく思いました。引き続き、よりよいご支援に向けて尽力してまいります。貴重なお話をありがとうございました。
SmartHRでは多様な業種・業界を対象とした事例紹介セミナーを定期的に開催しております。本記事は2025年11月5日(水)の講演内容をもとに制作しています。
※掲載内容は取材当時のものです。

お役立ち資料
SmartHR機能まるわかりガイド
SmartHRをはじめて知っていただく方に向けて、SmartHRの機能概要を「労務管理」「人事データベース」「タレントマネジメント」3つの軸でわかりやすくご紹介した資料です。
【こんなことがわかります】
- そもそもSmartHRとは?
- SmartHRにはどんな機能があるのか?






