「電子申請義務化」で対象となる手続き・届出とは?【社会保険編】
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こんにちは、社会保険労務士の飯田 弘和です。
2020年4月から、資本金が1億円を超える法人や相互会社等の特定の法人の事業所は、労働保険・社会保険に関する一部の手続きについて、電子申請で行うことが義務化されます。
社会保険(健康保険・厚生年金)の手続きで義務化されるのは、以下の届出です。
- 被保険者報酬月額算定基礎届
- 被保険者報酬月額変更届
- 被保険者賞与支払届
今回は、電子申請が義務化された届出書類について、そもそもどのような書類なのか解説します。
「被保険者報酬月額算定基礎届」とは?
「被保険者報酬月額算定基礎届」は、7月1日現在の被保険者全員について、健康保険・厚生年金保険それぞれの標準報酬月額を決定するために届け出る書類です。
健康保険料・厚生年金保険料については、毎月決まった金額が給料から源泉徴収されます。残業代の違いなどで毎月の給料額に違いがあっても、源泉徴収される健康保険料・厚生年金保険料は変わりません。
それは、健康保険料・厚生年金保険料は、次のようにして決まるからです。
まず、4月・5月・6月に支払われた給料を3で割って、1ヶ月の平均報酬を算定し、その金額をいくつかの等級に区分された「標準報酬月額表」に当てはめて、その年の9月以降の標準報酬月額を決定します。
その標準報酬月額に「健康保険料率」「厚生年金保険料率」を乗じたものが、毎月の各保険料額となります。ここで決まった標準報酬月額は、原則、翌年の8月まで変わりません。
「被保険者報酬月額変更届」とは?
次に、「被保険者報酬月額変更届」について解説します。
昇給や昇格(あるいは降給や降格)等で固定的賃金に変動があり、次の要件にすべて該当した場合、「被保険者報酬月額変更届」によって標準報酬月額の変更手続きを行います。
- “固定的賃金の変動があった月以降引き続く3ヶ月に受けた報酬の平均月額に基づく標準報酬等級” と “現在の標準報酬等級”との間に2等級以上の差が生じていること。
- 該当した3ヶ月とも報酬支払基礎日数が17日以上あること。
ここで、「固定的賃金の変動」とは、基本給の変動はもちろんのこと、家族手当や住宅手当・役職手当等の各種手当の変動も含まれます。
また、給与体系が変更された場合(たとえば、時給制から月給制へ変更)や時間外割増率が変更された場合なども、固定的賃金の変動とされます。
「被保険者賞与支払届」とは?
「被保険者賞与支払届」は、賞与が支払われたときに提出します。この届出によって、賞与に対する保険料が算出されます。
ちなみに、「賞与」とは「労働の対償として受け取る報酬のうち、3ヶ月を超える期間ごとに支払うもの」をいいます。
e-Gov「健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届」はこちら
(その他)「70歳以上被用者」について
厚生年金保険については、従業員であっても、70歳になると被保険者資格を喪失します。一方、支給されるべき老齢厚生年金の額と報酬額とによって、受け取る老齢厚生年金が支給調整されます。
つまり、年金月額(※1)と総報酬月額相当額(※2)とで年金支給額が調整されるので、標準報酬月額や標準賞与額が把握されないと、年金支給額が決定できません。
(※1)「年金月額」とは、年金額(年額)を12で割った額
(※2)「総報酬月額相当額」とは、毎月の賃金(標準報酬額)+1年間の賞与(標準賞与額)を12で割った額
そこで、70歳以上の被用者については、厚生年金保険の被保険者ではないけれど、被保険者であったときと同様に、算定基礎届・報酬月額変更届・賞与支払届の手続きが必要になります。
この手続きは、「被保険者報酬月額算定基礎届」「被保険者報酬月額変更届」「被保険者賞与支払届」で被保険者と同様に行います。ただ、届出書の備考欄にある「70歳以上被用者算定」を〇で囲み、個人番号または基礎年金番号の記入が必要となります。
ちなみに、「70歳以上被用者」とは、適用事業所に使用される者で、過去に厚生年金保険の被保険者期間があり、勤務日数と勤務時間がそれぞれ一般の従業員のおおむね4分の3以上の者をいいます。
おわりに
今回は、社会保険(健康保険・厚生年金)に関わる電子申請義務化の対象届出書類について解説しました。
次回は、「労働保険・雇用保険」編として、同様にご紹介いたします。
(了)