パワハラ(パワーハラスメント)とは?定義や職場での具体例、企業が取るべき防止措置を学ぶ
- 公開日
目次
パワハラ(パワーハラスメント)は、 労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)により、企業に対して防止措置を講じることが法的に義務付けられています。対策を怠った場合、企業のコンプライアンスが問われるだけでなく、安全配慮義務違反や使用者責任にもとづく損害賠償請求を受けるといった、大きな経営リスクを伴います。
そのため、企業にはパワハラを未然に防ぐ体制の構築と、発生時の迅速かつ厳正な対応が不可欠です。本稿では、パワハラの定義や6つの類型、企業が実施すべき防止措置、発生時の対応方法について、企業目線で詳しく解説します。
パワハラ(パワーハラスメント)とは?
パワハラ防止法において、職場におけるパワハラとは以下3つの要素をすべて満たすものと定義されています。
優越的な関係を背景とした言動
業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
労働者の就業環境が害される言動

2026年現在、厚生労働省は「自爆営業(商品の強引な購入代位)」をパワハラの類型として明示する方向で指針を強化するなど、法整備をさらに進めています。企業はこれら3つの要素を正しく理解し、実務におけるリスク管理を徹底する必要があります。
職場におけるパワハラ「3つの要素」
(1)優越的な関係を背景とした言動
「優越的な関係を背景とした言動」とは、「業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が行為者とされる者(加害者)に対して抵抗や拒絶できない蓋然性が高い関係を背景として行なわれるもの」と定義されています。
優越的な関係の典型例が上司と部下の関係です。しかし、同僚や部下の言動でも、以下の状況下では「優越的な関係」に該当することがあります。
- 同僚や部下の方が業務上の知識が豊富であり、その人の協力を得ないと業務の円滑な遂行が困難である場合
- 集団による行為で、これに抵抗や拒絶が難しい場合
(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」とは、「社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、またはその態様が相当でないもの」と定義されています。
例を挙げると、以下のようなものが該当します。
- 言動が明らかに業務上必要ない:部下を竹刀で脅す、売上目標を達成できていない部下に坊主への散髪を命じる
- 業務を遂行する手段として適当ではない:ミスをした部下に対し、ほかの従業員の前で長時間にわたって大声で叱責する
従業員の人格を否定・侮辱する行為は「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」に該当する可能性が高いでしょう。
ただし、業務上必要かつ相当な範囲を超えているのかは、1つの要素だけで判断するのが難しい側面もあります。一見するとパワハラに該当しそうな言動でも、その言動が生じた背景や当該言動の目的、労働者の属性や心身の状況によっては「指導の範疇である」とも考えられるためです。
(3)労働者の就業環境が害される言動
「労働者の就業環境が害される言動」とは、「当該言動により、労働者が身体的または精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなどの当該労働者が就業するうえで看過できない程度の支障が生じること」と定義されています。
そのため次のような場合には、「就業環境が害される」言動にあたるとされる可能性があります。
- 不適切な言動を受けた部下が恐怖から動けなくなり、業務効率が下がる
- 不適切な言動を受けた従業員が心身に不調をきたして休職をする
- 不適切な言動によって職場全体の雰囲気が悪くなる など
適正な指導とパワハラの境界線
職場において、業務上の指示や指導は不可欠です。しかし、その言動が「パワハラ」と認定されるか、あるいは「適正な指導」に留まるかの判断は、2026年現在の司法判断や行政指針においても非常に繊細なものとなっています。
基本的には、その言動が「業務上必要かつ相当な範囲」に収まっているかどうかが分かれ目となります。
総合的に判断される7つの要素
厚生労働省の指針では、パワハラに該当するか否かを判断する際、単一の言動だけで決めるのではなく、以下の要素を総合的に考慮することを求めています。
- 言動の目的
- 言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む言動が行なわれた経緯や状況
- 業種・業態
- 業務の内容・性質
- 言動の態様・頻度・継続性
- 言動を受けた労働者の属性や心身の状況
- 行為者と言動を受けた労働者の関係性
参考:厚生労働省|職場におけるハラスメント関係指針(p.3)
パワハラ防止法とは
パワハラに関連する法律として重要な役割をもつのが「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(略称:労働施策総合推進法)」です。
企業にパワハラ防止措置を義務付けていることから、通称「パワハラ防止法」とも呼ばれます。
文字どおり、事業主が職場におけるパワーハラスメントを防止するための措置を講じることを義務付けた法律です。2020年6月から大企業、2022年4月から中小企業を含む全企業に適用されており、企業は方針の明確化と周知、相談体制の整備、被害者へのケアや再発防止、当事者のプライバシーを保護するための措置、相談したことなどを理由とする不利益取り扱いの禁止などの措置を講じる必要があります。
参考:厚生労働省|パワーハラスメント防止指針の改正について①
部下から上司へのパワーハラスメント(逆パワハラ)
パワーハラスメントは、必ずしも「上司から部下へ」行なわれるものとは限りません。部下や後輩、あるいは非正規社員から、上司や正社員に対する「逆パワハラ」も、厚生労働省の指針におけるパワーハラスメントの定義に明確に含まれます。
「優越的な関係」は役職順位に限られない
パワハラの要件である「優越的な関係」とは、単なる職位の上下関係だけを指すものではありません。以下のような状況下では、部下が上司に対して「優越的な関係」にあると認められます。
- 専門知識・スキルの格差: 業務遂行に不可欠なITスキルや高度な専門知識を部下が独占しており、その部下の協力なしでは業務が円滑に回らない場合
- 集団による心理的圧力: 部下たちが集団で結託し、特定の上司に対して拒絶的な態度を取ったり、孤立させたりする場合
- 人間関係の勢力図: 社歴の長いベテラン部下が、新任上司に対して業務上の必要な協力を拒む、あるいは周囲を煽動して指示を無視させる場合
企業の法的責任とリスク
上司が部下から暴言や侮辱、あるいは執拗な無視などの嫌がらせを受け、精神的苦痛を感じている場合、企業はこれを「逆パワハラ」として放置できません。
たとえ被害者が管理職であっても、企業には安全配慮義務があり、職場環境を是正する責任が生じます。指示系統が機能不全に陥ることは、組織の秩序を乱すだけでなく、企業の生産性低下や損害賠償リスクに直結する深刻なコンプライアンス問題です。
パワハラの6類型
パワハラには代表的な「6類型」があります。パワハラ対策には「何がパワハラに該当するのか」の理解が欠かせません。類型の違いを把握して判断基準を整備することで、パワハラの判断が統一されやすくなるでしょう。
ここではパワハラの6つの類型と具体例を紹介します。
- 精神的な攻撃:脅迫・暴言・名誉毀損
- 身体的な攻撃:暴行・傷害
- 過大な要求:業務上明らかに不要なことを強要するなど
- 過小な要求:能力とかけ離れた程度の低い仕事しか与えない
- 人間関係からの切り離し:無視・隔離・仲間はずれ
- 個の侵害:私的なことに立ち入る
また、厚生労働省の「あかるい職場応援団」では、パワハラにもとづく具体的な裁判例を掲載しているので、あわせてご確認ください。
(1)精神的な攻撃:脅迫・暴言・名誉毀損
いわゆる言葉の暴力も、従業員に精神的苦痛を与えるものとしてパワハラに該当する可能性があります。たとえば、従業員の人格を否定する発言はパワハラに該当し、業務上の必要性のある叱責とは認められません。
厚生労働省のパワハラ防止指針では、以下のような言動がパワハラに該当すると考えられます。
- 人格を否定するような言動をする
- 業務の遂行の必要性以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返す
- ほかの労働者の面前で威圧を繰り返す
- 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メールなどをその相手だけでなく、ほかの労働者も宛先に含めて送信する
精神的な攻撃は侮辱罪(刑法231条)、脅迫罪(刑法222条)、名誉毀損(刑法230条)などに該当することがあります。
参考:厚生労働省|職場におけるハラスメント関係指針(p.4)
(2)身体的な攻撃:暴行・傷害
厚生労働省のパワハラ防止指針によると、相手に対して暴力をふるった場合に、身体的な攻撃にあたります。
相手を拳で殴打する、足で蹴る、身近な道具で叩くなどが該当し、「誤ってぶつかった」といった状況でない限りは、職場での暴力はパワハラにあたると考えられます。
なお、暴行と傷害の言葉には以下の違いがあります。
- 暴行:ケガをしない程度の暴力
- 傷害:暴行の結果としてケガをした場合
身体的な攻撃は暴行罪(刑法208条)や傷害罪(刑法204条)に該当するため、加害者は逮捕されて刑事罰を受ける可能性もあります。
参考:厚生労働省|職場におけるハラスメント関係指針(p.4)
(3)過大な要求:業務上明らかに不要なことを強要する等
業務を遂行するうえで明らかに必要ないことを強要するのは、過大な要求に該当します。
たとえば、肉体的な苦痛を伴う環境下で勤務に関係ない作業を長時間強いることや、労働に関係ない上司の私的な雑用を強制的に行なわせる行為が挙げられます。
また、適切な業務範囲を逸脱した量の仕事を強制して長時間労働を強いる行為も「過大な要求」の一種です。
パワハラに該当しない(適正な範囲内)と考えられる例
厚生労働省の指針では、業務上の必要性や労働者の成長を目的とした以下のケースは、原則として「適正な業務指示・指導」であり、パワハラには該当しないと整理されています。
- 段階的な能力向上を目的とした業務付与
- 労働者を育成するために、現状のスキルよりも「少し高いレベル」の課題を任せること。ただし、これは上司による適切な助言や進捗管理などを並行してサポートされていることが前提となります。
- 繁忙期における一時的な業務負荷の調整
- 業務上の必要性が客観的に認められる状況(季節的な繁忙期や突発的なトラブル対応など)において、担当者に「通常時よりも一定程度多い」業務処理を依頼することはパワハラに該当しません。
参考:厚生労働省|職場におけるハラスメント関係指針(p.5)
(4)過小な要求:能力とかけ離れた程度の低い仕事しか与えない
「過小な要求」とは、業務上の合理性がないにもかかわらず、本人の能力や経験とかけ離れた難易度の低い仕事を命じたり、意図的に仕事を与えなかったりする行為を指します。
パワハラに該当する例
- 退職勧奨目的の閑職追い込み: 管理職を自己都合退職に追い込む目的で、誰にでもできる単純作業のみを命じる
- 個人的感情による排除: 気に入らない特定の労働者に対し、嫌がらせとして一切の仕事を与えない
パワハラに該当しない(適正な範囲内)と考えられる例
厚生労働省の指針では、以下のようなケースは、労働者の状況に合わせた「適正な配慮」として認められます。
- 能力や状況に応じた調整: 労働者の能力や心身の状況に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減すること
参考:厚生労働省|職場におけるハラスメント関係指針(p.5)
(5)人間関係からの切り離し:無視・隔離・仲間はずれ
人間関係からの切り離しとは、特段の理由なく特定の従業員を孤立させる行為のことです。無視や隔離、仲間はずれなどの行為で人間関係がなくなって孤立している場合には、パワハラに該当すると考えられます。
参考:厚生労働省|職場におけるハラスメント関係指針(p.5)
(6)個の侵害:私的なことに立ち入る
個の侵害とは、プライバシーに過度に立ち入る行為のことです。私的なことに過剰に立ち入るような以下の行為はパワハラに該当します。
職場外でも労働者を継続的に監視する
私物の写真撮影をする
労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の個人情報を本人の了解なしに周囲に暴露する行為
世間話でプライベートな内容を話すことが、必ずしもパワハラに該当するわけではありません。また、労働者への配慮を目的とした個人情報のヒアリングは、業務上必要な行為となり、パワハラにはあたりません。
ただし、労働者への配慮を目的としたヒアリングであっても、本人が答えたがらないプライベートな事情を執拗に聞き出すような行為は「個の侵害」に該当し得るため、注意が必要です。
パワハラ被害の現状
実際のところ、パワハラ被害はどのくらい発生しているのでしょうか。ここでは、厚生労働省の「令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査」、「Job総研『2025年 ハラスメント実態調査 〜被害・職場対策編〜』」の2つの資料をもとに、パワハラ被害の現状を紹介します。
ハラスメントを受けた経験・頻度
過去3年間に勤務先で受けたハラスメントとして、パワハラ、セクハラ、顧客等からの著しい迷惑行為のなかではパワハラ(19.3%)がもっとも高く、次いで顧客などからの著しい迷惑行為(10.8%)、セクハラ(6.3%)となっています。パワハラが多くの従業員にとって重大な問題であるとわかります。

また、パワハラの頻度について「何度も繰り返し」「時々」と回答した方の合計は87.4%に達しました。「何度も繰り返し」という回答の割合はパワハラ(32.0%)がもっとも高い結果でした。

企業調査に見る発生件数と推移
過去3年間のハラスメントの発生状況で、パワーハラスメントの相談があったとした企業は64.2%です。
従業員規模別では、99人以下の企業で30.0%、1,000人以上の大企業で94.4%と従業員規模が大きくなるにつれて、相談が「ある」と答えた割合が大きくなっています

また、パワーハラスメントに対する相談の有無を業種別に見ると、もっとも「ある」の割合が大きかったのは金融業・保険業の76.9%。企業数が多い卸売業・小売業では68.9%、製造業では64.0%です。

ハラスメントの内容
ハラスメントの内容についてはJob総研『2025年 ハラスメント実態調査 〜被害・職場対策編〜』に記載があります。
この調査によれば「個人を否定するような言動」が55.9%で最多となり、次いで「能力を否定するような言動」が51.5%、「精神的な攻撃や嫌がらせ」が41.5%と報告されました。被害後は「誰にも相談していない」(27.4%)が最多で、パワハラ被害を周囲に相談することの難しさが読み取れます。

「パワハラが発生しやすい職場」3つの特徴
パワハラはさまざまな業種・職種で発生しており、今や社会問題として広く認識されています。パワハラ発生の背景には、職場の構造や従業員の行動に伴う職場環境の悪化が関係しています。
パワハラが発生しやすい職場の特徴を3つお伝えします。

(1)コミュニケーション不足
コミュニケーション不足は、パワハラが発生する大きな要因です。
コミュニケーションが不足する原因として、リモートワークの増加や、働き方の選択肢の増加などが挙げられます。上司と部下の直接的なコミュニケーションが減ることで、言葉の行き違いや誤解が生じやすくなります。その結果、パワハラにつながるケースが増加する可能性があるのです。
(2)ストレスの多い職場環境
ストレスの多い職場環境も、パワハラの発生に大きく影響します。
たとえば、上司が過大なノルマを課せられている職場では、上司がノルマ達成に必死になり、部下に対して過剰に厳しく接することがあります。その結果、攻撃的な態度や不適切な指導となり、パワハラにつながることがあります。
また、業務量に対して人員が不足している職場でも同様です。強制ではないにしても、人手不足により長時間労働が横行し、それが従業員にストレスを与え、業務や責任の押し付け合いがパワハラに発展することがあります。
(3)明確なルールやマニュアルの欠如
業務に対して明確なルールやマニュアルが整備されていないことも、パワハラが発生する要因の一つです。
ルールやマニュアルが整備されていない場合、業務判断が上司の裁量に委ねられることになり、上司の好みによってルールが決められることが常態化する恐れがあります。その結果、不公平な判断が繰り返され、パワハラや嫌がらせが起こりやすくなるのです。
上司の一存でルールが決まる企業では、職場環境が不公平になりやすく、いじめや嫌がらせが広がる可能性があります。
企業が実施すべき5つのパワハラ防止措置
パワハラを防ぎ、従業員が安心して働ける環境を提供するためには、企業が事前に防止措置を講じることが不可欠です。ここでは、企業が実施すべき主なパワハラ対策を紹介します。

(1)社内規定の整備
パワハラを未然に防ぐためには、経営者がパワハラに対する明確な姿勢を示し、従業員を守る意思を示すことが大切です。パワハラに関する社内規定を作成することで現場の迷いをなくし、パワハラの発生防止に対する一貫した判断ができるようになります。
社内規定には、パワハラの定義や禁止事項を明文化し、就業規則には加害行為に対する罰則まで明記しましょう。就業規則のハラスメント関連規定を作成した後は、内容に問題ないか弁護士に監修を依頼します。
(2)相談窓口の設置
企業には、パワハラ防止を目的とした相談窓口の設置が義務付けられています。相談窓口を設置することで、被害の抱え込みを防ぎ、企業全体でパワハラ防止に取り組んでいる姿勢を示せます。
また、従業員の声を集めることにより、パワハラが疑われる行為を早期に発見する手助けにもなります。気軽に利用できるよう、匿名性が担保された仕組みの導入も検討しましょう。
出典:厚生労働省|労働施策総合推進法に基づく「パワーハラスメント防止措置」が中小企業の事業主にも義務化されます!
(3)経営トップによるメッセージ発信
経営者が、企業としてパワハラを許さない姿勢を明確に打ち出すことが、パワハラの防止につながります。パワハラに対する方針が明確になれば、従業員のコンプライアンス意識が高まり、企業全体でパワハラ予防が進むことも期待されます。
経営者の方針は、社内報、一斉メール、社内ポータルサイト、掲示板など、形として残る方法で伝えましょう。その際、単なる事務連絡にならず、経営者からの強いメッセージであることを現場に示すことが大切です。
(4)現場の実態把握や日々の啓蒙
厚生労働省のマニュアルでは、現場で起きているパワハラの実態把握を推奨しています。

パワハラ防止の理念を掲げるだけでなく、現場で実践されているかどうかを定期的にチェックし、必要に応じて施策を見直すことが目的です。
実態把握をする方法には、主にアンケートや日常的な現場の確認が使われます。日常的に職場の雰囲気を確認することで、働きやすい環境が保たれているかどうかを確認できます。
現場の状況を多角的に確認し、課題を早期に発見することで、パワハラを未然に防ぐことが可能です。また、経営トップの監視の目が常に近くにあること自体がパワハラの抑止になります。
(5)社内研修の実施
パワハラ防止に必要な知識を深めるためには、社内研修の実施も欠かせません。とくに、パワハラ防止をテーマにした研修を定期的に実施することで、パワハラの定義や具体的な事例を理解する機会になり、予防効果も期待できます。
管理職と一般社員で、それぞれの職位に応じた研修内容を分けることが有効です。具体的には、以下のような内容が挙げられます。
- 管理職:指導・教育とパワハラの境界線を正しく理解し、上長としてのアンガーマネジメントや部下が意見を言いやすい環境づくり
- 一般社員:ハラスメントの予兆を察知し、自分が被害者にならないセルフケアの方法や、過度な抱え込みをしないマインドセット
パワハラ発生時の対応方法
パワハラが発生した際、企業には迅速かつ的確な対応が求められます。とくに以下の(2)〜(4)は、法的に義務付けられた「事後の迅速かつ適切な対応」にあたります。

(1)弁護士への相談
従業員からパワハラを主張された場合は、早期に専門の弁護士へ相談することが大切です。
裁判上の見通しを前提とした適切なアドバイスを受けられるだけでなく、相手方本人や労働組合、代理弁護士との交渉を窓口として一任できるため、自社の法務負担を大幅に軽減できます。また、法的な視点からの再発防止策や予防策の策定も期待できます。
(2)事実関係の迅速かつ正確な確認
相談窓口に申告があった際、企業には事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認する義務があります。
被害者のみならず、行為者(加害者)や周囲の従業員に対しても中立的な立場でヒアリングし、客観的な事実を整理することが求められます。
(3)被害者に対する配慮のための措置
パワハラの事実が確認された場合には、被害を受けた労働者に対して速やかに適正な配慮措置を講じなければなりません。
メンタル面での心理的ケアに加え、行為者との接触を避けるための配置転換や就業環境の修復を行ない、被害者が心身の安全を確保したうえで業務に専念できる体制を整える必要があります。
(4)行為者に対する適正な措置
事実関係にもとづき、行為者に対しても適正な措置を講じることが義務付けられています。
就業規則の懲戒規定に則り厳正に処分するとともに、自身の言動の問題点を深く認識させ、将来的な再発を防ぐための是正指導を徹底することが、組織運営上の重要な責任となります。
(5)再発防止への取り組み
個別の事案対応だけで終わらせず、現行の施策を検証・改善することが不可欠です。高度化するコンプライアンス基準にもとづき、事案を教訓とした社内ルールの刷新や管理職研修の強化など、組織全体のガバナンスを高める継続的な取り組みが求められます。
再発防止に向けて検討するべき内容は、以下を参考にしてみてください。
再発防止に向けた施策検討の例
- 対策後の職場環境は、相談者にとって安全で快適になっているか?
- 行為者が同様の問題を起こす恐れはないか?
- 新たな行為者が発生する職場環境になっていないか?
- パワーハラスメントに該当する事案の発生時に、管理職に注意喚起をしているか?
- 各事案の原因と対策について、社内ルールや研修、トップからのメッセージに反映させるべきポイントは何か?
参考:厚生労働省|職場におけるハラスメント対策研修(人事労務担当者等向け:対応検討編p24)
パワハラ防止対策の徹底が「well-woking」な職場環境の土台に
パワハラは個人の尊厳を傷つけるだけでなく、企業の社会的信用を失墜させ、健全な経営を阻害する重大なリスクです。
法的義務にもとづきパワハラのない職場を整備することは、単なるリスク回避に留まりません。従業員一人ひとりが安心して挑戦し、日々の業務にやりがいを感じながら自律的に成長できる「well-woking」な環境の実現のため、不可欠な土台になります。
本稿をもとにパワハラの定義や種類を正しく理解し、防止に向けた取り組みができるように準備を進めていきましょう。







