SlackにChatWork、相次ぐビジネスチャットのダウン・・・緊急連絡網に「LINE」等を指定して大丈夫?
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こんにちは、弁護士の星野 宏明です。
先日、ビジネスチャットツール「Slack」そして「ChatWork」と相次いでサーバダウンし、同サービスを利用する会社の間で騒然となりました(*1)。
メインの連絡・情報共有ツールとして頻繁に使用している会社にとっては、既にインフラと化しており混乱しかねませんし、実際にSNS上でどよめきが見られました。
やはり緊急連絡網を確保するのは会社にとって重要ですが、そのような際に「LINE」等の、私的利用の色合いが強いコミュニケーションツールを緊急連絡先として控え、連絡網に指定することは問題ないのでしょうか?
プライベートの連絡先を把握することは「法律上問題ない」
近年、様々な通信ツールの登場で、社内の連絡あるいは会社と従業員の連絡手段が多様化していますが、業務上、会社が従業員の連絡先を把握することは基本的に問題なく、緊急時などの必要性も認められるでしょう。
緊急時だけに限らず、会社が従業員との連絡に使用する通信ツールとして何を選択するかは、法律上特段規制がありません。
したがって、私的利用の色合いが強いコミュニケーションツールを緊急連絡先とすることも法律上は何ら問題ありません。
ただし「勤務時間としての拘束性」に注意
ただし、会社が従業員との連絡に使用する通信ツールとして何を選択するかが自由だとしても、勤務時間外の従業員の自由を拘束することまではできません。
特に“既読”がつく「LINE」などでは、会社や上司から業務連絡があった場合、「迅速に返信しなければ」という状況もあるでしょう。
勤務時間内であれば問題ありませんが、休日や勤務時間外に返信を求められることは、業務上の指揮命令が続いており、自由な休日や時間外と評価されないこともあります。
その場合は、残業代や休日出勤手当などの支給が必要となることもあります。
したがって、私的なコミュニケーションツールを連絡手段として使用する場合は、特に業務時間外の応答を強制しないよう、会社側として注意が必要です。
強制した場合、違法となる恐れも
ただし、緊急時の連絡先としてそれを登録するかどうかは、基本的には従業員の自由です。
そのため、会社として説得することはできても、最終的に「LINE」などの私的利用の色合いが強いツールを従業員が登録するかどうか、従業員の意思を尊重する必要があります。
迅速かつ気軽な連絡手段のひとつであるビジネスチャットですが、オンラインサービスである以上、今回のようにダウンすることもあります。
緊急時の代替連絡網として、「LINE」などを緊急連絡先とすることは法律上可能であっても、会社としてその登録を強制することがないよう、注意が必要です。