「馬鹿野郎!」はパワハラ? 難しいパワハラの定義とは
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社長や管理職などのマネジメントの立場にある人は、成績が振るわなかったり、ミスが続いたりする部下を叱咤激励するために、時に厳しい言葉を用いることもあるかと思います。
しかし、指導の仕方を一歩間違えれば、部下から「パワハラを受けた」と訴えられかねません。
そこで、今回は、「暴力を伴わなければOK?」、「『バカ』と言ったら即パワハラになってしまうのか?」などの疑問につき、具体例を挙げながらどこからがパワハラになるのかを解説したいと思います。
暴力を振るわなくてもパワハラになる
直感的・常識的に考えれば、勤務時間中に上司が部下に対して殴る蹴るなどの暴力を振るえばパワハラに当たることはおわかりいただけると思います。
しかし、パワハラとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいますので、暴力だけでなく、正当な職務行為の範囲を超えた暴言、罵倒、人格攻撃に当たる悪口・軽口その他もパワハラとして違法となります。
実際の裁判例ではどうなっている?
裁判例においては、「ばかやろう」、「三浪して大学に入ったにもかかわらず、そんなことしかできないのか」などと罵ったパワハラ行為が違法であると認定された事案(東京地裁平成21年1月16日労判988号91頁)や、「ばかやろう」、「給料泥棒」、「責任を取れ」などと叱責した上で「給料をもらっていながら仕事をしていませんでした」という文言入りの始末書を提出させたこと等が違法であると認定された事案(東京地裁平成22年7月27日労判1016号35頁)があります。
単に一回だけ「ばかやろう」と罵るだけで直ちにパワハラに当たるとは言えませんが、一般的に妥当な方法と程度といえる注意指導の範囲を超えたときはパワハラとして違法の認定を受けることになります。
指導する側は教育だからと思っていても、受け取る側もそう思うとは限りません。非常に曖昧ではありますが、指導の仕方にも気を配るべきでしょう。