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社労士が解説!今月のHRニュース2020年8月編(雇用調整助成金、労災保険法の改正、最低賃金引き上げなど)

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こんにちは。特定社会保険労務士の榊です。

8月は猛暑日が続きましたが、読者の皆様は体調はいかがでしょうか。マスクを着用しながらの生活なので、この夏は暑さが一層厳しかったのではないかと思います。

本稿では、「今月のHRニュース」として、2020年8月度の人事労務に関連したトピックを社労士目線で解説いたします。

※2020年8月27日時点での情報を元に執筆した記事ですので、情報が変更されている可能性があります。

2020年8月のトピックの振り返り

(1)雇用調整助成金ガイドブック、FAQの改訂

8月1日付けで「雇用調整助成金ガイドブック」および「雇用調整助成金FAQ」が改訂されています。

令和2年8月1日に、雇用保険の基本手当日額の最高額が8,330円から8,370円に引き上げられました。

この額が雇用調整助成金の本来の1人1日当たりの上限額となるので、それを踏まえての改訂なのですが、緊急対応期間は上限額が15,000円に引き上げられているため、今回の改訂は実務上の申請方法や支給額に影響は無いと考えて差し支えありません。

なお、「雇用調整助成金FAQ」は、今回の改訂を機に他の部分も追記等がされておりますので、必要に応じて厚生労働省ホームページを参照をするようにしてください。

(2)雇用調整助成金の緊急対応期間延長

新型コロナウイルスの影響で休業等を実施した企業が、従業員の雇用を維持し、生活を守るために休業手当を支払った場合、その休業手当の一部または全部を国が企業に対して補填するのが「雇用調整助成金」です。

令和2年4月1日から令和2年9月30日までの期間は、コロナ禍に苦しむ企業に対して円滑に手厚く雇用調整助成金を支給するため、支給額や支給日数の上限緩和、支給申請書類の簡素化など、「緊急対応期間」として、様々な優遇措置がとられています。

この「緊急対応期間」があと1ヶ月ほどで終わりになりますが、コロナ禍はまだまだ沈静化の兆しはありません。そこで、政府内では緊急対応期間の延長が検討され、12月31日までの緊急対応期間の延長が決まりました。

コロナ禍の影響を受けている企業は、引き続き雇用調整助成金を活用して従業員の雇用と生活を守るようにしてください。

また、6月30日までの雇用調整助成金の申請期限は従来8月31日までとされていましたが、この申請期限が9月30日まで延長されていることも合わせてご確認ください。

(3)労働保険の年度更新の期限

労働保険料の年度更新は、例年では6月1日から7月10日までが申告書提出および保険料納付の期限となっています。

今年は、この提出および納付の期限が8月31日までに延長されていますが、いよいよ提出期限となりました。まだ対応が完了していない会社は急ぎましょう。

(4)算定基礎届による保険料の変更

算定基礎届については提出期限の延長は無く、例年通り7月1日~7月10日が提出期限でした。

期限までに算定基礎届を提出した場合は、そろそろ日本年金機構や健康保険組合から「標準報酬の決定通知書」が届いている時期だと思います。

算定基礎届による社会保険料の変更は、9月分の保険料から適用がされます。給与計算ソフトの社会保険料の設定を、決定通知書で示された新しい保険料の等級に変更してください。

ただし、9月分の社会保険料は、10月31日が納期限なので、通常は10月に支払日がある給与から9月分の社会保険料を控除する形になっています。9月に支払日がある給与から、フライングで新しい等級に変更してしまわないよう気を付けてください。

チェックしておきたい主なHRトピック

(1)令和2年度の最低賃金の引き上げ

各都道府県で、令和2年度の最低賃金の引き上げ額が決定しつつあります。

今年度は、新型コロナウイルスの影響で企業も非常に厳しい状況に置かれていますので、どの都道府県も、最低賃金は据え置き、または数円程度の上昇にとどまるでしょう。

既に見通しが発表されている都道府県では、東京(1,013円)と大阪(964円)は据え置きです。奈良県は837円から838円に1円の引き上げ幅ということです。

引き上げ後の最低賃金が適用開始となるのは10月1日(都道府県によっては、その数日後)からです。今年度は引き上げ額が小幅とはいえ、新しい最低賃金を割ってしまう従業員がいないかのチェックや、最低賃金を割ってしまう従業員に対する昇給検討などは9月中に完了させ、10月の最低賃金引き上げの施行日を迎えられるようにしてください。

(2)ダブルワーク者に対する労災保険法の改正

9月1日より労働者災害補償保険法の改正が施行されます。今回の改正では、ダブルワーク者に対する労災保険の適用が手厚くなります。

従来は、ダブルワーク者が業務上や通勤途中の災害に遭遇した場合、休業補償給付などの額は労災が発生したほうの会社からの給与のみを根拠として決定されていました。

たとえば、本業の会社で正社員として働いている人が夜間にコンビニのアルバイトをしていて、コンビニのほうで労災に遭遇し、労務不能となった場合の休業手当の額は、コンビニのみの給与水準に応じた額となります。本業の会社は無給での欠勤となるため、労働者は大幅な収入減に直面することとなってしまいます。

この点が今回の法改正の対象となり、2020年9月1日以降は、本業の会社で労災に遭遇した場合も副業の会社で労災に遭遇した場合も、双方の会社からの給与を合算した額を基準にして休業補償給付が受けられるようになりました。

また、これまでは精神疾患などメンタル面の労災が発生した場合、ダブルワーク者に関しては責任の所在があいまいになりがちでした。今回の法改正では、直接的に精神疾患のきっかけとなった勤務先のみの事情では労災認定が下りない場合、他の勤務先でのストレスや残業時間も労災認定の審査で通算できるようになりました。

副業解禁の流れやコロナ禍の影響を受けてダブルワークが珍しいことでは無くなっている現在、大変有意義な法改正だと言えるでしょう。

詳しくは、厚生労働省のリーフレット「複数の会社等に雇用されている労働者の方々への 労災保険給付が変わります」もあわせてご参照ください。

(3)防災週間

9月1日は防災の日です。防災の日は、今から約100年前、大正12年9月1日に発生した関東大震災に由来して定められました。この9月1日を含む1週間が防災週間として定められ、令和2年度の防災週間は8月30日から9月5日までです。

例年は避難訓練などを実施している会社も多いと思いますが、新型コロナウイルスの影響で今年は縮小傾向になるでしょう。

しかしながら、7月度の九州や中部地方を中心とした大雨による被害が発生したように、災害は新型コロナウイルスに関わらず発生します。

勤務時間中に地震や火事が発生した場合、新型コロナウイルスの感染リスクを最大限抑えながらどのように安全に非難するのかの検討や、在宅勤務時に地震が発生した場合の安否確認の手順整備など、withコロナ時代の防災についてこの機会に考えてみてはいかがでしょうか。

人事労務ホットな小話

雇用調整助成金の申請や、算定基礎届・年度更新なども一段落し、そろそろ人事労務部門が「攻め」に転じて良い時期かもしれませんね。

たとえば、withコロナ時代には、休業や在宅勤務でダブルワーク者が増えると思いますので、社内で副業の許可基準を明確にしたり、従業員の副業を管理する仕組みを整えたりといった環境整備は、労使双方にとって望ましいでしょう。

また、上述したwithコロナ時代を前提とした社内の危機管理体制の構築やアップデートも、いつどのような災害が発生するか分からないので、人事労務部門としては早め早めに対応をしておきたい項目です。

まとめ

withコロナ時代は、働き方や価値観が大きく変わっていきます。

11月以降になってくると、年末調整などで慌ただしくなってきますので、人事労務業務が落ち着く9月・10月のうちに社内制度や社内環境の変革を進めていきたいですね。

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