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【治療と仕事の両立支援】4月に間に合う厚労省テンプレートで整える体制・規程・運用フロー

公開日
目次

約60%の労働者が健康診断で異常所見を受ける今、2026年4月施行の法改正で治療と仕事の両立支援が努力義務化されます。「何から始めればいいか」という担当者向けに、厚生労働省の公式テンプレートを活用した最短4ステップを解説します。

「治療と仕事の両立支援」法改正のポイント

日本における男女間の賃金格差は、長期的に見ると縮小傾向にありますが、ほかの先進国と比較すると依然として大きいといわれています。

何が変わるのか

  • 労働施策総合推進法改正で、治療と仕事の両立支援が努力義務化(2026年4月施行)
  • 対象:すべての企業(規模問わず)
  • 企業は両立支援のための体制整備・制度整備が求められる

労働施策総合推進法の改正により、2026年4月から「治療と仕事の両立支援」が努力義務化されます。対象は規模を問わずすべての企業です。

企業は、従業員が病気の治療と仕事を両立できるよう、相談体制の構築や社内制度の整備など、具体的な対応が求められるようになります。

いつまでに何をすればいいか

対応は大きく2つの段階に分けて考えましょう。

  1. 2026年4月まで
    • 相談窓口の設置や就業規則の改定など、ベースとなる「社内体制・制度」を整備しておく。
  2. 相談があった時点
    • 実際に従業員から申し出があった際に、個別の「支援プラン」を作成し、運用を開始する。

まずは「制度を整備しておく」、そして「必要になったら動く」という構えで準備を進めれば問題ありません。

厚生労働省テンプレートで最短準備

両立支援の体制を整えるにあたり、自社でゼロから書類や規程を作成する必要はありません。

厚生労働省が公式のテンプレートやガイドラインを無料で提供しています。就業規則の条文例から、医師とのやり取りに使う様式まで、すぐ実務に使える資料が揃っているため、これらを活用すれば最短での体制整備が可能です。

、2026年の懸念材料として「人手不足」をあげた企業は44.5%にのぼり、多くの企業が人手不足を大きな課題として認識していることが明らかになっています。

出典:「治療と仕事の両立支援ナビ」ダウンロードページ(厚生労働省)

テンプレート5種類の全体像

テンプレート名

使うタイミング

使う人

内容

ダウンロード

(1)勤務情報提供書

従業員から相談後

人事→主治医

業務内容・勤務時間・負荷を主治医に伝える

Word版(厚生労働省DLページ)

(2)主治医意見書

勤務情報提供後

主治医→企業

就業継続の可否・必要な配慮を記載

Word版(厚生労働省DLページ)

(3)支援プラン手引き

プラン作成時

人事(参考資料)

プラン作成のポイント・判断基準

PDF版(厚生労働省DLページ)※21P

(4)支援プラン様式

医師意見取得後

人事→従業員

具体的な配慮内容・期間・見直し時期

Word版(厚生労働省DLページ)

(5)疾患別留意事項

随時参考

人事(参考資料)

がん・脳卒中等の特性・配慮ポイント

PDF版(厚生労働省ページ)※27P

出典:「治療と仕事の両立支援ナビ」ダウンロードページ(厚生労働省)

厚生労働省が提供する資料には、治療と仕事の両立支援をスムーズに進めるための実践的なツールが揃っています。実際の支援フローにおいて、上記の表に挙げた5種類のテンプレートは、一連の流れに沿って活用できます。

(1)勤務情報提供書

まず、従業員から両立支援の相談を受けた際、起点となるのが「勤務情報提供書」です。人事担当者はこの様式を使い、本人の業務内容や労働時間、身体的な負荷などの情報を主治医に正確に伝えます。

(2)主治医意見書

次に、この提供書を受け取った主治医は「主治医意見書」を用いて、医学的な見地から就業継続の可否や、業務上で必要となる具体的な配慮事項を企業へ返答します。

(3)支援プラン手引き

主治医の意見が得られたら、人事担当者は具体的な支援内容の策定に入ります。その際、判断基準や作成のポイントをまとめた「支援プラン手引き」を参考資料として活用します。

(4)支援プラン様式

方針が固まったら、「支援プラン様式」を用いて、具体的な就業上の措置(時短勤務や作業転換など)や期間、次回の見直し時期などを明記した計画書を作成し、本人や上司と合意形成を実施します。

(5)疾患別留意事項

さらに、プラン作成時や日々の運用中に役立つのが「疾患別留意事項」です。がんや脳卒中など、主要な疾患ごとの特性や配慮すべきポイントがまとめられており、病気への理解を深める参考資料となります。

これらをステップに沿って順番に活用することで、専門知識に不安がある担当者でも、迷わず的確に支援できます。

「治療と仕事の両立支援」最短整備の4ステップ

両立支援の窓口開設・従業員への周知、就業規則・制度の整備、支援プランの作成フロー確立、運用開始と相談先の確保の順に整備しましょう

ステップ(1):両立支援の窓口開設・従業員への周知

やるべきこと

まずは、従業員が安心して相談できる窓口を設置し、その存在を全従業員に周知します。

  1. 担当者を決める
    • 人事や総務部門から1〜2名を「両立支援担当」として任命します。
  2. 相談窓口を設置
    • 専用のメールアドレスや、社内ポータル上の相談フォームを用意しましょう。
  3. 社内周知
    • 「病気になっても働き続けられるよう、困ったときは相談できる」というメッセージを、全従業員に向けて発信します。

具体的なアクション例

実際に取り組んでいる企業の例が厚生労働省の「会社の治療と仕事の両立支援チェック30」に掲載されているので、あわせて参考にしてください。

  • 健康診断の結果を配布する際、両立支援の案内リーフレットを同封する
  • 社内イントラネットのトップページなど、目立つ場所に相談窓口の連絡先を常設する
  • 管理職向けに、厚生労働省の研修スライドを活用した30分程度の研修を実施する
  • 新入社員研修のプログラム内で制度を紹介する など

出典:会社の治療と仕事の両立支援チェック30(厚生労働省)

活用する資料

ステップ(2):就業規則・制度の整備

やるべきこと

就業規則に両立支援に関する条文を追加し、実際に利用できる制度を明確にします。

  1. 就業規則への条文追加
    • 会社として両立支援に取り組む姿勢と、その根拠を就業規則に盛り込みます。
  2. 利用可能な制度の整理
    • 時短勤務、時差出勤、時間単位の有給休暇、テレワーク、通院時の配慮など、既存の制度で両立支援に活用できるものをリストアップしておきます。

規定例の活用法

厚生労働省が提供する「両立支援に関する規定例」には、そのまま自社の規則に組み込める条文例が用意されています。

(治療と仕事の両立支援) 

第○条 会社は、私傷病により療養が必要な従業員が、治療と仕事を両立できるよう、本人の申出に基づき、必要な就業上の措置を講じるものとする。

 1.前項の措置は、主治医の意見書等を踏まえて決定する。

このように、ひな形をコピー&ペーストし、自社の状況にあわせて微調整するだけで、法改正に対応した規程をスムーズに整備できます。

使う資料

ステップ(3):支援プランの作成フロー確立

やるべきこと

実際に従業員から相談があった際に、どのような手順で支援するか、対応フローを確立しておきます。 

基本は「相談」→「勤務情報提供」→「医師意見取得」→「プラン作成」→「実施」→「見直し」という流れです。また、本人の同意なく病名を共有しないなど、プライバシー保護の方針もこの段階で明確に定めておきましょう。

テンプレート活用の実務フロー:(ケース例)営業職の従業員ががん治療を開始する場合

  1. 相談受付

    • 従業員から「がん治療が必要になったが、仕事を続けたい」と申し出があった。
  2. (1)勤務情報提供書を使用

人事が「勤務情報提供書」に以下を記載します。

  • 職種:営業職
  • 勤務時間:9:00〜18:00(実働8時間)
  • 業務内容:顧客訪問(車で移動、1日3〜4件)、PC作業
  • 身体的負荷:中程度(長時間運転あり) 

これを本人経由で主治医に提出してもらいます。

  1. (2)主治医意見書を使用

 主治医が「主治医意見書」に医学的な見地からの意見を記入して返送します。

 (例:「就業継続は可能。ただし治療開始後2か月は週1回の通院が必要。長時間の運転は30分以内に制限することが望ましい」)

  1. (4)支援プラン様式を使用 

人事が主治医の意見をもとに「両立支援プラン」を作成します。

  • 配慮内容:通院日は毎週水曜。午後を休暇とする。訪問エリアを近隣に限定し、運転は片道30分以内とする。
  • 期間:3か月
  • 見直し時期:3か月後、または症状に変化があったとき、この内容で本人・上司と面談し、合意形成をする。

  1. プラン実施
    • 上司には「水曜午後は不在になること」「近隣担当に変更すること」など、業務上必要な配慮事項のみを伝え、病名などの機微な情報は本人の同意がない限り伝えません。
    • 遠方の顧客はほかのメンバーが担当するなど、業務分担を調整します。
  2. 定期見直し
    • 設定した3か月後に、本人および主治医と状況を確認します。必要に応じてプランを更新するか、通常勤務へ復帰するかを判断します。

疾患別の配慮ポイント

厚生労働省の「疾患別留意事項(テンプレート⑤)」には、がん、脳卒中、メンタルヘルスなど、主要な疾患ごとの特性や配慮のポイントがまとめられています。支援プランを作成する際の参考資料となります。

ステップ(4):運用開始と相談先の確保

運用時の3つのポイント

実際の運用では、以下の3点にとくに注意しましょう。

  1. プライバシー保護の徹底 
    • 本人の同意なしに病名を上司や同僚に共有してはいけません。
    • 現場の上司には、通院日や業務制限といった「必要な配慮内容」だけを伝えるのが原則です。
  2. 期間限定の配慮
    • 配慮事項には「3か月」などの期限を設定し、定期的に見直しを行ないましょう。
    • 無期限の配慮は、本人にとっても周囲のメンバーにとっても負担になる可能性があります。
  3. チーム全体での業務配分の調整 

    • 特定の従業員への配慮により、ほかのメンバーへの負担が過大にならないよう、チーム全体で業務を再配分し、不公平感が出ないようにケアすることが重要です。

困ったときの相談先・確認資料

対応に迷った場合の相談先や参考となるものには以下のようなものがあります。

「公式テンプレート」の活用で漏れなく体制構築しよう

治療と仕事の両立支援は、2026年4月の努力義務化に向けて準備が不可欠ですが、厚生労働省の無料テンプレートを活用すれば、ゼロから制度を構築する手間を省けます。

まずは2026年4月までに「ステップ1(社内体制の整備)」と「ステップ2(就業規則の整備)」を完了させましょう。そして、実際に相談があった際は「ステップ3」のフローに沿ってテンプレートを活用し、「ステップ4」のポイントに注意しながら運用を進めてみてください。

無理なく、確実な両立支援体制を築いていきましょう。

お役立ち資料

人事・労務法改正カレンダー2026

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