企業が「朝活」「朝型勤務」に取り組む際、労務上の注意点はあるの?
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個人だけでなく企業でも注目される「朝活」
さて、2010年代以降注目されるようになった「朝活」。
その言葉通り、早起きして朝のスッキリとした時間帯に仕事や趣味などに取り組み、1日を有効に使おうという取り組みです。
個人で朝活セミナーに参加したり、カフェで勉強したり、ランニングに励んだりといったことはもちろん、最近では企業でもこの「朝活」を取り入れるケースが増えてきているようです。
有名なところでは、伊藤忠商事が、早朝5時から8時の勤務に対して、深夜勤務と同様の割増賃金を支給する一方、20時以降の残業を原則禁止する「朝型勤務」を推奨しています(*1)。
実際に朝型勤務を実践している従業員からは、「朝のすっきりした頭で仕事に集中できる」「残業が減り、自分の趣味や、家族との時間が増えた」など生産性の向上だけでなく、ワークライフバランスの観点からも概ね好評なようです。
「朝活」の労務上の注意点
さて、朝が得意な人にとっては良いことづくめにも見える「朝活」や「朝型勤務」。しかしながら、労務の観点から見るといくつか注意する点があります。
まず、通常ならば9時始業のところを7時始業にし、18時終業のところを16時終業といったように、所定の勤務時間をそのままスライドさせている場合は問題ないのですが、所定の勤務時間はそのままで、さらに早朝勤務をさせる場合は、早朝勤務といえど“残業扱い”になりますので、+25パーセントの割増残業代の支払いが必要となります。
また、朝早く仕事を始めたところで、夜になってまた新しい仕事が入ってきて、結局いつもと同じように夜の残業も発生するというようなこととなれば、従業員の負担増加を招くばかりで、「朝活」導入の意味がありません。「朝活」「朝型勤務」を成功させるためには、伊藤忠商事の例のように「夜の残業は原則禁止」などとして、会社が早く帰宅することを従業員に強く促す必要があります。
その他の問題としては、小さな子供を抱えている母親などは、早朝勤務したくとも、そんなに早くから保育園が子供を預かってくれないなどの問題もあるでしょうし、業種によっては、夕方以降の社外とのやりとりが必須という業種もあるでしょう。
「朝活」を効果測定することも可能な時代に?
以上、書いてきましたように全ての業種や、従業員に「朝活」を強制するのは難しいですし、個人によって差もありますが、生産性の向上に繋がるひとつの手がかりであり、働き方改革に取り組む良いきっかけにもなるでしょう。
朝方勤務を導入できそうな部署などで、まずは実験的に導入を進めてみてもいいかもしれませんね。最近では、ウェアラブルデバイスを用いることで、時間帯別・場所別といった条件別に生産性を分析するIoTツールも出てきており、人々の働き方を定量的に分析できる時代が到来しているようです。
ということで私も春になったら「朝活」に取り組んで見ようかな……。(春になったら、とか言っている時点で多分やらないんですけど)
【参照】
*1:「朝型勤務」制度の導入 – 伊藤忠商事