働き方改革法施行後も、いまだ4割強が知らない「36協定」とは?
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こんにちは、社会保険労務士の吉田 崇です。
さて、2019年4月より本格的に始動した働き方改革法ですが、皆さんは実感として変化を感じておられますでしょうか。例えば、有給5日の取得義務化などは実際に影響を感じておられる方も多いかもしれません。
一方、今回の働き方改革の大きな柱の一つである「残業時間の上限規制」についてはいかがでしょうか? 実はこの上限規制の適用は、中小企業については2020年の4月まで猶予期間が設けられていることもあり、今のところ「変わった」という実感がない方も多いかもしれません。
働き方改革法施行も「36協定」の認知率は横ばい
さて、この「残業時間の上限規制」に大きく関わってくるのが「36協定」と呼ばれる労使協定です。私も以前こちらで「36協定」に関する記事を書かせていただきました。
連合の調査によると、労働者の36協定の2017年当時の認知率は56.5%でした。
2年が経過し、2019年4月には働き方改革法も施行されましたが、認知率は55.3%と横ばいであり、依然として4割強の労働者が知らないようです。
そもそも「36協定」とは?
そもそも「36協定」とはどういうものかというと、正式名称を「時間外・休日労働に関する協定届」といい、労働基準法36条に基づく労使協定であるため、一般的に「36協定」と呼ばれています。
「36協定」は会社の規模に関わらず、従業員に残業させる可能性がある場合や、法定休日に出勤させる可能性がある事業所は、必ず労働基準監督署に提出する必要がある書類です。
働き方改革法による「36協定」の変化は?
では、今回の働き方改革法で36協定は具体的にどう変わったかのでしょう。
まず、大原則として残業時間の上限は、月45時間、年360時間以内と定められています。しかし、36協定には「特別条項」があり、所定欄にその理由と延長時間を付記することで、年間6回(6ヶ月)までであれば、月45時間を超えた残業が可能となります。
従来の36協定では、この抜け道たる「特別条項」に残業時間の上限規制がなく、青天井で残業させることも現実的には可能だったのです。
一方、今回の改正では、この「特別条項」に以下のような上限規制が加わりました。
- 年720時間以内
- 複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
(「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」が全て1ヶ月当たり80時間以内) - 月100時間未満(休日労働を含む)
上記に違反した場合には、罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科される可能性があります。
36協定の範囲内だろうと安全配慮義務を忘れずに
さて、36協定の基礎知識と今回の改正でどこが変わったのかについて解説しましたが、大前提としまして、36協定の範囲内の時間外労働であっても使用者は労働者に対する安全配慮義務を免れるわけではありません。
労働時間が長くなればなるほど過労死との関連性が強まることは当然で、1週間あたり40時間を超える労働時間が月100時間または2〜6ヶ月平均で80時間を超える場合には、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いとされていることに留意しなければなりません。
「36協定をきちんと結んでいるから、36協定の範囲内だから、残業させても無問題」というわけではないことにご注意ください。
(了)