「従業員エンゲージメント」の向上が企業競争力強化に欠かせないワケ


こんにちは、特定社会保険労務士の榊 裕葵です。

働き方改革や人づくり革命が政府主導で進む中で、企業競争力の源泉のひとつである人材力を高めるべく、「従業員エンゲージメント」の注目度も高まっています。

経営や人事に携わる上で、この「従業員エンゲージメント」というキーワードをどのように捉え、どのようなことに向き合えばよいのかについて、解説していきたいと思います。

「従業員満足度」という言葉を振り返っておきましょう

ところで、本題に入る前に読者の皆様にご質問なのですが、皆様は「従業員満足度」という言葉を聞いたことがありますか?

おそらく、企業経営や人事労務に携わる方ならば、どこかで一度は耳にしたことがあるのではないかと思います。

英語標記「Employee Satisfaction」の頭文字をとって「ES」と訳されることもあり、顧客満足度を表す「CS」とセットで使われているのを見たことがある方も多いかと思います。

この「従業員満足度」という言葉は、より具体的に言えば、「企業は、従業員に対して働きやすい待遇や福利厚生・職場環境を用意することなどを通じ、従業員のモチベーションを高めたり離職率を下げたりすることで、企業の競争力の強化につなげていくべきである」という意味で使われています。

これを踏まえた上で、ここからは本論の「従業員エンゲージメント」に入っていきたいと思います。

「従業員エンゲージメント」とは?

さて、従業員エンゲージメントとは、従業員満足度の延長線上にある概念なのでしょうか、それとも従業員満足度と従業員エンゲージメントは全く別の概念なのでしょうか?

そのことを考えるにあたり、まずは「エンゲージメント」という言葉の意味について確認をしておきたいと思います。

エンゲージメント(Engagement)には、「約束」や「契約」といったニュアンスがあります。婚約指輪のことを「エンゲージリング」と言いますが、そのエンゲージも同じニュアンスです。

婚約の場合で例えると分かりやすいので、これを基に話をすると、婚約というのは、お互いが結婚を前提に、支え合いたいという強い相思相愛の気持ちがあるから成立するものです。

従業員エンゲージメントも婚約と同じで、「会社と従業員の相思相愛度をいかに高めていくか」という文脈で用いられるようになった言葉です。

「従業員満足度」と「従業員エンゲージメント」の関係

「従業員満足度」と「従業員エンゲージメント」は、どちらも従業員の定着やモチベーションアップを目的にしているという点では同じなのですが、従業員満足度がどちらかといえば物質的なアプローチが中心であることに対し、従業員エンゲージメントは精神的なアプローチが中心になるというところに大きな相違点があります。

働きやすさを示す「従業員満足度」

従業員満足度の場合は、前述したように、会社が金銭的な待遇や福利厚生などによって左右される、いわゆる「働きやすさ」ということができるでしょう。

ちょっと例えが悪いかもしれませんが、お金を持っている男性ならば、女性に宝石や高価な鞄などを買い与えることで、ある程度はその女性をつなぎとめることはできるでしょう。しかし、その男性が貧乏になったら、多くの場合「カネの切れ目が縁の切れ目」です。

ですから、「従業員満足度」というアプローチだけでは、会社の経営が厳しくなって待遇を切り下げなければならなくなったり、福利厚生を縮小したりした場合、働きやすさが低下し、少なからずその会社から離れてしまう従業員も出てくるでしょう。

しかし、会社としては、ピンチなときにこそ、従業員が一丸となって会社を支えてほしいはずです。

働きがいを示す「従業員エンゲージメント」

そこで登場するのが「従業員エンゲージメント」という概念なのです。

エンゲージリングを取り交わすような、本当の意味で愛で結ばれたカップルであれば、相手がピンチになったとき、その場を離れるのではなく、支え合うはずです。

従業員エンゲージメントもまさに同じで、従業員エンゲージメントが高い会社は、従業員と会社が相思相愛であるため、会社の経営が良いときはもちろんモチベーション高く働きますし、会社がピンチになったときでも、挽回のため一所懸命会社を支えてくれると考えられます。

従業員エンゲージメントが高い会社の従業員は、「会社への愛」と言ったら抽象的すぎますが、目先の給与や福利厚生よりも、「この会社ならば自分の夢が実現できる」「この会社と一緒に自分も成長したい」「この会社を通じて世の中に貢献したい」「この会社には尊敬できる仲間がいる」という働きがいやモチベーションなどの精神面の満足度が高い状態で働いていると言って良いでしょう。

それが、その会社と従業員双方にとって心地よい関係を作り出しているのです。

とはいえ、働きがいばかりが先行し、従業員満足度が低下してしまうと、いわゆる「やりがい搾取」という形にもなってしまいかねません。

一方、「従業員満足度」と「従業員エンゲージメント」の双方と向き合い、高めることができれば、相乗効果を生み出し、人材力を最大限発揮することに繋がるでしょう。

従業員エンゲージメントを高める3つのアプローチ

それでは、従業員エンゲージメントを高めるためにはどのような施策があるのでしょうか?

3つ代表的な施策を紹介したいと思います。

(1)理念・価値観の浸透

1つ目は、経営陣が従業員に対し、企業理念や会社の価値観をしっかりと伝えていくということです。

従業員は、ただ漫然と仕事をしているよりも、自分の仕事がどのようにお客様や社会の役に立っているのかが分かってこそ、その仕事にやりがいや目的を見出すことができます。

そういった姿勢で仕事をすることができれば、自らこの仕事を続けたいと感じ、従業員エンゲージメントも高まっていくものです。

(2)従業員間コミュニケーションの促進

2つ目は、従業員間のコミュニケーションを促していくということです。

「仕事とプライベートは分けるべきで、会社内の飲み会なども不要だ」とか「淡々と仕事をこなして成果を出せばよい」というような考え方も確かに存在します。

しかしながら、やはり、仲間と楽しく仕事をすることができるからこそ、「この職場環境を大切にしたい」とか「この会社が無くなってしまったら困る」という気持ちが湧き出てくるのであり、それがひいては従業員エンゲージメントを高めることにもつながっていきます。

(3)従業員個人の価値観の尊重

3つ目は、従業員1人1人の価値観の尊重です。

従業員が会社の経営理念や価値観に賛同や共感することは、従業員1人1人の価値観や考え方を否定することでは決してありません。

従業員1人1人の個性を尊重しつつ、それを踏まえた上で、会社が進むべき方向に一丸となって向かっていくということが、ありたい姿です。

「この会社ならば自分らしく働くことを認めてくれる」という安心感や満足感が従業員エンゲージメントの向上につながります。

まとめ

待遇や職場環境を改善し、従業員満足度を高めることはもちろん重要です。

しかし、物質的な面だけでなく、精神的な面も充実してこそ、従業員と会社が一体となった本当の意味でも強い組織が生まれます。

そのためには、従業員満足度に加え、従業員エンゲージメントにもしっかりと目を向けていきたいものですね。


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特定社会保険労務士 榊 裕葵

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。執筆活動にも力を入れており、WEBメディアへの掲載多数。
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