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エンゲージメント向上を阻む理由は?効果的な施策、成功事例を紹介

公開日

この記事でわかること

  • エンゲージメント向上を阻む5つの要因
  • エンゲージメント向上につながるヒント
  • エンゲージメント向上の重要ポイント
目次

企業の成長にとって重要な従業員エンゲージメント。エンゲージメント向上には、社内の現状把握や働きやすい環境の整備が必要です。

本稿では、エンゲージメント向上施策・向上を阻む要因を解説します。

エンゲージメントとは

エンゲージメント(engagement)とは約束や契約を意味し、とくに婚約などの深いつながりをもった関係性に用いられます。

従業員エンゲージメントの解説図

ビジネス・人事領域におけるエンゲージメントは、主に「従業員エンゲージメント」を指し、企業と従業員間の確固たる信頼関係の構築を意味します。従業員エンゲージメント向上により企業に対する働きがいや愛着を抱けば、優秀な人材の定着やモチベーション向上、商品やサービスの品質向上など、さまざまな効果が期待されます。

長期的かつ持続的な競争力の強化・維持のためにも、エンゲージメント向上は企業にとって 欠かせない取り組みと言えるでしょう。

エンゲージメント向上を阻む5つの要因 

1.時流に沿わない企業体質や制度

かねては国内企業の多くで、固定労働時間制が採用されてきました。勤務時間の固定により、1日8時間の消化が目的となってしまうケースもあります。そういった状況下では、生産性や効率化を図る動機がなくなり、必要のない残業発生や長時間労働に陥りがちです。恒常化した長時間労働は、従業員エンゲージメント低下の要因の一つでもあります。

ほかにも、年功序列の給与体系や企業都合による人事異動、生産性のない会議なども、従業員エンゲージメントの低下につながると考えられます。

2. オーバー・コンプライアンス(過剰法令遵守)

オーバーコンプライアンスとは、過剰なリスクマネジメントや法令遵守や、そうした企業姿勢を指します。近年のコンプライアンス重視の風潮から生まれた概念です。

未然のトラブル防止策は重要なものの、必要以上の規則づくりや監視体制は、従業員の大きな負担となりえます。職場での緊張や心理的安全性の低下を招き、新たなアイデアの創出、挑戦へのモチベーションの障壁となるのです。

3. トップダウンの管理方式

トップダウンの管理方式はスムーズな意思決定が可能な反面、従業員の納得感・やりがいが得られにくいデメリットもあります。トップダウン方式が常態化すると、自発的な挑戦をしない、指示を待ってしまうのが、当たり前の環境となってしまう恐れもあります。

従業員の自律的な姿勢を育むためには、ボトムアップ方式の意思決定や日々の1on1などを通じて、従業員の自発性を高めていきましょう。

4. 組織の複雑化と役職者の増加

組織成長に伴い、部署・役職者は増えていきます。組織体制・指揮系統が複雑になった結果、組織の縦割り化や担当業務の細分化などの対応となるでしょう。

縦割り型の組織では「部署連携にかかるコミュニケーションコスト」が課題の1つです。コミュニケーションコストの増加は、主業務の生産性低下・長時間労働へとつながる可能性もあります。

また、急激な組織規模の拡大にともない、マネジメント経験の少ない役職者が登用されるケースも。適切なマネジメント研修や教育が不足すると、不要なマイクロマネジメントやサポート不足といった状態につながり、従業員の自発的な挑戦や成長の妨げとなります。

バーンアウトにつながる理由の解説図

(出典:「ワーク・エンゲージメント」実態調査  - 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)

「裁量の低さ」や「プレッシャーの高さ」「人間関係の悪さ」がワークエンゲージメント(業務へのポジティブな意欲)を低下させる要因と、「『ワーク・エンゲージメント』実態調査 」でも明らかになっています。

5. 納得感のない人員配置

多くの日本企業では「職能型人事制度」を採用しており、「職務型人事制度(ジョブ型)」の導入企業(および検討中)は2020年の調査では25%ほどです。

出典:ジョブ型雇用と職務給・役割給の導入状況 - 内閣官房

幅広い業務に対応可能な人材育成を目的とする「職能型人事制度」では、業務経験を広げることを目的とした人員配置が主です。その際、キャリアの専門性は重視されず、希望に沿わないやりがいを感じづらい職務へ配置される可能性もあるでしょう。

「『ワーク・エンゲージメント』実態調査」にもあるとおり、エンゲージメントは従業員の使命や役割が明確な職場で高まる傾向です。本人の意向やキャリア思考を踏まえたうえで、「なぜこの人員配置なのか?」の明確な根拠や説明、納得が求められます。

エンゲージメントを向上させる5つの施策

エンゲージメント向上施策を説明する図

1. 従業員のエンゲージメント把握

従業員のエンゲージメント向上には、まずは現状把握が求められます。従業員サーベイと呼ばれる社内調査を経て、3つの指標から現状を評価・把握しましょう。その結果から、課題を見つけ、解決施策を検討します。

エンゲージメント総合指標(指数)

エンゲージメント総合指標とは、従業員が企業に対する総合的な印象を数値化した指標です。「自分が勤める会社は友人や知人におすすめできるか」「今後も勤続したいか」といった視点で評価します。

従業員の職場に対する印象や組織が抱える課題の把握に役立ちます。

ワークエンゲージメント指標(指数)

ワークエンゲージメント指標は、従業員が仕事に対してどの程度やりがいを感じているかの指標です。従業員が「仕事にやりがい・楽しさを見出せているか」や「どの程度熱意をもっているか」がわかります。

エンゲージメントドライバー指標(指数)

エンゲージメントドライバーとは、エンゲージメント向上に関連する要素を示す指標です。組織ドライバー、職務ドライバー、個人ドライバーの3項目から構成されています。

  • 組織ドライバー
    • 企業と従業員間の信頼関係
  • 職務ドライバー
    • 担当業務の満足度・難易度
  • 個人ドライバー
    • 従業員の資質が業務に及ぼず影響

2. 従業員対する企業の経営方針、考えの浸透

企業の経営方針やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)が正しく共有されないと、業務を通じて達成すべき指針も不明瞭になります。自律的な業務への取り組みを推進するためにも、適切な頻度での経営方針・MVVの発信・浸透が求められます。

経営方針・MVVが浸透しているかどうか、経営層と従業員の間での齟齬がないかなど、従業員サーベイを通じた定期的な振り返りが必要です。

3. 経営方針、考えに沿った人事評価制度

経営方針・MVVに沿って業務に取り組む従業員に対して、企業は適切な人事評価制度を設けましょう。

「自身の働き・成果が正当に評価されている」という納得感がやりがいにつながり、エンゲージメント向上をもたらします。

4. マネジメント層の教育・研修

組織成長に伴い、部署・社員数が増加すると、経営層からの発信が浸透しづらくなります。メンバーである従業員との接点も多いマネジメント層には、現場視点に転換した経営方針の浸透が求められます。

1on1といった場面でのフィードバックやコーチングを通じて、経営方針を落とし込めるよう、マネジメント層への教育・研修が重要となるのです。

経営層を起点にマネジメント層から従業員へ、企業が目指すビジョンを共有しましょう。

5. 働きやすい環境の整備

従業員エンゲージメントには、「働きがい」の実感が大きく影響します。さらに「働きがい」の醸成要素の1つに、「働きやすさ」を感じられる就労環境が挙げられます。「働きやすくない」環境下では、転職意向が約70%という調査結果も出ています。

(出典:働きやすい職場とは? 人間関係だけじゃない、制度面での働きやすさ向上を目指す- キャリアリサーチラボ

リモートワークやフレックス制度の導入、休暇取得の推奨・推進など、働き方の多様化を受容できる環境整備が求められます。働きやすい環境整備はエンゲージメント向上だけではなく、生産性向上にも波及します。

エンゲージメント向上の必須ポイント

1.現状のエンゲージメントの正しい測定

従業員サーベイを通じて、従業員のエンゲージメントを正確に把握する必要があります。業務に対する働きがい、就労環境への要望、従業員同士の人間関係など、具体的に調査します。

組織課題が詳細かつ実態に即して把握できなければ、施策による改善は期待できません。

2.従業員サーベイツールによる効率的な測定

エンゲージメント測定には従業員サーベイが最適なものの、以下のように多くのステップが求められます。また、それぞれにはスムーズなサーベイ実施を阻む障壁があります。

ステップ
障壁

1.質問作成

具体的な項目が求められるため、多くの質問数が必要

2.対象従業員の選出

全社実施もしくは、特定部署のみを検討

3.選出した従業員への送付

工数の多いメール送付作業、対象外の従業員への誤送の可能性

4.サーベイの回答回収

未回答の従業員へのリマインドなどの進捗管理

5.サーベイの結果分析

膨大な回答結果のリスト・グラフ化

6.課題の把握

エンゲージメントの低い部署・従業員の抽出

7.解決施策の検討

-

8.解決施策の実施

-

9.施策の効果検証(従業員サーベイ)

定期的なサーベイ運用、過去の結果の蓄積・比較

こういった煩わしさを解消するのが、従業員サーベイツールです。人事データに紐づいたツールであれば、送信先選定から送付、サーベイの回収、集計・分析まで効率的に実施可能です。

エンゲージメント向上のための従業員サーベイ活用事例

株式会社Zeals

株式会社Zealsは事業拡大を機に、バラバラな人事情報の一元化を目的に「SmartHR」を導入し、従業員サーベイを利用しています。定期的なサーベイで把握した従業員のコンディションを人事データと紐づけ、一元管理しています。

サーベイ結果によって個人の状態だけではなく、組織・チームの状態も可視化され、「特定部署に対してサポートが必要」という意思決定にも生かせています。

株式会社NOLTYプランナーズ

株式会社NOLTYプランナーズは、数年前からエンゲージメント向上に取り組んできました。

人事・労務業務の効率化を目的にSmartHRを導入していましたが、リリースにあわせて従業員サーベイを導入。

初回のサーベイ回答率はほぼ100%で、全社会議での実施アナウンスや2週間程度の回答期間を設けたのが要因だったそう。結果分析を経て、可視化された課題に対する施策を実施し、定期的なサーベイで効果検証をしています。

サーベイ結果は、従業員から直接聞いていた話と異なる想定外の結果で、認識できていなかった課題に気づく結果となりました。施策に対してはさまざまな意見があるものの、「何か相談したら対応検討してくれるかも」という期待感が社内に醸成できたようです。

従業員サーベイツールを活用し、エンゲージメントを高めよう

従業員エンゲージメントに課題をもつ企業では、古くからの企業体質や経営層と従業員間での認識の不一致が、エンゲージメント低下の原因になっているケースが多々あります。

従業員エンゲージメント向上のために経営層と従業員双方の合意を取りながら、「従業員の現状把握」「企業の方針や考えの浸透」「企業方針に沿った人事制度の構築」「マネジメント層の教育」「働きやすい環境の整備」と自社に合わせたステップで取り組んでいきましょう。

これらの取り組みの効果測定を定期的な従業員サーベイで実施し、一歩ずつ組織改善に努めるのが一番の近道となります。

効率的な従業員サーベイ運用をサポート

タレントマネジメントシステム「SmartHR」の従業員サーベイ機能には、45問からなるエンゲージメントサーベイがあらかじめプリセットされており、実施から分析まで効率的に実施可能です。

そのほかにもさまざまなサーベイがプリセットされており、さらに独自のサーベイの作成もできるので、自社課題に適した調査ができます。

最新の従業員データとサーベイの回答を掛け合わせた分析もかんたんなため、ITツールに不慣れな方でもはじめの一歩が踏み出せます。

お役立ち資料

3分でわかる! SmartHRの従業員サーベイ

  1. Q1. エンゲージメント向上を妨げる要因は?

    A.古い企業体質や組織の複雑化、納得感のない人事評価が主な要因です。とくにオーバーコンプライアンスやトップダウンの管理方式は、従業員の挑戦意欲を削ぐ可能性があるので注意しましょう。

  2. Q2. エンゲージメントを向上させるには?

    A.従業員サーベイなどによる現状の把握が必要です。企業の経営方針を従業員に浸透させ、マネジメント層の教育や方針に沿った人事評価を実施し、働きやすい環境を整えましょう。

  3. Q3. エンゲージメント向上のメリットは?

    A.優秀な人材の離職防止、モチベーション向上による商品・サービスの品質向上に期待できます。これらによって企業の業績も向上し、長期的かつ持続的な競争力の維持を目指せるでしょう。

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