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エンゲージメントとは?ビジネスにおける重要性や向上施策、事例を紹介

公開日

この記事でわかること

  • エンゲージメントに注目すべき理由
  • エンゲージメント向上がもたらすメリット
  • エンゲージメント向上のヒント
目次

近年、企業における「従業員の定着」や「仕事への意識・やりがい向上」のために「エンゲージメント」が注目を集めています。エンゲージメントとはどのような意味をもち、企業にどのような影響をもたらすのでしょうか?

本稿では、エンゲージメントの種類や得られるメリット、エンゲージメント向上のヒントを解説します。

エンゲージメントとは

従業員エンゲージメントは、企業成長に欠かせない指標

「エンゲージメント(engagement)」は、日本語で「婚約」「契約」「約束」といった意味に訳される英単語です。いずれも、相互の合意にもとづいて成り立つ状態を示す言葉です。

近年、さまざまな背景からエンゲージメントという言葉はビジネス領域でも使われはじめました。

ビジネス領域においてエンゲージメントは、「顧客エンゲージメント」と「従業員エンゲージメント」の2種類に分類されます。それぞれ、どのような意味をもつか解説します。

顧客エンゲージメントとは

顧客エンゲージメントは、「企業と顧客の信頼関係」を表します。双方の信頼関係が良好な状態を「エンゲージメントが高い」と表現します。

顧客エンゲージメントが高い場合、顧客は企業の商品やサービスを継続的に利用・消費するため企業の利益につながります。また、顧客から企業の商品やサービスに対する率直な意見・感想が得られやすくなり、長期的な企業成長も期待できるでしょう。

従業員エンゲージメントとは

従業員エンゲージメントとは、「企業と従業員の信頼関係」を指します。企業成長には、良好な従業員との関係が求められます。離職率低下、モチベーション向上など、人事領域において「従業員エンゲージメント向上」は重要です。

従業員エンゲージメントを高める要素には、「働きやすさ」「やりがい」「指針への共感」などが挙げられます。これらが満たされているほど、従業員が企業に定着し、企業貢献の意欲醸成にもつながりやすくなるでしょう。

エンゲージメントと間違えやすい3つの用語

エンゲージメントには似た用語が多くあります。3つの用語について、違いを解説します。

1.エンゲージメントと従業員満足度(ES)の違い

従業員満足度(ES)は、「Employee Satisfaction」の略で、従業員の業務負担や待遇、職場環境などに対する満足度の指標です。

対するエンゲージメントは、従業員が抱く企業への愛着・信頼関係を示します。エンゲージメントは従業員の「企業理念への共感」「企業貢献への意欲」といった領域までを含めて考えます。

ただし、従業員満足度はエンゲージメントの主要素である「働きやすさ」に深く関係しており、エンゲージメント向上に欠かせない指標といえるでしょう。

2.エンゲージメントとモチベーションの違い

モチベーションとは「動機」を意味し、人が何かに取り組む際の意欲の源となります。

モチベーションは2種類に分類可能です。

  • 内発的モチベーション
    • 個人の興味関心にもとづく意欲
  • 外発的モチベーション
    • 報酬や評価にもとづく意欲

従業員エンゲージメントは従業員と企業の関係を対象とする一方で、モチベーションの対象は企業や仕事が対象とは限らない点が違いです。

3.エンゲージメントとロイヤリティの違い

ロイヤリティ(royality)とは「忠誠」を意味します。ビジネス用語では顧客が企業に対して感じる愛着や従業員の帰属意識を示します。

ロイヤリティが示すのは「従業員→企業」「顧客→企業」といった一方的な意向であり、エンゲージメントは「企業⇔従業員」「顧客⇔企業」といった双方向の関係を示す点に違いがあります。

エンゲージメントが重視される理由

なぜ、今の時代にエンゲージメントが重要となるのでしょうか? 人事領域でエンゲージメントの注目が高まりはじめた理由を見ていきましょう。

個人の価値観の多様化

インターネットの普及によって、さまざまな情報に触れる機会が増えた結果、働き方の幅が格段に広がりました。フレックス制度や育児休暇取得などを推進する企業が増加するなか、近年ではコロナ禍の影響もあり、在宅ワークが当たり前の働き方として広まってきています。

このような状況下で、企業は優秀な従業員にできる限り長く在籍してもらうため、多様化する働き方のニーズに応えて、モチベーションや帰属意識の向上に取り組む必要が出てきました。企業と従業員のつながりの重要性の高まりとともに、エンゲージメントの注目度も上昇しています。

人材の流動化

転職に対する意識の変化によって、人材の流動が活発化しているのも大きな要因です。

今まで当たり前であった終身雇用制度は、従業員の意識の変化に伴い崩壊したと言われています。公益財団法人 日本生産性本部が発表した「2018年度 新入社員 春の意識調査」では、「今の会社に一生勤めようと思ってる」と回答するのは約半数にとどまっています。

2016年以降最大となった、2022年の「正社員での転職経験」。

2016年以降最大となった、2022年の「正社員での転職経験」。積極的な転職活動がうかがえる。(出典:転職動向調査2023年版(2022年実績)- マイナビキャリアリサーチラボ

また、優秀な人材ほど転職をしながらキャリアアップを重ねていく「売り手市場」が主流となりつつある現在の日本。マイナビキャリアリサーチラボの「転職動向調査2023年版(2022年実績)」では、転職による賃金上昇したケースが約40%に登ります。加えて少子化による労働人口減少の影響もあり、人材獲得が企業の課題となっています。

働きがいと離職率低下・生産性向上の関係性

(出典:令和元年版 労働経済の分析-人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について- - 厚生労働省

「働きがい」が高まると、離職率低下や生産性向上につながる可能性についても、厚生労働省による「令和元年版 労働経済の分析-人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」にてふれられています。

できる限り長く優秀な従業員に在籍してもらうためには、多様な働き方のニーズに応え、モチベーションや帰属意識の向上に取り組む必要があるでしょう。

世界から見た日本の従業員エンゲージメントの低さ

世界において、日本企業のエンゲージメントが非常に低い水準にある点も、エンゲージメントに注目が高まった理由の1つです。

アメリカの調査会社ギャラップ社が2017年に発表した「state of the global workplace(2017)」では、日本企業でエンゲージメントが高い従業員の割合はわずか6%しかいないという結果となりました。この数値は調査対象の139カ国中132位で、非常に低い水準といえるでしょう。

東アジア全体では平均17%のエンゲージメント。38%のモンゴルに対して、大きな差がある結果に。

東アジア全体では平均17%のエンゲージメント。38%のモンゴルに対して、大きな差がある結果に。(出典:state of the global workplace(2023)- ギャラップ社

2022年の同調査では、5%とさらに低い数字となっています。日本はエンゲージメント向上に取り組む余地がまだまだあり、これらに真摯に取り組むことそのものが企業の魅力、他社との差別化にもつながるといえるのではないでしょうか。

ビジネスにおけるエンゲージメント向上3つのメリット

エンゲージメント向上による代表的なメリット3例をご紹介します。

1.優秀な人材の定着

先述の厚生労働省の調査にもあるとおり、働きがいと働きやすさを備えた職場環境は離職率の低下に寄与します。従業員と企業が良好な関係を築ければ、優秀な人材の流出防止の一手となります。

2.サービスレベル・顧客満足度の向上

エンゲージメントが高い状態にある従業員は、労働生産性が高く、「企業への貢献」に高いモチベーションを感じます。このモチベーションが、従業員のハイパフォーマンスを引き出し、サービスレベル・顧客満足度の向上につながるでしょう。

3.業績向上

エンゲージメント向上は、優秀な人材の流出防止と従業員の意欲的な姿勢をもたらします。これらの要素が重なると、結果的に企業が手がけるサービスや製品の質が向上し、業績向上も目指せるでしょう。

従業員満足度と営業利益率の相関性

(出典:『エンゲージメントと企業業績』に関する研究結果 - モチベーションエンジニアリング研究所

モチベーションエンジニアリング研究所と慶應義塾大学 大学院経営管理研究科/ビジネス・スクール 岩本研究室による共同研究「『エンゲージメントと企業業績』に関する研究結果」によると、従業員エンゲージメントの向上は営業利益、労働生産性の向上に寄与することも判明しています。

従業員満足度と労働生産性の関係性

(出典:『エンゲージメントと企業業績』に関する研究結果 - モチベーションエンジニアリング研究所

現状のエンゲージメントの高さに関わらず、「エンゲージメント向上」そのものが、営業利益率や労働生産性の向上につながります。そのため、従業員エンゲージメントに目を向けることは、企業の成長に直結する重要指標であると考えられます。

エンゲージメントを高めるヒント

従業員エンゲージメント向上は、企業の業績向上にもつながるなど多大なメリットがあるとわかりました。具体的にどのような行動がエンゲージメントの向上につながるのでしょうか?

従業員の現状把握

エンゲージメント向上に取り組む際は、まずは現状の従業員エンゲージメント水準を把握しましょう。

現状の従業員エンゲージメントを調べるためには、アンケートやサーベイなどが有効です。調査によって導き出した情報をもとに、課題を立てて改善策を検討します。

また、エンゲージメントの把握にはさまざまな指標の活用も効果的です。従業員アンケートを各項目0〜10点といった選択形式で進め、各回答のスコアを指標に当てはめます。項目ごとにエンゲージメントの度合いを判断できます。

エンゲージメントの現状把握に活用できる指標は3つあります。

1.エンゲージメント総合指標

エンゲージメント総合指標は、「従業員がもつ企業に対する総合的な印象」についての指標です。

「この企業で働くことを友人や知人におすすめしたいか?」「今後もこの企業で働き続けたいか?」といった質問への回答で計測します。

回答結果から、従業員が企業の就労環境をどのように思っているかのみならず、企業が抱える弱点の特定も可能です。

2.エンゲージメントレベル指標(ワークエンゲージメント指標)

エンゲージメントレベル指標は、「従業員が業務に対してどの程度熱意をもって取り組んでいるか」を測定します。

この指標では、「仕事のやりがいを感じているか?」「仕事に楽しさは感じているか?」といった質問が適しています。

エンゲージメントレベル指標は「ワークエンゲージメント指標」という名称でも呼ばれています。

3.エンゲージメントドライバー指標

従業員が業務に対して自律的に当事者意識をもつようになるための「エンゲージメント向上に関連する要素を示す指標」をエンゲージメントドライバー指標と呼びます。

エンゲージメントドライバー指標は、「組織ドライバー」「職務ドライバー」「個人ドライバー」という3つのカテゴリーに分類可能です。


カテゴリー


内容


具体例

組織ドライバー

企業と従業員間の信頼関係

「企業のミッション・ビジョン・バリューが明らかで信頼・共感できている」など

職務ドライバー

担当業務の満足度・難易度

「自身の業務・業績・就労態度が適切に評価されており、成長実感がある」など

個人ドライバー

従業員の資質が業務に及ぼず影響

「人間関係に問題なく、円滑なコミュニケーションが取れ、仲間意識をもてている」など

企業の経営方針・考えの従業員への浸透

エンゲージメントは向上だけではなく、低下してしまうケースもあります。エンゲージメント低下の要因にはさまざまな理由が考えられますが、「企業の経営方針が従業員に正しく共有されていない」というのもよくある原因の1つです。

企業の目指す方向性と従業員の認識との間にズレを発生させないためにも、企業のビジョンや経営目標を企業全体で定期的に浸透・振り返る機会を設けましょう。

従業員との認識のズレを防ぐためにも、情報が正しく伝わっているか、内容に矛盾がないかといった確認も大切です。

経営方針に沿った人事評価の整備

「人事評価が企業の経営方針と沿っているか?」も重要です。

従業員エンゲージメント向上には、「従業員の人事評価への納得」が欠かせません。企業のビジョンにならい経営目標達成に向けて尽力したにも関わらず低い評価となる場合、エンゲージメント低下の原因となるでしょう。そのため、経営方針と人事評価が矛盾しない評価制度の整備が求められます。

従業員の成果が正しく評価され、昇級(昇給)につながる評価制度づくりが求められます。

マネジメント層への教育・研修

組織規模によっては、企業のミッション・経営方針の浸透が困難なケースもあります。マネジメント層から従業員へ経営方針の落とし込みが求められます。

上記の実現には、現場と最もコミュニケーション機会の多いファーストラインマネージャーをはじめとしたマネジメント層への教育・研修も重要です。1on1といった場面での適切なフィードバックやコーチングが叶えられれば、メンバーのエンゲージメント向上の一助となりえます。

働きやすい環境整備

高水準のエンゲージメント達成には、従業員が企業に感じる「働きがい」は欠かせません。「働きがい」には、前提として「働きやすさ」を実感できる職場であることも求められます。

フレックス制度やリモートワーク導入など、従業員の多様な働き方を受容する制度は働きやすさ向上につながります。また、残業時間の管理も重要です。長時間残業が恒常化しているような職場では「働きやすさ」は感じられません。管理部門・マネジメント層が一体となって、適切な就業時間管理を推進しましょう。

働きやすい環境が整備されると、エンゲージメント向上につながり、ひいては生産性向上や離職低下にも貢献します。

エンゲージメント向上施策については、以下の記事でより詳しく紹介しています。

従業員エンゲージメントの測定方法

前述のとおり、エンゲージメント関連施策の推進には、まずは現状把握が重要です。

自社のエンゲージメント水準を把握する方法を紹介します。

個別面談やグループディスカッション

個別面談やグループディスカッションは、「従業員が企業に対してどのように感じているか」を本人からダイレクトにヒアリングできる方法です。エンゲージメントを定性的に測定するのに適した手段と言えるでしょう。

アンケートなどの間接的な測定方法では、従業員は落ち着いた状態で自分の意見をまとめながらフォームに入力します。一方、対面での話し合いでは対話を通じて意見が交わされるので、相手によってはより本音に近い意見が聞きやすいケースもあります。

従業員サーベイ

従業員サーベイは、「企業が従業員に対して実施する調査全般」を指します。就労環境や仕事のやりがいなどに対する従業員の意識調査は、エンゲージメントの定量的な測定に役立ちます。調査結果から問題点が可視化されれば、改善施策検討に大いに役立てられるでしょう。

近年は、かんたん・手軽にサーベイを実施できる人事・労務ツールが多く存在します。サーベイツールを利用すれば、サーベイ未経験の人事担当者でも、手間をかけずに進められます。

従業員サーベイで現場従業員とのつながりを。三菱重工業株式会社の事例

約6万名の国内グループ従業員を抱える三菱重工グループは、人事・労務領域のDXを推進を目的に2021年にSmartHRを導入しています。

導入以前はパソコンが貸与されていなかったため、人事部門と関わりの薄かった現場作業担当の従業員。SmartHRではスマートフォンによる従業員サーベイ回答が可能なため、導入を決定した経緯がありました。

従業員サーベイの実施は、全従業員と双方向のコミュニケーションの機会となり、三菱重工グループが目指す「一人ひとりが能力を十分に発揮できる企業風土・各種制度の整備」の促進における貢献が期待されます。

従業員サーベイツールを活用してエンゲージメントを高めよう

エンゲージメント向上は、企業に優秀な人材の定着や従業員のモチベーション・生産性向上をもたらします。長期的に考えると、企業成長や業績向上の一翼を担うでしょう。

エンゲージメントの改善には、まずは現状把握が重要です。現状把握には定性的な状態を測る面談や、定量的な調査に適した従業員サーベイなどがあります。

従業員サーベイ未経験でもかんたんに実施可能

あらかじめ用意された45個のエンゲージメントサーベイの質問

従業員サーベイの効果的かつ効率的な実施には、自社に適したサーベイツール選定が重要です。 SmartHRの従業員サーベイ機能機能では、あらかじめ45個の質問設定がされているエンゲージメントサーベイが用意されており、企業に合わせた質問の削除・追加が可能となっています。

さまざまなサーベイをあらかじめ用意しています。

エンゲージメントサーベイによる「組織改善」だけでなく、「人事評価」「就労環境」にまつわるサーベイも用意されています。オリジナル内容のサーベイも作成できるため、自社に適した調査を叶えます。

サーベイ結果の分析もスムーズに実行可能。

従業員サーベイの回収・分析もスムーズに実施できます。従業員・部署データとサーベイ結果を掛け合わせて閲覧可能で、対策が必要な部署、良好な部署も可視化されます。

従業員サーベイ未経験でもかんたんに取り組め、エンゲージメント向上を叶える施策検討が可能です。

SmartHRの従業員サーベイを詳しく知りたい方は、以下の資料をご覧ください。

お役立ち資料

3分でわかる! SmartHRの従業員サーベイ

  1. Q1. エンゲージメントとは何ですか?

    A. 日本語で「婚約」「契約」「約束」といった意味に訳される英単語で、ビジネスでは企業と従業員相互の信頼関係を表します。エンゲージメントが良好な状態は「エンゲージメントが高い」といいます。

  2. Q2. エンゲージメントと従業員満足度(ES)の違いは何ですか?

    A. 従業員満足度は従業員の業務全般についての満足度、エンゲージメントは従業員の企業に対する愛着や信頼関係をそれぞれ指します。エンゲージメントは従業員の企業理念への共感や企業にどのように貢献したいかといった姿勢までを含める点に違いがあります。

  3. Q3. ビジネスにおいてエンゲージメントを高めるメリットは?

    A. エンゲージメント向上は、企業に優秀な人材の定着や従業員のモチベーション向上をもたらし、長期的には企業の成長や業績向上へもつながります。

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