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スキル管理とは?重要性や目的、方法などわかりやすく解説

公開日

この記事でわかること

  • スキル管理とは何か
  • ビジネスシーンにおけるスキルの意味や種類
  • スキル管理が注目されている理由
  • スキル管理実施時に意識すべき目的
  • スキル管理を進めるための手順
目次

「スキル管理」とは、従業員一人ひとりのスキルを洗い出して、社内全体で共有することです。管理している情報は、人材育成や経営戦略に活用できるとして、近年注目されています。「自社でも採用したい」と考えている方も多いことでしょう。本稿では、スキル管理の基本的な知識から重要性、目的、具体的な取り組みの手順までを解説します。

スキル管理とは?

スキル管理とは、従業員一人ひとりのスキルを可視化し、社内で情報共有・一元管理する仕組みです。

現在の日本では、IT技術の進歩・DX推進などを背景に、業務上必要とされるスキルの重要度にも大きな変化が起きています。企業には、従業員を「資本」と捉えて適切にスキルを管理・育成するとともに、これまで別々の業務として遂行されてきた、人材育成と経営戦略を紐づけた「人的資本経営」を進めていく必要性が出てきています。スキル管理で得られた情報は、戦略的なマネジメントに活用できるため、近年多くの企業が取り組みはじめています。

(参照)企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート 集計結果一覧(2022年度版)_P4 - 一般社団法人生命保険協会


あり
設置予定
なし
専門委員会の有無
13社
1社
7社
常設組織の有無
5社
-
1社

実際に、パーソル総合研究所が実施した「大手企業のタレントマネジメントに関する実態調査(2020)」によると、調査対象である大手企業では、タレントマネジメント(従業員のスキル情報を企業成長につなげていくマネジメント方法)」の専門委員会や常設組織を設けています。



優先順位1位
次世代経営人材の発掘・育成
9社
戦略的ポジション人材の発掘・育成
1社
適材適所・適所適材の配置
3社
人材需要の予測
1社

優先順位2位
戦略的ポジション人材の発掘・育成
4社
キャリアプランへの組織的支援
4社
人材需要の予測
3社
次世代経営人材の発掘・育成
2社
リテンション
2社
優先順位3位
キャリアプランへの組織的支援
3社
新卒HIPO採用
3社
​次世代経営人材の発掘・育成
2社
戦略的ポジション人材の発掘・育成
2社
​適材適所・適所適材の配置
2社

「スキル」の意味と種類

スキルとは一般的に「技能・技術」を指しますが、より深く解釈すると「教育・訓練などを通じて身につけた高度な能力」という意味ももちます。ビジネスの場で用いられるスキルの場合、単に資格や免許だけにとどまらず、これまでに身につけた業務に関わる幅広い能力も含まれます。

ビジネスシーンで求められる3つのスキルの図

そのなかでも個人のスキルは、主に「技術的な専門スキル(テクニカルスキル)」と、「対人関係を円滑にするためのスキル(ヒューマンスキル)」に分けられます。前者に該当するものは専門知識や技術、語学力、経験。後者はコミュニケーション能力や傾聴力などです。このほかにも、ロジカルシンキングや柔軟性などの能力を表す、「コンセプチュアルスキル」も存在します。

スキル管理の目的

続いて、スキル管理の目的について解説します。

従業員がもつスキルの再確認

スキル管理により、従業員がもつスキルが可視化されます。

たとえスキル管理をしなくても、同じ部署内やチーム内のメンバーとは、各々の得意分野や身につけているスキルの習熟度を把握し合えるかもしれません。しかし、組織が大きくなればなるほど、全社での共有は困難になってしまいます。その結果、優秀な人材が社内に埋もれていても、誰も気づかない状況が起こり得ます。

スキル管理は、従業員一人ひとりの能力を客観的に把握し、効率的な人材マネジメントを実現するために不可欠です。

適材適所の配置

スキル管理で集めた情報は、新規プロジェクトの立ち上げや人事異動などにおける、適切な人員配置に役立ちます。

たとえば、新しいプロジェクトの人員選定時に、人事担当者は客観的な判断材料が少なく、KKD(経験、勘、度胸)による主観的な配置になってしまうケースが考えられます。その結果、成果につながらず、人員配置のやり直しが求められる可能性があります。

しかし、事前にスキルが可視化されていれば、データをもとに判断できるので、客観的な視点にもとづいた最適な人員配置を実現できます。

適材適所の人員配置実現へのヒントを、以下の記事でご紹介しています。

組織に不足しているスキルの明確化

スキル管理により、組織に不足しているスキルを明確化できます。

もし、企業目標として「新規ウェブサービスの売り上げ拡大」を掲げている場合、営業担当者には「課題に対する解決力」や「プレゼンテーションスキル」が求められます。その場合、単に「営業経験のある人材」を集めただけでは、目標達成できる可能性は低いと考えられます。

なぜなら、一口に営業経験と言っても、有形・無形商材の違いや市場の熟成度によって、アプローチが多様なため、求める役割を果たせない可能性があるためです。また、今までの営業実績を重視するのではなく、マーケティング経験やMAツールに対する造詣が必要なケースもあるでしょう。

このように、スキル管理によって集めた情報と企業方針・目標を照らし合わせると、組織として獲得を推進すべきスキルなども見出せます。

また、人員配置で不足スキルを補えない場合、新規採用の必要性にも気づけます。求める人材の要件はすでに決まっているので、採用活動で起こり得るミスマッチ防止に有効です。

スキル管理の方法

スキル管理の際には、以下に解説する手順どおりに進めましょう。段階を踏みながら詳細を決めるため、スムーズに運用開始可能です。

1. 目的や目標を決める

まずはスキル管理の目的や目標を明確にします。

企業に必要とされるスキルは多岐にわたるので、無計画にスキルを洗い出すだけでは、適切な施策は打ち出せません。自社の現状分析により、企業として今後どのような方向性で進みたいのか、スキル管理をどう活かしていきたいのかなどの目標を定めましょう。

その結果、重要視すべきスキルや不足しているスキルが明らかになります。

2. 細かなスキル項目を決める

目的や目標が決まったら、担当業務やチームごとに求められるスキルを明文化しましょう。進め方としては、思いつくすべてのスキルを書き出し、目的や目標にしたがって不要なものを削ぎ落していく「消去法」が、過不足なく絞り込めます。

次に、明確化したスキルをさらに細分化していきます。たとえば「PCの基本操作」をスキルを測りたい場合、「表計算ソフトをはじめとしたビジネスソフトの基本操作ができる」や「マクロによる業務効率化ができる」など、具体的な項目に分けていくとスムーズです。

その結果、具体的な評価事項が明らかになるほか、「仕事ができる人材が必要」といった漠然とした人事異動を防ぎ、求められる人材をスキルベースで比較できます。

(参照)独立経営法人労働政策研究・研修機構「職務構造に関する研究Ⅱ」

3. スキルのレベルを策定する

スキルの習熟度レベルを決めます。レベルは以下の例のように、ひと目で見て把握しやすい内容にまとめて、3~6段階程度に分けましょう。

【例】

  • レベル1:対象業務をやったことがない
  • レベル2:フォローしてもらいながらならできる
  • レベル3:時間はかかるが一人でできる
  • レベル4:一人でできる
  • レベル5:他人に教えられる

たとえば「レジを打てる」とひと口に言っても、「誰かに手伝ってもらいながらならできる」と、「繁忙時間でも一人でこなせる」ではそれぞれ貢献度は異なります。同じ評価では、従業員が不満に感じ、モチベーションが下がってしまうおそれもあります。

また、スコアをもとに評価することで、評価の公平性や納得感を高められると同時に、モチベーション向上にも一役買います。

4. スキルマップを作成する

これまでに策定したスキルの内容とスキルレベルを用いて、「スキルマップ」を作成します。スキルマップとは、従業員全員のスキルや習熟度、経歴などがひと目で把握できるように作成した表です。作成後は社内で共有するため、誰が見てもわかる構成を意識しなければなりません。

作成したスキルマップは運用しながら、必要に応じて修正を繰り返します。より高いクオリティにするために、定期的な従業員へのヒアリングや目標達成度の確認を通じて、改善していきましょう。

なお、厚生労働省の公式サイト内にある、「キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード」のページから、ひな形がダウンロード可能です。さまざまな職種のサンプルがそろっているので、どのようなマップを作成すべきかイメージが湧かない場合などに、参考にしてみてください。

(参考)「キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード」 - 厚生労働省

ツールによる効率的なスキル管理

SmartHRでは、従業員の保有スキル・熟練度を可視化する「スキル管理」機能を提供しています。

SmartHRのスキル管理機能

「スキル管理」機能では、従業員の保有スキル・不足スキルが一覧表示で管理可能です。スキル管理を通じた「人員配置の検討」や「キャリア研修の実施・効果測定」を効率的にサポートします。

以下の資料では、「スキル管理」機能が提供するメリットをわかりやすく解説しています。

3分でわかる!SmartHRのスキル管理

スキル管理をしないデメリット

スキル管理を進めなかった場合に起こり得る、2つのデメリットについて解説します。

社内リソースを十分に活用できない

スキル管理をしない場合、意図のない人事異動や偏った視点での配置転換により、社内の人的資源を十分に活用できなくなるおそれがあります。

たとえば、営業部での人材不足の深刻化を理由に、総務部から優秀なメンバーを補填したとします。この段階で一見、課題を解決したように見えますが、総務部で優秀とされるスキルを身につけている人が、営業部でも活躍できるとは限りません。営業部で求められるスキルが不足していれば、思うような業績を残せず、最悪の場合、モチベーションの低下から離職につながることも考えられます。

適材適所に配置できないことから、せっかくスキルの高い人材を有していても、実力を発揮できないまま放置してしまう「宝の持ち腐れ」という事態は避けるべきです。

コミュニケーションの鈍化・トラブルの発生

仮に、新規プロジェクトチーム発足時に、専門性を重視する余り、ヒューマンスキルを軽視した場合は、コミュニケーションの鈍化を招きます。未然に防げたはずのミスを報告できず、大きなトラブルへと発展してしまうおそれもあります。

「細かな進捗管理ができる」「心理的安全性の高いチームづくりができる」「メンバーが感じる課題をヒアリングできる」といったヒューマンスキルの管理も、目標達成には欠かせません。

スキル管理は組織目標の達成への第一歩

スキル管理には、一定の工数が求められます。しかし、従業員の保有スキルの把握により、人事異動や人員配置、採用活動、人材教育などのさまざまな場面において、データにもとづく客観的判断が叶えられます。

また、人事にまつわる決断事項のたびに、各部署やチームへのヒアリングも不要です。大きな組織目標を叶えるために、まずは従業員のスキル管理からはじめてみてはいかがでしょうか。

お役立ち資料

3分でわかる!SmartHRのスキル管理

FAQ

  1. Q1. どのようなスキルを管理すればよい?

    A.スキル管理の目的・目標に合ったスキルを重点的に管理します。スキルには、資格や専門知識、コミュニケーション能力など、幅広い能力が該当します。たとえば、接客の場合はコミュニケーション能力や提案力が、企画の場合は課題解決能力や分析力などが重視されるでしょう。

  2. Q2. スキル管理を効率的に実施するには?

    A.スキル管理の効率化を目指すには、スキルマップの活用が不可欠です。自社で表計算ソフトなどを利用して作成できますが、一から作成する場合は手間に感じるかもしれません。また、従業員数が増えるほど、管理の負担が大きくなってしまいます。

    社内で事前に運用方法を検討したうえ、専用ツールなどの活用をおすすめします。従業員のスキルを管理・育成し、適材適所へ配置するには、スキル管理が欠かせません。運用成功のためには、スキルマップを活用した一元管理が有効です。

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