【テンプレート付】内定通知書とは?法的効力や記載事項、注意点を解説
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目次
内定通知書は、採用選考の合格を正式に伝える重要な文書です。本稿では、内定通知書の基礎知識や作成のポイント、送付時の注意点まで、社会保険労務士 吉田 崇氏監修のもと解説します。テンプレートも用意していますので、ぜひ参考にしてください。
内定通知書とは
内定通知書は、企業が求職者に内定を伝えるための文書です。内定は企業と求職者のあいだに「始期付解約権留保付労働契約」がある状態を指します。内定通知書は選考合格通知後、求職者の入社意思が確認できた段階で送付するのが一般的です。
内定通知書を送付すると「条件付きの労働契約が成立した」とみなされます。そのため、送付後に企業側が合理的な理由なく内定を取り消した場合、労働契約法第16条にもとづき解雇権の濫用として違法となる可能性があります。この場合、損害賠償や慰謝料の請求を受けるリスクがあるため、慎重な対応が必要です。
採用通知書との違い
採用通知書は、求職者に最終選考の合格を伝える書類です。一般的な流れとして、採用通知書で合格を知らせたあと、求職者の入社意思を確認し、内定通知書を送付します。
どちらの書類も法的な送付義務はありませんが、内定通知書は労働契約の成立を示す重要な証拠となります。企業によって運用は異なり「採用内定通知書」として一本化しているケースもあります。中途採用の場合は「採用通知書」のみを送付することもあります。
内定承諾書との違い
内定承諾書は、内定者が企業に対して「内定を承諾し、入社する意思がある」ことを伝える書類です。内定者側から発する内定承諾書に対し、内定通知書は企業側から発するものという違いがあります。
一般的に内定通知書を送付する際に内定承諾書を同封し、内容確認後、入社の意思がある求職者が内定承諾書を返送する流れとなります。
雇用契約書との違い
内定通知書は条件付き労働契約の成立を示す書類であるのに対し、雇用契約書は民法や労働契約法で規定している雇用契約に関する事項を記載した書類です。雇用契約を締結することで、雇用主と被用者の法的関係が生じます。
一般的な流れとしては、内定通知書で契約合意を示し、その後雇用契約書を取り交わします。
労働条件通知書との違い
労働基準法第15条、および労働基準法施行規則第5条では、労働契約締結時に書面で採用する相手に対し労働条件を明示することを義務づけています。この要件を満たすものが労働条件通知書です。
内定通知書との大きな違いは、法律上の作成義務の有無にあります。労働条件通知書は、賃金、労働時間その他の労働条件を明示する法的書面であり、内定通知書の送付時または入社日までに交付する必要があります。
なお、労働条件通知書は電子交付も可能です。ただし、電子交付の場合は、事前に労働者の同意を得る必要があります。
書類の種類 | 主な特徴と違い | 備考 |
---|---|---|
採用通知書 | 最終選考の合格を伝える書類 |
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内定承諾書 | 内定者が入社意思を伝える書類 |
|
雇用契約書 | 雇用契約に関する事項を記載した法的文書 |
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労働条件通知書 | 労働条件を明示する法定文書 |
|
内定通知書がもつ法的効力
「内定」は企業が採用の意思を公的に示すものであり、内々定とは異なり法的拘束力をもちます。
内定通知書の発行と内定承諾書の返送を経て、「始期付解約権留保付労働契約」が成立するとされています。これは入社日を始期として、一定の解約権が留保された契約形態です。
法律上、内定通知書の発行義務はありませんが、労働契約成立の重要な証拠となります。そのため、内定通知書発行後の内定取り消しは、労働契約法第16条にもとづき法的には解雇と同じ扱いとなります。正当な理由なく内定を取り消すことは、労働契約法の「解雇権の濫用法理」により、違法・無効と判断される可能性があります。
「内定取り消し」ができるのは特定の事由に該当した場合のみ
企業側が採用予定者の内定を取り消す場合は、労働契約法第16条によって厳しい制限がかけられています。内定取り消しが認められるのは、以下のような場合です。
内定時の前提条件が満たされない場合:
- 学業成績不良による卒業不可
- 必要な資格・免許が取得できない
- 健康状態が業務遂行に重大な支障をきたし、合理的配慮を講じても解決が困難な場合
重大な信義則違反がある場合:
- 重要な経歴詐称
- 重大な犯罪行為
- 反社会的行為
やむを得ない経営上の事由がある場合:
- 企業の経営状況が著しく悪化
- 事業の縮小・廃止が避けられない
ただし、これらの理由に該当する場合でも、個別具体的な状況に応じて、内定取り消しの妥当性を判断する必要があります。とくに経営上の理由による内定取り消しには、以下の4つの条件を満たす必要があります。
- 経営を続けるために人員削減が必要であること
- 内定取り消しを回避するための最大限の努力をしたこと
- 内定者を対象者として選んだことが合理的であること
- 対象者への説明方法や説明の程度などが妥当であること
「内定辞退」は入社日2週間前までなら可能
民法第627条第1項において、内定成立後の求職者による内定辞退は、労働者の権利として認められています。罰則などはなく、企業もこの権利を守る必要があります。
内定辞退は入社日の2週間前までに行うのが望ましいとされています。入社日から2週間前を過ぎても内定辞退は可能ですが、企業側が内定辞退により被った損害について、不法行為にもとづく損害賠償請求が請求される可能性があります。ただし、実際に請求が認められるかどうかは、企業の損害の立証や裁判所の判断に左右されます。
内定辞退を受けた企業は、予定していた人員計画と配置に問題がないかを確認し、必要な対処を行います。内定辞退者が出ないよう、きめ細やかなフォローを行う、採用段階で内定辞退数を見込んでおくなどの事前対策を講じることが推奨されます。
内定通知書に記載すべき事項
内定通知書の体裁に法的な規定はなく、企業の裁量に委ねられています。基本的に以下の内容を記載するとよいでしょう。
日付 |
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氏名 |
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自社の会社名・代表取締役の氏名 |
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選考参加へのお礼 |
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内定決定の通知 |
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内定取り消し事由 |
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入社年月日 | |
労働条件 |
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同封書類の説明 |
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提出書類について |
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入社までのスケジュール |
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問い合わせ先 |
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内定通知書テンプレート
中途採用と新卒採用で記載項目に大きな差はありませんが、お礼の文章で以下のような差異をつけると気持ちが伝わりやすくなります。
- 新卒内定者:入社までの学生生活に一言触れる
- 中途採用者:これまでのキャリアを活かした活躍への期待や、在職中での応募への感謝を述べる
中途採用の場合、求職者は現職の業務と並行して入社準備をする必要があるため、手続きがスムーズに進むよう以下の点に注意します。
- 記載漏れや誤りがないか入念にチェック
- 返送期日に配慮する
なお、テンプレートはあくまで一般的なものです。自社の実態に合わせて内容を調整してください。
内定通知書の送付方法
送付時期
内定通知書は面接日から10日以内に送ることが望ましいとされています。ただし、企業の規模や選考プロセスによって異なるため、具体的な送付時期は企業ごとに柔軟に設定する必要があります。なお内定を通知する時期が遅くなるほど、その間にほかの企業の選考が進んだり、内定を承諾したりするリスクが高まります。
あらかじめ、何日以内に通知するかを面談時に伝えておくとよいでしょう。
送付方法
内定通知書の送付方法は、郵送とメールの2種類があります。法的効力がある書類のため、書面での発行・送付が一般的です。
郵送の場合は以下の点に注意します。
- 封筒に「親展」と記す
- 紛失を防ぐため、書留やレターパックなどで送付
- 返送書類がある場合は、宛先を記入し切手を貼った返信用封筒を同封
中途採用の場合、同居する家族に転職することを知らせていない場合もあるため、「親展」と記すことで家族間のトラブルを防ぎます。
メールで送付する場合は以下の点に注意します。
- 事前に合否連絡をメールで行うことを伝えておく(労働者の同意を得ること)
- 送付後は開封確認機能や電話で届いたことを確認する
- データの改ざん防止措置を講じること
- 労働者がいつでも出力できる状態にすること
同封する主な書類
内定通知書を送る際に同封される一般的な書類は以下の2つです。
- 内定承諾書
- 返送してもらうことで、内定辞退を避ける効果が期待できる
- 労働条件通知書
- 内定通知書に労働条件を記載しない場合に必要
内定通知書を作成する際の注意点
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(1)会社印を押印する
内定通知書は会社が発行する正式な書類です。正当性を担保するため、以下のいずれかの方法を採ります。
- 代表者印または社印の押印
- 電子署名法に基づく電子署名
- デジタル発行システムでの発行(電子認証付き)
またコピーなどの偽造を防ぐため、社印や通し番号の割り振りなどを行います。
(2)書き間違いがないか確認する
作成した書類には複数人の目を通すとよいでしょう。とくに宛先や内定者の氏名、入社日、労働条件などは、募集時の内容と相違がないよう注意が必要です。また個人情報の取扱いにも注意し、誤送付を防ぐチェック体制も整えておきましょう。
(3)内定承諾の返送期間に配慮する
内定承諾の期間は一般的に10日から2週間程度です。ただし、求職者にとって重要な決断であり、他選考との兼ね合いもあるため、求職者から期限延長の申し出があれば、事情を聞いて適切な期間を設けましょう。
(4)雇用形態にあわせて対応する
パートタイムや契約社員の方への内定通知書も、基本的な考え方は同じです。ただし、契約期間や更新など、記載する項目が変わってきます。
以下の場合は求職者と合意のうえで内定通知書の送付を省略することもあります。
- ごく短期間の契約の場合
- 内定から入社までの日数が極端に少ない場合
ただし、労働条件通知書の交付は法的義務であるため、省略することはできません。
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