納得感を醸成するSmartHR社の「人事評価 運用プロセス」
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こんにちは、SmartHRで組織人事として人事評価制度の運用・改善を担当している松本です。
SmartHR社では、2022年よりSmartHRの人事評価機能を利用しています。本記事では、SmartHR社における人事評価機能の使い方や、社員の納得感を高めるための工夫をご紹介します。
※本稿は2023年12月19日に開催したオンラインセミナーをもとにしています。
人事評価は社員の成長へつなぐ機会提供の場
評価業務は人事制度の運用を支える重要な業務です。人材獲得競争の激化や働き方の多様化が進むなか、評価業務における「納得感の醸成」は、これからの人事にとって不可欠な取り組みです。
評価というものは、社員の査定のためにするものではありません。翌期以降の成長につなげるための機会提供です。そのため、社員が前向きに成長へ向き合える評価制度を実現するために、納得感を高める工夫が必要です。また工夫・改善に着手するためには、より効率的に評価を運用する仕組みの構築も重要となります。
SmartHR社の人事・評価制度の構成
社員のレベルを「等級」で設定し、目標・評価・報酬に反映
当社では、事業戦略にひもづいた人事戦略の達成のために、「等級」「評価」「報酬」といった人事制度を構築しています。
等級制度は、個人がもっている能力や経験をベースに、社内の人材をレベリングする仕組みです。この等級によって、評価における目標の難易度を決めています。設定した目標に対しての実績を評価によって測定し、その評価結果をもとに報酬を決定しています。
「SmartHR社では何を大事にするのか?」を示す評価指標
評価制度は社員のあるべき姿を示したものです。当社では、「SmartHR社では何を大事にするのか?」を組織に浸透させていくためのルールブックという位置づけをしています。評価指標には、「ミッション達成度」と「行動評価」を掲げています。
「ミッション達成度」は成果評価に近い概念で、期初に立てた目標の達成度合いを測る指標です。「行動評価」はミッションを達成していく過程でどのような行動が発揮できたか、を測る指標で、当社で働くメンバーに共通で求めたいコーポレートバリュー7つと、「チームで働く技術/HRT」を評価項目としています。
評価の納得感を高めるための工夫
SmartHR社では、評価の納得度を高めるために4つの工夫をしています。
(1)期初の正しい目標設定に力をいれる
目標が適切に設定できていないと、評価のタイミングで不公平感が生まれる原因となります。そのためSmartHRでは、「期初に等級・役割に応じた適切な難易度で目標設定をする」ことに力をいれています。具体的な取り組みとしては、評価者・被評価者双方を対象にした、目標設定の重要さやよい目標の立て方に関する研修をしています。
さらに今後は、組織ごとに目標のレビューを行うなど、等級ごとの不公平感や難易度の差を確認するプロセスなども検討しています。
(2)サプライズを起こさない3か月ごとのフィードバック
当社の評価期間は、1月~6月の上期、7月~12月の下期の年2回サイクルです。一方で、目標設定をしてから期末まで一度もフィードバックがないとサプライズ(※)が起きやすくなります。そのため、3か月が経った段階で中間評価を実施し、評価者と被評価者の間で定期的にすり合わせています。
※サプライズ:評価者と被評価者の間で評価のズレが生じること
(3)ピープルマネジメントの責任を明確にする評価体制
課長が一次評価、部長が二次評価、人事が最終評価をする、というプロセスをよく聞きます。しかしこの体制では、被評価者に対するピープルマネジメントの責任や、どの評価者の評価を重視すべきかがあいまいになりがちです。被評価者を直接見ていない二次評価者の場合は、「正直どのような評価を付けていいのかわからない」という悩みを抱えることもあるでしょう。
そのため当社では、本人に一番近い直属の上長が評価決定権をもつようにしています。
しかしメイン評価者である直属の上長も、被評価者の一挙一動をすべて見ることはできません。そのため、業務で関わった第三者からのフィードバックを参考情報として集め、評価を決める仕組みにしています。
(4)各グループの評価会議で実施するキャリブレーション
各部署ごとに評価会議を実施し、キャリブレーションをしています。
評価者ごとのばらつきを防ぐために、被評価者とメイン評価者間の評価ギャップを見ながら、評価の妥当性を他の評価者にも確認してもらいます。とくに、「行動評価」の評価基準はばらつきやすいため、評価に至った理由・エピソードを具体的に共有し、調整しています。また、評価結果だけでなくフィードバックの内容も必要に応じて精査し、被評価者の納得度を高められるようにしています。
また、評価者研修の実施や、評価会議への参加を通じて、経験が浅い評価者も評価基準・ポイントを学べる体制を整えています。今後は、被評価者向けの研修も実施し、定性評価の納得感向上にも取り組んでいきます。
SmartHR社における人事評価機能の使い方
評価プロセスの改善に取り組むためには、より効率的に評価を運用できる仕組みの構築も必要です。ここからは、当社における人事評価機能の使い方や、以前の運用と比較して改善した点をご紹介します。
以前は表計算ソフトで評価シートを運用
以前は、クラウド表計算ソフトで評価シートを作成しており、多くの課題を抱えていました。
- 全社員分の評価シート作成・ファイルURLの配付に時間がかかる。
- 評価入力期間を長く要する。
- 被評価者と評価者にバイアスがかからないよう同時入力させない運用のため、自己評価とメイン評価を同時進行できない。
- ファイルの閲覧権限の設定・管理が煩雑。ミスが生まれやすい。
- 評価の修正があった際の正誤情報の確認がしにくい。
- 現場で修正した評価と人事の集計にズレが生じてしまう。
人事評価機能に置き換えて感じたメリット3つ
(1)全社員分の評価シートの作成・配付の工数削減
現在は、SmartHRの人事評価機能で評価シートを作成・配付しています。表計算ソフトで作成していた評価シートの内容を再現しました。
人事評価機能では、テンプレートとして評価シートを作成できます。テンプレートを数個つくれば、被評価者個人ごとの評価シートをワンクリックで配付できます。
(2)閲覧権限の設定・管理が簡便化。評価入力期間を短縮
管理者が評価フローを作成する画面では、目標設定・中間評価・期末評価それぞれにおけるステップや、入力担当者を細かく設定しています。
閲覧権限は、目標設定・中間評価・期末評価のステップごとに設定しています。
この評価フロー・閲覧権限の設定により、被評価者とメイン評価者がお互いの入力内容を閲覧できないように設定できるため、評価入力の同時進行が可能になり、評価入力期間が短縮できました。また、当社が大事にしている「被評価者と評価者にバイアスがかからない仕組み」も継続して実現できています。
(3)リマインドにかかる工数の削減
評価一覧画面で評価進捗を確認できるため、リマインド対象者の割り出しが簡単になりました。また、自動でメール通知されるリマインド設定もしており、チャットツールでの手動リマインドの頻度を減らすことができました。
評価データから組織課題を発見、さらに従業員の声も集めていく
SmartHRでは、さらに事業成長をドライブさせる人事評価制度を実現するために、今後もさまざまな取り組みを検討しています。
(1)評価データの幅広い活用
部署を越えた人員配置やマネジメント登用に、評価データをうまく使える仕組みの構築を進めています。また、評価データをもとに組織課題を分析し、研修プログラムなどの人材育成施策につなげる仕組みも作りたいと考えています。
(2)評価に関するサーベイの実施
現在も数か月に一回は評価の納得度に関するアンケートを取っていますが、評価制度や運用自体に対する声は集めきれていません。SmartHRのサーベイ機能を用いながら、幅広く収集していきたいと思います。
SmartHRは2024年から新たに人事戦略を策定しました。事業戦略や人事戦略を実現するために、今後も人事業務の効率化と人事制度の改善を進めていきます。