「負けないためにHRテクノロジーを、勝つためにピープルアナリティクスを」鹿内学さんが語る人事データのサイエンス

2019.09.19 ライター:藤田隼

2019年5月14日、日本の人事部主催「HRカンファレンス2019 -春-」が開催されました(後援・厚生労働省、経済産業省)。

同イベントで、SmartHR 代表取締役の宮田 昇始が、パネルセッション「社内に眠る人事データの活用で、組織にイノベーションを起こせるのか」のモデレーターとして登壇。

ヤフー株式会社 Yahoo!アカデミア学長 / 株式会社ウェイウェイ 代表取締役 伊藤 羊一さん、株式会社シンギュレイト 代表取締役 鹿内 学さん、株式会社サイバーエージェント 人材科学センター 向坂 真弓さんの、3名のパネリストと宮田の計4名でディスカッション内容を全5編でお届けします。

1本目となる本稿では、株式会社シンギュレイト 鹿内さんの取り組みをご紹介します。

人事の現場に必要なサイエンス「ピープルアナリティクス」

宮田
登壇者3名の人事データにまつわる取り組みをお聞きした後、パネルディスカッションに移ります。まず、鹿内さんからお願いします。

鹿内さん
株式会社シンギュレイトの鹿内と申します。シンギュレイトのほか、ミイダス株式会社ではHR領域のデータサイエンスに、株式会社LIFULLではAI戦略室のアドバイザーにそれぞれ携わっています。本業はどれかとよく質問されますが、3つとも大切な仕事ですね。共通点として「データサイエンス」があるので、仕事間の相乗効果もあります。

 

まず、人事の現場で「サイエンスをしましょう」というお話をさせてください。最近は、テクノロジーと共にサイエンスが競争優位性をつくっていて、人事におけるサイエンスを「ピープルアナリティクス」と呼びます。

私は大学教員として10年ほど研究畑にいたのですが、サイエンスの発展で一番貢献が大きいのが、「見る・観察する」の部分。これは、「見る」ことで議論が始まるからです。ピープルアナリティクスでも、まず、データを集めて、見てみることが大事だと思います。

少しだけ、HRテクノロジーとピープルアナリティクスがどう違うのかについてお話します。

前提として、HoloEyes社の新城 健一さんが新規事業開発で使われている言葉を、人事に当てはめて拝借すると、意思決定には「みえる・わかる・できる・かわる」の4段階があります。

人事担当者が関わるのは「できる」の部分で、働き方の改善や異動といった組織が回る施策を行うことで「かわる」を実践していると思います。

経営者やマネージャー、人事、社員といった「誰」が理解すべきか。誰がどこを見て何のために理解するのかも整理が必要です。

左上がピープルアナリティクス、右下がHRテクノロジーです。たとえばSmartHRさんは労務管理だけでなく、そこで蓄積した人事データを活用するピープルアナリティクス領域にサービスを広げてきていますね。

 

人材や組織を見るためのデータには、いくつかあります。

ちょうど4年前、大学からビジネスサイドに来て、そのときからセンサーデータを使ったピープルアナリティクスの取り組みをしていました。

その中で、生体データや入室・入館ログ、特には、働く人たちの関係性がわかるコミュニケーションにまつわるデータ活用に注目しています。

注意すべきデータの品質。「相関係数 0.54」で起こりうること

こちらは1998年の論文ですが、データの品質はこのようになっています。

上の「精度の高い採用基準」の5つは、試験に参加した後に活躍する方々のパーセンテージと相関係数を出したものです。一番上の「実務試験」は、相関係数0.54となっています。

「相関係数0.54」とはどのような意味を持つのか? こちらの図をご覧ください。

横軸を「採用基準・評価指標」、縦軸を「入社後活躍」とすると、データはこれぐらい分散します。

たとえば横軸の「採用基準」で上位半分の人材を採用する場合、実は結構もったいないことが起きてしまうんです。

なぜなら左上の象限に当てはまる、本来活躍しただろう人材を採用し損ねているから。逆に、活躍が見込めない右下の象限の人材を採用してしまうというパターンも出てきます。

人事データの品質が高い場合にも、この程度です。

データの質が低いからやらなくては良いと言いたいのではありません。暗闇を全力で走るくらいなら、このデータに明かりを灯してもらった方が、当然良いです。

現状のデータの品質を見極めて、意思決定にデータをどのくらい参照するか、常に考えていく必要があります。

データは「見る」だけでも効果あり

データ分析は、データを「見る」だけでも効果があります。

たとえば、会社への意識調査をすることで、不満を持つ部署がわかる。しかし、表だけでは不十分です。

真ん中の図で、表からグラフとして可視化すると、不満の多い部署の1番目と2番目はわかるけど、3番目はまだわかりにくい。

なのでこれを並べ替え、一番右の図にします。もし仮に、不満が多い部署から課題解決する意思決定をするなら、この順番でやっていけばいいというのはわかりやすいですよね。

HRテクノロジーで「競争劣位」を防ぎ、ピープルアナリティクスで「競争優位」をつくる

でも、正直なところHRテクノロジーの導入自体が競争優位をつくるとは思っていません。

たとえば、SmartHRさんの導入は非常に簡単ですよね。逆に言えばやらないと負けちゃいます。つまり、“競争劣位”を防ぐのがHRテクノロジーなんです。

そして、自社に合わせた人事データを利用して、サイエンスしていくことで人事的な“競争優位”をつくっていく。

ピープルアナリティクスの未来は、人事の現場にかかっているんですね。

 

テクノロジーやサイエンスには、現場のユーザーが大事という話しをします。たとえば、中国のECサイトである「アリババ」は「楽天市場」の20倍利用されています。

日本と中国の人口は10倍差なのに、なぜ20倍なのかというと、中国では日本の約2倍ECサイトが浸透しているからではないでしょうか。つくる側だけでなく、現場のユーザーがテクノロジーを育てている例ですね。

人事にも同じことが言えます。日本の人事の中でテクノロジーやサイエンスを発展させるためには、現場が利用することが何より大事です。

負けないためにHRテクノロジーを、勝つためにピープルアナリティクスを活用していってほしいと思います。

(了)

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藤田隼

SmartHR ガイド編集長。ソーシャル系スタートアップでSNSマーケティングや自社メディア運営に携わり、2015年よりメディアに特化した事業会社で複数サイトの制作ディレクターを経験した後、SmartHRにジョイン。
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