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4月施行・労働安全衛生法改正「ストレスチェック対象拡大」と「高年齢労働者対策」実務対応まとめ

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目次

2026年4月に改正・労働安全衛生法が施行されます。今回の改正で人事・労務担当者が注意するべきは、「ストレスチェックの対象拡大」と「高年齢労働者対策」という全企業に影響する2項目になります。

本稿では、上記2項目について「誰が・何を・どこまで」やるべきなのかに絞った「実務対応のToDo」を紹介します。

「改正・安衛法」全企業対象の2項目とは

改正法の施行によって、人事・労務担当者には準備が必要になります。まずは、ストレスチェック対象拡大と高年齢労働者対策の概要をおさらいしましょう。

今回の改正で人事・労務担当者が注意するべきは、「ストレスチェックの対象拡大」と「高年齢労働者対策」という全企業に影響する2項目になります。

(1)ストレスチェック対象拡大

ストレスチェックとは?

正式名称は、労働者に対して実施する「心理的な負担の程度を把握するための検査」といいます。内容は、ストレスに関する質問票に労働者が記入して、それを集計・分析することで、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査です。

2015年12月から、毎年1回、この検査をすべての労働者(契約期間が1年未満の労働者、通常労働者の4分の3未満の短時間労働者は対象外)に実施することが義務づけられました。

2015年12月から、毎年1回、ストレスチェック検査をすべての労働者(契約期間が1年未満の労働者、通常労働者の4分の3未満の短時間労働者は対象外)への実施が義務づけられました。

出典:「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表します|厚生労働省

実施義務の対象

これまでは、「法的義務」の対象が労働者数50人以上の事業場となっていました。

  • 法的義務:労働者数50人以上の事業場
  • 努力義務:労働者数50人未満の事業場
    • 法人単位ではなく”事業場単位”で人数カウント

法改正による変更点

これまでは努力義務となっていた「労働者数50人未満の事業場」も法的義務の対象となり、範囲が拡大されるので要注意です。

ただし、50人未満の事業場の負担などに配慮し、施行までの十分な準備期間を確保するため、正式な施行日は「公布日(2025年5月14日)から政令で定める3年以内の日」とされています(2026年3月15日時点では未確定)。

法改正の背景と狙い

規模を問わないすべての事業場において、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止と、職場環境改善の実効性を高めるため、とされています。

(2)高年齢労働者に対する労働災害防止の対策・措置

対象範囲と法的義務

すべての事業者(企業)が対象となります。努力義務となっている一方で、労働災害発生時には「予見可能なリスクに対する対策を怠った」として、安全配慮義務違反(損害賠償責任)が認められる傾向もみられるので、実務上では一定以上の対策・措置が求められます。

講じるべき対策・措置の概要

  • 安全衛生管理体制の確立(方針表明と体制整備)
  • 職場環境の改善(ハード面・ソフト面の対策)
  • 高年齢労働者の健康や体力の状況の把握(健康状況・体力状況の把握)
  • 高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応(個々の健康や体力の状況を踏まえた対応)
  • 安全衛生教育(高年齢労働者、管理監督者などに対する教育)

法改正の背景と狙い

高齢化社会において増加する高年齢労働者の労働災害防止を図る為、年齢による身体機能低下や健康状態を踏まえ、作業内容・環境の見直し、健康管理、教育訓練などにより、安全で安心して働ける職場づくりを推進するもの、とされています。

ストレスチェック対象拡大の実務対応

ストレスチェック実施のフローは、厚生労働省が公表している「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」に掲載しています。ここでは実施に向けて準備する内容とスケジュールをご紹介します。

対象者の確認、受検義務、医師の面接指導、実施体制など実施に向けて準備する内容とスケジュールを記載しています

変更の要点

今回の改正は、単なる対象範囲の拡大のみならず、"ストレスチェックの特性"を考慮した小規模事業場ならではの運用上の難しさもあるので、しっかりとした事前準備が必要です。

実務上のポイント

前提として、ストレスチェックの受検対象者が少ない小規模事業場は、とくにプライバシーが保護される環境づくりを強く意識しながら進めていくことが、何より重要です。

対象者の確認

ストレスチェックの対象者となる「常時使用する労働者」とは次のいずれの要件も満たす者(一般定期健康診断と同様で、契約名称や国籍などは問われない)となります。まずはしっかりと確認しておきましょう。

  1. 期間の定めのない労働契約により使用される者であること
    • 期間の定めのある労働契約により使用される者であっても以下は対象となります
      • 当該契約の契約期間が1年以上である者
      • 契約更新により1年以上使用されることが予定されている者
      • 1年以上引き続き使用されているもの
  2. その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上であること
    • 1週間の労働時間数が通常の労働者のおおむね2分の1以上である者に対しても、ストレスチェックの実施が望まれます。
      • 派遣労働者は派遣元に実施義務があります

受検義務

一般定期健康診断とは異なり、ストレスチェックでは労働者に受検義務が課されていません

しかし、効果的なものとするためにも、できるだけ対象者全員の受検が望まれます。そのため、周知方法の工夫や受検勧奨が必要です。

医師の面接指導

対象者から申し出があった場合は面接指導を実施する義務があります。産業医の選任義務がない事業場は、無料で利用できる最寄りの「地域産業保健センター」などの外部委託を事前に確認・検討しておくと安心です。

集団分析・職場環境改善

事業規模に関わらず努力義務とされていますが、部署ごとの人数なども十分に考慮しつつ、実施有無の慎重な検討が必要です。

実施体制

事業場内における「実務担当者の選任」と、小規模事業場においては労働者のプライバシー保護の観点から「実施者と実施事務従事者の選任・配置」を含めたストレスチェックの実施そのものを外部委託することが推奨されているので、体制構築の検討を早めに進めましょう。

実施から結果の管理・保管までの流れとその詳細については、「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」が厚生労働省から公開されているので、ぜひご参照ください。

参考:「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表します|厚生労働省

施行日を見据えた進め方のイメージ

3月までに「対象者確認・方針確定」「実施体制の構築」までを進め、4月以降は委託先と連携して実施しましょう。

  • 2026年3月までに
    • 対象者の確認、自社の方針確定、実施体制の構築
  • 2026年4月から
    • 以下の図の流れに沿って早めに着手・進行
方針表明・関係者の意見聴取・ルール策定と周知・実務担当者選任・委託先の選定と決定・実施まで、早めの着手・進行がポイントです。

出典:「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(P3)|厚生労働省

高年齢労働者に対する労働災害防止(健康面談)の実務対応

映像でもわかりやすく解説しています。ぜひご覧ください!

2026年4月から、高年齢労働者を「安全に働かせるための措置」が努力義務として事業者(企業)に求められるので、対応漏れがないように施行日までの残りの期間でしっかりと確認しておきましょう

変更の要点

2026年4月から、高年齢労働者を「安全に働かせるための措置」が努力義務として事業者(企業)に求められるので、対応漏れがないように施行日までの残りの期間でしっかりと確認しておきましょう。

実務上のポイント

上記でも記載した「講じるべき対策・措置の概要とは?」の項目のうち、とくに高年齢労働者の「健康・体力状況の把握」(健康面談)にフォーカスしてポイントをご説明します。

  • 安全衛生管理体制の確立(方針表明と体制整備)
  • 職場環境の改善(ハード面・ソフト面の対策)
  • 高年齢労働者の健康や体力の状況の把握(健康状況・体力状況の把握)
  • 高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応(個々の健康や体力の状況を踏まえた対応)
  • 安全衛生教育(高年齢労働者、管理監督者などに対する教育)

すべての項目の詳細について、以下の記事で紹介しているので参考にしてください。

(1)対象者の確認

法改正における「高年齢労働者」の定義については、明確な年齢基準までは定められていません。しかし、それぞれの企業方針に合わせて55歳以上あるいは60歳以上を目安に、対象者を確認しておくとよいでしょう。

(2)体制整備

実施する担当者については、要配慮個人情報にも触れるため、人数を限定して社内での適任者を設定するなど、適切な体制整備を進めておくことが大切です。

(3)事前準備

健康面談の場で、いきなり本人に健康状態などを聞くのではなく、直近の健康診断結果などもあらかじめ確認・把握しておくことや、「困りごと」を具体化するヒアリングシートも準備しておくとスムーズです。

(4)面談実施

なるべく本人から本音の回答を引き出すためにも、「最近調子はどうですか?」といった曖昧な質問ではなく、ヒアリングシートに沿って具体的な作業シーンを想定した質問を投げかけるようにしましょう。

事後対応

面談結果をもとに、産業医等の専門家の意見も聞きながら、速やかに必要な配慮の検討や対応を進めつつ、ストレスチェックと同様に情報管理にも注意しましょう。

(5)施行日を見据えた進め方のイメージ

  • 2026年3月までに
    • 担当者の設定、対象者の確認、面談実施フローの確立
  • 2026年4月から
    • 対象者の面談設定・実施、面談結果に基づいた配慮・措置の検討と対応

これだけやればOK!対応スケジュール&To Doリスト

これまでの内容を実務に落とし込んだ対応スケジュールとTo Doリストをご紹介します。以下よりダウンロードして、ぜひご活用ください。

「労働安全衛生法改正」スケジュール&To Doチェックリストをダウンロードする

対応スケジュール(目安)

「4月の施行までに間に合わないかも……」と不安になる人事・労務担当者もいるのではないでしょうか。結論として、2週間で実施までの準備は完了できます。準備から実施後までの具体的なスケジュールもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

項目/時期
3月中旬
3月下旬
4月
5月〜
ストレスチェック
  • 対象者の確認
  • 方針確定と表明
  • 外部委託先の検討
  • 社内予算の確保
  • 関係労働者等への意見聴取、審議
  • 実務担当者の選任
  • 実施体制の構築
  • 外部委託先の確定、契約締結
  • 社内ルールの作成、周知
  • ストレスチェックの実施時期等の決定
  • 調査票及び高ストレス者の選定方法の決定
  • 調査票の配付、回収、受検勧奨
  • 結果の通知、保存
  • 面接指導の申出、勧奨、実施
  • 医師からの意見聴取、就業上の措置
  • 記録と保存
  • 集団分析後の職場環境改善
高年齢労働者の健康面談
  • 対象者の確認
  • 面談フローの検討、準備
  • (安全)衛生委員会での審議、検討
  • 担当者の設定
  • 実施体制の構築
  • 面談フローの作成、周知
  • 健康面談の実施時期等の決定
  • ヒアリングシートの作成
  • 対象者への打診、日程調整
  • 事前の健診結果等の確認、準備
  • 面談実施
  • 実施結果に対する産業医等の意見聴取
  • 就業上の配慮措置の検討、対応
  • 記録と保存

To Doリスト

  • □ 今回の安衛法の法改正内容はしっかりと把握・理解できているか
  • □ 自社で対応すべき範囲と内容は明確になっているか
  • □ 要配慮個人情報等を取り扱う前提での社内担当者は決まっているか
  • □ ストレスチェックと高年齢労働者の各対象者の確認はできているか
  • □ 会社方針の検討・決定・周知はできているか
  • □ 社内での必要な予算は確保できているか
  • □ 関係労働者への意見聴取や(安全)衛生委員会での必要な審議・検討はできているか
  • □ 産業医等の確保や外部機関への委託の検討・手配はできているか
  • □ 運用に関わるシステム導入有無の検討や契約はできているか(デジタル化含む)
  • □ 実施後の記録や保管が適切にできる仕組みは構築できているか

何よりも「早めの着手」が重要

今回取り上げた2つのテーマについては、いずれも要配慮個人情報を含めた従業員の大切な健康情報を取り扱うため、「誰が」「何を」「どこまで」担当するのかが、大事なポイントになります。

また、本改正によってストレスチェックの実施は小規模事業場にまで拡大されます。厚生労働省公表のマニュアルでも推奨されているとおり、自社内ですべてを対応するのではなく「外部委託」の活用も上手く検討しながら進めることが効果的です。

なお、外部の委託先の候補探しや選定、社内での予算確保など、意外に幅広い対応が必要で、時間がかかるものも多いため、早めに着手することが何より重要です。

ぜひ、人事・労務担当者にとっての繁忙期(6~7月上旬)を迎える前に、計画的に対応を進めて、従業員がより健康的に働ける環境をつくっていけるように一緒に頑張っていきましょう!

お役立ち資料

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