産後の復職前に知っておきたい「申し出」と「請求」って?
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こんにちは、アクシス社会保険労務士事務所の大山敏和です。
平成29年1月1日から、改正「育児・介護休業法」が施行されたことにより、男女ともに離職することなく働ける環境づくりが進みました。
お子さんがいる家庭であれば、「子育て」を意識したワークライフバランスを考える機会は多いと思います。
今回は従来法(平成21年改正法)をもう一度振り返り、法律改正後も意識すべき内容を解説いたします。「出産後の育児と労働の両立」にさまざまな選択肢があることを理解し、働き方を改めて考えるキッカケになればと思います。
職場に戻るために必要な、2つの「申し出」の方法
出産後8週間を経過した女性労働者が職場に戻る際には、
・育児休業
・所定労働時間の短縮
のいずれかを申し出ることになります。申し出ることは、産後8週間以内に行う必要があります。
このいずれも、「申し出」でよく、企業はこれに異議を唱えることはできません。育児休業か所定労働時間の短縮の申し出には、企業には就業規則等で明記しなければならない義務があるからです。
「育児休業」の申し出
育児休業の仕組みに関しては、「パパ・ママ育休プラス」を参照していただければと思います。育児休業を申し出ると、この休業期間中に企業の就業規則等で給与が出なくとも、金銭を受け取ることができます。
雇用保険から当初180日間は、給与の67%、その後は50%が支給されます。育児休業の期間は、生まれた子供が1歳になるまで適用されます。また、「パパ・ママ育休プラス」をうまく使えば、1年2か月間までに期間が延長されます。
「所定労働時間の短縮」の申し出
何らかの理由で夫婦揃って育児休業を取れない場合、夫婦の一方が育児休業を申し出て、他方が所定労働時間の短縮を申し出るということがあるでしょう。
所定労働時間の短縮は、1日何時間にするかを対象者が自由に決めるわけではありません。就業規則等で1日6時間を超える所定労働時間に対し、1日6時間(行政通達では1日5時間45分から6時間)と企業が定めることになります。期間としては生まれた子が最長で3歳になるまで適用されます。
労働時間帯を選ぶ際の、3つの「請求」の方法
育児休業か所定労働時間の短縮を申し出た後(あるいは申し出ていなくても)、育児に合わせた労働時間帯を選択することができます。その「請求」の方法は以下の3パターンです。
①所定労働時間外労働の免除
②時間外労働の制限
③深夜労働の制限
上記の選択肢のうち、②と③をともに請求することも可能です。こちらは、「申し出」ではなく「請求」と表現されます。事業者がこの請求を認めることで「事業の正常な運営」が妨げられる場合、事業主はこの請求を拒むことができます。
①「所定労働時間外労働の免除」の請求
この申請が認められれば、生まれた子供が最長3歳になるまで所定労働時間外の労働を免除することができ、子育てへの注力が可能となります。
②「時間外労働の制限」の請求
この申請が認められれば、生まれた子供が最長で小学校に就学するまでの時間外労働を制限することができ、残業時間を1ヶ月で24時間まで、1年で150時間までにすることができます。
③「深夜労働の制限」の請求
この申請が認められれば、生まれた子供が最長で小学校に就学するまで、深夜帯(午後10時から翌午前5時まで)の労働を制限できます。
「申し出」と「請求」を組み合わせて最適な働き方を
さまざまな条件はありますが、育児のために退職をしなくても済む職場環境の整備が法的にされています。これらの制度は正社員だけの話ではなく、有期労働者やパートタイマー等にも適用されます。
上記の方法を確認することで、育児に専念できる環境を整備し、ご自身に合った働き方を考えてみるのも良いでしょう。