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2026年注目の人事・労務トピック10選【社労士が解説】

公開日

この記事でわかること

・2026年に人事・労務担当者が注目するべきトピックス
・対応すべき時期感や、関連する役職者
・2026年の法改正に伴う対応業務の概要

目次

こんにちは。 社会保険労務士法人名南経営の大津です。

今年もこの時期がやってきました。毎年恒例の2026年注目の人事・労務トピックを解説します。法改正はもちろん、日常の業務にかかわる重要なニュースもランダムに含めていますので興味のあるものから読み進め、2026年に取り組むべきテーマ設定の参考にしてください

トピック1:初任給上昇・賃上げへの対応

【時期】年明けすぐ
【関連する役職】人事・労務担当者、経営者

約30年もの間、低水準にあった日本の賃上げですが、2023年以降、大幅な賃上げに転じています。日本労働組合総連合会(連合)の集計によれば、2025年の春闘では2年連続の5%を超える高水準の賃上げとなりました。

出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構「賃上げ率は2年連続で5%台を達成。ベア分は物価上昇を上回る水準を確保

初任給も上昇し、産労総合研究所の調査によれば、2025年4月入社の新卒社員の初任給平均は大卒で239,280円(前年比5.0%増)、高卒で198,173円(前年比5.37%増)となっています(下図を参照)。とくに、大卒では30万円を超える初任給を設定する企業も増加しています。

出典:産労総合研究所「2025年度 決定初任給調査(2025/7/7)

この賃上げの傾向は、2026年も継続が確実視されています。連合が2025年10月に公表した「2026春季生活闘争基本構想」のなかでは、全体の賃上げの目安を「賃上げ分3%以上、定昇相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め5%以上」としており、さらに中小組合については格差是正分を積極的に要求するとしています。

日本銀行の見通しでは今後の成長ペースは伸び悩むとされているものの、現状では大手企業を中心に企業業績は好調であり、物価の上昇も続いているため2025年に近い賃上げを想定する必要があります

賃金制度の観点では、ここ数年のベースアップによって賃金カーブがフラット化する傾向が強まっており、30代・40代のミドル層の不満が高まるケースが散見されます。ベースアップの流れが定着したことから、2026年は賃金制度の見直しを検討する企業が増加するでしょう。

参考:日本銀行「経済・物価情勢の展望(2025年10月)

トピック2:最低賃金の大幅引き上げへの対応

【時期】2026年秋
【関連する役職】人事・労務担当者、経営者

2025年の最低賃金の引き上げは過去最高の6.3%となり、全国加重平均は1,121円となりました。これにより多くの企業で最低賃金割れによる賃金引き上げが行なわれましたが、2026年も昨年同水準もしくはそれ以上の水準での引き上げが予想されます。

骨太の方針2025(経済財政運営と改革の基本方針2025)で示されている最低賃金の引き上げに関する方向性は以下の2点となっています。

  1. 2020年代に全国平均1,500円という高い目標の達成に向け、たゆまぬ努力を継続する。

  2. 地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げる等、地域間格差の是正を図る。

出典:内閣府「経済財政運営と改⾰の基本⽅針 2025」

これを受けて、2025年の最低賃金は東京・大阪などの大都市圏で63円の引き上げとなった一方、最低賃金が低い水準にある地方は熊本の82円、大分の81円、秋田の80円と目安を大きく超える大幅な引き上げが行なわれています。政権交代によりこの方針になんらかの修正が行なわれる可能性もありますが、諸外国の最低賃金と比較しても、基本的には従来の方針は維持されると考えるのが自然でしょう。

最低賃金の引き上げは、地方の企業にとって非常に大きな負担となります。この傾向は2026年も続くと見込まれるので、引き続き設備投資や価格転嫁などによる生産性の向上を進めていきましょう。

また、大幅な最低賃金の上昇により、とくにパートタイム労働者において多くの従業員の賃金が最低賃金で横並びになる状況が発生しています。これにより先輩パートタイム労働者のモチベーションが低下するなどの課題が浮き彫りになっていますので、職務内容に応じた時給設定の仕組みなど、パートタイム労働者の賃金体系の整備も急務です。

参考:厚生労働省「最低賃金制度

トピック3:ハラスメント防止措置の強化

【時期】2026年夏ごろ
【関連する役職】人事・労務担当者、従業員

いま、労働基準関係法制の改正でもっとも注目を集めているのが、改正労働施策総合推進法によるハラスメント対策の強化です。

この法改正は2026年10月1日に施行され、以下の対策が求められるようになります。

1. カスタマーハラスメント防止措置の義務化
2. 求職者等に対するセクシュアルハラスメント(就活セクハラ)防止措置の義務化

このうちカスハラ(カスタマーハラスメント)防止措置の義務化について、同法33条ではカスハラの定義を以下のように定めています。

職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより当該労働者の就業環境が害されるもの

具体的にはパワハラ防止措置に準じた対応が求められますので、カスハラ単体ではなく、ハラスメント全体を対象とした仕組みの構築が望まれます。

参考:政府広報オンライン「カスハラとは?法改正により義務化されるカスハラ対策の内容やカスハラ加害者とならないためのポイントをご紹介

トピック4:社会保険の加入対象の拡大

【時期】しばらく様子見
【関連する役職】経営者、従業員

2025年6月に年金制度改正法が改正され、2026年4月以降、段階的に施行される予定です。このなかでも大きな注目を集め、また中小企業の労働者に大きな影響を与えるのが社会保険の加入対象の拡大です。

現在、従業員数51人以上の企業に勤める従業員は以下の4つの要件を満たすと、社会保険への加入が求められます。

1. 週の所定労働時間が20時間以上
2. 所定内賃金が月額88,000円以上
3. 2か月を超える雇用の見込みがある
4. 学生ではない

今回、このうち、2の「所定内賃金が月額88,000円以上」が撤廃され、対象となる企業規模も以下のように段階的に引き下げられることになりました。

  • 36人以上の企業(2027年10月から)
  • 21人以上の企業(2029年10月から)
  • 11人以上の企業(2032年10月から)
  • 10人以下の企業(2035年10月から)

36人以上の企業に適用が拡大されるのは来年(2027年10月)ですが、パートタイム労働者のみなさんにとっては非常に大きな影響があり、場合によっては就労抑制につながる可能性もありますので、対象となる企業においては2026年後半からの対応開始が望まれます。

参考:厚生労働省「年金制度改正法が成立しました

出典:厚生労働省「年金制度改革の全体像」P3

トピック5:障害者の法定雇用率の引き上げ

【時期】2026年春ごろ
【関連する役職】人事・労務担当者

日本の障害者雇用政策の1つに「障害者雇用率制度」があります。これは常用従業員の数に対して、一定割合の人数の障害者の雇用を義務づけるものであり、法定雇用率を達成できない企業には納付金の支払いや、企業名公表などのペナルティが課せられます。

現在の障害者の法定雇用率は民間企業で2.5%、国や地方公共団体で2.8%とされていますが、2026年7月からは民間企業で2.7%、国や地方公共団体で3.0%に引き上げられます。これにより、民間企業では常用従業員が37.5人以上の企業で障害者の雇用が必要となります。

障害者を雇用している企業は、この法定雇用率の引き上げによって、必要人数に不足が生じる可能性もありますので、あらためて雇用すべき人数を確認し、早めに対策を取るようにしましょう。

出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用率制度

トピック6:定年引き上げなど高齢者雇用の見直し

【時期】しばらく様子見
【関連する役職】経営者

現在、民間企業における高齢者雇用では、以下の内容が求められています。

1. 定年を定める場合には60歳以上であること
2. 60歳から65歳までは高年齢者雇用確保措置(「65歳までの定年の引き上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年の廃止」のいずれかの措置の実施)
3. 70歳までは高年齢者就業確保措置

現在、法律で求められている定年年齢は60歳となりますが、近年、定年を65歳などに引き上げる企業が増加しており、厚生労働省の最新の調査によれば定年を65歳以上としている企業は28.7%となっています。

出典:厚生労働省「令和6年『高年齢者雇用状況等報告』の集計結果を公表します

これは深刻な人手不足のもと、高齢者の雇用確保とモチベーション向上を目的とした動きであり、これに伴って高齢者の雇用および賃金制度の見直しを行なう企業が急増しています。また年金制度改革により2026年4月以降、在職老齢年金制度が見直されるので、働く高齢者はさらに増加するでしょう。

生産年齢人口の減少が進むなか、企業には今後、団塊ジュニア世代を中心とした高齢者の力を活用し、当面の雇用を確保しながら、マンパワーだけに頼らないビジネスモデルの構築が求められています。

参考:厚生労働省「高齢者の雇用

トピック7:同一労働同一賃金の実務対応

【時期】年明けすぐ
【関連する役職】人事・労務担当者

2020年の改正パートタイム・有期雇用労働法の施行により、均衡・均等待遇(いわゆる同一労働同一賃金)への対応が求められるようになりました。しかし、当時はこの問題に関する裁判例の蓄積が十分でなかったため、対応検討における予見性を高める目的で「同一労働同一賃金ガイドライン」が策定され、対応の指針となってきました。

その後、同一労働同一賃金に関する複数の最高裁判決等が言い渡されたことから、現在、それを前提としたガイドラインの改定が進んでいます。これが正式に公開されると、再び同一労働同一賃金の問題にスポットライトが当たり、労働局などによる監督指導も強化されると予想されます。

同一労働同一賃金は法施行後、その対応の最中に新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が進み、多くの企業で十分な対応が取られないまま本日に至っています。今回のガイドライン改定を受け、あらためて自社の対応に問題がないか検証しましょう。

参考:厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ

トピック8:こども性暴力防止法施行

【時期】しばらく様子見
【関連する役職】人事・労務担当者

教育・保育などのこどもに接する場でのこどもへの性暴力を防ぎ、こどもの心と身体を守るため、2024年6月に「こども性暴力防止法」が成立し、2026年12月25日に施行予定です。この法律により、以下の事業者ではこどもと接する業務の従事者について、雇入れや配置転換の際、過去の性犯罪歴の確認が必要となります。

全ての事業者が法律で定める性暴力防止の取組義務がある

  • 学校(幼稚園、小中学校、高校等)
  • 専修学校(高等課程)
  • 認定こども園
  • 児童相談所
  • 児童福祉施設(認可保育所、児童養護施設、障害児入所施設等)
  • 指定障害児通所支援事業
  • 乳児等通園支援事業 など

国の「認定」を受けた事業者が法律で定める性暴力防止の取組を行なう(義務ではない)

  • 専修学校(一般課程)・各種学校
  • 民間教育事業(学習塾、スポーツクラブ等)
  • 放課後児童クラブ
  • 一時預かり事業
  • 病児保育事業
  • 認可外保育事業
  • 指定障害福祉サービス事業 など

出典:こども家庭庁「こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)」こども性暴力防止法について(概要)より

法律の施行後、こどもへの性暴力に対する社会的な関心がより高まると考えられます。関係する事業者は、犯罪事実確認の手順の整備や内定通知書・就業規則などの見直しを進めましょう。

参考:こども家庭庁「こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)

出典:こども家庭庁「『こども性暴力防止法』がスタートします。

トピック9:各種非課税枠拡大を受けた福利厚生の見直し

【時期】しばらく様子見
【関連する役職】人事・労務担当者、従業員

採用環境が厳しさを増すなか、企業としては求職者および従業員にとって働きやすい環境の整備が求められています。2026年は各種非課税枠の拡大を受け、福利厚生の見直しが注目されると予想しています。

物価上昇が継続していることを踏まえ、予算、税制における長年据え置かれたままの様々な公的制度に係る基準額や閾値について、国民生活へ深刻な影響が及ばないよう、省庁横断的・網羅的に点検し、見直しを進める。※長年据え置かれてきた公的制度の基準額や閾値の例として、交通遺児育成給付金、子どもの学習・生活支援事業(生活困窮者自立支援制度)、食事支給に係る所得税非課税限度額、マイカー通勤に係る通勤手当の所得税非課税限度額が存在し、これらについては速やかに見直しを行う。

これにより、すでにマイカー通勤に係る通勤手当の非課税限度額が見直されましたが、食事手当に係る非課税限度額も引き上げが検討されています。

使用者からの食事の支給により受ける経済的利益について所得税が非課税とされる当該食事の支給にかかる使用者の負担額の上限を月額7,500円(現行:月額3,500円)に引き上げる。

これが実現すると、企業としては非課税限度枠をうまく活用し、食事手当の創設・引き上げなど、社員の手取りを増やす形での福利厚生を検討できるでしょう。

物価が上昇するなかで、住宅や食事支援など生活に直結する福利厚生へのニーズが高まっています。非課税限度額の引き上げといった法改正を活用し、効果的な福利厚生を検討しましょう。

参考:国税庁「タックスアンサーN0.2594 食事を支給したとき

トピック10:労働基準法改正に向けた動き

【時期】しばらく様子見
【関連する役職】人事・労務担当者、経営者

2019年に施行された働き方改革関連法には、施行5年後に見直し規定が置かれており、2024年からその検証と労働基準法改正の議論が進められています。

当初は2026年の通常国会に法案が提出される予定とされていましたが、いったんそれは見送りになりました。しかしこれは法改正が見送られたのではなく、引き続き労働政策審議会等での議論が行われるということですので、どこかのタイミングで再度、法案の提出が行われるでしょう。

副業・兼業時の割増賃金にかかる労働時間通算の見直しや、フレックスタイム制の拡大など、実務にも影響が大きい注目のテーマも議論されていますので、今後の議論に注目しましょう。

参考:厚生労働省「「労働基準関係法制研究会」の報告書を公表します

2026年は持続的な賃上げに対応するための人事制度改定がポイントに

ここ数年、人手不足による転職市場の活況により、賃金水準の上昇が続いています。年収が増加する形での転職が多くなることで、さらなるステップアップを考える従業員も増えると予想されます。そのため、企業は従業員の離職防止と、中途採用強化の観点から、外部の労働市場における賃金水準を意識した賃金管理が不可欠です。

今後も賃上げの流れは続くと予想されるので、その原資を確保しなければいけません。企業は生産性・収益性を高めると同時に、賃上げにより顕在化したさまざまな問題に対処するため、人事制度の見直しが重要なテーマになるでしょう。「ヒト」がもっとも希少な経営資源となった現代において、企業経営における人事の役割はますます大きくなっています。

また、本稿の内容を資料としてまとめています。手元に保存していつでも見返したり、社内に展開したりする際などにご活用ください。

お役立ち資料

2026年人事・労務注目の10トピック

なお、2026年の注目トピックのなかから抜粋して解説している動画もありますので、お時間のある際にぜひチェックしてみてください。

前編は、2026年上半期でとくに緊急度の高い「ハラスメント防止措置の強化」「同一労働同一賃金」について解説

後編は、2026年下半期以降に影響が予想される「社会保険の加入対象の拡大」「労働基準法改正(副業・兼業)」について解説

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