有給休暇とは?付与要件と日数を正社員・パートごとに解説!取得率向上の効果と促進施策
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年次有給休暇は、従業員の心身の健康を守り、長期的なパフォーマンスを支えるために欠かせない制度です。しかし実際は、「忙しくて休めない」「誰かが代わりに対応しなければならない」といった理由から、取得率が思うように上がらない企業も少なくありません。
有給休暇を適切に取得させることは、法令遵守だけでなく、働きやすさと働きがいを両立させるwell-workingの実現に直結します。
本稿では、有給休暇の付与要件や管理方法などの法的ルールを整理したうえで、取得率を高め、休みやすい環境を整えるための具体的な運用・促進策について解説します。
年次有給休暇とは?
年次有給休暇(以下、有給休暇)とは、従業員が一定の要件を満たしたときに取得できる、「賃金が支払われる休暇」です。労働基準法第39条で定められた法定の権利であり、企業は要件を満たした従業員に対して、取得理由にかかわらず有給休暇を与えなければなりません。
有給休暇は、労働による心身の疲労回復と働く人の健康・福祉を守ることで、継続的に高いパフォーマンスを発揮できるようにする仕組みです。有給休暇制度を従業員に気兼ねなく活用してもらえる環境を整えることは、組織全体の生産性向上にもつながるでしょう。
日本の有給休暇の平均取得率と平均取得日数
厚生労働省の「令和6年就労条件総合調査」によると、日本の有給休暇の平均取得率は65.3%、1年あたりの平均取得日数は16.9日でした。

近年は政府や企業の働き方改革の推進により徐々に上昇していますが、欧米諸国と比べると依然として低い水準にあります。
エクスペディア・ジャパンによる調査(2023年)では、日本で働く人の有給休暇取得率は世界11地域のなかで最も低い数字です。2番目に低いオーストラリア(86%)やニュージーランド(86%)と比較しても20%以上の差があります。

取得が進まない背景には、「人手不足」や「休むと周囲に迷惑をかける」といった職場文化や業務設計上の課題があります。当たり前に有給休暇を取得できる環境づくりが、組織の健全な成長と従業員の持続的な働き方を支える鍵となるでしょう。
有給休暇の付与要件
有給休暇は、すべての労働者に自動的に与えられるわけではありません。一定の条件を満たした労働者に付与されます。労働基準法第39条では、有給休暇の付与要件として、次の2つが定められています。
- 入社日から6か月以上継続して雇用されている
- 全労働日の8割以上出勤している
全労働日の考え方
「全労働日」とは、労働契約上で勤務する義務がある「所定労働日」を指し、休日は含まれません。なお、以下の日は全労働日から除外されます。
- 企業の都合により休業した日
- 不可抗力により休業した日
- 休日出勤をさせた日(法定休日、企業が定めている休日に出勤した日)
- 正当なストライキやそのほかの争議行為により、労務の提供がまった全くなされなかった日
- 代替休暇を取得して終日出勤しなかった日
参考:平成25年7月10日 基発0710第3号(年次有給休暇算定の基礎となる全労働日の取扱いについて) - 行政通達
参考:平成21年5月29日 基発0529002号 (改正労働基準法の周知について) - 厚生労働省
また、実際に勤務していなくても、以下の期間は出勤したものとみなして取り扱います。
- 業務上の怪我や病気(労働災害)によって休業した日
- 産前産後休業を取得した日
- 産前産後休業、育児休業、介護休業を取得した日
- 有給休暇を取得した日
このように、全労働日は単純に出勤したかどうかではなく、例外があるので注意しましょう。
参考:しっかりマスター 労働基準法 有給休暇編 - 東京労働局
有給休暇の付与日数
有給休暇は、勤続年数に応じて段階的に日数が増える仕組みです。ここでは、雇用形態や働き方の違いによって、どのように付与日数が変わるのかを解説します。
フルタイム従業員の場合
フルタイム従業員の場合、入社日から6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤すると10日の有給休暇が付与されます。以降は継続勤務年数に応じて付与日数が増えていきます。具体的には下表をご覧ください。
継続勤務年数 | 6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています - 厚生労働省」の情報をもとにSmartHRで作成
上記の付与日数は労働基準法で定められた「法定基準」です。これを下回ることはできませんが、基準以上の日数を付与することは問題ありません。
育休・産休・介護休業中の従業員の場合
育児休業・産前産後休業・介護休業の期間は、出勤率の計算において「出勤したとみなされる期間」とされるため、有給休暇が付与されます。休業期間があることを理由に、有給休暇の日数が減ることはありません。
実際に勤務していないため判断に迷いがちなポイントですが、休業中の従業員の付与処理を忘れないよう注意が必要です。
パートタイム従業員の場合
パートタイム従業員にも有給休暇は付与されます。ただし、フルタイム従業員と比較して労働日数・時間数が少ないため、所定労働日数に比例して有給休暇を付与する「比例付与」が適用されます。
比例付与の対象は、「週の所定労働日数が4日以下(年間の所定労働日数が216日以下)」かつ「週の所定労働時間が30時間未満」の従業員です。たとえば、週4日勤務かつ週の所定労働時間が30時間未満のアルバイトが勤続2年6か月となった場合、付与日数は9日になります。
具体的には下表をご覧ください。

所定労働日数が決まっていない従業員の場合
週の所定労働日数が決まっていないパート・アルバイトなどの場合、有給休暇の日数は「1年間の所定労働日数」で判断します。
原則として、有給休暇を付与する際は、今後1年間の勤務予定日数にもとづいて付与日数を決めます。ただし、月ごとや季節ごとに勤務シフトが大きく変動し、予定日数を正確に算出できない場合は、付与直前の実績をもとに判断しても問題ありません。
付与日数の基準は、「パート・アルバイトの場合」の図と同様です。
直前1年間の出勤率が8割未満だった翌年の付与日数

有給休暇の付与条件は、付与日から1年間で、出勤率が8割以上であることです。そのため、直前の1年間で出勤率が8割を下回った場合、新たな有給休暇は付与されません。
ただし、次の1年間で出勤率が8割以上となれば、翌年は有給休暇が付与されます。この際、前年度に有給休暇が付与されていなかったとしても、付与日数が減ることはなく、付与時点の勤続年数に応じた日数が与えられます。
たとえば、勤続年数が2年6か月の時点で直前1年間の出勤率が8割未満だった場合、有給休暇は付与されません。一方で、次の付与タイミングとなる勤続3年6か月で、直前1年間の出勤率が8割以上だった場合は、有給休暇付与日数は14日となります。12日ではないので、注意しましょう。
有給休暇が付与されるタイミング
有給休暇は、「入社日から6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した」時点で初めて付与されます。有給休暇が付与される日のことを「基準日」と呼び、1度目の基準日を迎えた後は毎年同じ日に付与されます。これは労働基準法で定められた「法定基準」の付与タイミングです。
法定基準より遅く付与できませんが、法定基準よりも早めに付与することは可能です。なお、法定どおり付与すると、有給休暇の基準日が従業員によって異なり管理が煩雑となるため、次のような方法もあります。
- 斉一的付与:全従業員、同一の基準日に付与する方法
- 分割付与:一部を法定基準日以前に付与し、残りを基準日に付与する方法
斉一的付与は管理しやすい一方で、入社時期によって有給休暇の取得開始時期に差が生じてしまう点に注意が必要です。
参考:平成6年1月4日 基発第1号(○労働基準法の一部改正の施行について 5(3) 年次有給休暇の斉一的取扱い) - 行政通達
前倒しで有給休暇を付与する場合の注意点
企業は、就業規則で定めることで、法定基準(入社から6か月後)よりも早く、全部または一部の有給休暇を前倒しで付与できます。ただし、この場合は次の3点に注意が必要です。
- 次年度以降の付与日も繰り上げる必要がある
- 法定の基準日より前倒しされた期間は「全期間出勤した」とみなして、出勤率を計算する
- 一部を前倒し付与する場合、年5日取得義務の起算日は「有給休暇の付与日数が合計10日に達した日」から1年間となる

運用にあたっては、前倒し付与の取り扱いを明確にしたうえで、就業規則や社内ルールへの記載や、周知が重要です。また、誤って二重付与とならないよう、勤怠システムの設定や管理方法にも十分注意しましょう。
有給休暇取得の義務化
有給休暇は付与するだけでなく、取得させてこそ意味があります。
なかなか取得率が上がらない状況を踏まえ、2019年4月の法改正により、企業規模を問わずすべての事業者を対象に、年5日の有給休暇取得が義務化されました。
年5日の有給休暇取得義務は、10日以上の有給休暇が付与されるすべての従業員に適用されます。正社員だけでなく、以下の条件のいずれかを満たすパート・アルバイトも対象です。
- 週30時間以上勤務している
- 週5日以上勤務している
- 年間217日以上勤務している
- 入社後3年半以上経過していて週4日(または年間169日〜216日)勤務している
- 入社後5年半以上経過していて週3日(または年間121日〜168日)勤務している
従業員がなかなか有給休暇を取得しない場合は、企業から取得時季を指定し、確実に休ませる義務があります。すでに年5日以上の有給休暇を自ら取得している従業員は、時季を指定する必要はありません。
なお、時間単位で取得した有給休暇は、「年5日」の取得義務の対象に含まれない点に注意が必要です。
年次有給休暇管理簿の作成義務

有給休暇を適切に管理するため、企業には年次有給休暇管理簿の作成と保存が義務付けられています。管理簿には、従業員ごとの基準日、付与日数、取得日などを記録します。
形式は紙・表計算ソフト・システムいずれを選んでも問題ありません。また、管理簿は5年間(当分のあいだ3年間)の保存義務があり、労働基準監督署からの調査時などに提出を求められる場合もあります。
5日の取得義務を守れなかった場合の罰則
企業が従業員に年5日の有給休暇を取得させなかった場合、労働基準法第120条により、30万円以下の罰金に科される可能性があります。
有給休暇の取得は、企業が履行すべき法的義務です。違反すれば行政指導や是正勧告を受けるだけでなく、企業の信頼にも関わります。従業員の取得状況を常に把握し、計画的付与や時季指定を活用して、確実に年5日の取得を実現できる仕組みづくりが大切です。
有給休暇の付与方法
有給休暇は、従業員に権利を付与するだけでなく、実際に取得できる仕組みが重要です。ここでは、有給休暇の付与方法について解説します。
時間単位・半日単位の付与
有給休暇は原則として1日単位で付与しますが、条件を満たせば時間単位・半日単位の付与も可能です。
時間単位の有給休暇を導入する場合は、労使協定の締結が必須です。年5日分を上限に、1時間単位から柔軟に設定できます。分単位など、1時間未満の単位は認められていないため、所定労働時間が7時間45分などの場合は、1日を8時間として取り扱うなどの工夫が必要です。
また、時間単位で取得した分は「年5日の取得義務」の対象外となる点に注意が必要です。
一方、半日単位の有給休暇は法定制度ではなく、企業が任意で導入できる仕組みです。労使協定は不要ですが、就業規則に定めておく必要があります。また、半日単位の有給休暇は「年5日の取得義務」の対象となります。ここが、時間単位の有給休暇との違いです。
時間単位や半日単位で有給休暇が取得できれば、時短勤務者や子育て世代など、多様な働き方に対応でき、休暇の取得促進につながるでしょう。
有給休暇の計画的付与
有給休暇の計画的付与(計画年休)とは、有給休暇のうち5日を超える部分について、労使協定にもとづき企業があらかじめ取得日を以下のように指定できる制度です。
- 企業全体の一斉付与(例:夏季休暇や年末年始に全員が取得)
- 班・部署ごとの交代制付与(チーム単位で順番に取得)
- 個人別付与(有給休暇付与計画表を用いて個人ごとに設定)
企業側にとっては労務管理や業務計画が立てやすく、従業員側にとっても遠慮せずに休みをとれるメリットがあります。繁忙期や業務量に応じて休暇を分散できるため、「有給休暇をとりやすく、業務も滞らない」仕組みづくりに有効といえるでしょう。
参考:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(P14) - 厚生労働省
労働者の時季指定権と使用者の時季変更権

有給休暇は、従業員が「いつ取得するか」を指定できる「時季指定権」があります。取得理由を企業に伝える義務はなく、私的な理由でも自由に取得が可能です。
一方、企業側には「時季変更権」があります。時季変更権は、事業の正常な運営に著しい支障がある場合に、ほかの時季に有給休暇の取得日の変更を求められる権利です。ただし、単に忙しい・人が少ないといった理由だけでは時季変更権を行使できません。非常に厳格な要件のもとで行使できる権利であるため、十分に注意しましょう。
従業員の権利を尊重しつつ、業務調整と休暇取得を両立させる運用が求められます。
原則として有給休暇の買い取りはできない
有給休暇の目的は、従業員が仕事を離れ、心身の疲労を回復させることにあります。そのため、原則として、有給休暇を買い取って金銭で精算することは認められていません。
ただし、以下のとおり例外的に認められるケースが3つあります。
- 法定を超える有給休暇を付与している場合の上乗せ分
- 退職時に取得し切れなかった有給休暇の日数分
- 有給休暇の付与日から2年経過し、時効で消滅した日数分
制度の趣旨はあくまで「休ませること」にあるため、買いとりよりも、取得を促進できる環境づくりが重要です。
有給休暇の運用方法
有給休暇の取得を促進するためには、付与のルールを整えるだけでなく、実際の運用サイクルを定着させることが重要です。ここでは、年次・月次・日次それぞれの運用ポイントを見ていきましょう。
【年次】有給休暇取得計画をつくる
年次では、各従業員の1年間の有給休暇取得計画を立てることが重要です。1年または半年ごとに、繁忙期を考慮してあらかじめ取得日を決めておくと、有給休暇を取得しやすくなります。事前に計画を立てることで休暇を分散でき、業務負担の偏りを軽減して平準化にもつながります。
また、計画的付与を導入している企業では、年間の休日カレンダーを作成する際に、計画年休日を組み込むとよいでしょう。


【月次】取得状況の管理と取得促進
月次では、有給休暇の取得予定と実績を照らし合わせ、計画どおりに休暇が取得できているかを確認します。取得日数が少ない従業員には個別に声をかけるなど、細やかな対応が重要です。
また、勤怠管理システムを導入すれば、付与基準日、時効消滅期限、要取得日数(年5日)などを一覧で確認できるため、未取得者を早期に把握できます。
【日次】申請と承認フローを回す
日々の有給休暇取得を円滑に運用するには、申請から承認までの流れを明確にし、無理なく回せる仕組みを整えておく必要があります。
まずは、申請ルールを具体的に定めましょう。「いつまでに」「誰に」「どの方法で」申請するのかを就業規則や社内マニュアルに明記し、全従業員に周知します。たとえば「原則として3営業日前までに、直属の上司へ勤怠システムから申請する」といった形です。
あわせて、休暇中の業務引き継ぎルールも定めておきましょう。担当業務の進捗や連絡先を共有フォルダやチャットツールで共有する、緊急時の対応者をあらかじめ決めておくなど、属人化を防ぐ仕組みがあれば、本人も周囲も安心して休暇を取得できます。
有給休暇取得日の賃金の計算方法
有給休暇取得日の賃金は、労働基準法第39条により、就業規則で定めた次のいずれかの方法で支払う必要があります。
- 通常の賃金
- 過去3か月に支払った平均賃金
- 健康保険の標準報酬日額
このうち、最も一般的な計算方法は「通常の賃金」による計算方法です。通常の所定労働時間勤務した場合と同額の賃金を支払うもので、具体的な計算は次のとおりです。
- 月給制:月給額÷その月の所定労働日数
- 日給制:日給額
- 時給制:時給額×所定労働時間
- 週給制:週給額÷その週の所定労働日数
給与計算担当者は自社の就業規則を確認し、確実に計算・チェックできるようにしましょう。
有給休暇に関する注意点
ここでは、有給休暇に関してとくに注意が必要な事項について解説します。
有給休暇は2年で失効する
有給休暇には時効があり、付与日から2年が経過すると権利が消滅します。たとえば、2025年4月1日に付与された有給休暇は、2027年3月31日までに取得しなければ失効します。
つまり、2年目以降は、その年に新たに付与された日数と前年に付与された残日数の合計が利用できます。なお、有効期限の古いものから優先的に消化するか、新しいものから消化するかは、企業が任意に定められます。
勤怠管理システムなどで残日数と有効期限を可視化し、従業員自身が失効前に気づける仕組みを整えておくことで、計画的な取得促進にもつながります。
有給休暇取得の理由は不要
有給休暇は、従業員が自由に取得時季を指定できる権利をもっており、取得理由を企業に伝える義務はありません。企業側が休む理由を強く聞き出したり、申請時に記入させたりすることは、従業員の権利を侵害するおそれがあります。
「事業の正常な運営に著しい支障がある」場合のみ、企業は時季変更権を行使できますが、取得理由そのものを確認することはできません。安心して休暇を取得できる職場づくりには、管理職への啓蒙と社内ルールの明確化が欠かせません。
不利益な取り扱いをしてはならない
有給休暇を取得したことを理由に、昇進・評価・賃金などで不利益な取り扱いをすることは労働基準法第136条で禁止されています。たとえば、「有給休暇をとると査定が下がる」「昇格が遅れる」といった処遇は明確に違法です。
この規定に罰則はありませんが、違反すればハラスメントや労働紛争に発展するおそれがあります。企業としては、有給休暇取得を前提とした評価制度やマネジメントの仕組みを整えることが重要です。
有給休暇に関する罰則
有給休暇を適切に運用できていない場合、労働基準法違反となり、次のような罰則が科される可能性があります。
違反条項 | 違反内容 | 罰則規定 | 罰則内容 |
|---|---|---|---|
労働基準法 第39条第7項 | 年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合 | 労働基準法 第120条 | 30万円以下の罰金 |
労働基準法 第89条 | 企業による時季指定が就業規則で定められていないにもかかわらず、時季が指定された場合 | 労働基準法 第120条 | 30万円以下の罰金 |
労働基準法 第39条 (第7項を除く) | 労働者の請求する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合 | 労働基準法 第119条 | 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金 |
参考:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(P7) - 厚生労働省
有給休暇の取得率向上で得られる5つのメリット

有給休暇の取得率向上は、法令遵守にとどまらず、企業にとって多くのメリットをもたらします。企業価値・組織力の向上や生産性の改善、優秀な人材の定着、従業員の健康維持など、多様な効果が期待できます。ここでは、有給休暇の取得促進によって企業が得られる主なメリットを紹介します。
企業価値と社会的評価の向上
有給休暇の取得が進んでいる企業は、「社員を大切にする企業」「働きやすい職場」として社会的評価が高まり、採用活動や取引先からの信頼に好影響をもたらします。
さらに、経済産業省が推進する「健康経営優良法人認定制度」では、有給休暇の取得率向上や計画的な取得の推進が認定指標の1つとされ、認定を得られれば、企業価値向上につながります。従業員の休みやすさを支える姿勢そのものが、社会的責任(CSR)として信頼を生み出すでしょう。
組織力の強化

誰もが安心して有給休暇を取得できる体制をつくるには、業務の属人化解消や情報共有の仕組みづくりといった持続的な組織運営が欠かせません。
こうした有給休暇取得促進に向けた業務分担・整理は、災害や急な欠勤時にも柔軟に対応できるBCP(事業継続計画)の強化にもつながります。休暇取得促進を「負担」ではなく「仕組みを整えるきっかけ」として捉えることが重要です。
個人の生産性の向上
有給休暇は心身の疲労を回復させ、集中力や創造性を高めるメリットがあります。リフレッシュした状態で業務に臨むことで、生産性が向上し、企業の業績にも良い影響をもたらすでしょう。また、休暇中に得た体験や新しい視点が、業務における発想力を刺激することも少なくありません。
一方で、休まずに働き続けると、心身不調などによって生産性が下がる「プレゼンティーイズム」を引き起こすおそれがあります。こうしたリスクを防ぐためにも、有給休暇の取得を積極的に推進することが重要です。
人材の確保と定着
有給休暇が取得しやすい環境は、採用市場において大きな魅力となります。「しっかり休める企業」というイメージは、求職者に安心感を与えます。近年はワーク・ライフ・バランスを重視する若い世代が増えており、有給休暇のとりやすさは企業選びの基準の1つと言えます。
さらに、既存の社員にとっても有給休暇がとりやすい環境は、長く働き続けたいと思える大きな理由になります。その結果、離職率の低下や人材の定着、育成にも好循環を生み出せるでしょう。
法令違反や健康不調のリスク防止
有給休暇を適切に運用しない場合は、労働基準法にもとづき罰則が科されるおそれがあります。そのため、有給休暇の取得率を高めることは、法令違反のリスク回避につながります。
さらに、十分な休養が確保されない職場では、メンタル不調や過労などの健康リスクが高まります。有給休暇の取得を積極的に促進することは、労働災害の防止や従業員の健康維持の観点からも、企業にとって欠かせない取り組みといえるでしょう。
有給休暇の取得を促進する施策

有給休暇の取得率を高めるためには、制度を整えるだけでなく、職場の文化や業務の仕組みも見直す必要があります。ここでは、企業が実践できる4つの促進策を解説します。
(1)有給休暇をとりやすい文化を醸成する
まずは、有給休暇を「とりづらい」と感じさせない職場の文化をつくりましょう。制度を整えても、心理的なハードルが高ければ取得率は上がりません。具体的には、管理職が率先して有給休暇を取得し、社内報やミーティングで有給休暇取得を肯定的に発信するなどの方法で、「休むのが当たり前」という文化を根付かせましょう。
(2)業務の効率化を図る
有給休暇を取得しやすくするには、業務効率化が欠かせません。業務が属人化した状態では、誰かが休むと業務が滞り、結果的に休みづらくなります。
具体的には、業務マニュアルの整備やタスク管理ツールの活用、AIやRPAによる定型業務の自動化が挙げられます。また、チーム単位での進捗共有やバックアップ体制を整えることも有効です。誰が休んでも業務が回る体制づくりが、有給休暇取得促進の土台になります。
(3)時間単位や半日単位でもとれるようにする
通院や子どもの学校行事など、短時間休みたいニーズに応えるには、時間単位や半日単位での有給休暇制度の導入が有効です。
導入の際は、就業規則への明記に加え、時間単位の有給休暇については労使協定の締結が必要です。制度導入後は、従業員への周知と運用ルールの明確化を徹底し、安心して利用できる環境を整えることが大切です。
(4)計画的付与の導入

有給休暇の取得率を安定的に高めるため、計画的付与の仕組みを導入しましょう。従業員が自発的に休みをとらない職場では、結果的に未取得が積み上がってしまいます。
年末年始や夏季など大型連休に、企業の公休とあわせて一斉休暇日を組み込むと運用しやすいでしょう。業務の繁閑にあわせて全社的にスケジュール化することで、業務の混乱を防ぎながら取得率を高められます。
有給休暇取得を促進して「働きやすさ」と「働きがい」の両立を実現しよう
有給休暇は、法令で定められた「休む権利」であると同時に、従業員と企業の双方にとって組織を健全に保つ仕組みでもあります。誰でも有給休暇を取得しやすい文化の醸成や業務体制構築が、従業員の心身の健康維持と生産性向上につながります。
「休みやすい職場」は、「働きやすく・働きがいのある職場」への第一歩です。企業が積極的に有給休暇の取得を促進し、社員一人ひとりがいきいきと働ける環境を整えることが、これからの時代に求められるwell-workingの実践といえるでしょう。
うちやま社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士
新卒3年目で社会保険労務士試験に合格。ITベンチャーにて勤怠管理システムの営業・導入コンサルティングに従事した後、大手事業会社の人事部で労務管理や人事DX推進に携わる。
独立後は「労働時間管理のプロフェッショナル」として、企業のIT導入や柔軟な働き方制度の設計を中心に、業務効率化と労務体制の強化をサポート。企業の成長段階や風土に寄り添い、誰もが安心して働ける職場づくりに取り組んでいる。

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