会社へのマイナンバー提出、従業員は拒否できるのか?
- 公開日
こんにちは、社会保険労務士の篠原宏治です。
「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(マイナンバー法)」の施行に伴い、今年の年末調整から、従業員はマイナンバーを記載した扶養控除等申告書を会社に提出することが必要となりました。
しかし、マイナンバー制度に対する不信感や個人情報漏洩の危険性を理由に、従業員がマイナンバーの提出を拒否するケースが見受けられます。
では、年末調整などで会社からマイナンバーの提出を求められた従業員は、その提出を拒否することは出来るのでしょうか。
マイナンバーの提出を拒否することは原則として認められない
マイナンバー法では、マイナンバーの収集制限や、収集後の管理義務についての規定が定められていますが、従業員が会社からの求めに応じてマイナンバーを提出しなければならないという義務は規定されていません。
そのため、法律上は、従業員がマイナンバーの提出を拒否することは可能です。
しかし、従業員と会社が相互に果たすべき義務は、そのすべてが法律の義務規定に基づいて生じているわけではなく、雇用契約関係において明示的又は暗黙的に発生します。
会社は、従業員を雇用しているために生じた法律上の届出義務を果たすために、記載事項を知ることが出来る唯一の手段として、その従業員に対してマイナンバーの提出を求めています。
それに対し、従業員が法律上の義務規定がないことを理由にマイナンバーの提出を拒否することは、当然に認められるべきというものではなく、少なくとも、従業員には、信義則に基づいて会社に協力すべき雇用契約関係上の義務があると言えます。
したがって、法律に義務規定がないことは必ずしも従業員がマイナンバーの提出を拒否する正当な理由とはならず、従業員がマイナンバーの提出を拒否することは原則として認められません。
マイナンバーの提出が拒否されても現在は問題ない
しかし、年金情報の流出問題によって、日本年金機構(年金事務所)におけるマイナンバーの利用開始が急遽延期された経緯などもあり、従業員がマイナンバー制度に対して不信感を持つこともやむを得ず、マイナンバーの提出を拒否することにも一定の理由があると言わざるを得ないのが実情です。
また、現在のところ、税務署やハローワークは、マイナンバーが記載されていない提出書類であっても、受理する方針を示しています。
そのため、現状マイナンバーの提出を頑なに拒否する従業員がいる場合において、会社はそれ以上マイナンバーを提出させることにこだわる必要はありません。
ただし、従業員に提出拒否の確認書を提出させたり、会社が従業員にマイナンバーの提出を求めた経過等を記録したりすることによって、単なる義務違反ではないことを明確にしておき、税務署やハローワークなどから問い合わせがあったときにはその経緯や正当性を説明できるようにしておきましょう。