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2026年2月の人事労務タスク|最新の賃上げ動向、新年度準備を社労士が解説

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こんにちは。社会保険労務士法人名南経営の大津です。大寒波の影響で寒い時期が続きますが、体調などは崩していらっしゃいませんでしょうか?

先月お届けした労働基準法改正案の通常国会見送りのニュースはその後、「柔軟な労働時間制度の検討」という新たな論点を加えて、議論が継続しているようです。厚生労働省による実態調査などを経て、労働政策審議会での議論に移りますので、法案提出は2027年の通常国会になると予想されます。

今回の法改正は働き方の多様化という環境変化に、労働基準法を対応させるといった非常に意欲的なものですので、引き続き今後の議論を見守っていきたいところです。

2月のHRチェックリスト

2月は法改正などへの対応はありませんが、新年度を控えたさまざまな準備が必要となります。今月のHRチェックリストではこれらの内容を取り上げていきます。

2026年2月度の人事労務スケジュール。人事評価・昇給試算、入社準備、36協定代表選出、有期雇用契約更新、組織図変更と異動内示、2027年卒初任給策定などのToDoリスト。SmartHR提供のチェックリストフォーマット。

(1)人事評価の実施と昇給額の試算

新年度を迎える4月は、多くの企業が昇給を実施します。それに向けて2月は、人事評価の実施と昇給額などシミュレーションの最終局面となります。早めに人事評価表を配布し、上長と部下で業務状況や課題を確認し合えるようにしましょう。社員数が多い企業では、オンラインツールの活用で評価表の配布・集計・分析の負担を大幅に軽減できます。


昇給額については、今年も多くの企業でベースアップが予想されていますので、情報収集と対応の検討が不可欠です。賃上げ動向については、2月の重要トピックで解説しているので、あわせてご確認ください。

(2)新入社員の受け入れ準備(オンボーディング)

新卒・中途採用者が一斉に入社する4月に向け、受け入れ準備を進めておきましょう。雇用契約書、誓約書、身元保証書、マイナンバーなど、回収が必要な書類の準備を進めるとともに、2月中に配属先の教育担当者(メンター)を決定し、教育プログラムを共有しましょう。「現場に任せきり」は早期離職の原因にもなりますので、現場との密接な連携を進めることが重要です。

(3)新年度の組織図更新と人事異動の内示

新年度に向けて組織図を更新し、異動対象者に早めに内示しましょう。3月に入ってからの急な内示は、従業員の生活(引越し、保育園の手続きなど)に多大な影響を与えます。遅くとも2月末から3月上旬には内示が出せるよう、最終調整を急ぎましょう。

(4)新入社員の雇用契約書と有期雇用従業員の契約更新準備

雇用契約書は2024年の労働基準法施行規則改正により、就業場所や業務内容の「変更の範囲」を明示することが義務付けられています。新入社員と締結する雇用契約書や、有期雇用従業員の契約書フォーマットが最新版になっているかを確認しましょう。

とくに有期雇用従業員が多い職場では、労働契約手続きが非常に煩雑になります。こうした契約更新手続きはオンライン化で、工数を大幅に削減できます。

(5)36協定の締結・届出

多くの企業では4月1日を起算日とする36協定を締結しています。36協定は労務管理における最重要手続きの1つです。2月中に過半数代表者の選出を開始し、3月中の締結・届出を完了しましょう。36協定の締結・届出をしないままに残業を命じることは労働基準法違反となりますので、注意が必要です。

(6)27年卒の初任給設定

2027年の新卒採用のナビサイトが3月1日に本格オープンとなるので、2月には2027年4月入社の新入社員の初任給を決定しておくことが望まれます。

最低賃金の上昇と採用競争の激化により、毎年多くの企業が初任給を引き上げています。初任給の設定は採用における重要なポイントとなります。入念に情報収集と比較検討を実施し、競争力のある水準を設定しましょう。

そのためには、各種調査機関が公表している学歴別の統計情報をチェックするとともに、競合する企業の初任給動向を調査することも重要です。

2月の重要トピック

毎年2月は、新年度に向けた準備が中心となりますが、春以降の本格的な繁忙期に備えて、情報収集と計画的に準備を進めておきましょう。

中小企業の賃上げが限界に?経常赤字でも3%超の実態(重要度★★★★★)

2026春季生活闘争方針」によると、全体の目安は賃上げ分3%以上、定昇相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め5%以上とされています。現在の物価や企業業績の状況を踏まえれば、大企業の多くは満額またはそれに近い回答になるでしょう。

中小企業の動向は、商工中金が公表した「【詳細版】中小企業の賃上げの動向について」が参考になります。ポイントは以下のとおりです。


【賃上げ実施】

  • 「定例給与・時給」の賃上げは2025年の実績見込が85.4%、2026年計画が72.4%となり、過年度の調査より上昇
企業の賃上げ動向調査データ。定例給与・時給の増減実績と今後の計画(2022年〜2026年)。全従業員引き上げ、一部従業員引き上げ、増減なし、引き下げ、未定、その他の割合を表示。2025年度は引き上げ実施企業が過去最高水準となり、2026年度計画でも高い賃上げ意欲が示されている。
  • 「全従業員を対象に引き上げ」を実施見込み企業の割合は、経常利益率が高いほど上昇する傾向がみられるが、経常赤字企業の63.3%が「全社員を対象に引き上げ」を実施予定
利益水準別に見る2026年度の賃上げ・賃金増減計画。経常赤字企業から利益率5%以上の企業までの比較。利益率が高い企業ほど「全従業員を対象に引き上げ」の割合が高く、業績と賃上げの相関関係を示す統計調査データ。

【定例給与・時給の引き上げ率】

  • 定例給与・時給の引き上げ率は2025年実績見込で+3.35%と、前年同時期調査の2024年実績見込(3.33%)と同水準を維持
  • 2026年計画は引き上げ率+3.03%と、前年同時期調査の2025年計画2.90%を上回る結果に
定例給与・時給の引き上げ率(ベア・ベースアップ)の実績および2026年度計画の統計。増減率の平均は2025年実績で3.35%、2026年計画で3.03%と、3%を超える高い賃上げ率を維持。
  • 経常利益率5%以上企業では、引き上げ率+3.64%と、経常利益率が高いほど高い傾向にある一方で、経常赤字の企業も+3.07%
2025年度の企業の利益水準別賃上げ率(ベースアップ・定期昇給除く)の調査結果。経常利益率が高い企業ほど賃金増減率の平均が高く、利益率5%以上の企業では平均3.64%の引き上げ。業績と給与改定幅の相関関係を示す統計データ。

(出典)【詳細版】中小企業の賃上げの動向について - 商工中金 

経常赤字の企業も、従業員のモチベーションの維持・向上や人材確保のために戦略的に賃上げを実施している現状から、中小企業の賃上げ余力が限界に近付いていることがわかります。3%を超える中小企業の賃上げが予想されるなか、現実には賃上げが難しい企業も相当数あり、対応は二極化するのではないかと思われます。

当面は春闘のニュースをチェックしながらも、賃上げのさまざまなシミュレーションを進めておきましょう。

AI導入で人員削減、大企業の12.3%が「既に影響あり」(重要度★★★★☆)

2015年に野村総研が公表したレポート「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」は社会を騒然とさせましたが、昨今AIによる業務代替が進み始めています。

先日公表されたマイナビの「企業人材ニーズ調査2025年版」では、AI活用による人員削減の可能性について調査されています。

AIの業務代替による人員削減の可能性。既に影響がある(12.3%)、今後は影響がありそう(22.9%)、今後はわからない(34.2%)、影響はないだろう(30.7%)の割合。AI導入と雇用への影響に関する最新統計。

(出典)企業人材ニーズ調査2025年版 - マイナビ

「既に人員削減への影響が出ている」企業が12.3%にも上り、今後さらにその割合は増加していくことが予想されます。企業として効果的なAI活用による生産性の向上が求められる一方で、従業員も継続的なリスキリングによって自らの市場価値を高める努力が求められます。

なお、「既に人員削減への影響が出ている」の回答割合を企業規模別でみると、以下のように企業規模が大きいほど影響が出ている傾向があります。

(出典)企業人材ニーズ調査2025年版 - マイナビ

さいごに:4月に備える2月、法改正動向にも注目を

このように2月は4月の新入社員受け入れ準備と、2027年度の採用活動の本格化が重なり、なにかと人事が慌ただしくなる時期です。一方、通常国会については衆議院の解散によって各種の審議が遅れる形になっています。

労働関係法制では改正労働者災害補償保険法が審議される予定になっており、その動向についても注目しておきましょう。

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