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4つのポイントで掴む「働き方改革・人づくり革命」の動向

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2017年、人事界隈のみならず世間一般でも大きく話題となり、流行語大賞候補にもノミネートされた「働き方改革」。SmartHR Mag. でもその潮流について取り上げてきました。

また、一億総活躍プランの中で「働き方改革」同様に「人づくり革命」も推進され、「人生100年時代に求められるスキルとは何か?」を考えるにあたり、「社会人基礎力」が2006年以来の見直しの動きを見せています。

そこで、「そもそも働き方改革とは何なのか?」について今一度おさらいした上で、第6回人材像WGでプレゼンされた、「『働き方改革』と『人づくり革命』の最近の動向」(経済産業省 産業人材政策室 出光補佐)を参考に、進捗とポイントを紹介したいと思います。

そもそも「働き方改革」「人づくり革命」とは?

その流れを理解するために、そもそも「働き方改革」「人づくり革命」が何を指すのか見ていきましょう。

「働き方改革」とは

「働き方改革」とは、2016年に政府によって打ち出された経済対策のひとつで、「働き方改革実行計画」のもと、働き方を根本的に改革するというものです。

働き方改革実行計画では、

  1. 処遇の改善
  2. 制約の克服
  3. キャリアの構築

という3つの課題解決の方向性の中で、9項目のテーマを定め、それぞれに対する具体的な施策、2020年時点で達成すべき目標が掲げられています。

  1. 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
  2. 賃金引上げと労働生産性向上
  3. 罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正
  4. 雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援
  5. 柔軟な働き方がしやすい環境整備
  6. 女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備
  7. 高齢者の就業促進
  8. 病気の治療や子育て・介護等と仕事の両立
  9. 外国人材の受入れの問題

具体的な施策としては、業務プロセスの見直しと効率化、長時間労働の是正にむけた深夜残業の禁止や朝型勤務の導入、テレワークの活用、休暇取得促進、副業の解禁などが挙げられています。

(そのほか働き方改革のより詳しい内容は下記記事をご参考ください)

「人づくり革命」とは?

一方の「人づくり革命」は、2017年に打ち立てられた「生産性革命」と並ぶ看板政策のひとつです。

産業構造の変化に伴い、企業競争力の源泉は「人材力」であると注目され始めています。

その中で、この政策においては、

  1. 幼児教育の無償化
  2. 待機児童の解消
  3. 高等教育の無償化
  4. 介護人材の処遇改善
  5. これらの施策を実現するための安定財源
  6. 財政再建

などのメニューが挙げられています。

これら「受け皿」としての環境創出が行政によって掲げられる一方、「人材力」と向き合い、その環境を利活用する企業や生活者個人をどうモチベートしていくのかについての課題も残ります。

「人生100年時代構想会議」や「人材力研究会」およびそこに紐づく「中核人材確保WG」「人材像WG」では、人生100年時代の社会人基礎力の定義や、リカレント教育充実推進への障壁と対策、企業のベクトルと個人スキル向上の一致など、具体的な課題や施策が産官学の視点から議論されています。

このように、「人づくり革命」においては、個々人の能力を最大限引き上げるために、行政として助成すべきこと、企業や教育機関が整備すべきこと、個人として人生100年時代の産業の変化にキャッチアップすべきことなどを、一気通貫のパッケージとして検討されています。

(人づくり革命や人生100年時代構想会議等については下記の記事記事をご参考ください)

「働き方改革」と「人づくり革命」の最近の動向

第6回 人材像WGで紹介された、経済産業省 人材政策室 出光補佐のプレゼンより要旨を整理します。

経済産業省 産業人材政策室 出光補佐(写真提供:経済産業省 産業人材政策室)

経済産業省 産業人材政策室 出光補佐(写真提供:経済産業省 産業人材政策室)

(1)高等教育無償化の要件は「社会で活躍できる人材の育成」

年末に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」においては、産業界のニーズを踏まえ社会で活躍できる人材を育成するということが、高等教育無償化の要件となることが記載されました(*1)。

個人としても、「ただ学ぶ、ただ習得する」ではなく、社会に求められる価値を見つけ、「自分は何をしたいのか、何をすべきなのか」ということに向き合い、そのために必要となるスキルを習得していくという逆算の中でスキルをアップデートしていくことが求められそうです。

一方、日進月歩で技術が進歩する昨今、求められる価値も目まぐるしく変化します。「何が求められているのか」を常にアップデートする情報のキャッチアップはもちろん「DQ」のようなITリテラシー・デジタルスキルが必要になると考えられるでしょう。

(2)人的投資に取り組む企業の助成と柔軟な働き方の推進

人的投資等に取り組む企業に対する税制優遇、柔軟な労働市場の確立、テレワークやフリーランス、兼業副業など柔軟など、柔軟な働き方についても促進していくことになります。

労働時間の削減とともに人口減少、そして労働人口の減少と、いわゆる“マンパワー”でやり過ごすのは難しい時代が来ています。

その中で、労働生産性の向上が注目されていますが、第三次産業を中心にこれからの経済成長と向き合う上では、労働時間と成果は必ずしも比例せず、その一方で何倍何百倍の成果を生み出す可能性も同時に生まれています。

それを実現する「イノベーション」と向き合うにあたっては、「多様性」抜きには成しえません。柔軟な働き方の実現と多様な人材の確保は、もはや待ったなしです。

(3)「リカレント教育」推進には企業向け施策や講座開発、個人の学びへの支援が必要

「リカレント教育」に関する施策としては、税制や予算による企業に対する施策や、講座の開発や大学改革等の個人の学びに対する支援が必要になると考えられます。具体的には、以下の6点が挙げられます。

1. 賃上げ・人的投資等に積極的に取り組む企業に対し法人税を減税する「生産性革命税制」(仮称)

2. 人材開発支援助成金等の厚労省予算

3. 第四次産業革命に関する講座を経産大臣が認定する、第四次産業革命スキル習得講座認定制度(ちょうど今月10日に認定講座を発表。随時適用講座を拡大していく予定)

4. 補正予算事業(リカレント講座の開発。具体的には、業種・職種ごとに検討会を開催し、インターンなどの出口戦略を踏まえた上でプログラムを開発していこうと考えている)

5. 産業界のニーズを踏まえた上での大学改革

6. フリーランスの方のため、給与所得控除の一部を基礎控除に振り替える所得税改革。

「リカレント教育」が話題になる一方、「何のために学び、何に生かせるのか」であったり、「学びたいが金がない、時間がない」という課題も多く抱えるのが現状です。

「学ぶ」と「働く」をインタラクティブに捉える環境の創出と、リカレント教育享受のための支援は必要不可欠でしょう。

(4)モデル就業規則の改定により副業・兼業の解禁を促進

厚生労働省がリードする「柔軟な働き方検討会」においては、副業・兼業を原則認める方向でモデル就業規則を改訂、また副業・兼業のメリットや留意点をふまえたガイドラインを作成する。

厚生労働省のこれまでの「モデル就業規則」では、副業は原則禁止とされていました。ですが、これからの柔軟な働き方の推進において、副業・兼業はひとつの重要なポイントのひとつであるとされ、厚生労働省はこの「モデル就業規則」を見直す方針を掲げています。

一方、副業には労災や36協定との兼ね合い、機密情報の漏洩リスクなど、個人として思い切り柔軟な働き方に取り組み、それを企業が後押ししていくには、まだまだ拭えぬ不安があるのも事実です。

おわりに

以上、最近の動向についてカンタンに整理しました。

こと4点目の副業・兼業に関する動きについては、「副業元年」とも言われる2018年、特に注目を集めると考えられます。本格的な推進にあたっては、いち早い懸念点の解消対策が待ち望まれます。逆に言えば、企業サイドとしては、二つ返事でこれに取り組むのではなく、リスクやデメリットを踏まえ、然るべき対策を講じる必要がありそうです。

多様な人材が、人生100年時代の中で幸せに暮らしそして働いていく上では、柔軟な働き方のできる環境、そしてそれを実現しうる意志が、行政にも企業にも個人にも求められます。

一連の動向を「自分ごと」として捉え、これを機に、自らのライフプランやキャリア、働き方と向き合ってみてください。

【参照】
*1:新しい経済政策パッケージについて – 内閣府

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