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【第1回人材像WG速報】人生100年時代に「メシを食える大人」ってどんなヒト?人材力研究会・人材像WGが本日開幕

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AIやIoTといった次世代テクノロジーを中心に、第四次産業革命が到来していると言われる中、産業構造の変化はもちろん人の働き方も大きな転換点を迎えています。

「人材力」こそが企業競争力の源泉たる要素として注目され始め、「一億総活躍プラン」の流れの中で「働き方改革」とともに「人づくり革命」などの議論が活発化しています。2017年9月に発足し、HR業界をはじめ各所で話題になっている「人生100年時代構想会議」も、まさに同様の文脈に端を発しています。

その流れを受け、経済産業省主導のもと「我が国産業における人材力強化に向けた研究会(人材力研究会)」が設置され、本研究会に先立ちワーキンググループのひとつ「必要な人材像とキャリア構築支援に向けた検討ワーキング・グループ(人材像WG)」が、本日2017年10月16日より始動しました。

この「人材像WG」の第1回を聴講してまいりましたので、速報レポートをお送りいたします。

そもそも「人生100年時代構想会議」とは?

この度の「人材力研究会」、そして「人材像WG」の内容をお伝えする前に、その前提として「人生100年時代構想会議」とは、そもそも何なのかについてカンタンに触れたいと思います。

「人生100年時代構想会議」の有識者メンバーのリンダ・グラットン氏、及び、同氏とともに『LIFE SHIFT: 100年時代の人生戦略』を執筆したアンドリュー・スコット氏は、従来のライフステージを下記のように捉えています。

人が100年も“健康に”生きる社会が到来する時、従来の3つの人生のステージ(教育を受ける→仕事をする→引退をして余生を過ごす)のモデルは大きく変質する。

「大学を卒業し、その後40年間働く」という画一的なライフステージは終わった

一方、これからの人生100年時代においては、個人の状況に応じ、それぞれのタイミングで上記3つのステージを行ったり来たりするようになると見解を述べています。

つまり、従来の「大学を卒業し、その後40年間働く」という画一的なライフステージを歩む時代は終焉を迎え、よりパラレルな概念へと変化していくと考えられます。

そして、その人生100年時代において必要性が増すものは、以下のような要素です。

  • 教育:専門技能を高め、世界中の競合との差別化が必要
  • 多様な働き方:70歳超まで働くことを想定し、独立した立場での職業を考える
  • 無形資産:お金だけでなく、経験や人的ネットワークなど

ここで注目すべきは、「教育」や、以前なら定年であった「70歳超」という年齢でのキャリアが、これからの働き方の軸に含まれていることです。

つまり、「産業」と「教育」とをこれまで以上にインタラクティブに考える必要がある中で、「リカレント教育」や「Ed-Tech(教育×テクノロジー)」が、その役割を担うと期待されています(これらリカレント教育やEd-Techについては、別途機会を改めて、深掘りしてみたいと思います)。

「人材力研究会」の概要

前述した、人生100年時代のライフシフトを前提に、「人材力研究会」及び本日より開始の「人材像WG」では、下記の主旨のもと進行していくようです。

我が国産業における人材力強化に向けた検討における方向性

「人生100年時代」を踏まえ、

1.リカレント教育の充実
2.(特に大企業から中小企業等への)転職・再就職の円滑化
3.それらのベースとなる必要とされる人材像の明確化や確保、活用
4.産業界として果たすべき役割

をパッケージで検討することで、我が国人財力の強化へと繋げます。特に2006年から定義づけられた「社会人基礎力」の見直しも、重要なテーマのひとつとして挙げられています。

人材力研究会及び人材像WGの検討範囲

研究会全体としては、「人材像の明確化」、「キャリア自律の促進」、「転職・再就職の円滑化」をトータルパッケージ化し、エコシステムの形成を図るべく研究会を進行するようです。

そのフローの具体的なポイントは下記が挙げられます。

(1)人材像の明確化(受け入れ企業)

  • 社会・産業として求める人材像
  • 中小企業として求める人材像
  • 求人方法や職場環境

(2)キャリア自律の促進(送り出し企業・働き手)

  • 企業内におけるキャリア形成環境
  • キャリア自律を促す雇用・人事制度
  • リカレント教育の提供体制

(3)転職・再就職の円滑化(労働市場・制度)

  • 求人ニーズ・求職ニーズのミスマッチ解消(主に大企業から中小企業)
  • 多様な形態の働き方(兼業・副業など)
  • 社内失業の防止(中高齢者の高付加価値雇用事例)

なお、「人材像WG」においては、主に「人材像の明確化」や「キャリア自律の促進」について検討していくとのこと。

働く環境の多様性をもたらす企業側のアプローチはもちろん、働き手ひとりひとりのキャリア自律、つまり主体的な取り組みなしには持続可能なエコシステムを形成しえないということも、大きなポイントのひとつです。

ワーキンググループの様子

本日、軸となったテーマは「社会人基礎力」であり、「メシが食える大人」「魅力的な大人」を育てる学習塾として人気の、花まる学習会代表・高濱 正伸氏がゲストスピーカーとして解説。

高濱 正伸氏(中)

高濱 正伸氏(中)

教育、特に幼児期や児童期における教育のポイントに「主体性」「パートナー力」を挙げており、中でも「主体性」に関しては、人生100年時代における自律的なキャリア形成をする上で、ただ働くだけでなく「メシが食える大人」の絶対条件として何度も強調されていました。

続いて、株式会社HARES 代表取締役・西村 創一朗氏(「複業解禁」が日本を救う)、伊藤忠株式会社 人事・総務部長・垣見 俊之氏(伊藤忠株式会社 企業理念及び 人材要件&諸施策への展開)、エッセンス株式会社 代表取締役 米田 瑛紀氏(人生100年時代のキャリア構築・人材活用)の順で、提出資料のプレゼンテーションが行われました。

その後の意見交換では、人生100年時代を見据えて「意識変革」の重要性が話題となり、変革を促す取組などが各委員から紹介されました。

西村 創一朗氏(左)/ 垣見 俊之氏(中)/ 米田 瑛紀氏(右)

西村 創一朗氏(左)/ 垣見 俊之氏(中)/ 米田 瑛紀氏(右)

また、この中で、西村氏によって展開された、人生100年時代における副業解禁の重要性について、オブザーバーである経団連・高橋 弘行氏やWGの座長である法政大学 名誉教授・諏訪 康雄氏からのコメントが印象的でした。

具体的には、西村氏の意見の中で、これまでメインの仕事があってのサブ(副)という位置づけだった「副業」を、メインの仕事+メインの仕事、つまり「複業」という新しい考え方の中でパラレルにキャリアを築き、自分らしい生き方を実現していこうと提示されました。

これに対し、高橋氏や諏訪氏が、「複業の実現にあたっては、パラレル化する中での長時間労働を是正しようという動きの中で、トータルの労働時間が長引いてしまいかねない懸念を解消する必要がある」「就業規則・残業時間計算などの労務上の障壁をどのように解決するかもあわせて考える必要がある」という旨のコメントが寄せられ、西村氏も「デメリットや悪用の可能性を考慮する必要性を認識し解消していくべき」と発言。

次回以降の研究会やWGなどでどのように議論されていくのか、企業としても働き手としても見どころとなるポイントになりそうです。

高橋 弘行氏(中)

高橋 弘行氏(中)

詳細なる会の内容は、経済産業政策局 産業人材政策室よりアップされた議事概要をご覧くださいませ(2017年11月8日追記)。

なお、「人材力研究会」「人材像WG」の詳細はこちらのリリース(我が国産業における人材力強化に向けた研究会を設置します – 経済産業省)をご覧ください。

【参考】人材力研究会メンバー 及び 人材像WG 委員名簿(敬称略)

・学識経験者
諏訪康雄 法政大学 名誉教授(当WG座長)
今野浩一郎 学習院大学 名誉教授(当研究会座長)

・リカレント教育/転職・再就職関係者
小城武彦 日本人材機構 代表取締役社長
宇佐川邦子 リクルートジョブズ ジョブズリサーチセンター長
水谷智之 一般財団法人 地域・教育魅力化プラットフォーム 代表理事
宮島忠文 社会人材コミュニケーションズ 代表取締役
米田瑛紀 エッセンス 代表取締役

・企業/働き手
垣見俊之 伊藤忠商事株式会社 人事・総務部長
西村創一朗 HARES 代表取締役

・ゲストスピーカー
高濱正伸 花まる学習会 代表

・オブザーバー
高橋弘行 一般社団法人日本経済団体連合会 労働政策本部 本部長
伊藤史恵 文部科学省 生涯学習政策局 参事官
福島崇 文部科学省 高等教育曲 専門教育科 企画官
波積大樹 厚生労働省 人材開発統括官付 人材開発制作担当参事官
弓信幸 厚生労働省 職業安定局 雇用政策課 課長

最終更新日 2017年11月8日

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