タレントマネジメントを導入するメリット・デメリットとは?成功事例も合わせて紹介
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近年、企業の人事戦略において「タレントマネジメント」という言葉をよく耳にするようになりました。しかし、具体的にどのようなメリットがあり、どのような課題があるのでしょうか。
本記事では、タレントマネジメントの導入によるメリットとデメリットを詳しく解説し、実際の導入事例もご紹介します。
タレントマネジメントとは?貴重な経営資源を活かす人事戦略
タレントマネジメントとは、人材育成や人員配置、人事制度などを最適化するための人事戦略を指します。少子高齢化による人材不足や働き方・価値観の多様化という時代背景から、昨今注目されています。
タレントマネジメントでは、従業員のスキルや経験、能力、潜在的な才能などを体系的に管理し、それらの情報を活用して戦略的な人材配置や育成を実施。組織全体のパフォーマンス向上を目指します。
タレントマネジメントの定義の詳細については以下の記事で詳しく解説しています。
タレントマネジメントによるメリット
人材育成の効率化
タレントマネジメントによって得られるメリットのひとつは、人材育成の効率化です。タレントマネジメントでは、従業員の性格や特性、実務能力をデータとして統合的に管理します。従業員一人ひとりの長所と短所を可視化しながら、必要に応じて研修や教育を実施し、業務の習熟度やスキルの熟練度を向上。従業員の強み・長所を最大限に活かしながら、弱み・短所を補うような育成により、人材の総合的なスキル向上に貢献します。
人材定着・離職率の改善
企業にとって、離職率と定着率の改善は非常に重要な経営課題です。タレントマネジメントの導入によって従業員が成長できる環境が整えば、内発的動機付けにもとづくモチベーション向上や、企業に対する貢献意識の醸成が期待できるでしょう。従業員満足度が高まれば、離職率や定着率の改善に寄与し、新たな人材の採用・育成コストの削減や、優秀な人材の確保、業績の安定化、企業イメージの向上といった多くのメリットをもたらします。また、退職する人材の傾向を可視化して原因を特定できれば、具体的な離職防止策を打ち出せる点も大きなメリットです。
パフォーマンスの最大化による生産性の向上
タレントマネジメントにおける重要課題のひとつは、人材を適材適所に配置してパフォーマンスを最大限に引き出すことです。同じ組織に属する従業員であっても一人ひとりが異なる能力を有しており、それぞれに得手不得手な領域が存在します。
タレントマネジメント、なかでも包摂的タレントマネジメントでは、各従業員の違いや差異を強みと捉え、その特性を最大限に活用します。特性を活かした人員配置により、人材と業務のミスマッチを防止できると同時に、個人のパフォーマンスが最大化され、結果として組織の生産性向上と持続的な発展に貢献すると考えるのです。
包摂的タレントマネジメントなど、タレントマネジメントの定義について詳しくは、下記の記事を参照ください。
タレントマネジメントの導入・運用時のデメリット
(1)データを収集するのに時間がかかる
タレントマネジメントを実践するには、従業員の基本情報だけではなく資格スキル、過去の評価結果、キャリア希望など、さまざまなデータが必要です。しかし、これまでデータを蓄積してこなかった場合、ゼロからデータを収集し、管理するのは容易ではありません。
人事データが蓄積できていない場合、実施したい施策に必要なデータを新たに蓄積する必要があります。たとえば、定常的な労務手続きや人事評価機能を備えたタレントマネジメントシステムを活用すれば、業務を通して自然と人事データを収集・蓄積できます。
(2)人事データの管理・更新が必要
タレントマネジメントに人事データを活用する場合、人事データは正しく最新の状態である必要があります。たとえばスキルや資格にもとづく配置を実施する場合、従業員から正しい情報を収集する必要があります。
また、人事データを最新の状態に保つための仕組みの構築や、従業員が人事データを入力しやすいシステムの導入などが効果的です。
タレントマネジメントシステムを導入するメリット
タレントマネジメントシステムは、従業員データの一元管理やデータ分析、人材育成や人材配置、目標や評価の管理など、タレントマネジメントの実行を支援するシステムです。
タレントマネジメントシステムの導入によって、以下のメリットが期待できます。
(1)適材適所を効率的に実現できる
最新の人事データを一元管理できるので、従業員のもつスキルや適性を明確に把握し、効率的に適材適所の配置が実現できます。適材適所の配置は従業員のやる気を引き出し、生産性を高める、会社の業績向上につながります。
(2)埋もれている能力を発掘できる
タレントマネジメントシステムの活用により、従業員一人ひとりのスキルや経験、実績などを可視化できるので、活かしきれていなかった人材を発見できます。内部に埋もれていた能力の発掘により、効率的に組織力が最大化されます。
(3)適任者をすばやく選べる
新規事業や新規プロジェクトの推進には、必要なスキルと経験をもつ人材を確実に選任する必要があります。タレントマネジメントシステムを活用すれば、社内の人事データから求める条件にぴったりマッチする適任者をピンポイントで探し出せます。これにより、プロジェクトをスムーズにスタートさせ、成功へと導けます。
(4)個人に最適化された育成計画が立てられる
従業員一人ひとりのキャリアビジョンや強み・弱みを可視化できるので、画一的な研修プログラムではなく、個人に合わせたオーダーメイドの育成計画を立てられます。自身の特性や目標に応じて、最適な研修や業務アサインメントを受けられ、着実にスキルアップを図れます。結果的に、従業員のモチベーションを高め、エンゲージメントの向上にもつながります。
タレントマネジメントシステムを導入する場合のデメリット
(1)システムを導入のコストがかかる
タレントマネジメントシステムを導入する場合、以下のようなコストが発生します:
- 初期導入費用
- ライセンス料 ・カスタマイズ費用
- 運用・保守費用
- トレーニング費用
コストと導入により見込まれる効果を踏まえて、導入を判断する必要があります。コスト削減のためには、クラウドベースのソリューションの検討(初期投資を抑えられる)や段階的な導入(必要な機能から順次導入) などを実施しましょう。
たとえば、まずは組織サーベイのみを導入し、その後必要な機能を追加するといった方法です。初期コストを抑えつつ、段階的に効果を確認しながら導入を進められます。
(2)機能を使いこなせずシステム費用が無駄になる可能性がある
多機能なシステムを導入しても、使いこなせないと投資が無駄になってしまいます。この問題を避けるためには、以下の対策が必要です:
- 導入目的の明確化
- 必要最小限の機能からスタート
- 段階的な機能拡張
- 定期的な利用状況の確認と改善
たとえば、最初は基本的な人材情報管理とスキル管理機能のみを活用し、定着を確認した後に評価管理や育成計画機能を追加するなど、段階的なアプローチを採ります。
(3)システムが社内で浸透しないと利用されない
システムを導入できても、実際に利用されないと真価を発揮できません。システム浸透のためには、利用メリットの明確化と周知、 トレーニングの実施などが必要です。
システムの利用方法についての定期的な社内研修会の開催や、ベストプラクティスを社内共有する仕組みを整えるなども効果的でしょう。
タレントマネジメントシステムの導入事例
以下ではタレントマネジメントシステムを人事労務業務に段階的に導入し、タレントマネジメントを効果的に推進している事例を紹介します。より多くの事例を知りたい方は、以下の記事もぜひ参照してみてください。
SmartHR事例:【U-NEXT】従業員の強みを活した人員配置を実施
U-NEXTではSmartHRを導入し、入社手続きの効率化と従業員データベースの一元管理を実現し、工数を大幅に削減。さらに経営統合後の組織拡大に伴い、SmartHRのタレントマネジメント機能の活用をはじめました。
とくに注目すべきは、配置シミュレーション機能の活用です。従業員の経歴や趣味などの情報を参照しながら、適材適所の人員配置を実現しています。たとえば、スポーツコンテンツ拡充に伴い、サッカー経験者を適切な部署に配置するなど、従業員の強みや趣味を活かした配置を実施しました。
さらに従業員サーベイ機能や人事評価機能の導入を進め、組織変更の満足度測定や人材育成にも活用予定。従業員にとって働きやすい環境づくりを推進し、組織の成長を促進しています。
SmartHR事例:【ツマミナ】労務業務を効率化し、心理的安全性やチームビルディングに注力
ツマミナは、急速な店舗拡大に伴いSmartHRを導入し、タレントマネジメントを推進しています。まず、入社手続きや従業員データベースの管理を効率化し、新規出店時の人事業務をスムーズに進められるようになりました。
また、従業員データベースを活用して、店舗間のヘルプ勤務時の情報共有や誕生日のお祝いなど、従業員が楽しく働くための工夫を実施。
さらに従業員サーベイを実施し、組織の課題を可視化しています。サーベイ結果をもとに、業態に合わせた採用計画の最適化や、店舗の雰囲気改善のための施策を展開してきました。たとえば、従業員間のコミュニケーション促進のため「iCard」を用いた感謝の気持ちを伝え合う取り組みを始めています。
従業員のポテンシャルを引き出すためのタレントマネジメント
適切なタレントマネジメントシステムの導入によって、タレントマネジメントの導入・運用におけるデメリットを最小限に押さえ、多くのメリットを享受できます。導入事例を参考に、ぜひ自社に適したタレントマネジメントシステムの導入も検討してみてください。
Q1. タレントマネジメントのメリットは?
主なメリットには、適材適所の人材配置、効果的な人材育成、客観的な評価、従業員のエンゲージメント向上、組織全体のパフォーマンス向上などがあります。
Q2. タレントマネジメントのデメリットは?
主なデメリットには、データ収集・更新の手間、プライバシーへの配慮、システム導入コスト、組織全体への浸透の難しさなどがあります。
Q3. タレントマネジメントシステムを導入するメリットは?
システム導入のメリットには、人材情報の効率的な管理、適材適所の配置の容易化、育成・採用計画の立案支援、データに基づく意思決定の実現などがあります。