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新人教育カリキュラムの作り方や内容例を徹底解説

公開日

この記事でわかること

  • 新人教育研修の目的や実施する意味、種類などについて
  • 新人教育のカリキュラムを作る流れを手順ごとに詳しく紹介
  • 新人教育のカリキュラムを作る際に押さえておくべきポイント、注意点
目次

新たに迎える人材を短期間で戦力化するためにも、新人教育は重要です。適切な新人教育によって、社員は社会人に求められるマナーや知識、実務に要するスキルなどを習得できます。本稿では、新人教育カリキュラムの作り方やカリキュラム作成時における注意点などを解説します。

新入社員研修の意味・目的とは?

図表:新人教育の意味・目的

新入社員研修の目的は、社会人に必要な知識やマナーの習得です。社会人経験がない新卒社員の場合、社会人に求められるマナーを理解していないケースがほとんどです。基本的な知識・マナーを知らないまま業務に従事させてしまうと、顧客や取引先とのトラブルに発展するリスクもあります。

このような事態を回避するため、新入社員研修を実施します。業種や職種によって研修内容は異なるものの、基本的なビジネスマナーやオフィスワークで必要なPCスキル、電話対応の仕方、コミュニケーションのとり方などについて指導するケースが多々あります。

また、新入社員研修を通して会社の経営理念やバリュー、事業方針の共有・周知も重要です。企業の理解、ビジョンの共感を促し、共通の目標をもとにした業務遂行ができるように働きかけます。

加えて新入社員研修には、入社した人材の現状スキルを確認する目的もあります。個々のスキルは履歴書などに記載されていますが、それらの情報だけで正確に把握するのは困難です。実際に研修を通じて、現段階で有しているスキルや不足している能力、これから身につけていくべき知識や技術などを確認することもあります。

目的には短期的なものと長期的なものがある

短期的目的

新入社員研修の短期的な目的は、社会人としてはじめの一歩を踏み出す社員のサポートです。今まで学生だった新入社員には、社会人に必要なスキルや知識、マナーなどがまだ十分に身についていない可能性があります。社会人生活をスタートするにあたり、それらを研修でサポートします。

長期的目的

一方長期的な目的としては、社員のさらなる成長促進です。企業が継続的な発展と成長を続けるには、社員の成長が不可欠です。新人教育で学んだことを実務に活かしつつ、さらに成果をあげる人材への成長が求められます。

新人教育のカリキュラムの作り方

作成するカリキュラムによって、新人教育の成否が分かれるといっても過言ではありません。ここでは、新人教育のカリキュラムをどのように作成するのか、ステップごとに詳しく解説します。

1. 社内にヒアリングする

まずは新入社員に求める知識やスキルなどをリストアップしましょう。そのためには、実際に現場で業務に従事する社員へのヒアリング調査が有効です。

ともに働くことになる新入社員が、有しておくべき知識やスキルを現場の社員へヒアリングしましょう。新入社員に求めるスキルは部門によって大きく異なるとともに、同一部門であっても細かな違いがあるケースは珍しくありません。そのため、丁寧なヒアリングが求められます。

既存社員を対象に、「新入社員のときに知っておきたかったこと」をヒアリングするのも有効です。入社2~3年目の社員を対象にヒアリングしてみましょう。

ヒアリング調査実施の際には、できるだけ短時間で済ませる配慮と、事前打診を踏まえたスケジューリングが必要です。

2. 組織の目標を確認する

つぎに、新入社員研修で達成したい、組織の目標を確認します。組織全体の目標が明確でないと、求める人材像や育成方針なども決まりません。そのため、まずは研修を通して最終的にどのような人材に育ってほしいのか、どういったスキルを身につけてほしいのかを確認します。

たとえば、「5年後に海外へも支店を展開し、売上1億円を目指す」といった目標を設定した場合、この目標を達成できる人材の育成が必要です。このケースでは、海外へのビジネス展開を視野に入れているため、社員には高度な語学スキルやコミュニケーションスキルなどが求められます。

なお、既存社員からヒアリングした情報は、あくまで部門や各現場の率直な意見・声として捉えましょう。これらの情報は、カリキュラムの作成にあたり重要な情報ではあるものの、組織全体の目標とマッチするかどうかを考慮しましょう。

3. 新入社員の目標を定める

新入社員研修カリキュラムの作成時には、新入社員の目標も設定します。組織全体の目標達成に必要な、個々のスキルやゴールを考えながら目標を決めましょう。

SMARTの法則

図表:SMARTの法則

目標設定の際には、「SMARTの法則」に落とし込みます。SMARTの法則とは、1981年にジョージ・T・ドラン氏による論文「There’s a S.M.A.R.T. way to write management’s goals and objectives」にて発表され、目標を設定する際の指標となる5つの要素で構成されています。

  • Specific:具体的、分かりやすい
  • Measurable:計測できる
  • Achievable:達成可能な
  • Relevant:関連性
  • Time bound:期限が明確

目標が抽象的では、途中で進むべき道が見えなくなってしまいます。そのため、目標は具体的に設定するのが基本で、計測しやすいよう数値を盛り込むことも重要です。どの程度達成に近づけたかを把握できれば、社員のモチベーション維持にもつながります。

また、達成可能な目標であることも大切です。達成が非現実的な目標を立てても意味がなく、かえってモチベーションの低下を招きます。また、組織やチームの方針との関連性やいつまでに達成すべきかの期限も定めましょう。

図表:FASTの法則

ほかにも、SMARTの法則に比べて、より高い難易度の目標設定が求められる「FASTの法則」も存在します。

4. 実際に必要なスキルを洗い出す

設定した目標の実現に必要なスキルを抽出するフェーズです。なお、スキルというと「TOEIC 750点」「簿記2級」「宅地建物取引士資格」など、テクニカルスキルを思い浮かべがますが、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルもビジネスシーンでは求められます。

図表:ビジネスシーンで求められる3つのスキル

たとえば、コミュニケーションをはじめとしたヒューマンスキルも求められるスキルの一種です。「難しい話をロジカルに分かりやすく説明できる」「相手の立場に立って背景を丁寧に伝えられる」といったコンセプチュアルスキルは、ビジネスシーンにおいて大いに重宝します。

ほかにも「集中力が必要な作業に黙々と長時間取り組める」などもスキルの1つです。集中力が必要となる作業はストレスもかかり、途中で飽きてしまうことも珍しくありません。このような仕事でも集中して取り組む姿勢は、業種によっては必要不可欠なスキルです。

ほかにも、プレゼンテーションスキルや問題解決力、安定したメンタルなどもビジネスの世界では求められます。このような数値化が難しいスキルも含めて、洗い出しを進めましょう。

5. 洗い出したスキルをもとにカリキュラムを作成する

抽出したスキルにもとづき、具体的なカリキュラムを作成していきましょう。研修スケジュール・方法などを考えます。

習得を求めるスキルが多い場合、新入社員の負担を考慮した余裕をもったスケジュールが求められます。1日に詰め込みすぎないよう、ボリュームを調整しましょう。

カリキュラム作成時は、順序にも配慮します。新入社員にいきなり高度な実務関連のスキルを教え込むのは、あまり現実的とはいえません。優先順位を考えると、まずは社会人としての仕事に対する向き合い方やマインドセット、最低限求められるビジネスマナーなどが挙げられます。それらを経てから、実務に役立つスキルの研修を進めていくのが理想です。

新人教育はツール活用で効率的に推進

図表:SmartHRのスキル管理機能

新卒社員育成において、習得すべきスキルの可視化・習熟度の把握には、SmartHRの「スキル管理」機能が役立ちます。部門ごとに求められるスキルや研修によるスキル取得の進捗状況などを一覧化し、効率的な新卒社員研修をサポートします。

3分でわかる!SmartHRのスキル管理

新人教育のカリキュラムを作る際の注意点

新人教育のカリキュラム作成時は、詰め込みすぎないよう注意しましょう。どれも習得できず中途半端な結果に終わってしまうおそれや過度な負担をかけてしまうおそれがあります。肉体的にも精神的にも疲弊し、離職につながるリスクも考えられます。

作成時は、目的に沿った内容になっているか、無理のないボリュームかどうかを適宜振り返りながら、カリキュラムを作成しましょう。最終ゴールから逸脱している場合、完成間近での大幅な修正につながってしまいます。

この事態を防ぐために、カリキュラムの作成時に、2〜3年目の社員に協力を仰ぎ、内容についてフィードバックをもらいましょう。学びきれるボリュームか、負担が大きすぎないか、実務に即したスキルを学べる内容になっているかなどを確認してもらいます。新入社員時代の経験にもとづく適切なアドバイスが期待できます。

新人教育はあくまでも"新入社員視点"で

カリキュラム作成時には、社内へのヒアリングによって新入社員が身につけるべきスキルを把握し、組織や新入社員の目標を設定したうえで作成しましょう。

組織側の視点だけでは、理想の人材育成に方針が傾きすぎてしまいます。カリキュラム作成段階から、新入社員の視点に立って新人教育を実施することが大切です。人材育成を長期的な目線で捉え、じっくり腰を据えて育てていく姿勢が、優秀な人材の獲得につながります。

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