施設⻑が語る"働きがいのある職場"を目指した取り組み 〜システムの導入による生産性向上とその効果〜
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目次
2022年11月23日、第25回日本臨床脳神経外科学会に協賛し、来場者向けのセミナーを実施しました。
本セミナーは、医療・福祉法人および団体の理事長、経営者、人事・労務ご担当者を対象に、「医療・福祉業界における人事システム導入の取り組み事例を、インタビュー形式で展開するセミナー」として企画されました。
今回、SmartHRを導入いただいている社会福祉法人四天王寺福祉事業団様にシステム導入の経緯や実際の活用方法とその効果について、法人本部 施設長 加藤 温子さんにお話を伺いました。
- ファシリテーター佐藤 珠奈
株式会社SmartHR マーケティンググループ セールスマーケティングユニット
- スピーカー加藤 温子 氏
社会福祉法人四天王寺福祉事業団 法人本部 施設長
現場業務と兼務する労務担当者の負担軽減が導入時の課題
佐藤
このセミナーでは、SmartHRを活用されている社会福祉法人 四天王寺福祉事業団様をお呼びして、セッション形式でお話を伺います。さっそくですが、SmartHR導入を検討したきっかけをお伺いしてもよろしいでしょうか?
加藤さん
2020年4月から、特定の法人について電子申請が義務化されたことで、時代の流れが電子申請化に大きく進みつつあると感じておりました。当法人の労務担当者のご家族の勤務先でSmartHRをすでに導入しており、「便利そうですよ」とご紹介があったことがきっかけです。
当法人には21か所の施設があります。各拠点の労務担当者は、施設の主任や介護長など現場業務と兼務している形式でしたので、少しでも現場の業務負担を減らしたいという課題がありました。
佐藤
システム導入には専門的な知識が必要と感じる方も多くいると思いますが、IT化の推進や情報システム部門との連携などどのように進められたのでしょうか?
加藤さん
当法人はアナログなことも多く、IT化の推進を担う専門の部署がありません。そこで、法人本部の労務担当が中心となり検討を進めました。最初にSmartHRを提案してくれた職員の方が、法人本部の中でも新しいシステム導入への抵抗が少なく、積極的に情報収集をしてくれました。
主に、行政が実施している電子申請アドバイザーの方のお話を伺ったり、e-Govについて調べたりして情報収集しておりました。
そのほか、インターネットで情報収集し、労務管理ソフトを提供する複数社の方と面談し、機能や費用についての詳細を確認しました。その後、本部がある近くの施設の施設長や労務担当者に協力してもらい、無料トライアルを利用するなかで、当法人の運用に合いそうなサービスを探しました。
ユーザー視点によるサポートの充実度が導入の決め手
佐藤
弊社SmartHRだけでなく、その他の企業様のトライアルも進められたかと思います。システム導入の検討の際に最も重視されたポイントは何でしょうか?
加藤さん
当法人の体制、運用に合っているかどうかを最重視しておりました。具体的には、当法人では、さまざまな職種や形態で採用しておりますので、医師がいる施設もあれば、介護員、相談員が多くいる施設もあります。そのため、雇用契約書の様式を運用に合わせてカスタマイズできること、職員からの届出書類の承認経路の設定などを柔軟に設定できることが重要です。
佐藤
柔軟にカスタマイズできることが重要だったのですね。その他に、SmartHRを選ばれた決め手はありますか?
加藤さん
決め手になったのは、営業担当の方がとても親切でサポート体制が充実している点です。システム導入後も専属の担当者さんがいて心強かったです。それだけでなく、チャットサポートでの問い合わせもすぐに丁寧な返信をいただけるので積極的に利用しています。
また、法改正に合わせてアップデートも頻繁にされている印象で、使いやすくなるようユーザーの声を大切にされている姿勢をトライアルの際に感じ、素晴らしいと思いました。
導入にあたり、21拠点の施設長や責任者へ説明を丁寧に実施
佐藤
ありがとうございます。導入検討を進めるにあたり、施設の決裁が必要な場面などもあると思います。その点で苦労されたことはありましたか?
加藤さん
当法人は21か所と複数の施設がありますので、新たに費用面での負担増加に抵抗感をもつ施設担当者との調整が必要でした。
それぞれ疑問や不安に思っていることが施設の規模によっても違います。たとえば、規模の小さい施設であれば、ペーパーレス化に対してそこまで緊急性を感じていませんでした。その他にも、ランニングコストがかかるクラウドサービスよりも、初期費用だけで運用できる方法があるのでは? といった意見もあがったことがあります。
佐藤
施設ごとの決裁を取るために、加藤様や導入に携わった担当者の方々が工夫されたことがあれば教えてください。
加藤さん
各拠点の施設長や責任者それぞれから意見を聞き、疑問点や不安に思っていることに関して1つずつ説明していきました。また、現場で業務に携わる担当者が導入に対して賛成意見が多いことも伝えていきました。あわせて導入後のメリットや、時代の流れとしてペーパーレスへ転換していくことを説明し、早い段階での導入の方が、より得られるメリットも大きいことを説明しました。
電子申請が可能になり、社会保険や雇用手続きが効率化
佐藤
SmartHRの導入が決まった際、施設の方々にどのように周知されたのでしょうか?
加藤さん
施設長と施設ごとの労務担当者向けにオンラインの説明会を開きました。ポスターや職員向けの説明資料マニュアルなどをSmartHRさんにご用意いただいたので大変助かりました。
SmartHRの文書配布機能というものがありますが、それを利用して全職員にメールでマニュアルを配信しました。
佐藤
なるほど、資料のご活用ありがとうございます。次に、SmartHR導入後の施設の変化や、今後取り組みたいことについて伺います。実際に導入されて3か月ほど経ちましたが、業務の変化はありましたか?
加藤さん
社会保険や雇用保険の手続きが大変早くなりました。事業所の情報や職員からの住所や名前の変更といったものが自動的に印字されますので、簡単に電子申請ができます。保険証もすぐに届くという点に驚きました。
従来であれば、住所や名前の変更手続きはイチからExcelで入力し、印刷して年金事務所に送付していたのでそういった手間が省けました。また、雇用保険の手続きはハローワークに出向いていましたが、電子申請によりその工数が削減できるのでありがたいという声があがっています。
ハローワークや労基署へ出向く手続きに関しては、全事業所でおよそ210時間。各事業所の給与担当者の時間外労働が令和2年度で1,700時間でしたので、すべてが給与業務で残業していたとは限りませんが、相当な時間の削減が見込めたと考えております。
佐藤
時間や紙の削減など、さまざまな観点から削減に成功されているのですね。労務担当者以外の方から何か嬉しいお声はありましたか?
加藤さん
過去の給与明細がスマートフォンでどこでも確認できるのが良いという声や、保険証が届くまでの期間が短いので助かるといった声がありました。また、職員の情報や資格情報などの人事情報をすぐに確認できるのが便利という声もあがっております。
紙とメールで集計していたアンケートを従業員サーベイに代替し効率化
佐藤
四天王寺福祉事業団体様では、SmartHRの機能の1つである従業員サーベイを利用されていると伺っております。
まず、従業員サーベイについて簡単にご説明いたします。イメージとしてはアンケートのようなものです。従業員様のエンゲージメントやキャリアプランなど、組織や従業員の状態を可視化できるほか、登録されている従業員情報を活用して部署や役職ごとのように雇用形態の区分ごとにアンケートを実施できます。
四天王寺福祉事業団体様ではどういったご活用をされているのでしょうか?
加藤さん
当法人では利用しはじめたばかりですが、研修の出欠や研修後のアンケートに利用しています。
そのほか、何か検討事項があるときの現状把握のための実態調査や、施設管理者の方の意見の聴取に活用しています。たとえば、手当の金額向上のために、各職種での業務の実態を調査しています。
SmartHR導入以前もアンケートを取る機会があり、手動で未回答者にメールでリマインドしていたのですが、従業員サーベイを利用してからは自動でリマインドメールが届くため手間が省けて大変助かっております。
また、研修後アンケートなどは紙で回収して、出欠はメールといった方法で集計にそもそも時間がかかっていたため、それを自動化できたのはありがたいです。今後は各施設の方でも施設内でサーベイを活用できるように準備しようと考えています。
人事情報の一元管理を起点に業務改善や採用活動への取り組みも視野に
佐藤
効率化された時間を活用して、今後取り組みたいことについてお伺いさせてください。
加藤さん
現在、人事評価は別のソフトウェアを利用しているのですが、SmartHRでは最新の人事情報を回収できることから、今後は一元化に取り組んでいきたいと考えています。そして、分析レポートや組織図といった機能のようなまだ活用しきれていない機能についても利用をはじめ、業務改善に繋げていきたいです。
また、残念ながら離職する職員もいるため、そういった職員の動向を分析し採用活動につながるようにしたいという施策も検討しております。
佐藤
ありがとうございます。人事情報の一元管理ができると、離職者の分析など人事の情報を元にさまざまな施策に役立てられます。業務改善や採用活動など、労務領域を超えて人材マネジメントの領域にも着手できると思います。本日は貴重なお話をありがとうございました。