コロナ禍の働き方の課題にせまる。距離ある時代のコミュニケーションのススメ【行列のできるしごと相談所 vol.2レポート 前編】

2021.05.06 ライター:大久保志朗

社会の変化やテクノロジーの進化もあり、テレワークをはじめとした新しい働き方よりも身近なものとなっています。

一方で新しい働き方を取り入れた結果、同僚や会社との間に物理的・精神的距離が生まれ、それが課題となることも。

このセッションでは“距離”が広がる社会の中で、多様な価値観を持つ人々が信頼関係を築き、チームとして成果を出すためのヒントを探ります。

スピーカー

篠田真貴子さん エール株式会社 取締役
安田雅彦さん 株式会社ラッシュジャパン 人事部長 Head of People

モデレーター

薮田孝仁 株式会社SmartHR 執行役員・VP of Human Resource(人事責任者)

【前提】アンケート結果「リモートワークで変わったことは?」

薮田:このセッションのモデレーターを務めます、SmartHRの薮田と申します。本日は篠田さん、安田さんのお二人から「距離ある時代のチームづくり」について色々とお伺いしたい思います。どうぞよろしくお願いします。

専門誌『月刊総務』で主に総務担当者を対象に実施された読者アンケートでは、72.3%の方がテレワーク中の課題として「気軽なコミュニケーションが取りにくくなった」と回答しています。

出典:月刊総務アンケート調査

また、84.2%の方が「会社と社員とのつながりに課題を感じている」そうです。

出典:月刊総務アンケート調査

さらに、79.1%の方が「会社の方向性を社員に伝えにくくなった」そうです。

出典:月刊総務アンケート調査

このように、リモートワークが浸透する一方で、物理的な距離だけでなく精神的な距離も生まれつつある。これは従業員同士はもちろん、会社と従業員の関係も同様であり、皆さん課題があるようです。

そのなかで信頼関係をどう築くのか、お二人の知見をいろいろとお伺いしたいです。まずは安田さん、いかがですか?

決まったアジェンダや意思決定を求めない「ざっくばらんミーティング」

安田さん:“気軽さ”がポイントですね。以前と比べて雑談がしづらくなったと言われていますが、雑談から得られる情報量って実は多かった。そのほか会議でワーって色々と伝えたあと、会議室を出てから席に戻るまでの間にちょっとしたフォローを入れるのって意外と大事ですが、リモートではそのようなフォローが難しくなっていたり。

篠田さん:難しいですよね。オンライン会議が終わっときに「それでは失礼します」と退出したあと、シーンって、ひとり取り残される感じの寂しさもあったり。

薮田:オンラインだと雑談や会議後のフォローがしにくいとのことですが、オンライン会議とオフライン会議で何か違いはありますか?

安田さん:オンラインのほうが緊張しますよね。オンライン飲み会なんかもそうですが、ファシリテーターがいないと硬直しやすい。

篠田さん:確かに。その点、今私がいるエールは、柔軟に対応できているなと感じています。たとえば、雑談のような時間を意識的に設けています。いわゆるアジェンダが用意されている会議であっても、チェックインの時間を取っています。

長めの会議のときは特に。1人あたり1分ほど今の気分や体調などを話すことで、雑談の代わりとまではいかずとも、いきなり事務的に会議を始めることなく、和らいだ雰囲気づくりから入ります。あと「ざっくばらん」と呼んでいるミーティングのカテゴリもありまして。

安田さん:「ざっくばらん」、いいですね。

篠田さん:カレンダーに、「誰々とざっくばらんミーティング」ってスケジュールを入れています。テーマは一応仕事のことですが、決まったアジェンダや意思決定を求めることはなく。

なんとなく「あれってどうします?」とか「そういえばこんな話を聞いたんだけど」などの、仕事に関するざっくばらんとした話を、1対1や、多くても3人でします。これを様々なメンバーとやってバランスを保っているかなと。やっぱりオンラインとオフラインだと、適切な会議の在り方も異なるんでしょうね。

篠田真貴子さん エール株式会社 取締役。慶應義塾大学経済学部卒、米ペンシルバニア大ウォートン校MBA、ジョンズ・ホプキンス大国際関係論修士。日本長期信用銀行、マッキンゼー、ノバルティス、ネスレを経て、2008年10月に(株)ほぼ日(旧・東京糸井重里事務所)に入社。2008年12月より2018年11月まで同社取締役CFO。「ジョブレス」期間を経て、2020年3月よりオンライン1on1を提供するエール株式会社の取締役に就任。「ALLIANCE アライアンス―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用」監訳。

健康的かつ前向きに働き続けるための「リズム」を刻む

安田さん:リモートだと多様性や自由度が増す分、コントロールする必要がありますよね。今篠田さんがおっしゃったように、ミーティングの目的をカテゴリで分けたりとか。

あとは、一周まわってリモート疲れでコンディションが悪くなってくる人もいて、表向きは「私、ずっと在宅でも全然問題ないんですよ」って言っている人にも、たまには出社してもらうような対策も、会社としてある程度とる必要がある。働きすぎてランチもずっと取れない、みたいなこともあるんですよね。

「よしわかった」と、リーダーを立てて「これからは、みんな12時から1時半まではランチをとるようにしよう」「この時間に絶対食事するようにしよう」と言って。「いやいや、それだと全然自由度がないじゃない」みたいな、様々な議論をしていくと。

このように、うまくリモートワークしていくためのコントロールがある程度必要というか、Before コロナにはなかったコミュニケーションのフレームを考えるのが大切じゃないかなと思います。

篠田さん:今、伺っていて感じたのは、コントロールというよりも、音楽で言う“リズム”を刻んでいるっていう感じなのかもしれないですね。管理し過ぎると硬直的になってしまいますが、みんなで健康的かつ前向きに働き続けるためのベースとなるリズムの刻み方を整えていくというのは良さそうですよね。

安田さん:なるほど、コントロールじゃないですね。リズムっていいですね。

「会社に行きたい気持ち」をどう汲むか?

薮田:出社してもらうっていうのは、気軽さを生むねらいも含まれるんですか?

安田さん:まだまだリモートワークが定着しているわけではないので、フェーズの兼ね合いはありますが、「1ヶ月に1回は“Say Hello”しようよ」という感じですね。

篠田さん:実は従業員の皆さんも、ずっとリモートワークをしていると「会社に行きたい」って気持ちがあるんじゃないかと。

安田さん:あると思いますね。

篠田さん:私はメルカリ社に少し関わっているんですが、基本的に皆さんリモートワークなので出勤していないんですけど、ハロウィンの日は出社されている方が多くて。つまり、みんなで仮装するのが楽しくて、普段よりは出社率が高かったみたいなんですよね。

そのため、「リズムとして週1回は出勤しよう」というやり方もあれば、ハロウィンのように交流をきっかけに出社してもらうのも有効かもしれません。リモートと出社の併用の場合、出社する目的を“仕事”に縛り過ぎないほうが良いのかもしれないですね

安田さん:そうですよね。だから僕、オフィスをカフェにしたらいいんじゃないかと思うことがあるんですよ、気軽に来れるように。篠田さんとお話しして思うのは、これらの取り組みの相性は各社の組織文化によっても異なりそうですよね。

たとえば今日、僕と篠田さんで話していますが、この内容をそのまま受け取って「よし、それだ。弊社もそれをやろう」って号令をかけても、うまくワークしない会社もあると思います。「どんな会社なのか」を、各社できちんと理解してから取り組んだほうがいいんでしょうね。

安田雅彦さん 株式会社ラッシュジャパン 人事部長 Head of People。1989年に大学卒業後、西友にて人事採用・教育訓練を担当、子会社出向の後に同社退社、2001年よりグッチグループジャパン(現ケリングジャパン)にて人事企画・能力開発・事業部担当人事など人事部門全般を経験。2008年からはジョンソン・エンド・ジョンソンにてHR Business Partnerを務め、組織人事やTalent Managementのフレーム運用、M&Aなどをリードした。2013年にアストラゼネカへ転じた後に、2015年より現職。

オンラインだけだと伝わらないコミュニケーションをどう補完するか

篠田さん:ラッシュさんはお店が全国にあって、“店舗と安田さんの関係”でいえば、もともとリモートなわけですよね。どういう関係性なんですか?

安田さん:ポイントは“気にかける”ことですかね。

篠田さん:物理的には店舗さんと離れているなかで気にかけるというのは、話しかけるチャネルがあったんですか?

安田さん:そのコミュニケーションの機会をつくるようにしていますね。小さくても変化があれば共有されるコミュニケーションフレームにしています。それ以外だとミーティングですね。

薮田:つながるための仕組みはありますか?

安田さん:シンプルにコミュニケーションツールを使っています。

篠田さん:私の周りの方や、エールのクライアントさんと話していて「ああ、なるほど」って感じたことがあって。オフィスというコミュニケーション環境で何が可能だったかというと、別にお話をしなくても、なんとなく雰囲気で「あ、今日疲れているのかな」とか「なんか今日いいことあったのかな」って感じ合えることで、交流できていたんですよね。

リモートワークでオンラインのコミュニケーションだけだとこれらが伝わらない。ここをどうカバーしますかっていうのが今の課題なんだと思います。

リモートワークを前提としたコミュニケーションの線引きが必要

篠田さん:弊社のオンラインミーティングに、他社さんも御用があったら、一緒に入ってくださることがあるんですが、大企業の方だと「皆さんこんなにプライベートの話を会社でするんですか」って驚かれることがあります。

弊社のメンバーが「ちょっと今日、お腹が痛くて」と言ったことに対して、「『本当に具合が悪いから休ませてください』と言うとき以外、言ってはいけないと自分たちはしつけられてきた」とギャップを感じられたそうなんですが、このようなことを複数の方から聞きました。

この例のようなコミュニケーションって、オフラインで一緒にいるときは問わず語りで交流できていたのを、オンラインだとわざわざ言うようにしないと伝わらない。なので、「そういうプライベートな話もしようよ」とか「言ってOKだよ」と、リモートワークを前提としたコミュニケーションの線引きに変えていくのがいいのかな、なんて思いました。

薮田:オンラインでは、そういうことを口にしてはいけない雰囲気になりやすいってことなんでしょうか?

篠田さん:もともと少し憚られるし、オンラインでは更に遠慮してしまう、ということではないでしょうか。「多少体調が悪くても、プライベートと仕事を分けるのが大人だ」とか「立派なビジネスパーソンとしてパフォーマンスを上げるには、バイオリズムの影響があったら困る。それが無いふりをするのが正しいビジネスパーソンのあり方だ」というメンタリティが、これまで存在していたのかなと感じます。

安田さん:やっぱりコミュニケーションの量や質、テイストって、変化させる必要があるんでしょうね。頻度を変える、テイストを変える、線引きを変える。

薮田:篠田さん、安田さん、ありがとうございます。

 

中編へ続く。

大久保志朗

SmartHRガイドの兄弟メディア「SmartHR Mag.」の編集長。リラクゼーションサロン運営会社、デジタルマーケティング支援会社、フリーランスの編集者・ライターを経て2019年SmartHRにジョイン。最近はSmartHRユーザー会「PARK mini」の企画・運営も担当しています。
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