先進事例に学ぶ/自動車部品メーカーから広がる人事システムを活用した生産性の向上【セミナーレポート】
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目次
本稿では、2023年7月21日におこなわれたオンラインセミナー「〜先進事例に学ぶ〜 自動車部品メーカーから広がる人事システムを活用した生産性の向上」のセミナーレポートをお届けします。
人事労務周りの業務には従来、紙を使った手続きが多く存在します。たとえ面倒であっても紙の手続きに慣れてしまい、それが当たり前と思っている従業員の方も多いのではないでしょうか。こうした業務をペーパーレス化することでもたらされる業務効率化・生産性向上への取り組みは今やさまざまな業界で進みつつあります。今回は、自動車部品サプライヤー業界および製造業界の実例となります。
本セミナーでは、SmartHRをご導入いただいている中央発條株式会社さま、株式会社ソミック石川さまにご登壇いただき、人事労務業務の効率化を進めたきっかけからシステム導入後の活用状況についてお伺いしました。
- 登壇者中央発條株式会社
自動車向けバネ、コントロールケーブルの専門部品製造メーカー。コイルスプリングやスタビライザー、リーフスプリングなどを主力製品として生産し、名古屋市を中心に県内に4工場と技術センターを構え、連結では、北米、アジア、中国などで計海外10拠点を構えています。従業員数は単独で約1,400人、連結で4,300人が在籍。
人材開発室 室長 佐藤 正人さん
労務厚生室 室長 加藤 太一さん
岩井 友佑さん
- 登壇者株式会社ソミック石川
ボールジョイントをはじめとした老舗自動車部品製造メーカー。開発、設計、製造、販売を一貫して行っており、事業所は静岡県を中心に6拠点、さらに海外10拠点を構えています。従業員数は、単独では1,805名、連結では6,000名が在籍。
株式会社ソミックマネージメントホールディングスグローバル人事部 企画管理室 管理G
グループリーダー 藤田 大祐さん
DX担当 知念 弥子さん
社会保険手続き担当 内山 亮子さん
- モデレーター西條 宏松
SmartHR セールスグループ
SmartHR導入以前に抱えていた課題
紙を使用した運用により、書類の回収や確認作業に膨大な工数がかかっていた
西條
中央発條株式会社さまにおけるSmartHR導入以前に抱えられていた課題について教えてください。
加藤さん
弊社は人事労務領域において、紙での運用がメインとなっていたため、それに伴う工数の削減や人事部全体の業務効率化が課題となっていました。
給与明細については電子配付していましたが、現場スタッフへ紙で配付していたため、印刷や仕分けの工数も削減したいと考えていました。
また年末調整については、全従業員紙で実施をしておりまして、そのチェック作業や回収の確認作業などにかかる膨大な工数が課題でした。
全体的に紙運用が起因となっている課題が多く、人事部の業務に負担をかけている状態でした。
紙運用では、書類紛失などの情報漏洩のリスクがあった
西條
続いて株式会社ソミック石川さまが抱えられていた課題について教えてください。
藤田さん
弊社も労務業務が紙メインでの運用に課題を感じていました。
給与明細については従業員約2,000名分の対応が毎月発生していましたので、紙での印刷や配付に非常に工数がかかっていました。また、入社手続きに関しても紙で用意したフォーマットに記入された従業員情報を人事部がシステムに手入力する必要がありました。
年末調整についても同様です。人事部が毎年、扶養控除申告書や生命保険料控除の申告書を紙に印刷して従業員に配付し年末調整対応を進めていました。
非効率な紙での運用も課題でしたが、個人情報でもある入社書類や年末調整書類が回収の最中に紛失し、情報漏洩につながるリスクの改善も重要なポイントでした。
システムの比較検討フェーズで気をつけた点
管理側だけなく、従業員にとっても使いやすいシステムを探した
西條
続いてSmartHRを検討されたきっかけについて教えてください。
佐藤さん
業務効率化を進めるにあたって、電子配付ができるシステムを探していました。比較検討の際に大切にしていたポイントとしては必要な機能とコストの2点になりますが、管理側だけでなく、従業員にとっても使いやすいシステムかどうかも重視していました。
SmartHRは操作が非常に簡単だと感じました。年末調整においてはアンケート形式で選択肢を選んでいけば手続きが進むので、従業員にとっても取り組みやすいだろうと思いました。
リモートワークを背景に、2,000名規模の管理ができるシステムを探した
西條
続いて株式会社ソミック石川さまにもSmartHRを検討されたきっかけをお伺いします。
知念さん
システムの導入を検討する大きなきっかけとなったのはコロナ禍によるリモートワークです。従来の紙での労務対応がリモートワークによってさらに時間や手間がかかる状態になっていました。また、Excelでの帳票作成が多い状態の改善も必要でした。
システムの検討の際には人材管理と労務管理にターゲットを絞り、選定をはじめました。2,000名規模の管理と先に挙げた課題を解決できるクラウドシステムとして最終的にSmartHRを選びました。
社内決裁を取る際に気をつけた点
業務効率化がゴールではなく、より付加価値の高い施策につなげる
西條
次のテーマは社内決裁を取る際に気を付けられたポイントについてです。こちらを参考にしたいと考える人事担当者の方は多いのではないでしょうか。株式会社ソミック石川さまにお伺いします。
知念さん
決裁を取る際に気をつけたポイントの1つ目は、投資対効果です。これまで課題として挙げていた非効率な業務の改善によって、投資に対して導入のメリットが生まれることは予測できました。
2つ目の業務効率化後のイメージについては、あくまでも業務効率化がゴールではなくて、余力を生み出して付加価値のある施策につなげていくことを経営層と対話を重ねてまいりました。
3つ目は個人情報の厳格化です。こういった金銭面では計れない領域においての改善にもフォーカスして、経営層と対話をしてまいりました。
西條
ありがとうございます。2つ目の「余力を生み出す」について具体的に取り組んでいきたいアクションなどはありますか?
知念さん
私たちが所属する管理グループでは、「従業員の方々の働きやすい環境の整備」をミッションとして掲げています。後半でもお話いたしますが、働き方改革の推進をしていきたいです。
SmartHRを導入して感じたこと
紙の束から1枚の申告書を探す作業がなくなった
西條
SmartHRを導入してみて便利だと感じたポイント、また苦労した点があれば教えてください。
佐藤さん
従業員情報を確認したいときにはSmartHR上で検索をすることで必要な情報にアクセスできる状態になったのは嬉しいポイントです。
たとえば年末調整について、従業員から問い合わせのあった申告書について確認が必要なケースでもスムーズに見つけられるようになりました。今までは紙の束から該当する1枚を探す途方もない作業が必要だったので助かります。
また、これまで出向社員への給与明細の送付には、仕組み上タイムラグが発生していましたが、SmartHRに切り替えてからはタイムリーに送付できる体制になりました。
苦労した点としては最初の環境構築でしょうか。給与明細の項目を新しく設定する作業が少し大変でした。
毎月の給与明細からSmartHRを段階的に導入し、操作に慣れてもらう
西條
株式会社ソミック石川さま、SmartHRを導入してみて便利だと感じたポイント、また苦労した点はいかがでしょうか?
内山さん
まず、マニュアルを深く読み込まなくても、スムーズな導入ができてよかったと思います。操作についても想定よりもわかりやすい仕様だったので、操作ミスやアクシデントが発生しませんでした。
苦労した点としては既存システムからのデータ移行です。個人情報になるので、社内の人間で2週間ほどかけて移行しました。また、既存の人事マスターシステムとSmartHRとの自動連携を開発する必要がありました。
あとは従業員への説明です。これまで紙の運用からそれぞれのスマートフォンからの対応になるため、操作に慣れていない人たちのことも考えながら説明をしました。そこでまずは毎月の給与明細からSmartHRに切り替えて徐々になれてもらおうと考えました。
結果的には、思った以上にスマートフォンを使い慣れている従業員が多く、好評でした。段階的に給与明細からSmartHRをはじめてよかったと思います。
もちろん、システムが得意でない人もいますので、メールとかチャットにて説明の機会を設けています。
SmartHR導入により感じた変化
大幅なコスト削減だけでなく、別業務に充てる時間が増えた
西條
続いて導入の前後でとくに変わったと感じられたことについて、お伺いします。中央発條株式会社さま、この点いかがでしょうか?
佐藤さん
SmartHRによって年末調整や毎月の給与明細がペーパーレスになったことで、年間で合計250万円ほど発生していた書類の確認工数や用紙や印刷の費用が削減されました。
また、コスト削減だけではなくこれまで確認作業などにかけていた時間をほかの業務に当てられるようになったことも嬉しい変化です。
ペーパーレス化により、工数削減と正確な書類配付・回収ができる体制に
西條
非常にインパクトのある削減効果だと感じました。株式会社ソミック石川さまについてはいかがでしょうか?
内山さん
まずこれまで各部署に展開した給与明細は、上長から部下に直接配付していましたが、SmartHR導入後はペーパーレスで直接従業員に届くので、上長が配付する手間や配付ミスがなくなりました。
同じく入社手続きもスマートフォンから手続きできるので、郵送の手間がなくなり、非常にスムーズにできるようになりました。
あと年末調整についても、書類の送付や回収の手間がなくなり、紛失リスクも限りなく低下しました。従業員が操作や対応に困るというケースもなく、比較的スムーズに運用ができていると思います。
すでに従業員の97%がSmartHRに移行しています。スマートフォンをもっていないなどの理由により紙で対応しているケースも残っていますが、調整を進めて移行率も100%を目指していきたいと思います。
従業員の皆さまからの反響について
適切なタイミングで給与明細をスムーズに受け取れる体制へ
西條
それではシステム導入を通しての業務改善を通して、従業員の皆さまから実際にあったお声についてお伺いします。中央発條株式会社さま、いかがでしょうか?
佐藤さん
明細配付については、ペーパーレスによって紙の保管や紛失リスクがなくなったことが好評です。好きなタイミングでの給与明細の確認が可能になったので、以前のように紙の給与明細を探す手間がなくなったという声をもらっています。
先程もお話ししましたが、出向社員からもSmartHRで給与明細が届くので、遅延なく給料が確認できたという声もが届いています。
年末調整については、住宅ローン控除の計算を自動でやってくれる機能が大変好評でした。アンケート形式で「はい・いいえ」を選択するだけで手続きが進んでいく操作性も好評でした。
また一部の入力項目においては一つひとつ入力するのが大変という声もありましたので、その点に改善を進め来年は同じような問題が発生しないように対応しました。
アンケート形式で手続きできる年末調整が好評
西條
それでは株式会社ソミック石川さま、従業員の皆さまからはどのようなお声が届いておりますでしょうか?
内山さん
弊社も中央発條さまと同じように紙運用だからこそ発生していた書類の紛失や情報漏洩のリスクがなくなり安心につながっています。給与明細についても配付の手間もなくなり、従業員にとってもいつでも自分の給与明細を確認できる状態になっていて助かるとの声が届いています。
また、リモートワークの環境で書類を受け取るために出社する必要もないので、書類をオフィスに置き忘れることもなくなっているそうです。
入社の手続きも、書類の手渡しや郵送の手間がなくなったので、入社する方の負担軽減にもつながっています。
年末調整に関しては、社内サーベイで従業員にヒアリングしたところ「大体満足しています」という結果が出ました。SmartHR導入以前は従業員から「どこに何を記入すればいいのか」という問い合わせも来ていましたが、現在はアンケート形式によって対応が簡単になったと感じてもらえたのだと思います。
じつは、年末調整の時期に従業員からの問い合わせを受ける体制を整えておりましたが、結果的には問い合わせが2、3件ほどで、全体としてスムーズに進行できたことは人事部としても助かりました。
西條
株式会社ソミック石川さまにおいては夜勤の従業員さまもいらっしゃるとお伺いしております。勤務時間の違いから、給料明細などの書類の受け渡しにタイムラグが発生するケースもあったと思いますが、現状ではSmartHR上からいつでもアクセスできる点にも満足いただけたようですね。
今後取り組みたいこと、人事部として目指していきたい姿
SmartHRを迷わず使える環境整備を続け、活用範囲を広げていきたい
西條
最後のトピックスになります。今後業務効率化によってできた時間を利用して、取り組みたいと思っていることや、人事部門として目指していかれたい姿をお伺いしたいです。
加藤さん
まだ、申請機能の活用が十分に進んでおらず、家族情報や住所変更申請などの身上変更については書類で対応しているため、順次SmartHRに移行して行きたいと考えています。
また、システム化に苦手意識をもっている社員もまだ少なからずいるので、従業員の皆さんがスムーズ利用できる環境を作るために、マニュアルやQ&A集などの整備をして、不安解消に努めたいと思います。
西條
申請関係のペーパーレス化へ段階的に進めながら、今後も従業員の皆さまが迷わずSmartHRを利用できる環境づくりを進めてくということですね。ありがとうございます。
経営者の「対等なパートナー」としての戦略人事を目指す
西條
それでは、ソミック石川さまにもお伺いしたいと思います。
藤田さん
週休3日制、兼業・副業制の導入など、より付加価値の高い「働き方改革」を推進し、従業員の皆さんがより働きやすい環境を作っていきたいです。
また、人事データの整理、可視化を進め、会社をさらによくするためにはどのような打ち手が有効かを考えられる体制を構築したいです。
その先で、経営者の「対等なパートナー」としての戦略人事を目指していきたいと考えています。
従業員サーベイや分析レポートを活用し、蓄積した人事データをもとに、経営者層が抱えている課題に戦略人事としてどういった手助けができるか、どのような人員配置をしたらいいかを一緒に考えられるような存在になりたいです。
西條
ペーパーレス化をしていただいた次のステップとして、働き方改革を進め、さらには戦略人事として、経営を支援していきたいというイメージですね。ありがとうございます。
本日は両社の人事労務業務をペーパーレス化することでもたらされる業務効率化・生産性向上というテーマで、貴重なお話がたくさんお聞きできたと思います。
それでは、今回のセミナーは以上で終了させていただきたいと思います。ありがとうございました。