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約25%のコスト削減!ブックオフによる労務手続きの効率化と運用の全貌

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目次

SmartHRでは経営者・人事担当者の皆さまを対象とした少人数制のセミナー・交流会を定期的に開催しています。今回登壇したのは、ブックオフグループホールディングス株式会社さま。

国内外に約800拠点、13,000名以上の従業員を抱える同社では「従業員には顧客に向き合うことに時間を費やしてほしい」という思いから、SmartHRを導入。年末調整に始まり、入社手続きなど各種申請手続きの効率化を進めてきました。

大手企業×多店舗展開ならではの導入の工夫や成果について、同社の小森谷さん、加藤さん、田中さんに伺いました。当日は導入や活用を支援しているSmartHRのカスタマーサクセス 前野も登壇しました。

  • 登壇者小森谷 麻美さん

    ブックオフグループホールディングス株式会社 人事企画室

    1998年ブックオフコーポレーション㈱に新卒入社。国内、海外店舗や研修インストラクターを経験し、一度退職。2005年に再入社。国内、海外店舗経験後、本社で、内部統制、総務、労務、SDGsへの取り組みなど、管理部門を経験。労務室時代にSmartHR導入。2023年6月に人事企画室長に就任。現在は、グループ全体の人事制度設計、DE&I推進を担当し、従業員エクスペリエンス向上に取り組んでいる。

  • 登壇者加藤 道知さん

    ブックオフグループホールディングス株式会社 労務室

    2006年、ブックオフコーポレーション㈱に新卒入社。3年間の店舗勤務を経て、本社で国内ブックオフ事業および、事業支援部門の予算管理とパートアルバイト・パートスタッフ採用・定着支援を経験。2020年に1年間の育児休業に入り、2021年から労務関連を中心に社内のバックオフィス業務効率化に従事。現在はSmartHRを活用した各種手続きの電子化・効率化を推進している。本業に注力する傍ら、地元藤沢の企業に向けたバックオフィス業務の支援を複業として行っている。

  • 登壇者前野 文香

    株式会社SmartHR カスタマーサクセス

    2020年、カスタマーサクセスとしてSmartHRに入社。プロダクトの活用を通して、顧客が期待した課題解決や成果を得るための支援を行う。導入初期のサポートをはじめ、利用促進の支援や契約更新に向けた対応など、プロダクトの継続利用につながる業務全般に携わる。

  • ファシリテーター今西 佑太

    株式会社SmartHR ブランディング統括本部 エンタープライズマーケティング部 マネージャー

    2011年に新卒で鉄道会社に入社。主に複合施設の開発および開業後の運営管理を担当し、集客イベントの企画、広報宣伝等のマーケティング業務を行う。2020年にSmartHRに入社し、関西支社にてマーケティング業務に従事。セールス支援を担うマーケティングも経験したのち、2023年7月よりマネージャーに就任。

紙ベースの1万名以上の年末調整業務から脱却

今西

はじめに、導入から今までどのような機能を活用してきたかを簡単に伺えますか?

加藤さん

年末調整の電子化にはじまり、以下の順に活用を広げてきました。

  • 2021年8月:SmartHRを導入
  • 2021年11月:年末調整の電子化
  • 2022年4月:入社書類の統合
  • 2023年7月:雇用契約更新頻度の見直し
  • 2023年10月:扶養控除申告書の電子申請
  • 2024年6月:住民税決定通知書の電子配布

直近はSmartHRと既存の給与システムのデータ連携に取り組んでいます。

今西

SmartHRを導入しようと考えた背景を教えてください。

小森谷さん

端的に言うと「年末調整が辛かった」に尽きますね。導入前は1万名以上の年末調整業務を社員5名、パートスタッフ1名、派遣社員1名の合計10名ほどで対応していました。それでも時間が足りず、夕方まで通常業務に取り組んだ後、残業するのが当たり前だったんです。

お話をする小森谷さんの様子

業務負荷が高くなっていた要因は、紙ベースの運用です。導入前は以下の手順で進めていました。

  • 労務室が年末調整用の書類を印刷し、各部署や全国の店舗に配布
  • 部門長や店長が従業員に書類を配布し、回答済みの書類を回収
  • 部門長や店長が収集した書類を労務室に郵送
  • 労務室が書類の内容をチェックし、各種税額を計算

弊社では13,000人以上の従業員のうち、約8割がアルバイト・パートスタッフです。毎日出勤するわけではないので、店長から書類を受け取るタイミングが遅れてしまう場合もあります。書類の回収が提出期限間近になってしまうのも珍しくありませんでした。

SmartHRを導入前の年末調整のフローを示した図

(SmartHR導入前の年末調整フロー)

今西

さまざまなツールがあるなかで、SmartHRを選んだ決め手を教えてください。

小森谷さん

決め手になったのは機能の拡張性です。比較検討したツールには年末調整に特化したものが多い一方、SmartHRは年末調整以外のシーンでも活用できる機能が豊富にありました。今後、幅広い業務において効率化が期待できそうだと考えました。

また、弊社は業務PCを持っていないスタッフも多いため、社員個人のスマートフォンでも申請できるのは大きな魅力でした。あとは従業員に配布する源泉徴収票のウェブ化に対応しているかも必須項目でした。

今西

実際にSmartHRで年末調整を実施して、どのような変化がありましたか?

小森谷さん

最大の変化はアルバイト・パートスタッフが直接、年末調整を申請できるようになったことです。店長や部門長が書類の配布・回収をする必要がなくなり、業務負担が大幅に減りました。とくに年末調整の時期は年末商戦に向けた準備が忙しいタイミング。負担の削減によるインパクトは大きかったです。

SmartHR後の年末調整フローの図

SmartHR導入後の年末調整フロー

浸透の秘訣はスモールスタートと段階的な導入

今西

1万人を超える従業員の方に、新しいシステムを浸透させるのは容易ではないと思います。意識した点や工夫した点はありますか?

加藤さん

強く意識していたのは「まずは触ってもらうこと」です。触って楽になる実感をもってもらいたいと考えました。

そのため、導入を周知する際はログイン用のマニュアルを1枚だけを配布して「まずはログインしてみてください」とお伝えしました。

実際の年末調整の申請が始まる時期に配布したマニュアルも6ページ程度でした。最初はどうしても操作に迷いが生まれる可能性もあると思ったため、できるだけ要点を絞って伝えたいと考えたんです。

結果的に、導入初年度にして申請回収率は約8割でした。操作の迷いやログインに対する戸惑いの声も多少ありましたが、一度目のトライとしてはよい成果が出たのではないかと思います。

配布したログイン用、年末調整用のマニュアル

配布したログイン用、年末調整用のマニュアル。「SmartHRの既存のマニュアルを利用して、素早く作成できた」と加藤さん

今西

「まずは触ってみてください」とスモールスタートで活用を促していかれたのですね。

加藤さん

そうですね。加えて社内浸透のために意識したのは段階的な導入です。

年末調整や入社手続きなど、各種申請にSmartHRを活用し始める際は、まず正社員から使ってもらいました。実際に触ってもらうことで「特定の社用端末だと地下はWi-Fiがつながりづらく手続きができない」といったトラブルが把握でき、かつ影響範囲も小さく済みました。代替機を用意するなど対策の知見が蓄えられたのもよかったです。スモールスタートが功を奏しました。

お話をする加藤さんの様子

今西

スムーズな導入を後押しするために、カスタマーサクセスの前野さんが意識した点はありますか?

前野

事前周知の徹底をお願いしたのを覚えています。規模の大きい企業において導入時の周知が不十分だと、従業員の皆さまからの問い合わせが増え、担当者さまの業務負荷が膨れ上がってしまうケースがよくあるためです。

事前周知や案内も段階的に実施いただくことを意識しました。初めてSmartHRで年末調整を実施する際も、まずは正社員の方のみに初回ログインを依頼。挙がった疑問点を解消したうえで、アルバイト・パートスタッフの方々にログインを案内しました。

また、初回ログインを依頼する時期も年末調整の申請時期と合わせました。ログインを終えたらすぐに年末調整を始められる状態をつくりたかったからです。

お話をする前野の様子

約25%のコスト削減に成功!導入による社内の変化

今西

これまでの活用による具体的な効果や成果があれば、ぜひ教えてください。

加藤さん

年末調整の電子化、そして元々利用していた給与明細のシステムとマイナンバー回収システムをSmartHRに統合した結果、大幅なコスト削減を実現できました。

具体的には年末調整業務にかかっていた人件費、書類の配布・印刷・回収業務の工数、システム統合による管理工数をあわせて、約25%の労務コストを削減できています。

導入による効果を示した図

今西

定量的な成果につながったのは嬉しいです。現場の店長やスタッフの方々の反応はいかがですか?

加藤さん

ちょうど本日、SmartHRの導入時期に現場でマネージャーを担当していた田中がいますので、所感を話してもらえたらと思います。

田中さん

導入前は、年末調整の時期になるとアルバイト・パートスタッフの書類の配布や回収、自分自身の申請も苦労してきました。

思い返すと、導入時期にトラブルがあった印象はなく、スムーズに浸透していったと感じます。送付されたメールからSmartHRにアクセスして、ポチポチ押していけば年末調整が完了しました。「素晴らしいものができた」とさえ思わず、気づけば業務が楽になっていた印象があります。

田中さんのお話する様子

(ブックオフグループホールディングス株式会社 人事企画室 田中 大助さん)

今西

先ほどシステムの統合のお話がありました。導入前後のシステムの使い分けの変化も伺えますか。

加藤さん

導入前、労務手続きに関する申請のやりとりは、勤怠情報以外は手動での各種システムへの転記作業が必要でした。以下が基本的な流れです。

  • アルバイト・パートスタッフが提出した申請書類を記入して提出
  • 社員が受け取り、 申請ツールや勤怠システムに手入力
  • 労務室が確認(店舗のシステムで入力できないものは、申請書を郵送してもらい労務室が入力)

このやり方で最も苦労していたのは店長や社員です。アルバイト・パートスタッフからの申請が必要になるたび、本部との間に入って対応しなければなりません。また、申請の種類によって申請方法やシステムが異なることも店長や社員の負担増につながっていました。

以前のシステムの使い分けの示した図

導入後は、労務手続きにまつわる多くの申請がSmartHRで完結します。各種システムへの転記時の誤字脱字や漏れも防げるようになりました。

また、アルバイト・パートスタッフと本部が直接申請のやりとりができるようになったのも大きな変化です。アルバイト・パートスタッフと本部の間で申請情報を素早くやりとりできますし、間に介在していた店長や社員の負担も削減できました。

導入後のシステムの使い分けの示した図

ワークとライフの両面から従業員をサポートしたい

今西

入社手続きやシステム連携など活用の幅を広げる際、社内のステークホルダーとの合意形成が重要になるかと思います。合意をとるうえで意識した点はありますか?

加藤さん

まずは店長や社員との目線合わせを意識しました。ブックオフの主役は、店舗を管理している店長や社員です。店長や社員がしっかりと理解・納得したことは、アルバイト・パートスタッフにも伝わると考えました。

具体的には数値をもとに変革の意義を伝えて、関係者との合意形成を図りました。以前弊社で調査した際、店長の業務時間全体のうち約4割がバックヤード業務に費やされており、労務に費やされているのは4%でした。年間で約9,000時間に相当します。こうした具体的な数値を社内の関係者に積極的に伝え、変わる必要性を訴えていきました。

改革に向けて動き出してからは、各部署の現場に足を運んで協力をお願いしました。年末調整の電子化ひとつとっても、労務室だけでは実現できません。社内システムを構築する部署やマニュアルを作成する部署の担当者から率直な意見をもらい、共に進めてきました。

今西

着実に仲間を増やしながら進めてこられたのですね。最後にこれからの活用の展望を教えてください。

小森谷さん

SmartHRを導入して、アルバイト・パートスタッフや店舗の社員が本社と直接やりとりする土台が整いました。土台のうえにさらなる業務効率化を進め、従業員がお客さまのために使える時間を増やしていきたいです。

人事企画室や労務室をはじめとする人材系部署としては、SmartHRで情報を発信したりストレスのない申請を実現したい。従業員が「この会社で働いていてよかった」と思える環境づくりを目指しています。

ワークとライフの両面から従業員をサポートし、従業員満足度やエンゲージメントを高めていきたいです。

お話をする登壇者、ファシリテーターの様子

従業員の働きやすさ、活躍の土台としての業務効率化

お客さまと向き合う従業員たちが、ストレスなく働ける環境を届けたい。ブックオフにとってツールの導入や業務効率化は手段であり、その先に従業員の働きやすさや活躍を追求する姿勢が伝わる時間でした。

セミナー終了後は、登壇者と参加者が一堂に会した懇親会を開催。申請業務の効率化やツール・システムの活用法など、さまざまなトピックで意見交換する姿がみられました。

お話をする小森谷さまの様子
お話をする田中さまの様子

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