導入前に成否が分かれる。「SaaS活用」を成功に導く3つの秘訣とは?
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はじめまして、SmartHR カスタマーサクセスグループの杉浦です。簡単に自己紹介をしますと、前職では大規模ERP導入サポートを担い、この経験を活かし2019年に株式会社SmartHRに入社、カスタマーサクセスを担当しています。
近年、バックオフィスツールとしてクラウド型のソフトウェアが普及しつつあり、私たちの提供する「SmartHR」もこれに該当します。これらクラウドソフトは、多くの場合「SaaS(Software as a Serviceの略。サース)」と呼ばれる月額利用料形態で提供されています。
一方で、従来使われてきたソフトウェアといえば、CD-ROMなどの買い切り型形態(以下、オンプレミス)が一般的でした。私が前職で担当していたERPもこのオンプレミスに該当します。
「SaaS」と「オンプレミス」は、どう異なるのか? 課題を解決するという一点では変わりはないものの、その特性の違いを理解しないことには、困ってしまうシーンが少なからず存在します。
そこで、実際に導入いただくその前に、「SaaS」について知っておいてほしいことを、カスタマーサクセスの観点から本稿にまとめます。現在システムの入れ替えやSaaSの導入を検討されている方のご参考になれば幸いです。
「SaaS」と「オンプレミス」の特徴
「SaaS」と「オンプレミス」には、それぞれ以下のような特徴があります。
SaaSの特徴
- インターネット上でサービスを利用するので、インストールなどが不要
- インターネット上で動くものが多く、サーバなどの管理をする必要がない
- 月額の従量課金形態が多く、コストを下げられる場合が多い
- 無料で試せる場合が多い
- 広い顧客ニーズから判断された汎用的な機能追加や改善がされるため、顧客ごとのカスタマイズには対応していない場合が多い
オンプレミスの特徴
- 社内やベンダー側に存在するハードウェア上で動くため、ハードウェアの購入・管理が必要
- そのため初期コストが高かったり、導入に時間がかかることが多い
- 特定領域全てをカバーする比較的大規模な場合が多い
- 顧客ごとのカスタマイズに対応している場合が多い
より詳しい比較は、こちらの記事も是非ご参考ください。
システム導入時のポイントは「目的の明確化」
次に、新しいシステムを導入する上でのポイントについて、SaaSにフォーカスしながら解説します。
結論から言うと、「目的の明確化」が何よりも大切です。
これができていなければ、そもそも課題解決に適切なシステムを選べませんし、「導入したけどなんか思ってたのと違った」、「社内のステークホルダーを動かせない」といった問題に直面してしまいます。
そのため、以下のような点をあらかじめ整理し、目的を明確化しておきましょう。
- 今抱えている課題はなにか?
- その課題によってどんな問題が発生しているのか?
(できれば定性/定量的に、金銭面まで洗い出せると尚良) - 複数の課題がある場合、それぞれの優先度は?
- そこから導き出される解決の方向性は?
システムは「契約すれば業務効率化される」わけではない
あわせて、SaaSに限らずオンプレミスも含め、契約(導入)すれば業務効率化されたり、改善されるようなものではないことも理解しておく必要もあります。
もちろんシステムとして機能やサポートが不十分なことで、うまく活用できないパターンも考えられます。
ですが、システムの導入や入れ替えへの認識不足や準備不足、誤解などによって、当初の想定と乖離し、うまくいかないパターンも少なくありません。
「SaaS活用」を成功に導く3つの秘訣とは?
これまでの流れを踏まえ、「SaaS活用」を成功に導くために知るべき3つの秘訣を紹介します。
【秘訣1】目的・要件を明確にする。業務フローを変える覚悟も必要
SaaS導入で解決したい課題や目的を明確にしたら、システムに求める必須要件を洗い出すと良いでしょう。
具体的には機能やコスト、セキュリティ、システム間連携、などです。
あわせて、目的の明確化に加えて必要なことがあります。それは、従来の業務フローや慣習を変える覚悟です。
なぜなら前述の通り、SaaSは顧客全体のニーズを元に機能改善と標準化を行なうため、顧客特有の慣習やルールが合わないことも出てくるためです。
しかし、システム導入を機に現在のフローを見直すことで、無駄な手順や不要な作業を発見できることもあります。つまり、システムを導入することは、業務フロー最適化のチャンスでもあるのです。ぜひ従来の業務フローや慣習を見直してみてはいかがでしょうか。
多くの場合、無料トライアル期間がありますので、目的や要件に沿っているかを実際に試してみることをオススメします。
【秘訣2】関係者を巻き込み全体最適化を図る
前述のとおり、SaaSを導入すると従来の業務フローが多少なりとも変わります。
その結果、新しい業務フローに難色を示す人が一定数出るケースも少なくありません。しかし、深く要因を掘り下げてみると、「導入したサービスがイヤ」なのではなく、「業務フローが変わることがイヤ」というケースもあります。
これを踏まえ「少なからず反発が生じる」と認識し、先手を打つのがオススメです。
反発を抑えてでも全体最適の観点のもと改善を目指す、強い気持ちとリーダーシップが必要となるでしょう。
場合によっては、経営層や役職者が自らその目的を啓蒙、コミットしていくのも効果的です。その際、記事の前半でお伝えした「なぜ導入するのか」の目的の明確化は、ここでも活きます。
【秘訣3】システム導入はプロジェクト。スケジュールと役割分担をしっかりと
システム導入に際しては、設定や検証など、導入企業側の作業が多く発生することも念頭に置いておきましょう。もっともSaaSの場合、それほど時間を必要としない場合が多いのですが、それでも「別の業務と兼務していて忙しく、導入がなかなか進まない……」というケースも少なくありません。
そのため、力強く推進するためにも、SaaS導入をひとつの「プロジェクト」として捉え、可能な限り専任担当者をつけるのがオススメです。
あわせて、商談の時点で、課題に対してどの時期までに解決したいのかをシステムベンダーに伝え、いつまでに導入開始すれば間に合うのかを把握するのがオススメです。
タイトなスケジュールで「●●月までに導入完了し使えるようにして!」とシステムベンダーに無理強いするケースも稀にあるようなのですが、このような場合、システムベンダー側だけでなく導入企業側にとっても大変な進め方になり、結果的にスケジュール内で終わらない、なんて事例を聞いたこともあります。
スケジュールと役割分担を明確にし、余裕をもって進行するようにしたいところです。
おわりに
以上、実際に導入いただくその前に、SaaSについて知っておいてほしいことをお届けしました。
システム導入検討にあたっては課題や目的、解決の方向性を整理し、しっかりとした準備をしましょう。
お届けした内容が、導入成功の一助となれば幸いです。
(了)
(編集:藤田 隼)
(※)SmartHR上で事業所登録を完了しているテナント数(但し、退会処理を行ったテナント数を除く)