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弁護士が解説! SmartHRで法的に安心して「雇用契約締結」できるワケ

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こんにちは、株式会社SmartHRで法務を担当する弁護士の上原です。

テレワークの推進とともに、ハンコの要否やクラウドでの契約の法的リスクについてのニュースも大きな注目を集めています。

SmartHRの文書配付機能(以下、本稿では「文書配付機能」といいます)で実施できる雇用契約の締結についても大丈夫なのか心配な方もいらっしゃるかもしれません。

結論から申し上げると、大丈夫です! 本稿では電子契約のメリットと共にその理由を解説します。

電子契約のメリットとは?

電子契約には、契約締結に至るまでの時間短縮やクラウド上に契約書を保存することによるコンプライアンス強化などのメリットが存在します。

例えば、2020年4月にSmartHRを導入いただいたTSグループ様では、導入からわずか2日で新入社員203名の入社手続きをオンラインで行い、新型コロナウィルスの入社手続きへの影響を最小限に抑えられました。

また、同じくSmartHRをご利用いただいている合同会社DMM.com様では、月間500枚におよぶ誓約書の締結のペーパーレス化に成功。契約書フォーマットの統一や印刷・保管に伴う作業の手間も効率化も実現しています。

「電子契約は紙よりリスクがあるんじゃない?」

以上のようなメリットをもつ電子契約ですが、「紙で締結する場合と比べてリスクがあるんじゃないか」というお声があるのも事実です。

そのような電子契約への懸念を整理すると、以下の2点に集約されます。

  • 契約の有効性は問題ないか?(契約の有効性への懸念)
  • 訴訟で契約の成立や中身を証明する際に不利なことがないか?(訴訟での証拠力への懸念)

しかし、ご安心ください。

以下のとおり、特に文書配付機能を利用して締結される人事労務関係の契約書に関しては、紙での締結と比較して、電子上で締結するリスクが大きいといったことは全くなく、有効性も訴訟での証拠力も紙で締結した場合と同様に考えられます。

したがって、電子締結によるデメリットは存在せず、電子締結によるメリットが大きい分、電子締結がおすすめといえます。

それでは、「契約の有効性」と「訴訟での証拠力」に分けて、それぞれご説明します。

電子契約でも契約は有効に成立する

「そもそも紙での契約書がない電子契約でも契約が有効に成立するのか?」という疑問についてですが、電子契約でも契約は有効に成立します。

なぜなら、日本では「契約方式の自由」の原則が認められており、そもそも契約成立のために契約書の作成は必要ないためです。

契約は口頭やメールでも有効に成立するものであり、契約書とは、あくまでも契約内容を明確化し、事後的な紛争を防止する(言った言わないを防止する)ことを目的として作成されるものとなります。

例外的に、法律で契約書の作成が必須とされている契約も存在しますが(一部の定期借地契約・定期賃貸借契約など)、文書配付機能で扱われる従業員様との契約(雇用契約、秘密保持契約など)については、上記の原則どおり、書面の作成は必要ありません。

また、上記のとおり契約成立に書面作成が必要ない以上、当然契約書への押印も契約成立に必須ではありません。

このことは、2020年6月19日に内閣府・法務省・経済産業省から出されたQ&Aにおいても、以下のとおり認められています。

・私法上、契約は当事者の意思の合致により、成立するものであり、書面の作成及びその書面への押印は、特段の定めがある場合を除き、必要な要件とはされていない。

・ 特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、 契約の効力に影響は生じない。

さらに上記の政府Q&Aにおいては、以下のように、押印の省略や押印以外の手段が有意義であるとの言及もあり、電子契約であっても契約が有効に成立することを当然の前提としています。

このように、形式的証拠力を確保するという面からは、本人による押印があったとしても万全というわけではない。そのため、テレワーク推進の観点からは、必ずしも本人による押印を得ることにこだわらず、不要な押印を省略したり、「重要な文書だからハンコが必要」と考える場合であっても押印以外の手段で代替したりすることが有意義であると考えられる。

したがって、文書配付機能で扱われる契約については、電子契約でも契約は有効に成立しますし、事後的な紛争にも備えられます。

訴訟での証拠力にも差異はない

次に、(電子契約が有効だとしても)文書配付機能を利用した電子契約が、紙の契約と比べて訴訟で不利に扱われることはないかについてお話します。

電子契約の証拠力については、形式的証拠力(その文書が作成者の意思に基づいて作成されたか)と実質的証拠力(文書の記載内容が争点となっている事実の証明にどれだけ役に立つか)があり、いずれの証拠力についても電子か紙かで差は生じないといえます。(※)

(※)形式的証拠力については、電子署名法第3条の推定効が認められるかという問題がありましたが、2020年9月4日に法務省・総務省・経済産業省の連名で公表されたQ&Aにおいて、一定の要件を満たす電子署名サービスによって同推定効を得ることができる旨の見解が示されました。

あるサービスが電子署名法第3条に規定する電子署名に該当するか否かは、個別の事案における具体的な事情を踏まえた裁判所の判断に委ねられるべき事柄ではあるものの、一般論として、上記サービスは、①及び②のプロセスのいずれについても十分な水準の固有性が満たされていると認められる場合には、電子署名法第3条の電子署名に該当するものと認められることとなるものと考えられる。したがって、同条に規定する電子署名が本人すなわち電子文書の作成名義人の意思に基づき行われたと認められる場合には、電子署名法第3条の規定により、当該電子文書は真正に成立したものと推定されることとなると考えられる。

したがって、証拠力も紙と同程度に認められることが可能であり、訴訟で不利になることはないと考えられます。

まとめ

最後に、本稿の要点をまとめると以下のとおりです。

まとめ

  • 電子契約には、作業負担の軽減、コスト削減、コンプライアンス強化といった多くのメリットが存在する。
  • 他方で、電子契約についてよく懸念される点は「有効性」と「証拠力」である。
  • 「有効性」について、雇用契約等の場合は電子で締結しても問題なく有効となる。
  • 「証拠力」についても、根拠法令は異なるものの、紙の契約書と同様に証拠として認められる。
  • したがって、文書配付機能を利用して締結される電子契約が、電子であるがゆえに紙より不利になるというケースは考えがたい。

したがいまして、お客様におかれましては、安心して本サービスをご利用いただけますと幸いです。

【編集部より】3分でわかる!オンライン雇用契約・文書配付

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