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協会けんぽ・関東ITS健保・TJKはどこがいい?健康保険組合の違いを徹底比較!

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社会保険労務士 表参道HRオフィスの山本純次です。

法人を立ち上げ、労働者を雇用すると、労働保険・社会保険の加入や税金の申告など、さまざまな手続きが発生します。

そのなかで社会保険料は負担額も大きく、人を雇用する際の大きなコストとなりますが、従業員の法定の福利厚生としても必要不可欠なものです。このコストに関する対応と福利厚生の充実という2つの課題を同時に解決できる手法の1つが健康保険組合への加入です。

今回は、「関東ITS健保」「TJK(東京都情報サービス産業健康保険組合)」「協会けんぽ」の3つを比較し、それぞれの健康保険の特徴を解説いたします。

「関東ITS健保・TJK・協会けんぽ」各健保の概要

各健保の比較に入る前に、それぞれの健保について概要とメリットを簡単に説明します。

(1)協会けんぽ(全国健康保険協会)

正式名称は「全国健康保険協会」です。厚生労働省の管轄で、国が運営する健保であり、全業種が対象となっています。通常、新たに法人を立ち上げた会社や、中小企業はこの健保に加入することとなります。

企業ごとの健康保険組合をもたない、多くの企業が加入することになるのがこちらの協会けんぽです。現状約248万事業所、約2,500万人の被保険者が加入しています。

(出典)令和3年度協会けんぽ事業報告書 - 全国健康保険協会(p.10)

(2)関東ITS健保(関東ITソフトウェア健康保険組合)

正式名称は「関東ITソフトウェア健康保険組合」で、「ITS」や「ITS健保」とも呼ばれています。協会けんぽと比較し、保険料率が低く、また多様で充実した福利厚生が特徴のIT企業向け健康保険組合です。

関東ITS健保への加入のメリットとしては、以下の3点が挙げられています。

  1. 保険料が協会けんぽより低い
  2. 休業時の付加金が給付される
  3. 保健事業
    • 2つの直営健診センターと全国各地の契約健診機関
    • 関東近郊を中心とした直営・通年保養施設が1泊5,400円(被保険者、被扶養者)
    • 全国各地にある宿泊施設の利用補助
  4. 高額療養費の支給基準が低く、高額な治療費がかかる場合の負担が低い
  5. テーマパークの利用補助など、福利厚生が充実

(出典)ITS加入のメリット - 関東ITソフトウェア健康保険組合

その名のとおり、ソフトウェアに関する事業を主要業務として展開し、社会保険加入期間が1年以上あり、現在東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、 長野県および山梨県の全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している必要があります。現状7,290事業所、約62万人の被保険者が加入しています。

(出典)組合の事業概要 - 関東ITソフトウェア健康保険組合

詳細の加入要件は以下をご覧ください。

(3)TJK(東京都情報サービス産業健康保険組合)

正式名称は「東京都情報サービス産業健康保険組合」です。

関東ITS健保同様、低い保険料率や充実した福利厚生を持つIT企業向け健康保険組合です。

TJKへの加入のメリットとしては、以下の4点が挙げられています。

  1. 健康保険料の負担を軽減できる
  2. 多彩な健診、メンタルヘルス相談事業を受けられる
  3. 多種多様な健康増進事業を利用できる
  4. 手厚い保険給付が受けられる

(出典)TJKの加入をご検討されている会社様へ - 東京都情報サービス産業健康保険組合

2023年1月現在で、現状1,622事業所、約29万人の被保険者が加入しています。

(出典)健康保険加入のご案内 - 東京都情報サービス産業健康保険組合(p.1)

IT関係業務が中心の企業向けの健保となっていますが、詳細については、ウェブサイトをご覧ください。

「関東ITS健保・TJK・協会けんぽ」健康保険組合を徹底比較!

通常、スタートアップ企業は社会保険の適用として国が運営する協会けんぽに加入しますが、大企業では健康保険組合を設立し、独自の給付や福利厚生制度を提供しています。

スタートアップ企業が健康保険組合を独自で設立するのは現実的ではありません。しかし、一定の業種ごとに設立された健康保険組合があり、適用業種で加入要件を満たせば加入できます。

業種によりさまざまな健康保険組合があります。IT系の会社ですと、有名なものが「関東ITソフトウェア健康保険組合」と「東京都情報サービス産業健康保険組合(TJK)」です。

こちらはIT系のベンチャー企業が多数加入しています。まず1つのメリットとして健康保険、介護保険の保険料が通常の協会けんぽと比べると大幅に低くなります。

また、注目は福利厚生の充実です。保養所の利用やスポーツジムの利用補助、アミューズメント施設の入場料補助などもあり、保険料が下がるうえにサービスが充実するというお得なものになります。

健康保険組合サービス等比較表

各組合のサービスなどの比較表

また、モデルケースでの健康保険料の月額の削減額は以下のとおりです。

健康保険組合モデル月額比較表

平均報酬月額を36万円としたときの各健保の削減月額の仮モデルケース

関東ITS健保やTJKに加入するには?

低い料率で福利厚生も充実の関東ITS健保やTJKへの加入は、スタートアップ企業・ベンチャー企業にとっては非常に魅力的に映ります。

ただし加入要件は厳密で、高いハードルもあります。要件の一部としては、以下のようになっています。

  • 健保組合の加入業種(関東ITS健保だとIT業務が売上げの50%以上を占めること)
  • 加入業種に関して、ITサービスを主とするものとする基準を満たしているか(独自の基準あり)
  • 事業所として1年以上の健康保険の加入と保険料の滞納・遅延なし
  • 所得税等の公租公課の支払いが1年以上遅延なし
  • 平均標準報酬月額が一定基準以上(概ね35万~38万以上)
  • 従業員数が一定以上(概ね20~30名)
  • 扶養率(従業員一人あたりの扶養者が0.8人以下など)
  • 直近の決算における欠損金が資本金の額以下

また、上記の項目は健保独自の基準で変わることもあります。加入手続きの際に総合的に判断されますが、上記基準を満たしているようであれば、加入を検討されることが望ましいです。

なお、健保組合に加入しても、厚生年金は今までどおり国の制度への加入となります。

加入申請時は社労士への相談で加入申請がスムーズに

加入に際しては、基準の読み解きや、各種申請書の準備、窓口対応などさまざまな対応が必要になります。是非専門の社会保険労務士に加入手続きをご依頼いただければと思います。

SmartHRでも協会けんぽ・関東ITS健保・TJKのいずれの健保の申請様式に対応しているようです。

もちろん当事務所でも、各種健康保険組合の加入手続きの実績が多数ありますので、加入を検討される企業様は是非お問い合せください。

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