退職手続きに必要な書類一覧と「労務がやるべきこと」まとめ
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こんにちは。特定社会保険労務士の羽田未希です。
毎年、3〜4月は入退社者が多くなる季節のため、人事担当者は会社が行うべき手続きをあらかじめ確認しておきたいところです。
この記事では、退職時に必要な社内手続き、社会保険・雇用保険の資格喪失手続き等についてのポイントを解説いたします。
入社の手続きについては、【テレワーク対応版】新入社員の入社手続きに必要な書類一覧と労務がやるべきことまとめをご覧ください。
一般的な退職手続きの流れ
退職手続きの基本的な流れは以下のようになります。
- 従業員から退職の意思表示、退職願の受理
- 退職手続きの説明
- 従業員から退職時の書類、貸与物などを回収
- 雇用保険・社会保険・税金の退職手続き
- 退職後、従業員へ離職票等の書類を送付
従業員から退職の意思表示、退職願の受理
従業員から退職の申し出を受けたら、多くの場合、上司が退職面談を実施します。退職の意思を最終確認したうえで、年次有給休暇の取得の希望や後任者への引き継ぎなどを考慮し、退職日を決定します。
退職願は、従業員が転職等を理由に「自己都合による退職」であることを証明するものとして重要です。従業員に退職願を提出させ、会社は退職願を受理し、退職の承認をします。
退職手続きの説明
人事担当者からは、退職手続きの流れ、スケジュールについて説明します。従業員から回収するもの、会社から渡すもの、退職後の注意点などを伝えましょう。退職後の健康保険、年金など、退職者本人が行うべき手続きについても案内すると親切です。
従業員から退職時の書類、貸与物などを回収
最終出勤日には、会社が従業員に貸与していた社員証、鍵、制服や作業着、名刺、書類、データ、パソコン、携帯電話、備品等をすべて回収します。漏れがないよう、リストを作っておきましょう。
なお、本人と扶養する家族分の健康保険証は退職日まで使用できるため、退職日後に郵送してもらいます。
退職手続きに必要な書類
つぎに、退職手続きに必要な書類について解説します。
従業員に提出してもらうこれらの書類は、人事担当者が退職手続きを進める際に必要です。最終出勤日や退職日までに提出するように案内しましょう。会社が従業員に渡す書類は退職手続き完了後に退職者に郵送します。
<従業員に提出してもらう書類>
- 退職願
- (雇用保険)離職証明書の記載内容に関する確認書
- 秘密保持誓約書(退職時)
- 健康保険被保険者証(保険証)※扶養する家族の分も含む
- 退職所得の受給に関する申告書 ※退職手当を支給する場合
<会社が従業員に渡す書類>
- 離職票1、2
- (離職票を交付しない場合)雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(被保険者通知用)
- 源泉徴収票
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失証明書
このように、従業員の退職には多くの工数が必要となります。まずは大切な従業員の離職防止に努めることが重要になります。離職率を抑えるためのヒントは、以下の資料を参考にしてください。
人事担当者が実施すべき手続きの流れ
人事担当者が実施する退職手続きは以下のとおりです。
雇用保険の資格喪失手続き
雇用保険の資格喪失手続きは、離職日の翌日から10日以内に実施する必要があります。会社は「雇用保険被保険者資格喪失届」を作成し、ハローワークに必ず提出しなければなりません。(事業所の所在地を管轄するハローワークへ提出)
退職者が離職票を希望している場合は、「雇用保険被保険者離職証明書」も提出します。59歳以上の場合は、本人の希望に関わらず提出が必要となります。
ハローワークから交付された離職票は、退職者がハローワークにて求職の申込み、失業等給付の手続きを行う際に必要となりますので、なるべく早く退職者に渡したいものです。
資格喪失手続きを電子申請で実施する場合、被保険者(退職者)の電子証明書を省略するため、「離職証明書の記載内容に関する確認書」が必要です。退職者に離職証明書の記載内容を確認してもらい、離職理由について、異議あり、または異議なし(自己都合退職の場合は異議なし)を明記し、氏名等を記入してもらいます。
社会保険の資格喪失手続き
社会保険の資格喪失手続きは、資格喪失日(退職日の翌日)から5日以内に管轄の年金事務所、健康保険組合、厚生年金基金に「被保険者資格喪失届」を提出します。
区分 | 内容 |
提出時期 | 事実発生から5日以内 |
提出先 | 事務センター(事業所の所在地を管轄する年金事務所) |
提出方法 | 電子申請、郵送、窓口持参 ※届出用紙によるほか、電子媒体(CDまたはDVD)による提出が可能です。 |
資格喪失日以降は保険証(被保険者証)を使用することはできません。本人と家族の保険証は速やかに回収し、管轄の年金事務所(事務センター)、または健康保険組合に返却します。
紛失や、返納を何度か督促しても回収できない場合は、「被保険者証回収不能届」を提出します。電子申請により届出する場合は、「被保険者証回収不能届」をスキャニングしたデータを電子添付で、届出と一緒に提出できます。
スキャニングしたデータにより提出した被保険者証回収不能届の原本については、事業主において届出後2年間保存しましょう。
被保険者証回収不能届が提出されると、被保険者であった退職者(回収不能対象者)には、後日、「健康保険被保険者証の無効のお知らせ」が送付されます。
退職者が国民健康保険等に加入するために必要な時は、会社が任意の書式にて、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失証明書」を退職者に交付します。この資格喪失証明書は、前職の資格喪失日、扶養の状況などを確認するためのものです。
退職日後、他社へ就業しない場合は、以下のいずれかの健康保険に新たに加入します。どの保険に加入するかは、就業の状況、収入等によりますので、要件などの確認が必要です。
<退職後、他社へ就業しない場合>
1.配偶者等の被扶養者となる
就業しない場合や扶養の範囲内で働く場合を指します。ただし、雇用保険の基本手当等が受給できる場合は日額で判断しますので、基本手当日額が3,611円を超えるときは被扶養者になれません。
2.国民健康保険に加入
国民健康保険に加入するには、退職した従業員が退職日の翌日から14日以内にお住まいの市区町村で手続きを実施する必要があります。国民健康保険の場合、離職理由によって保険料を軽減されることがあり、保険料額は住所地の市区町村の窓口で試算してもらえます。
3.健康保険の任意継続
被保険者が会社を退職して資格を喪失した後でも、引き続き個人で被保険者の資格を継続できます。
(1)退職日までに継続して2ヶ月以上の被保険者期間がある
(2)任意加入の上限は2年間
(3)資格喪失日から20日以内に、任意継続の手続きを行う
会社に在籍しているときは会社と本人で保険料を半分ずつ負担していましたが、任意継続の保険料は、本人が全額を負担することになります。
住民税の手続き
住民税は、毎年6月から翌年5月までの間、給与から控除しています(特別徴収)。従業員が退職により住民税の特別徴収ができなくなった場合、会社が郵送またはeLTAXにて従業員の住所地の市区町村に「給与所得者異動届出書」を提出します。
1月以降に退職する場合は、5月分までの残りの住民税を一括徴収する必要がありますので、最後の給与で控除することを従業員に必ず伝えましょう。
一括徴収や転職先の会社での特別徴収の継続をしない場合は、住民税の未徴収税額は普通徴収となり、市区町村から退職者本人へ納付書が送付されます。
源泉徴収票の作成
年の途中で退職した人については、その年の1月から退職時までの給与、所得税、社会保険料額について「給与所得者の源泉徴収票」を作成し、退職後1ヶ月以内に本人に送付します。
退職手当を支給する時は、「退職所得の受給に関する申告書」を提出してもらいます。この申告書を提出している場合、申告書を提出していない場合の税率20.42%と比べて退職所得の税額は低くなります。退職手当を支払った場合は、「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」を退職後1ヶ月以内に本人に送付します。
テレワークにおける退職手続きのポイント
退職に関する手続きは、紙の届出様式に記入し、窓口提出や郵送する方法だけでなく、すべての手続きにおいて電子申請が可能です。電子申請はウェブで完結するため、出社の必要なく、テレワーク勤務に適しています。公文書は紙ではなく、電子公文書で交付されるため、ペーパーレス化につながります。
e-Gov、eLTAXを利用して直接申請できますが、クラウド人事労務ソフトから連動して電子申請も可能です。マイナンバーなど大切な個人情報を取り扱うため、端末上にデータを残さなくて済むクラウド人事労務ソフトの活用は、テレワーク勤務時の個人情報保護やセキュリティ対策にもなるでしょう。
おわりに
従業員の退職が確定したタイミングで人事担当者は退職手続きをスピーディに進め、必要な書類を早めに退職者に渡すようにしましょう。
退職後、退職者本人が行うべき手続きもあるため、会社の手続きミスや遅れにより、退職者に迷惑がかからないようにしたいものです。
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