【テレワーク対応版】新入社員の入社手続きに必要な書類一覧と労務がやるべきことまとめ
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こんにちは。特定社会保険労務士の羽田未希です。
新型コロナウイルス感染症の感染防止のため、多くの企業が半ば見切り発車で導入したテレワーク。今では広く浸透し、ワークスタイルに変革をもたらしました。
また、後押しするように、脱ハンコの流れや電子申請の義務化、様々な労務管理システムのクラウドサービスの活用により、テレワークでも効率よく作業できる環境が整いつつあります。労働者が働きやすさを実感したテレワークは、働き方の一つとして今後さらに定着していくことでしょう。
新年を迎え、少しずつ新入社員を迎え入れる時期になっていきます。本来、対面でコミュニケーションを図りたいところですが、コロナ禍でそれもままなりません。今回は、テレワーク環境下での働き方を前提に、人事部が入社手続きを効率よく効果的に実施できるよう、やるべきことをまとめました。
入社手続きにおいて、必要な書類を一覧化した表も用意したので、参考にしてください。
新入社員を受け入れるまでの流れ
内定から入社までの基本的な流れは以下のようになります。
- 内定通知
- 内定承諾
- 退職日・入社日の決定(中途採用の場合)
- 入社手続き・雇用契約締結
- 入社
内定から入社までに行う入社時の手続きは、企業と新入社員との良好な関係を構築するためのコミュニケーションの機会であり、人材定着の観点からも重要な業務です。2020年春に入社した新入社員の中には、外出自粛や緊急事態宣言中ということもあり、出社せずにテレワークからスタートした方もいます。
今後もコロナ禍においては、同様の対応になることが予想され、入社手続きも対面に代わり、オンラインや郵送等でのやり取りが多くなるでしょう。
入社手続きにおいて必要な書類一覧
上記は入社手続きにおいて必要な書類を一覧化した表です。どのタイミングでどのような書類が必要なのか、クラウドソフトでの対応可否についてもまとめておりますので、参考にしてみてください。
それでは、以下より、入社手続きにおいてやるべきことや書類についての解説に移ります。
入社前に必要な手続き
まずは、新入社員が入社するまでに対応が必要な手続きを解説します。
雇用契約関連
入社にあたり、新入社員に安心感を持って働いてもらうために、企業は労働条件を十分に説明しましょう。新入社員が理解した上で入社誓約書等を提出してもらい、会社は労働条件通知書を交付します。
また、その他必要な書類を案内して入社時までに準備してもらえるようにします。
<雇用契約にあたり必要な書類>
- 内定通知書(採用通知書)
- 入社誓約書
- 労働条件通知書
- 入社時必要書類の案内
上記のような、雇用契約に必要な書類は、SmartHRのようなクラウド人事労務ソフトを使用すればオンライン上で完結できます。
労働条件通知書の電子化について
労働基準法では、労働契約を締結する際、事業主は労働条件を明示しなければなりません。原則、労働条件通知書など書面による交付が必要ですが、労働者が希望した場合はFAXやメール、SNS等でも交付できるようになりました。
注意点は、本人のみ閲覧できるようにする、印刷や保存がしやすいよう添付ファイルで送るなどです。詳細は、厚生労働省のお知らせで確認してください。
入社時に従業員から集める書類一覧
入社時に従業員から回収する書類は以下のとおりです。(会社によっては不要とする書類もあります。)
- 年金手帳
- 雇用保険被保険者証
- 住民票記載事項証明書(個人番号が記載されていないもの)または住民票
- 前職の源泉徴収票(中途採用の場合)
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 通勤手当申請書
- 給与振込先申請書
- 健康診断書(3ヶ月以内のもの)
- マイナンバー(本人・扶養家族)
- 資格免許証、資格証明書、卒業証明書等
- 秘密保持誓約書
- 身元保証書
- 個人情報保護法に基づく誓約書
- その他会社が必要とする書類
テレワーク環境下において、入社時の必要書類の提出や必要情報の収集は、郵送もしくはクラウド人事労務ソフトなどで実施することになります。
身元保証書や誓約書などの署名や押印を求めるものは、入社前に書類を送付し、入社時に原本を郵送等で提出してもらいます。
クラウド人事労務ソフトを活用すれば、テレワーク環境でもペーパーレスに作業が可能に。各種書類も従業員が添付ファイルとしてアップロードできます。
また、個人情報も従業員が質問に答える形で入力するので、ミスが少なく、人事部の作業時間が削減できます。データはシステム内に格納されるので、セキュリティの問題もクリアして、管理しやすいでしょう。
入社後に必要な手続き
続いて、新入社員の入社後に必要な手続きを解説します。
各種手続きは郵送も可能ですが、インターネット経由で申請や届け出ができる電子申請、電子申告が便利です。クラウド人事労務ソフトを導入していれば、システムからe-Gov電子申請等ができるため、入力項目も最小限で済み、効率よく作業できるようになります。手続きのために窓口に出向く必要もなくなり、郵送作業も不要です。
社会保険の手続き
社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入させる従業員は、常時雇用し、一定の条件を満たす者が対象です。常時雇用している労働者とは、通常の労働者、および通常の労働者の所定労働時間および日数の4分の3以上である短時間労働者です。
雇入れ日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を提出します。
2016年10月からは短時間労働者に対する適用が拡大され、被保険者数が常時501人以上の法人・個人事業所などの特定適用事業所は、週20時間以上働く短時間労働者は適用対象となりました。2022年10月から被保険者数101人以上の事業所、2024年10月から被保険者数51人以上の事業所で段階的に短時間労働者が適用される見込みです。
特定適用事業所の短時間労働者に該当するのは、勤務時間・勤務日数が常時雇用者の4分の3未満で、次の4つの要件すべてを満たす人です。
- 週の所定労働時間が20時間以上あること
- 雇用期間が1年以上見込まれること
- 賃金の月額が8.8万円以上であること
- 学生でないこと
配偶者や子供を被扶養者とするときには、「健康保険被保険者(異動)届・国民年金保険第3号被保険者関係届」を提出します。
被扶養者の範囲、収入要件、必要な添付書類等を確認してください。なお、手続きにあたり、マイナンバーが届書に記載されており、事業主が対象となる被扶養者の続柄を住民票等で確認した旨を届書に記載していれば、続柄確認の添付は不要です。
社会保険の行政手続きはe-Gov電子申請が利用できます。健康保険組合については、2020年11月から順次、申請APIと連携する人事・給与システムを利用してマイナポータル(GビスID)で電子申請することができるようになりました。詳しくは、各健康保険組合や各システムに確認してください。
雇用保険の手続き
被保険者となるのは、31日以上雇用継続が見込まれ、所定労働時間が週20時間以上の者です。雇用した月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」に法定三帳簿(労働者名簿、出勤簿、賃金台帳)などの確認資料を添えて、ハローワークへ提出します。
各種保険に加入するのは、正社員、契約社員、パートタイマーなどの雇用形態にかかわらず、所定労働時間によります。先ほどの「所定労働時間による各種保険の加入について」の図を参考にしてください。
雇用保険等の行政手続きはe-Gov電子申請が利用できます。2020年11月にリニューアルされ、使いやすくなりました。GビズIDでもログインできます。
税金関連の手続き
所得税
入社時に提出してもらった「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を元に、甲・乙などの税区分、扶養状況を確認して給与の所得税の計算を行います。
クラウド人事労務ソフトでは、従業員が情報を入力することで「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を自動で作成できます。書面での保管には、印字と押印が必要です。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」等の税務申告書をペーパーレスにするためには、2020年12月時点では、給与等の支払者(源泉徴収義務者)が「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請」をあらかじめ税務署に提出する必要があります。
なお、2021年4月1日以後に提出する源泉徴収関係書類については、この承認申請が不要となります。(個人住民税も同様)
所得税の申告は、国税電子申告・納税システムのe-TAX(イータックス)を利用します。詳細は、管轄の税務署へ確認してください。
住民税
住民税の納付方法は、自らが納める普通徴収と給与から控除する特別徴収があります。所得税を源泉徴収している事業主は、従業員の住民税を特別徴収することが義務付けられています。
転職した従業員について、前職の会社から受け取った「給与所得者異動届出書」、または「特別徴収切替届出書」を、従業員の住民票がある市区町村へ手続きをしてください。
※書類の名称は、市区町村によって異なる場合があります。
電子申請で行うためには、地方税ポータルシステムのeLTAX(エルタックス)を利用できます。初めてeLTAXを利用するには、新規利用届出が必要です。
eLTAXで電子申請できる手続き
- 給与支払報告書
- 給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書
- 普通徴収から特別徴収への切替申請書
- 退職所得に係る納入申告書
- 公的年金等支払報告書 など
おわりに
人事部は入社手続きだけでなく、新入社員の不安を取り除き、継続的なフォローアップが求められます。
テレワーク時代においては、コミュニケーション目的でオンライン、オフライン(対面)を選択することになりますが、新入社員が新しい職場でスムーズに働き始められるように歓迎ムードで迎え入れたいですね。