有給休暇取得率50%で3年連続最下位の日本・・・。「有休5日取得義務」の対応は大丈夫?
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こんにちは、社会保険労務士の吉田 崇です。
皆様もご存知の通り、2018年6月に「働き方改革関連法案」が可決・成立し、2019年4月1日より、順次施行されることになりました。
70年ぶりの大改革といわれる今回の改革では、働き方に関する多種多様な変更が実施されますが、その中でも一般の方々が最も気にされているのが、「有給5日取得義務化」ではないでしょうか。
本稿では、各企業において具体的に対策すべき事項について、現在の有給休暇取得状況などの社会的な状況も踏まえ解説します。
有給休暇取得率50%の日本。なんと3年連続最下位
世界最大級の総合旅行サイト・エクスペディアの日本語サイト、エクスペディア・ジャパンの調査によると、日本人の有給休暇の取得率は、世界19ヶ国の中で3年連続最下位の50%という結果になっています。
これは、日本人の根底に「労働は美徳で、休むことは悪」という考え方が根付いていることが原因の一つとして考えられます。
前述のエクスペディアの調査でも、有給休暇の取得に罪悪感があるかどうかについて聞いたところ、日本人の58%が「ある」と回答、世界で最も割合が多い結果とのことです。
2018年の調査概要
■サンプル数: 計11,144名/19ヶ国
■調査対象: 日本、アメリカ、カナダ、メキシコ、ブラジル、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、香港、インド、マレーシア、シンガポール、韓国、タイ、台湾
■調査期間: 2018年9月19日~28日
■調査方法: インターネットリサーチ
■調査会社:Northstar
2020年までに「有給休暇取得率70%目標」とのギャップ
国の「仕事と生活の調和推進のための行動指針」では、2020年までに年次有給休暇取得率を70%にすることが掲げられています。
2020年の目標値である70%と、実際の取得率である50%とのギャップを埋める為、まず現在「正社員の約16%が年次有給休暇を1日も取得していない」という実態を問題視し、その解消を最優先する為に導入されたのが、今回の「有給5日の強制付与」となります。
つまり、5日の強制付与が実施されたとしても、政府目標である70%には及ばない為、会社にはさらなる努力が求められることになります。
「有給休暇5日取得義務」の対象者
今回の「有給休暇5日取得義務」の対象者は、年休付与日数が10日以上の従業員となっています。
つまり、入社後半年以上経過したフルタイムの社員はもちろんのこと、パートやアルバイトにおいても、以下のどれかに該当する場合には対象となりますので注意が必要です。
- 週30時間以上勤務している
- 週5日以上勤務している
- 年間217日以上勤務している
- 入社後3年半以上経過していて週4日(または年間169日〜216日)勤務している
- 入社後5年半以上経過していて週3日(または年間121日〜168日)勤務している
「有給休暇5日取得義務化」で講じるべき対策
さて、来年の4月1日から施行される「有給5日取得義務化」ですが、では各企業はどのような対策を講じるべきでしょうか。
(1)各従業員ごとの有給休暇発生の起算日、取得可能日数の把握
まず1番の基本となるのは、各従業員ごとの有給休暇起算日、取得可能日数の把握です。意外にもこれがおろそかになっている中小企業は少なくありません。
有給起算日については、起算日を全従業員で統一している会社は問題ありませんが、入社日が異なる従業員ごとに有給の起算日が異なる場合は、来年4月1日以降に発生する、それぞれの従業員ごとの有給休暇起算日から1年以内に、5日分の有給を付与する必要がありますので、個別の管理は必須です。
取得可能日数の把握については、会社で有給休暇管理が可能なソフトウェア等で各従業員ごとの取得可能日数と有給休暇取得状況を把握するのはもちろんのこと、従業員にも、それぞれ有給休暇管理カードのようなものを持たせるなどして、自身の有給休暇取得状況を把握してもらうことも有用です。
(2)有給休暇の計画的付与の検討
現在すでに、ほとんどの社員が有給休暇を5日以上取得しているという会社は、個別の取得状況をきちんと把握し、有給休暇起算日から1年が経過する最後の月に、取りきれていない有給休暇があれば個別に指定して有給休暇を取得してもらうという方法で問題ありません。
一方、有給休暇が取りにくい体質の会社は、有給休暇の計画的付与を活用し、会社が定めた日に計画的に有給休暇を取得させるといった取り組みが必要でしょう。
まとめ
上記2点が事務的な観点から見た会社が講じるべき対策となります。
しかし、休むこと自体への罪悪感や、忙しすぎて休みが取れないといった問題が、有給を取得できない理由の根本にある以上、本当に大切なのは、業務改善や、社内の雰囲気の見直しなどを通じ、従業員が安心して有給を取得できる環境を整えることであるのは、言うまでもありません。
(了)
【編集部より】働き方改革関連法 必見コラム特集
お役立ち資料
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