【2026年最新版】就業規則とは?作成義務の「10人」の数え方から届出手順まで社労士が解説
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就業規則とは、企業と従業員のあいだで守るべき労働条件や職場のルールを明文化した文書です。 労働基準法により、常時10人以上の従業員を使用する事業場には、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務付けられています。
昨今、働き方改革や育児・介護休業法の改正などの法改正が相次ぐなかで、就業規則を最新の法令や自社の働き方にあわせて策定・改定する重要性が年々高まっています。
しかし、人事・労務担当者からすると、「具体的な作成手順がわからない」「どのような場合に就業規則の作成や届出が必要なのか」と迷う方も多いのではないでしょうか。
本記事では、就業規則の作成義務が生じる基準から、作成のポイント、労働基準監督署への届出手順まで、社会保険労務士がわかりやすく解説します。
就業規則の変化にもつながる、2026年の法改正は以下の記事で紹介しています
就業規則とは
就業規則とは、企業と従業員のあいだで守るべき労働条件や職場のルールをまとめた文書です。労働時間、休日、賃金などの労働条件や、従業員が守るべきルールを明確にすることで、従業員が安心して働ける環境をつくり、労働トラブルを防ぎます。

就業規則の作成・届出が義務づけられる企業の要件
就業規則の作成・届出の義務があるのは、常時雇用する労働者が10人以上の事業所です(労働基準法第89条)。就業規則を作成した場合は、「労働者の過半数を代表する者(従業員代表)」の意見を記し、管轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は当該労働組合に、ない場合は、従業員代表に意見を聞く必要があります(労働基準法第90条)。また、事業所が複数ある場合は、事業所ごとの従業員代表への意見聴取が必要です。
就業規則の3つの義務
就業規則に関する義務は、以下の3つがあります。
- 作成をする義務:常時10人以上の従業員を雇用する事業所では、就業規則を作成する
- 届出をする義務: 作成した就業規則を、従業員代表からの意見書を添えて、所轄の労働基準監督署長に届け出る
- 周知をする義務: 就業規則を全従業員がいつでも確認できる状態にしたうえで、周知徹底する
せっかく作成をしても、労働基準監督署への届出や従業員への周知ができていないと、法的な義務を果たせません。作成・届出・周知のプロセスを漏れなく確実に実施しましょう。
就業規則を作成しない場合の罰則
就業規則の作成が義務づけられる事業所(常時10人以上の従業員を雇用する事業所)が、作成・届出・周知をしなかった場合、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
常時雇用する労働者の考え方
常時雇用する従業員には、パートタイマーやアルバイトも、労働時間の長さにかかわらず人数に含めます。派遣従業員は雇用元でカウントをするため自社の従業員数には含めません。
「常時」とは、常態として10人以上の従業員を雇用しているという意味です。たとえば、通常は5人で、繁忙期に一時的に10人以上雇用する場合は作成の義務はありません。反対に通常は10人以上を雇用していて、一時的に10人未満になる場合は、作成・届出が必要です。
参考:詳解 労働法 第4版 水町勇一郎(著)-東京大学出版会
事業所ごとに労働者のカウントをして届出が必要
常時雇用する従業員が10人以上いるかどうかのカウントは、企業全体ではなく、事業所単位で判断します。
たとえば、東京本社で20人、大阪支社で8人雇用している場合、作成と届出が必要なのは東京本社のみです。

就業規則の本社一括届出制度
就業規則を事業所ごとではなく、全社的に同一の就業規則を適用している企業も多いでしょう。その場合は、就業規則の本社一括届出制度を利用する方法もあります。ただし、一括届出制度を利用した場合でも、従業員代表への意見聴取は、事業所ごとに対応が必要なため留意しましょう。

就業規則の法的な効力
就業規則を作成する際は、労働基準法のような法律や、労働協約、労働契約との関係性を理解することが重要です。規定した内容が、優先される法律や文書の内容を下回る場合、無効になる可能性があるためです。
優先順位は下記のとおりです。それぞれ具体例とともに確認していきましょう。

法律と就業規則の関係性
就業規則の内容は企業の実情にあわせて、ある程度自由に決定できます。しかし、労働基準法や労働契約法といった強行法規の「最低基準を下回る」内容は無効となるため、設けられません。
たとえば、「入社6か月後に年次有給休暇を5日間付与する」という規定を就業規則に定めた場合を考えてみましょう。労働基準法上では、入社6か月後に10日間の年次有給休暇の付与が義務づけられています。労働基準法は、就業規則よりも法的効力が上位で、就業規則の内容が「最低基準を下回る」ため、10日間の付与が必要になります。
このように、就業規則よりも法的効力が上位の法律の基準に満たない場合は、自動的に上位の法律で定められている内容が優先されます。
労働協約と就業規則の関係性
労働協約とは、労働組合と使用者が労働条件などについて話し合い、双方が合意して結ぶ契約のことです。これは非常に強い効力をもち、会社の「就業規則」よりも優先されます(労働組合法第14条)。ただし、労働協約は原則として労働組合の組合員のみに適用されます。
たとえば、就業規則に「賞与は勤続3年以上の者に支給」と記載されていても、労働協約に「勤続年数にかかわらず支給」と定めがあれば、組合員に限り、労働協約が優先されます。
労働契約と就業規則の関係性
労働契約とは、労働者が使用者に労務を提供し、使用者がその対価として賃金を支払うことを定めた契約です(労働契約法第6条)。
就業規則と労働契約は、全従業員に共通するルールと個別契約という上下の関係にあるため、就業規則が定める基準を下回る内容で、個別労働契約を締結できません。仮に労働者の合意がとれたとしても、就業規則の規定を下回る部分は無効となり、就業規則に定められた基準が適用されます。
たとえば、就業規則で「所定労働時間が7時間」、個別の労働契約で「所定労働時間は8時間」と定められ、賃金が変わらない場合は、労働契約の時間単価が低く従業員が不利になるため、就業規則が優先されます。
反対に、就業規則より基準を上回る部分は労働契約が優先されます。
就業規則を整備するメリット

就業規則は、企業が従業員に求める服務上のルールを定めるだけでなく、労働条件や待遇を明確にすることで、従業員が安心して働ける環境づくりにもつながります。
ここでは、就業規則を適切に整備するメリットをご紹介します。
(1)ルールや労働条件を明確化し、公平な運用を実現
企業には、勤務時間・休憩・休日など、さまざまな労働条件があります。就業規則に誰が見ても明確なルールが定められていれば、一貫性や公平性を保った運用が可能になり、企業としての秩序や信頼性の維持につながります。
(2)従業員の納得感を高められる
就業規則を整備することで、従業員が企業の方針や判断基準を理解しやすくなり、経営層と現場間で共通認識をもてます。方針やルールが明確であれば、日々の業務で迷いが生じにくくなり、従業員一人ひとりが納得感をもって業務に取り組めるでしょう。
さらに、企業理念や行動指針を就業規則に盛り込むことで、企業が目指す方向性や、提供したい価値を従業員と共有できます。このように、経営方針と日々の業務判断の一致を促すことで、組織力向上にも寄与します。
(3)人材採用・定着、広報活動に寄与
就業規則は、企業の価値観や働き方の方針を示すものとして、採用や定着、広報の場面でも活用できます。
たとえば、時短勤務など柔軟な働き方に対応した制度を明文化すれば、従業員の安心感を高められ、定着率の向上にも効果を発揮します。また、こうした制度を対外的に発信できれば、採用活動において、自社の文化に共感する人材を惹きつけやすくなり、入社後のミスマッチ防止にもつながります。
さらに、就業規則に記載された制度や方針を広報素材として発信すれば、制度が「ある」だけでなく、きちんと運用されていることを示せます。これにより、求職者やステークホルダーからの信頼を得やすくなり、企業の社会的信用の向上にもつながるでしょう。
(4)助成金や認定制度の条件を満たしやすくなる
就業規則を整備することは、各種助成金や公的認定制度の申請要件を満たすうえでも大きなメリットがあります。たとえば、雇用保険関係のキャリアアップ助成金や教育訓練休暇給付金などは、制度の概要を就業規則に規定することが、支給申請の要件になる場合が多いです。
直近で助成金や認定制度の申請予定がない場合でも、将来を見据えて作成・届出をしておくと安心でしょう。
就業規則がない・内容が不十分な場合のリスク

就業規則がない場合、明確な判断基準がないため、トラブル発生時などに判断に迷うおそれがあります。ここでは、就業規則を作成しない場合や内容が不十分な場合のリスクを解説します。
(1)従業員に根拠を示せず、企業側の主張が認められにくい
就業規則が整備されていないと、従業員からの要望や意見に対して、明確な根拠を示した説明・対応が難しくなります。その結果、従業員の納得が得られず、万が一争いに発展した場合には、企業にとって不利な判断が下される可能性があります。
(2)対応が属人的になり不公平感が生まれる
就業規則で共通の判断基準が定められていない場合、部署や担当者ごとで運用方法にばらつきが生じやすくなります。
その結果、似たようなケースでも対応内容が異なり、「なぜ自分だけ違うのか」と従業員が不公平感を抱くことにつながりかねません。
こうした属人的な運用が続くと、従業員の納得感が失われるだけでなく、管理職の判断に負担が集中し、組織全体の運営効率も下がってしまいます。
トラブルを未然に防ぐためにも、あらかじめ就業規則にルールを明示し、誰が対応しても同じ判断ができる体制を整えることが重要です。
(3)意思決定スピードが遅くなる
就業規則が整備されていない場合、「どの行為が注意・処分の対象となるのか」「どの程度の対応が妥当なのか」などその都度協議する必要が生じ、判断が遅れやすくなります。
対応の遅れは、問題行動の長期化や職場秩序の乱れを招き、周囲の従業員に悪影響を及ぼす要因となります。
こうしたリスクを防ぐには、懲戒の種類や判断基準、対処法などを就業規則で明確に定め、誰でも同じ基準で判断できる体制づくりが重要です。
就業規則の規定不備によってトラブルになる事例
実際に、就業規則に規定されていないことが原因でトラブルに発展するケースは少なくありません。就業規則を作成する際は、どのような場面でトラブルに発展しやすいかを想定しておくことが重要です。ここでは、具体的な事例を3つご紹介します。
- 懲戒や解雇を科すケース
- 勤怠態度やハラスメント問題を指導するケース
- 従業員の体調不良などで欠勤が発生するケース
(1)懲戒や解雇を科すケース
就業規則に懲戒の種類や手続き、解雇の要件が明記されていない場合、「ルールが示されていない」という理由で企業側の主張が認められにくくなるため注意が必要です。
実際、懲戒処分や解雇が裁判で争われる際は、就業規則の規定が判断材料になります。懲戒事由が定められていなければ、「事前に処分基準を周知していない」とみなされ、懲戒自体が無効になるケースもあります。
なお、懲戒処分および解雇について、労働契約法で「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効となる」と定められています(労働契約法第15・16条)。
適切な処分を実施するには、処分のルールと手続きを就業規則で明確に定め、従業員に周知しておくことが重要です。
(2)勤務態度やハラスメント問題を指導するケース
従業員の勤務態度やハラスメントなどに問題が生じた場合は、就業規則に定められた「服務規律」や「禁止事項」にもとづいて注意・指導できます。しかし、これらが明文化されていないと、対応が属人的になり、場合によっては指導がパワハラだと従業員に捉えられるリスクもあります。
厚生労働省のモデル就業規則にも、服務規律、遵守事項の定めがあり、規定が推奨されています。
(3)従業員の体調不良などで欠勤が発生するケース
従業員の欠勤が続いた場合、企業は安全配慮義務の観点から、体調や状況を確認する責任があります。しかし、就業規則に「欠勤が〇日以上続いた場合は診断書の提出を求める」といった具体的な定めがないと、基準があいまいになり、従業員ごとに対応にばらつきが出てしまいます。また、休職・復職の判断の際も、就業規則に休職期間や復職条件の定めがなければ、対応に一貫性がなくなります。
あいまいな運用によって、「不公平な扱いをされた」「自分だけ扱いが違う」といった訴えや紛争につながることがあります。
欠勤・休職の取扱いは、感情論ではなくルールにもとづいて判断できるよう、就業規則で明確に定めておくことが不可欠です。
就業規則の記載事項
ここからは、実際に就業規則を作成する際に定めるべき事項について解説していきます。
就業規則には、「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」があります(労働基準法第89条)。また法律に定められている内容以外も、企業が任意で記載事項を定められます。それぞれの記載事項について説明します。
以下の記事でも、くわしく解説しています。
絶対的必要記載事項
絶対的必要記載事項とは、就業規則を作成する際に必ず定めなくてはならない内容です。
項目 | 概要 |
労働時間 |
|
賃金 |
|
退職 |
|
相対的必要記載事項
相対的必要記載事項とは、企業(事業所)で制度が導入されている場合は、記載が必須になる事項です。
項目 | 概要 |
退職手当 |
|
臨時の賃金・最低賃金額 |
|
費用負担 | 従業員負担となる内容(食費や作業用品など)補助がある場合は、対象者や補助額 |
安全衛生 | 安全・衛生に関する事項(健康診断や健康管理における個人情報の取扱いなど) |
職業訓練 |
|
災害補償・業務外の傷病扶助 |
|
表彰・制裁 |
|
その他の事項 | 企業(事業所)の労働者すべてに適用されるルールに関する事項 |
その他・任意で定められる事項
絶対的必要記載事項、相対的必要記載事項のほかにも、企業の実態やルールにあわせて、任意に定められる事項があります。一般的に、規定されていることが多い項目は下記のとおりです。
- 服務規律に関する事項(遅刻・早退・欠勤など勤怠関連や、身だしなみ、ハラスメントなど)
- 副業・兼業に関する事項(許可制の有無、遵守事項など)
- 評価制度に関する事項(昇格や人事考課の基準など)
服務規律に関する事項は、業務をするうえでの心構えをまとめたもので、懲戒処分などの基準にもなるため規定されることが多いです。全従業員にかかわるルールは、現状の社内運用を整理・確認したうえで明確に記載すると、より実態に即した就業規則になるでしょう。
【人事労務の実務】就業規則作成から届出までの流れ
ここでは、就業規則の作成、従業員代表への意見聴取、労働基準監督署への届出までの流れを説明します。

(1)目的を定めて骨子を作成する
就業規則を自社で作成する場合は、厚生労働省が公表しているモデル就業規則をひな形にするとよいでしょう。インターネット上には無料でダウンロードできる就業規則のひな形もありますが、最新の法令に適応していない可能性もあるため、ひな形を入手する場合は公的機関のものを使用するのが安全です。
次に、企業の現状や課題、必要なルールの範囲を整理します。締結された雇用契約書や勤務実態を参照のうえ、「絶対的必要記載事項」「相対的必要記載事項」の項目にもとづき、勤務時間、休日、休暇など、記載事項を洗い出し、骨子を作成します。
より確実に法令遵守するために、この段階から社会保険労務士などの専門家に依頼をするのもよいでしょう。
(2)骨子をもとに就業規則を作成する
次に、骨子をもとに就業規則の詳細を作成していきます。
モデル就業規則をもとに、内容をつくりこむ
整理した項目内容をモデル就業規則に当てはめて、自社の実態や方針に沿って内容をつくりこみます。このときに、厚生労働省のガイドラインや労働基準法の最新改正情報を反映する必要があります。
就業規則の作成は法令の正しい理解が求められるため、社会保険労務士など専門家に作成を依頼することも検討できるとよいでしょう。
企業理念や行動指針を就業規則に反映させる
企業理念や行動指針に沿って、従業員に求める姿勢や行動基準を明文化します。たとえば、評価項目として重視している行動項目があればあわせて書き出しましょう。企業が求める人物像を明らかにすることで、服務規律もつくりやすくなり、行動基準をより具体的に明示できます。
(3)従業員代表から意見を聴取する
就業規則が完成したら、従業員代表に内容を提示・説明をして意見を聴取します。本質的な意見が聴けるよう、作成の趣旨や従業員への影響など丁寧に説明しましょう。また、提出された意見をすぐに反映する義務はなく、意見書に反対意見が記載されていても、就業規則の届出に支障はありません。
従業員代表の選出方法
従業員代表は、投票や挙手などの民主的な方法で選出する必要があり、企業側が一方的に指名できません。また管理監督者は、従業員代表にはなれず、労働者の過半数が支持していることを明確にする必要があります。投票や信任投票の結果を記録するようにしましょう。
従業員代表を適正に選出しない場合のトラブル例
従業員代表が適正に選出されていない場合、労使協定や就業規則の変更が無効となり、次のような問題を引き起こす可能性があります。
- 時間外労働・休日労働に関する労使協定(36協定)の効力が否定され、時間外労働させたことが違法となる。
- 専門業務型裁量労働制の労使協定が無効となり、みなし労働時間の取扱いが認められない。それにより、1日8時間、1週40時間を超えて労働させた部分について、未払賃金が発生する。
- 就業規則変更の届出に関する意見聴取が不適切と認められ、就業規則の変更が無効となってしまう。
実際に従業員代表が適切に選出されておらず、意見聴取を実施しなかったことを理由に、事業主が書類送検された例もあります。労働基準監督署の調査が入った際も、従業員代表の選出方法は確認されやすいため注意しましょう。
参考:労使トラブル円満解決のための就業規則・関連書式作成ハンドブック(2023年11月刊) - 西川暢春(著)
(4)就業規則の意見書を作成
従業員代表への意見聴取が終了したら、就業規則の意見書を作成する必要があります。意見書とは、従業員代表や労働組合の意見をまとめた書類のことで、意見聴取を実施したことを示します。
作成が義務づけられており、厚生労働省のウェブサイトからフォーマットをダウンロードできます。
意見書に記載する主な内容
- 宛名(企業名と代表者の役職および氏名)
- 意見聴取を実施した日付
- 従業員代表の氏名(署名・捺印は不要)
- 従業員代表の意見(ない場合は「とくに意見なし」と記載)
- 従業員代表の選出方法
(5)労働基準監督署に届け出る
意見書が完成したら、郵送、窓口への持参、電子申請のいずれかの方法で労働基準監督署へ届け出ます。
届出に必要なもの
- 就業規則(変更)届
- 就業規則
- 従業員代表の意見書

- 窓口・郵送の場合:いずれも2部用意し、1部は労働基準監督署で受理印をもらったものを、控えとして保管します。郵送の場合は、返信用封筒を同封すると1部返却してもらえます。
- 電子申請の場合:政府が運営する「e-Gov(イーガブ)」で手続きが可能です。
e-Govの手続き方法
- 手続き検索から「就業規則(変更)届」を選択、必要事項を入力し、PDFなどで就業規則と意見書のデータを添付し、申請をします。
- 受理後は、受理印が押されたデータが公文書として返送されます。
- 受理印の扱いは管轄の労働基準監督署により異なり、データの返送がない場合もあります。その場合は受付完了通知を保管しておきましょう。
(6)閲覧環境を整備する
就業規則は、従業員に周知する必要があります。周知の方法は、労働基準法施行規則第52条の2に定められており、下記の方法があります。
(1) 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
(2) 書面を労働者に交付すること。
(3) 電磁的記録媒体に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
(1)、(2)は就業規則を印刷して準備する必要があり、就業規則を変更した際は、印刷し直して再設置する必要があるため、事業所の数や従業員数が多い場合は、作業負荷が大きくなります。
(3)は、就業規則をPDFなどでデータ化し、共有のファイルサーバーやイントラネットなどに格納し、全従業員が常時アクセスして閲覧できる状態にする方法で、変更も容易です。
また、オフィス勤務者と現場作業者など、職種によってパソコンの使用状況が異なる場合は、データ共有と事業所への掲示を組みあわせ、全従業員がいつでも就業規則を確認できる状態にしましょう。
(7)従業員へ周知する
就業規則は、従業員に周知されて初めて効力をもちます。法令にもとづく手続きが適切に行なわれていない場合、内容が無効とみなされるおそれがあります。
就業規則にもとづき、従業員に懲戒処分を実施したところ、当該就業規則が周知されていなかったことにより懲戒解雇が無効となった事例もあります。そのため、掲示場所を確実に従業員に周知したうえで、周知したこと自体を記録することが重要です。
就業規則周知と証明方法
- 掲示の場合:社内掲示板に掲載し、メールや社内文書で通知し、送信記録を保存
- 書面配布の場合:書面を配布し、受け取った従業員の署名や押印をもらうことで、周知を証明
- データ共有の場合:ファイルサーバーやイントラネット上で共有し、公開通知メールや案内文書のコピーを残しておく
就業規則の作成ポイント
ここでは、就業規則作成のメリットや作成手順を踏まえ、作成時に押さえておきたいポイントを解説します。

(1)就業規則の適用範囲を柔軟に設定する
就業規則は、全従業員に適用されます。そのため、雇用形態によってルールが異なる場合は、実態にあわせて適用範囲を設定することが重要です。
たとえば、正社員とパート・アルバイトで勤務時間や休日制度に大きな違いがある場合は、「パートタイマー就業規則」を別途作成することで、運用を明確化し、トラブルを防止できます。一方で、管理コスト削減と規定間の矛盾を防ぐため、共通する内容は一つにまとめるなど、重複を避ける工夫も必要です。
また、賃金や手当のルールなど、就業規則のなかでも詳細な定めが必要な項目については、「賃金規程」など別規程として切り分ける方法もあります。附属規定として切り分けた場合も、法的には就業規則の一部です。本数が増える分、それぞれに届出と周知が必要になるため、管理漏れがないよう注意しましょう。

(2)法令・労働協約を遵守する
労働基準法で、「就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。」とされています(労働基準法第92条第1項)。
就業規則に法令や労働協約に違反する内容が含まれている場合、違反箇所が無効となります。最新の法令や労働協約を確認しながら作成しましょう。最新の法改正を網羅するには手間と時間がかかるため、社会保険労務士などの専門家に確認を依頼するのも有効です。
(3)従業員代表の意見聴取を形骸化させない
従業員代表の意見聴取は、届出のための形式的な手続きではなく、就業規則を社内に浸透させるための重要なプロセスです。真摯に耳を傾ければ、現場に即した生きたルールへと中身をブラッシュアップさせる貴重な機会となります。また、労使間の信頼関係を深め、社内コミュニケーション活性化にもつながります。
就業規則を変更する際の注意点
一度作成・届出した就業規則を変更する際は、従業員に不利益にならないよう留意する必要があります。変更する際のポイントについて解説します。
(1)合理性を確保し、慎重に判断する
労働契約法第9条では、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。」と定められています。一方で、労働契約法第10条で、以下2つの条件を満たす場合は、変更が有効とされています。
変更後の就業規則を労働者に周知させていること
就業規則の変更の内容が合理的であること
合理性の判断基準は法律で明確に定められていませんが、「労働者が受ける不利益の程度」「労働条件変更の必要性」「変更後の就業規則の内容の相当性」「労働組合等との交渉状況」などを踏まえ、総合的に判断されます。
たとえば、経営悪化などの理由でやむを得ず基本給を引き下げる場合、労働者への不利益がきわめて大きいため、裁判等でも厳格に審査されます。減給額は最大で月給額の10分の1程度までが望ましいとされ、代償措置(手当の増額や労働時間の短縮など)が求められます。
やむを得ず労働者の不利益に条件を変更する際は、合理性の確保と代償措置の両面から慎重に判断したうえで、従業員への丁寧な説明が重要です。
(2)社会情勢の変化にあわせて柔軟に見直す
就業規則は、一度作成して終わりではなく、働き方の変化など社会情勢に応じて定期的に見直すことが重要です。
たとえば、コロナ禍では感染拡大防止を目的にリモートワークを導入した企業が多くみられました。リモートワークの制度化にあたって、勤怠管理の方法や通勤交通費の支給方法の見直し、通信費などのインフラ費用の扱いなど、労働条件に関する論点が多く発生します。これらを就業規則で明文化しておけば、運用上のトラブルや認識のずれを防げます。
また、近年は育児・介護休業法などの法改正が頻繁にあります。法改正に対応する際は、現行の運用が最新の基準に沿っているかを確認し、必要に応じて規程の追加や見直しが求められます。
(3)ほかの規程との関連性に注意する
就業規則を変更する際は、ほかの規程への影響を必ず確認しましょう。たとえば、リモートワーク制度を追加した際に、通勤交通費規程を修正するなど、複数の規程の見直しが必要になるケースがあります。
また、雇用形態別に就業規則を分けている場合は、変更した内容をどの雇用形態に適用するのか、不整合がないかの確認も重要です。
就業規則に関するQ&A
最後に、就業規則の作成・変更に関するよくある質問について解説します。
Q1. 就業規則の作成は専門家に依頼したほうがいいのでしょうか?
就業規則の作成に多くの費用をかけるのが難しい場合もあるでしょう。しかし、就業規則は長期的に運用する重要な社内文書のため、可能であれば、社会保険労務士などの専門家に作成を依頼することが望ましいです。
費用を抑えたい場合は、厚生労働省の「就業規則作成支援ツール」を使用すると基本的な内容の就業規則が作成できます。それに加え、商工会議所・自治体が提供する無料相談窓口を利用する方法もあります。
予算やリスク許容度に応じて、最適な方法を検討しましょう。
Q2. 労働条件通知書と就業規則はどちらの内容が優先されますか?
原則として、就業規則の内容が優先されます。そのため、労働条件通知書を作成する際は、就業規則の内容と照らし合わせ、記載内容に矛盾や不整合がないかを必ず確認しましょう。
ただし、労働契約(労働条件通知書)が就業規則よりも有利な部分は、労働契約の内容が優先されます。就業規則作成時は、現行の契約内容や実態とずれがないよう注意しましょう。
就業規則の整備から企業と従業員を守る「土台づくり」を始めよう
就業規則は、単に法律を守るための「義務」ではなく、企業理念や行動指針を形にする「経営戦略のツール」とも言えます。ルールを明確にすることは、組織の公平性を保つだけでなく、従業員が安心して働き、本来の力を発揮できる環境づくりに直結します。
また、近年の法改正や働き方の多様化に対応するには、就業規則の内容を定期的に見直し、企業と従業員がともに納得できるルールへと進化させていくことが求められます。
守りの姿勢だけでなく、攻めの組織づくりの一環として、今一度、就業規則のあり方を見直してみてはいかがでしょうか。











