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2025年人事・労務向け 「法改正&実務対応カレンダー」

公開日
目次

こんにちは。社会保険労務士の山口です。

2025年は、雇用保険法や育児・介護休業法など、「多様な働き方」を実現するための法改正が相次ぎます。本稿では、人事・労務のご担当者さま向けに、各月の法改正情報と必要な実務対応を解説します。1年間のスケジュール計画にお役立てください。

2025年の法改正に向けた準備のポイント

育児・介護休業法改正への対応

育児・介護休業法は、4月・10月と改正が続くため、制度設計から従業員の周知まで、しっかりスケジュールを組んで進めることが重要です。以下のような対応ステップが必要です。

  • 制度設計の見直し:法律の変更内容に基づいて自社の休業制度を調整する
  • 規程・協定の改定:就業規則や労使協定の内容を改正後の法律に合うように変更する
  • 従業員からの意見聴取:従業員の意見を聞いて反映させる
  • 新制度の周知:社内への周知

雇用保険制度への対応

雇用保険法は、従業員の生活に大きな影響を与える改定が予定されています。

  • 高年齢雇用継続給付の給付率引き下げ(15%→10%)
  • 育児休業給付金の延長手続きの厳格化
  • 自己都合退職者の給付制限期間の見直し

これらの変更は従業員の収入に影響するため、従業員トラブルが発生しないよう、新しい制度の概要について早めに周知しておきましょう。

今後の動向をチェック

副業・兼業の労働時間管理や、連続勤務日数の上限設定など、労働基準法改正に関する議論がスタートしていることにも注目です。これらはすぐに決まる、ということではありませんが、法改正の動向を随時チェックしましょう。

準備のタイミング

2025年の法改正は4月に集中しています。年度初めの入退社手続きが重なるため、早めに準備を始めましょう。

以下は社内での準備のステップ例です。

  • 改正内容の確認と社内への影響分析
  • 規程改定案の作成
  • システム改修の必要性確認
  • 従業員への周知計画立案

1月の実務対応

領域
対応内容

対応期限
法改正
労働安全衛生規則改正

労働安全衛生法関係の届出について電子申請義務化

1月1日(水)

労務

労働保険料(第3期分)の納付

1月31日(金)

税務

納期の特例による源泉徴収税額の納付

1月20日(月)

従業員への源泉徴収票の交付

1月31日(金)

給与支払報告書の提出

1月31日(金)

法定調書の提出

1月31日(金)

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を従業員から回収
1月給与支払日の前日

ポイント解説

1月は、給与・税務関連の届出が集中しているため、漏れのないよう対応しましょう。
また、2025年1月1日から、労働者死傷病報告や産業医の選任報告など、労働安全衛生法関連の届出について電子申請が義務化されます。
紙での届出についてもしばらくは受付される予定ですが、この機会に「e-Gov」の登録をしておくのがいいでしょう。

2月の実務対応

領域
対応内容
対応期限

労務

じん肺健康管理実施状況報告

2月28日(金)

税務

決算準備(3月決算法人)

2月28日(金)

ポイント解説

3月決算法人は、2月中には決算の仮締めを済ませ、経営層に提示できるようにしておきましょう。
3月は入退社手続きや法改正対応に追われることが予想されます。36協定の締結などルーティン業務は、この時期に準備を進めましょう。

また、近年は賃上げ傾向が続いているため、4月に昇給を予定している企業は、業界の動向など情報収集をしておくとよいでしょう。

3月の実務対応

領域
対応内容
対応期限

労務

36協定(4月発効)の準備、更新

3月31日(月)

次年度、介護保険の該当者(非該当者)の確認(40歳/65歳)

3月31日(月)

税務

決算準備(3月決算法人)

3月31日(月)

退職金の支払い

規程に定める期日

退職所得の源泉徴収票提出

本人退職後1か月以内

ポイント解説

4月の改正法施行の前に、規程の改定や届出などを済ませましょう。新入社員の入社に伴う事務手続きも、3月に準備しておく必要があります。備品、制服なども忘れずに手配しましょう。

4月の実務対応

領域
対応内容
施行開始

法改正

雇用保険法改正

高年齢雇用継続給付の支給率の縮小

4月1日(火)から

育児休業給付延長手続きの厳格化

4月1日(火)から

自己都合退職者の給付制限期間が原則「1か月間」に

4月1日(火)から

「出生後休業支援給付」及び「育児時短就業給付」の創設
4月1日(火)から
育児・介護休業法改正
家族の介護に直面した労働者に対する個別の周知や雇用環境の整備等
4月1日(火)から
残業免除対象の拡大(育児)
4月1日(火)から
子の看護休暇の見直し
4月1日(火)から
介護休暇を取得できる労働者の要件緩和等
4月1日(火)から
次世代育成支援対策推進法改正

※有効期限が令和6年改正により令和17年3月末までに再延長されていました

一般事業主行動計画の策定・変更時の状況把握・数値目標の設定義務づけ
4月1日(火)から

くるみん認定などの認定基準変更
4月1日(火)から

育児休業取得状況の公表義務について、300人超企業に対象拡大
4月1日(火)から
障害者雇用促進法改正
特定の業種に対する法定雇用率軽減のための「除外率」を引き下げ
4月1日(火)から
領域
対応内容
対応期限

労務

新入社員の受入れ事務(入社手続き等)


健康保険料率、介護保険料率の変更確認


税務

決算業務(3月決算法人)


法改正の重点解説

高年齢雇用継続給付の見直し

高年齢雇用継続給付の見直しと高年齢雇用のさらなる推進について表す画像

(出典)厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」をもとに当社作成/厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」をもとに当社作成

2025年4月1日から給付率が変わり、「賃金額の最大15%→賃金額の最大10%」になります。
対象:下記の両方を満たす労働者

  1. 雇用保険の被保険者期間が5年以上あり、60歳以上65歳未満
  2. 60歳以降の賃金が60歳時点の75%未満

育児休業給付の見直し

(出典)厚生労働省「育児休業給付について」をもとに当社作成

2025年の雇用保険法の改正では、こうした手取り額の減少を補う上乗せ給付や新給付制度が創設されます。厚生労働省よりリーフレット(※)が公開されているため、受給資格や提出書類の詳細を確認しましょう。

(※)厚生労働省┃「2025年4月から『出生後休業支援給付金 』を創設します」
(※)厚生労働省┃「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号)の概要

育児・介護休業法の改正(出産育児支援)

2025年の4月と10月に育児介護休業法が大きく改正されます。
「子の看護休暇の見直し」や「所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大」などが予定されています。就業規則などの見直しが必要になるため、施行後の対象や要件をしっかり確認しましょう。

働き方・労働環境の整備について表す画像

(出典)厚生労働省(2024)「令和6年改正法の概要(政省令等の公布後)」をもとに当社作成

育児・介護休業法の改正(介護支援)

2025年4月から「介護に直面する前の早い段階(40歳など)での両立支援制度等に関する情報提供」が義務化されます。労働者が介護に直面する前の早い段階で、事業主は介護休業制度等に関する以下の事項について情報提供しなければなりません。

情報提供期間、情報提供事項、情報提供の方法について表す画像

出典:厚生労働省┃「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」をもとに弊社で作成

また、2025年4月より「介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認」も義務化され、雇用環境整備のための措置も講じる必要があります。厚生労働省より「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」が公開されているため、施行後の詳細を確認しましょう。

ポイント解説

4月は各種法改正が目白押しです。規程を改定した場合は、従業員への周知も徹底しましょう。
育児・介護休業法の改正では「介護に直面する前の早い段階での両立支援制度等に関する情報提供」が義務化されます。2025年度に40歳に達する従業員をピックアップして、年度初めに説明会を開催したり、個別の面談や書面を交付したりすることをおすすめします。

また、高年齢雇用継続給付の支給率の縮小(15%→10%)や育児休業給付の延長申請時に必要な書類の追加などは、実務への影響が大きいと考えられます。従業員からの問い合わせに対応できるよう準備しておきましょう。
「育児・介護法改正」「雇用保険法改正」の具体的な内容や対応ポイントはこちらをご確認ください。

お役立ち資料

2025年にかけての人事・労務政策&法令対応完全ガイド〜期日がわかるやることリストつき〜

5月の実務対応

領域
対応内容
対応期限

労務

障害者雇用納付金の申告納付、障害者雇用調整金等の申請

5月15日(木)

ポイント解説

障害者雇用納付金の申告納付があります。従業員データの取りまとめと申告書の作成ルールを確認しましょう。また、各市町村から各人別の特別徴収税額の通知書が送られてくるため、6月からの特別徴収に備えましょう。

6月の実務対応

領域
対応内容
対応期限

労務

労働保険の年度更新手続き

6月2日(月)〜7月10日(木)

賞与支払届の提出

賞与支払日から5日以内

高年齢者雇用状況報告書・障害者雇用状況報告書の提出

6月2日(月)〜7月15日(火)

税務

新年度・個人住民税の特別徴収の開始

特別徴収した月の翌月10日

ポイント解説

6月は「労働保険の年度更新手続き」と「高年齢者・障害者雇用状況報告書」の申告が可能になります。7月は短い期間で社会保険料の算定基礎届を作成しなければならないため、先にこれらの手続きを進めましょう。

また、4月に昇給を実施し、給与を改定した場合、社会保険料の随時改定(月額変更)に該当する可能性があります。届出の要否を確認しましょう。

7月の実務対応

領域
対応内容
対応期限

労務

健康保険・厚生年金の「算定基礎届」の提出

7月1日(火)〜7月10日(木)

労働保険料の年度更新手続き

6月2日(月)〜7月10日(木)

賞与支払届の提出
賞与支払日から5日以内

高年齢者雇用状況報告書・障害者雇用状況報告書の提出

6月2日(月)〜7月15日(火)

税務

納期の特例による源泉徴収税額の納付

7月10日(木)

ポイント解説

算定・年度更新と、社会保険・労働保険関係の業務が集中する時期です。申告期限に遅れないよう、計画を立てて進めましょう。夏季賞与に対する「賞与支払届」の提出も必要です。

8月の実務対応

ポイント解説

暑さによる疲労がたまりやすい時期です。労務管理の一環として、熱中症対策をしっかり実施し、年次有給休暇の取得を促しましょう。また、7月の繁忙期に漏れてしまった手続きがないか、確認しましょう。

9月の実務対応

領域
対応内容
対応期限

労務

新標準報酬月額の確認と通知

届き次第順次

ポイント解説

年金事務所や健康保険組合から、新しい標準報酬月額の通知書が届きます。給与システムへ忘れずに登録しましょう。

10月1日に育児・介護休業法の改正が予定されており「柔軟な働き方を実現するための措置」を講ずる義務が生じます。会社が選んだ複数の措置について、施行より前に過半数労働組合がある場合は過半数労働組合、過半数労働組合がない場合は、過半数代表の意見聴取の機会を設けることが定められています(※)。9月中に意見聴取を済ませる必要があるため、スケジュールに注意しましょう。

(※)出典:厚生労働省┃「令和6年改正育児・介護休業等に関するQ&A(令和6年11月1日時点)

10月の実務対応

領域

対応内容
施行開始

法改正

育児・介護休業法

妊娠・出産の申し出時や子が3歳になる前の、仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務化

10月1日(水)から

3歳以上小学校就学前までの子を養育する労働者に関する「柔軟な働き方の選択的措置」

10月1日(水)から

領域

対応内容
対応期限

労務

地域別最低賃金の改定

10月1日(水)から

労働保険料(第2期分)の納付

10月31日(金)

法改正の重点解説

育児・介護休業法

2025年10月からは、妊娠・出産の申出後2回の個別の周知・意向確認が原則必須となり、個別の意向聴取と配慮を行うことが義務化されます。

育児・介護休業法にて2025年10月からは、妊娠・出産の申出後2回の周知・意向確認が原則必須となり、配慮を行うことが義務化されることを表す画像

出典:厚生労働省(2024)「令和6年改正法の概要(政省令等の公布後)」/「令和6年改正育児・介護休業法に関するQ&A (令和6年11月19日時点)」ををもとに当社作成

また、2025年10月からは、柔軟な働き方の選択措置が義務化されます。
事業主は下記から2つ以上を選択し、従業員はその中から1つを選択できます。

  • 始業時刻などの変更
  • テレワークなど(月に10日以上、時間単位で取得可能)
  • 保育施設の設置運営など
  • 新たな休暇の付与(年に10日以上、時間単位で取得可能)
  • 短時間勤務制度
2025年10月からは、柔軟な働き方の選択措置が義務化されることを表す画像

(出典)厚生労働省(2024)「令和6年改正法の概要(政省令等の公布後)」をもとに当社作成

ポイント解説

毎年10月は、地域別最低賃金が改定されています。近年は最低賃金の大幅引き上げが続いており、時給単価が最低賃金を割っていないかの確認検証が必要です。

また、「3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者に関する、柔軟な働き方を実現するための選択的措置」では、テレワークや短時間勤務制度など複数の措置を講じる必要があります。自社の状況や職場のニーズに合った措置を検討しましょう。

お役立ち資料

2025年にかけての人事・労務政策&法令対応完全ガイド〜期日がわかるやることリストつき〜

11月の実務対応

ポイント解説

厚生労働省では毎年11月、「過重労働解消キャンペーン」を実施しています。昨年も、長時間労働が行われているとみられる事業場に対し、重点監督を行っています。監督指導は一見すると法的拘束力のない行政指導ですが、是正勧告後の対応を怠ると司法捜査という重大な事態に発展しかねません。この機会に、自社の労務管理を見直すようにしましょう。

12月の実務対応

領域
対応内容
対応期限

労務

賞与支払届の提出

賞与支払日から5日以内

税務

年末調整


ポイント解説

年末調整をスムーズに進めるため、従業員への案内は早めに実施しましょう。翌年1月の税務処理に向けて準備をしておくことも大事です。

2025年は法改正対応以外に「監督指導」対策の徹底を

2025年は「働き方」にまつわる法改正が目白押しですが、労働環境に関する行政監督が厳しくなってきていることにも注意が必要です。労働基準監督署は、同種の違反事実が繰り返し認められた事業所には、是正指導を挟まずに即時書類送検を行うなど、昨年から運用を厳格化しているようです。

2025年も、長時間労働を中心とした労働時間の違反について、厳しい態度で臨むことが予想されます。毎月の残業時間だけでなく、36協定における特別条項の発動プロセスや健康福祉確保措置の実施など今一度、労務管理体制と労働環境を見直しましょう。

※本稿は2024年12月24日時点での情報をもとに作成しております。

お役立ち資料

2025年にかけての人事・労務政策&法令対応完全ガイド〜期日がわかるやることリストつき〜

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