【テンプレート付】入社承諾書とは? メリット、作り方と注意点を解説
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入社承諾書は、内定者の入社意思を確認し、企業との雇用関係の成立を明確にする重要な書類です。本記事では、入社承諾書の法的位置づけや実務上の活用方法、作成・運用時の注意点について、社会保険労務士 吉田 崇氏監修のもと解説します。
入社承諾書とは
入社承諾書は、企業からの採用内定に対して、内定者が入社の意思を表明する書類です。一般的には、企業が提示した労働条件を確認・承諾する意思表示としても機能します。
企業が書類を発行して入社希望者に送付し、必要事項を記載したうえで返送してもらいます。なお、入社承諾書は法律上の義務ではなく、企業が任意で実施するものです。
入社承諾書の法的効力
採用内定通知と入社承諾書の取り交わしにより、始期付解約権留保付労働契約が成立します。この契約では、労働契約の始期が入社日と定められ、それまでのあいだ、一定の解約権が保持されます。ただし、やむを得ない理由がない限り、企業からの内定取り消しは無効とされています。
入社誓約書・内定誓約書との違い
企業によっては入社承諾書ではなく「入社誓約書」や「内定誓約書」という書類名の場合もありますが、意味合いとしては入社承諾書と同義です。
入社承諾書を交わすメリットと注意点
メリット
入社承諾書を取り交わし、口約束ではなく、書面で入社意思を確認することにより、内定辞退のリスクを低減する効果が期待できます。また、入社承諾書によって労働契約の成立時期が明確になり、双方の権利義務関係が整理されます。さらに、労働条件の相互確認や入社準備の進捗管理にも役立ちます。
注意点
書面を取り交わすだけでは内定辞退を法的に完全に防ぐことはできません。民法627条1項により、入社日の14日前までであれば内定辞退が認められています。一方で企業は相応な理由がない限り、内定取り消しはできません。また、過度に拘束的な条項を設けると法的問題となる可能性があるため、内容には慎重な検討が必要です。たとえば、違約金条項や過剰な補償義務を課す内容は無効とされる場合があります。
入社承諾書の作り方
入社承諾書には、入社予定日や配属予定部署といった基本情報に加え、提示された労働条件への同意を示す文言を記載します。また、入社までの連絡方法や必要な手続きについても明記することで、入社までのプロセスを明確にします。
(1)必要な記載項目
- 企業名
- 企業の代表者名
- 企業の所在地
- 入社予定日
- 内定を承諾した日付
- 入社を承諾する旨の意思表示
- 内定を取り消す理由
- 当人の氏名欄
- 当人の捺印欄
※内定を承諾した日付は空欄にして、入社希望者自身に入力してもらいましょう。
(2)任意の記載項目
- 保証人名
- 保証人の捺印欄
- 入社承諾書の返送期日
- 内定取り消し時の異議申し立て不可の確認
- 無断での入社拒否の禁止
- 指示された書類の期限内返送
- 住所変更時の連絡義務
- 提出書類変更時の連絡義務
入社承諾書作成時の注意点
(1)内定取り消し条項について
入社承諾書を作成する際は、必ず「内定を取り消す理由」を含めるようにしましょう。内定取り消し理由は客観的に合理的であり、相当な処分であることが認められる必要があります。具体的な内定取り消し理由としては以下のようなものが考えられます。
- 学業に関する理由:単位取得不足など卒業要件を満たせない場合
- 資格に関する理由:業務遂行に必要な法定資格が取得できない場合
- 健康上の理由:健康状態が業務遂行に重大な支障をきたし、合理的配慮を講じても解決が困難な場合
- 経営上の理由:会社の経営状態が著しく悪化し、新規採用が不可能となった場合
- 信用・信頼に関する理由:重大な法令違反や、提出書類の重要な虚偽記載が判明した場合
ただし、これらの理由に該当する場合でも、個別具体的な状況に応じて、内定取り消しの妥当性を判断する必要があります。
(2)労働条件の明示
入社承諾書とあわせて、労働条件を明示する必要があります。とくに、就業場所や従事する業務、労働時間、賃金などの重要な労働条件については、書面での明示が必須です。
入社承諾書テンプレート
以下は入社承諾書とそれを送る際の添え状のテンプレートです。あくまで一般的なもので、自社に合わせた調整をおすすめします。
入社承諾書の取り交わし
(1)書類の送付方法
入社承諾書は通常、採用内定通知後1〜2週間以内に取り交わすことが望ましいです。送付方法には以下の2つがあります。
- 書面による方法:紙の書類を郵送(紛失を防ぐために書留郵便を推奨)
- 電子的方法:電子契約サービスを利用(電子署名法に基づく適切な運用が必要)
(2)返送期限の設定
返送期限は、内定者が十分に内容を確認し、必要に応じて相談できる時間を確保する必要があります。一般的には以下の点を考慮して設定します。
- 書類到着から1〜2週間程度の猶予期間
- 年末年始やゴールデンウィークなど長期の休暇期間は除いて期間を設定
入社までのフォロー体制の構築
入社承諾書の取り交わしは内定辞退を減らす施策として有効ですが、より重要なのは入社までの密なコミュニケーションです。具体的には、以下のような取り組みが効果的です。
- 定期的な状況確認と情報提供
- 入社前研修やオリエンテーションの実施
- 配属部署との交流機会の設定
- 各種手続きの進捗管理
SmartHRの採用管理機能を使えば、応募から内定までの情報を一元管理でき、内定者とのコミュニケーションに注力できます。また、選考中にSmartHRに蓄積された最新の応募者情報が、入社する際はそのまま入社手続き・雇用契約にも活用できるため、人事担当者と応募者双方の利便性向上に寄与できます。
SmartHRの採用管理機能の詳細は以下の資料をご参照ください。
Q1. 入社承諾書は法的に必須の書類ですか?
法令上の必須書類ではありませんが、労働契約の成立を明確にするほか、内定辞退のリスク低減をはじめ、入社準備を円滑に進めるために重要な書類です。
Q2. 入社承諾書を提出したあとの内定辞退は可能ですか?
入社承諾書を提出しても、やむを得ない理由がある場合は内定辞退が可能です。ただし、企業に対して誠実に説明を行い、速やかな申し出が求められます。
Q3. 電子契約での入社承諾書の取り交わしは有効ですか?
電子署名法に基づく適切な方法で行えば有効です。ただし、労働条件明示の一部については書面での交付が必要な場合があります。
Q4. 入社承諾書に記載した内容の変更は可能ですか?
労働条件などの変更は、合理的な理由があり、内定者の同意を得た場合に可能です。ただし、内定者に不利益な変更はより慎重な対応が必要です。