キャリア採用とは?中途採用との違いやメリット、進め方、成功のポイントまで解説
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目次
DXやグローバル化の進展により、企業が必要とする専門性は多様化・高度化しています。従来の新卒一括採用と社内育成だけでは対応が難しいなか、キャリア採用の重要性が高まっています。
今回はキャリア採用を成功させるために必要なポイントや具体的な進め方について解説します。
キャリア採用とは?即戦力人材を確保に必要な採用
キャリア採用は、特定の職務において実践的な経験や知識、スキルをもつ人材を採用する手法です。一般的に実務経験を要件とする事が多く、新卒採用や「未経験者可」とする採用はキャリア採用とは呼びません。
即戦力人材の確保がキャリア採用の最大の目的のため、ジョブディスクリプションにもとづき必要なスキル経験値を定義します。
キャリア採用と中途採用の違い
中途採用は、業界や職種の経験の有無を問わず「就業経験があること」を要件にした採用であり、第二新卒者や業種・職種の未経験者も含まれます。
キャリア採用は、より実務経験や専門性を重視します。自社と同じ業界あるいは職種の経験が必須となります。以下に主な違いをまとめました。
中途採用 |
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キャリア採用 |
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キャリア採用が重要視されている背景
(1)労働市場の構造変化、転職の一般化
終身雇用制度の崩壊や働き方の多様化により、自分に適した就労環境や待遇、キャリアアップを目指す転職は珍しくありません。
さらに転職エージェントやオンライン求人サイトなどの転職支援サービスが充実し、転職活動を後押しする環境も整っています。
実際に2023年12月の総務省統計局の調査では、就業者のうち転職等希望者の人数は過去最高になりました。一方で実際に転職する人の割合は増えていない状況から、転職を希望しているが実行できていない人の増加している状況もみえてきます。
(2)企業の人材ニーズの変化
デジタルトランスフォーメーション(DX)やグローバル化により、従来の新卒一括採用・社内育成だけでは対応できない専門性が求められるようになりました。とくにIT・デジタル人材、グローバル人材、専門職種において、即実践的な職務遂行能力をもつ人材へのニーズが高まっています。
(3)採用戦略の変化
従来の新卒一括採用中心から、必要なときに必要なスキルをもつ人材を採用する通年採用へとシフトする企業が増加しています。
実際にHR総研の調査でも、企業規模に関わらずキャリア採用の実施企業が増加傾向にあります。
(出典)HR総研『キャリア採用に関するアンケート 結果報告』
キャリア採用のメリット
(1)即戦力となる人材を獲得できる
キャリア採用による即戦力人材の獲得は、事業成長と組織力の向上に貢献します。新規事業や専門領域における競争力強化はもちろん、外部の知見やスキルが社内に加わることによる組織の生産性向上も期待できます。
(2)自社に新しい視点や知見をもたらしてくれる
キャリア採用を通じて異なる企業文化や業務プロセスを経験した人材が加わることで、既存の業務フローや組織文化を客観的に見直すきっかけとなります。また、業界内のネットワークや専門的な知見を活用できる可能性もあります。
(3)事業の成長スピードが上がる
キャリア採用者は、関連する業務経験を活かすことで比較的早期の戦力化が期待できます。とくに専門性の高い職種や、即時の対応が求められる領域において、事業推進のスピードアップに貢献します。
(4)素早く組織力を向上できる
既存の経験やスキルをもつ人材の採用により、組織の課題に対して迅速に対応できます。ただし必ずしも教育コストの削減を意味するわけではなく、自社独自の業務プロセスや文化への適応のための支援は必要です。
キャリア採用のデメリット
(1)社風に合わない可能性がある
キャリア採用者は、過去の経験や価値観をもっているため、自社の業務プロセスや組織文化との違いに戸惑う可能性があります。これは必ずしもマイナスではありませんが、相互理解と調整のための時間と努力が必要となります。
(2)採用コスト・人件費が高くなりやすい
キャリア採用では、求める専門性や経験に見合った人材を見つけるために、専門的な採用サービスの利用が必要となる場合があります。また、業界水準や経験に応じた給与設定が求められるため、人件費の増加を考慮する必要があります。
(3)キャリアアップのための離職リスクがある
キャリア採用者は、自身のキャリア形成に対する意識が高い傾向にあるため、成長機会を求めて転職を検討する可能性があります。適切なキャリアパスの提示や成長機会の提供など、戦略的な人材育成・定着施策が重要となります。
キャリア採用が多い職種
ITエンジニア
クラウド、AI、データサイエンスなど、技術革新が著しい分野では、実務経験を持つエンジニアへの需要が高まっています。
営業職
とくにBtoB領域において、商流や業界知識の深さが取引の成否を左右することが少なくありません。商談・提案プロセスが複雑化するなか、業界特有の商習慣への理解や既存の取引関係を活用できる経験者の需要が高まっています。
人事・財務・法務
管理部門系の職種は、高度な専門性と実務経験の両立が求められることから、キャリア採用のニーズが高まっています。
マーケティング・デジタルマーケティング
デジタルマーケティングの領域では、データ分析・活用の実践経験や専門知識を持つ人材の需要が急速に拡大しています。とくにデジタル広告の運用経験やマーケティングオートメーションツールの活用経験、投資対効果の測定・改善の実績を持つ人材は、即戦力として高い需要があります。
キャリア採用の進め方8ステップ
(1)採用戦略の策定
中期経営計画との整合性を確認しながら、組織の現状を分析します。人員構成やスキルマップをもとに、補完的採用か戦略的採用かを明確にし、必要な採用予算と時期を設定します。経営層と人事部門が中心となり、全社的な視点で戦略を立案することが重要です。
関連記事:https://mag.smarthr.jp/hr-management/employment/saiyoukeikaku/
(2)求める人物像の要件を整理する
先述した人物像の洗い出しをもとに、必要条件を絞り込みます。職務記述書の作成では、必須要件(MUST)、歓迎要件(WANT)、不適格要件を明確に定義します。評価基準には技術的スキル、行動特性、組織適性の観点を含め、採用部門の責任者と協議しながら具体的な判断基準を設定します。
(3)採用チャネル、募集方法を選定する
一般的な募集方法には以下があります:
- 求人サイト
- 転職エージェント
- 企業のウェブサイト
- SNS・ネットワーキング
- ヘッドハンティング
キャリア採用では即戦力人材が求められるため、スカウト型採用や社員の紹介(リファラル採用)なども効果的です。
各チャネルの特性や利用者層、求人広告の掲載方法、掲載費用などを理解し、実績などを見ながら、ターゲットとする候補者の属性や職種に応じて、最も効果的なチャネルを選択していきましょう。
(4)採用情報の発信
職務内容と期待する役割を明確にした求人要項を作成し、処遇条件も具体的に提示します。同時に、組織文化や働き方、キャリア開発機会、事業の成長性など、企業の魅力を効果的に発信することで、より質の高い応募者の獲得を目指します。
(5)採用選考をの実施(書類選考〜面接)
応募書類をもとに経験やスキルセットが求める要件と合致しているかを確認します。書類選考通過後の面接は2~3回が一般的です。
一次面接では、性格や気質、自社の価値観との相性を確認。二次面接は部門管理者も関わって、技術的なスキルや業務遂行能力を評価する形式が多いです。
入社後のギャップやミスマッチを防ぐために、自社のポジティブな面だけをではなく、ネガティブな面も含めて実態に即した情報を候補者に伝えることが大切です。
(6)内定・入社手続きをする
合格者に内定を出し、給与、福利厚生、勤務開始日などの詳細が含まれる内定条件や入社時期を調整し、必要書類の準備・案内を進めます。
入社までの期間は定期的なコミュニケーションを通じて、入社への期待感を維持しながら、円滑な入社準備を支援します。
(7)オンボーディングを実施する
入社後のスムーズな戦力化に向けてオンボーディングプログラムを実施します。オリエンテーションや社内研修、1on1ミーティング、業務指導などが含まれます。
業務で関わる予定の社員などと交流できる機会を設けるのも効果的です。良いスタートを切ることで、新入社員の定着率が向上し、早期離職を防ぐことができるでしょう。
(8)定着支援の実施
定期的な1on1ミーティングを通じて、期待役割の確認や課題の早期発見、キャリア開発を支援します。評価とフィードバックを通じて成果を可視化・改善点を共有し、長期的な成長と定着を促進します。
キャリア採用を成功させる5つのポイント
(1)適切な採用基準の設定
期待する成果と必要な期間を明確に定義し、現実的な採用基準を設定します。必須のスキルと育成可能なスキルを区分し、組織への適応性も考慮した総合的な評価基準を整備します。
とくに期待する成果については具体的に定義し、戦力化までのタイムラインを現場と合意しておきましょう。これにより採用後に現場から過度な期待が課される可能性を防ぐことができます。
(2)スキルや経験、カルチャー適性の両方を評価する
キャリア採用では、職務適性と組織適性の両面からの評価が不可欠です。応募者の人柄やコミュニケーションの特性なども総合的な判断が重要です。
(3)求職者が求めている情報を積極的に発信する
採用成功の鍵は相互理解です。WebサイトやSNSなどを活用し、求職者の知りたい情報を積極的に発信しましょう。
募集職種や求める知識・スキル、選考方法といった採用に関する情報はもちろん、社内の雰囲気や従業員の1日の流れなど具体的に業務をイメージしてもらえる情報も有効です。
(4)計画的なオンボーディング
入社後はキャリア採用者の定着にとって重要な期間です。業務環境の整備や組織文化への慣れ、関係構築の促進などを後押ししましょう。
職場に適応した後も、懇親会や定期的な1on1などをとおして継続的にフォローしましょう。以下がオンボーディング施策の例です。
- 体系的な業務プロセスの説明
- 定期的なフィードバックの実施
- 中期的な目標設定とキャリア開発計画の策定
- メンター制度の活用
(5)働きやすい環境を整える
キャリア採用に応募する人材は、働く制度や環境をシビアに評価します。競合他社と差別化できる制度・環境を整えておくことで、より優秀な人材が集まりやすくなります。
キャリア採用の実践事例
NECの事例:キャリア採用改革の推進
NECは2017年から大規模なキャリア採用改革を開始しました。当時55人だったキャリア採用数を2022年度には600人規模まで拡大し、新卒採用との比率を1:1にまで高めています。
改革は、業績回復と企業変革への危機感から始まりました。まず経営層の外部招聘から着手し、その後、専門チーム「タレント・アクイジション」の設置により全職種での採用を本格化。さらに、ジョブ型人材マネジメントの導入と連動させることで、組織全体の変革へとつなげています。結果として、多様な人材の活躍を促進し、組織カルチャーの変革にも寄与しています。
(参考)中途採用は今年度600人、5年で10倍増 NEC本気の企業変革、ジョブ型も加速
スパイダープラスの事例:相互理解、オンボーディング
スパイダープラスでは「不遜なくモノごとに取り組み成長できる人材」という明確な採用基準を設定し、カルチャーフィットを重視しています。面接では定型の質問は避け、候補者のキャリアを深掘りする対話を通じて相互理解を図ります。
入社後は3日間の充実したオリエンテーションを実施。「会社理解」「業界理解」「実務準備」の3つの軸で構成し、座学だけでなく実践的なワークも取り入れることで、早期の活躍を支援しています。また、6か月間のオンボーディング期間を設け、定期的な面談を通じて丁寧なフォローを実施しています。
SmartHRの採用管理で選考〜入社後のフォローまで一元管理
キャリア採用は、変化の多いビジネス環境において即戦力となる人材を採用し、事業成長を加速させる重要な取り組みです。
優秀な人材に即戦力として活躍してもらうためには、単に採用活動のみに注力するのではなく、オンボーディングや入社後のフォローも含めた幅広い戦略を構築することが大切です。
タレントマネジメントシステムのSmartHRの採用管理機能では、候補者や選考過程の情報を一元化できるだけでなく、入社前後の研修や育成までも、オンラインで一元管理できます。
SmartHRの採用管理について詳しく知るボタン今後は、選考フローの設定と評価者のアサイン機能を開発し、評価者が面接結果を直接入力できるようになる、選考における評価をタレントマネジメントの他機能に連携するなどの機能拡充も予定しています。
※本件は予定であり、機能追加しない可能性もあります。