「導入して終わり」ではない。HRテクノロジーを最大限活用するためのポイント
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こんにちは。クラウドツールの導入支援をしている株式会社BN Smart Back Office 代表の田中 宏征です。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、経産省の定義によれば、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とされています。
わかったような、わからないような(笑)。
要するに、ITを利用して企業のビジネスモデルを変える、あるいは、業務そのものを変更して勝てる企業にするということです。
本稿では、クラウドソフト導入の専門家の視点から、クラウドソフトを用いてDX推進する上でのポイントを解説いたします。
なぜクラウドソフトを導入しても、IT活用に苦労してしまうのか?
弊社では、IT化を進めているたくさんの企業をみていますが、ITの活用に成功されている会社はまだまだ多くありません。ソフトをいろいろ導入しているにもかかわらず、うまく使いこなせていないケースも見られます。
どうしてそうなってしまうのでしょうか。
それは、必要と感じたシステムを「場当たり的に導入」している事例が多いからです。「うちはIT化が進んでいる」と自称している企業でも、システムはたくさん導入しているけれども、それぞれが個別に動いていて、本当に効率化できているのかわからないパターンもよく見かけます。
DXの進め方はいろいろあると思いますが、私どもがクラウドソフトを導入する際に気をつけていることを解説いたします。
【1】システム同士の連携
オフィスワークのほとんどの時間はPCに向かっているかと思いますが、その具体的な中身は何でしょうか。限られた就業時間を、Excelや会社の業務システムへのデータ入力、システムから別システムへのデータのコピー&ペーストに費やしていないでしょうか。
これももちろん業務ではありますが、付加価値を生んでいるかというと少し疑問が残ります。DX推進とは、ITによって業務効率を上げ、より付加価値のある業務に集中することですから、この単なる入力作業を止める方法を探る必要があるのではないでしょうか。
システムへの入力は、PCからのハンド入力 → CSV連携 → API連携 → RPA連携と、どんどん進化しています。この中でもっとも時間を必要とするのは、もちろんハンド入力ですので、ハンド入力にかかる時間を極限まで少なくすることが重要です。
そのためには、システムへのデータ入力、あるいはシステム間のデータ連携を、ハンド入力からCSV連携やAPI連携に移行していく必要があります。
簡単な例を挙げましょう。勤怠管理から給与計算までを、紙のタイムカードを利用して打刻、人事担当者がそれをExcelに入力して残業時間を集計、その情報を給与計算システムに入力して、給与計算を実施する流れの企業が未だにたくさんあります。
弊社が人事回りのクラウドソフトの導入支援をする前は、多くの企業でこのような流れです。このやり方ですと、タイムカードの打刻情報を、Excelと給与計算システムに2回入力しています。
クラウドソフトを利用すれば、出退勤の打刻はFelicaカードや生態認証でタッチするだけ。残業時間は自動的に集計され、給与計算システムにはAPI連携を利用して一瞬で取り込めます。これなら、面倒なハンド入力は不要です。
SmartHRなどのクラウド人事労務ソフトは、各種クラウドソフトとAPI連携できますし、API連携できない情報はCSV連携で対応できます。これらの機能を可能な限り利用するようにしましょう。
そもそも、ツールを選択する際には、API連携やCSV連携がムリなく対応できるかどうかをひとつの基準にするとよいでしょう。弊社では、CSV連携以上にAPI連携できるかどうかをとくに重要視しています。
【2】一旦入力された情報はとことん連携しよう
「入力業務が非効率を生む」と説明しましたが、一旦入力された情報はとことん使いきるようにしましょう。
たとえば、社員が入社した時にSmartHRで新入社員の情報を取得したのならば、その情報を勤怠管理システムや給与計算システムにも連携し、同じ情報を再入力しなくていいようにするべきです。
同じように、経費精算のためのクラウドソフトを利用するのであれば、その情報を給与計算システムにAPI連携し、給与支給時に立替金の精算を終了できるようにする。あるいは、経費精算のデータをAPI連携し、会計システムに連携するといったことも簡単にできます。
入力された情報を、どこまで使いきるか。逆に言えば、情報が1つのシステムでのみ利用されているようなことがないかを定期的にチェックしておくことが重要です。
【3】利用するシステムのグランドデザインを描こう
入力された情報を活かし切るようにするためには、会社の利用するシステムをどのように連携させるかの「グランドデザイン」を描くことが重要です。
今、利用しているシステムを棚卸ししていただき、システムへのインプットがどのように実施されているのか、アウトプットの情報が何なのかを点検してみてください。
業務フローの後工程のシステムに対して、ハンド処理がなされていませんか? CSVで連携していませんか? もしそうであれば、これらをAPI連携することで、自動的に連携できる余地がないか検討しましょう。
前述した「PCに向かって作業をしているだけ」の時間をどれだけ減らせるかがポイントです。1つのシステムがポツンと取り残されているようなことが起きていれば、そこが改善ポイントの1つになります。
また各企業においては、「基幹システム」といわれる企業の根幹となる業務の管理システムが導入されていることが多いです。製造業における生産管理のためのシステムなどがこれに当たります。
基幹システムは、その他のシステムとAPI連携できるケースはめったにないと思います。会計や給与などのバックオフィスに関連するシステムとは違って、汎用的ではない分、API連携する意義が見つけにくいからです。
とはいえ、今どきのシステムならばCSVでのデータ出力はできるでしょう。CSVデータが取り出せるならば、そのデータを、会計システムなどの後工程のシステムに取り込む際にRPAを利用すれば自動化できる余地があります。
弊社がクラウドソフトの導入支援を実施する際はまず、「動かせないシステムは何なのか」を確認します。全てのシステムをまるごと入れ替えるのは現実的ではありません。ですから、動かせないことを前提にしなければいけないシステムを所与の条件として、その周りをいかに効率化していくかを考えて、システム全体のグランドデザインを描くようにしています。
【4】現在の業務フローにこだわらない
クラウドソフトを導入する際には、既存のある業務を自動化、効率化することを目指していると思います。それはそれで重要ですが、導入前には一旦立ち止まり、業務フローを変更することでさらに効率化できることがないかを確認してみてください。
従来、クラウドソフトがないことを前提に組み上げられた業務フローが、業務フローを見直した上でクラウドソフトを導入することでさらに効率的な業務フローになるケースもあると思います。
特に、最近のクラウドソフトは内部統制としての承認機能がしっかりしているツールが多いです。一定の承認がないと次の業務に移行しないようになっているので、その機能を積極的に利用することで、今までよりも簡単に業務を流せることがあります。クラウドソフトの機能を積極的に利用した業務フローの設計をぜひ検討してください。
また、クラウドソフトは、低料金である一方で、各企業の特性に合わせたカスタマイズができないことが多いかと思います。たとえば、給与計算は、各企業独自の手当が設定されていることがありますが、その全てを給与システムが対応できるわけではありません。
そのような場合は思い切って、クラウドソフトが処理しやすい形に、そもそものルールややり方を変えることも検討してみてください。
クラウドソフトを効率的に使いこなすためには、API連携による自動化が重要と前述しました。会社独自のルールがあることでハンド処理が介在し、結果的にAPI連携ができず、ハンドでシステム間のデータ接続をするとなったら効率化の効果も半減してしまいます。
クラウドソフトの導入を機に、変えられることは変えて、さらなる効率化のための仕組みづくりを検討してください。
私どもがクラウドソフトの導入を支援する際、企業規模が大きく業務フローの改善も併せて実施するような場合には、システム間をどのようにデータが流れ、どこで誰がどのようなチェックを実施しているかを「業務フローチャート」で見える化しています。
業務フローチャートを書くことで、チェック漏れのリスクが顕在化し、また、関与する社員の皆さんが全体像を理解できるようになるためです。
ぜひ皆さんも、システム導入の検討をする際には、業務フローチャートを作成するようにしてください。
おわりに
以前は、少し規模の大きな会社になるとERPとして千万円単位のシステムを導入することが当たり前でした。ところが、今ではクラウドソフトを組み合わせることで、同様の機能を低コストで持たせられます。
しかも、クラウドソフトの良いところとして、以下の2点が挙げられます。
- バージョンアップによる機能向上が頻繁にあること
- 多くのツールがサブスクリプションモデルであること
さらには、定期的なアップデートがあるうえに、使った分だけ利用料を支払うので、ERPでは必要な多額の初期費用がかからないことも特徴と言えます。
大規模なERPを導入してしまうと、初期費用が償却されるまで、他のシステムに乗り換えられないといった懸念点がありますが、クラウドソフトならさらに便利なサービスがリリースされた場合の乗り換えのハードルも低くなっています。
DXは大企業だけのものではありません。是非、中小企業の皆さんも、クラウドソフトを組み合わせてDXを加速させてください。