入社手続きから従業員定着化。エンゲージメント向上5つのステップ【月刊SmartHR セミナーレポート】
- 公開日
この記事でわかること
- 入社前からSmartHRの操作に慣れてもらう体制づくりのメリット
- 人事・労務業務を仕組み化し、複数名で施策を動かすヒント
- 医療・福祉業界で事業を展開する株式会社ドットラインの従業員定着化の具体的な取り組み
目次
SmartHRのアップデート情報や、季節ごとの人事・労務イベントに合わせた機能の使い方、活用事例などを月に1回、1時間に凝縮し、オンラインセミナー形式でお届けしている「月刊SmartHR」。
2023年12月13日(火)に開催された月刊SmartHR12月号では、SmartHRを活用した「入社手続き・雇用契約」、「文書配付機能」から「従業員サーベイ機能」を活用した従業員定着化までの一連の流れを、医療・福祉業界で事業を展開する株式会社ドットライン 富澤氏にお話しいただきました。
株式会社ドットライン 人事部 組織開発課
広告営業、役員秘書を経験し、前職では外資系IT企業でバックオフィス業務全般に約13年従事。
2022年4月にドットラインへ入社し、人事部 組織開発課で人事制度の構築などを推進。
300名から1,200名超え。組織拡大を背景に人事・労務業務をペーパーレス化
株式会社ドットラインは、2014年の創業から、「地域の“困った”を“ありがとう”に変える」をスローガンに、千葉県を拠点に医療・福祉事業を展開。訪問看護・訪問リハビリ事業をはじめとした多様な事業を通じて、地域が抱える「困った」から日本が抱える社会課題へ目を向けるべきと考えています。
現在、グループ全体で従業員数は1,200名を超え、事業所数も146箇所へと拡大しております。
さて、「入社手続きから従業員定着化」についてご紹介する前に、弊社がSmartHRを導入したきっかけについてお話しします。
組織規模が拡大していくなかで、従業員数が300名を超えたころから、紙でのやり取りを中心とする仕組みに限界を感じ、SmartHRを導入するに至りました。
現在、グループ全体9法人で利用しており、「HRストラテジープラン」に加え、オプションの「文書配付機能」を契約しています。
本日は弊社のSmartHRの「文書配付機能」を活用した入社手続きから、「従業員サーベイ機能」を活用した従業員定着化について紹介します。
SmartHR上での入社手続き進行フロー
具体的に、入社手続きのスケジュールや流れを説明します。
採用決定後、入社10日前に、従業員アカウントを作成します。入社予定者の必要情報を、採用課から労務課へ引き継ぎ、SmartHRへ流し込みます。以後の入社手続き対応は労務課が担当になります。
入社9日前に雇用契約書や入社時の覚書などを作成し、「文書配付機能」にて入社予定者へ送付し、電子署名をしてもらいます。その後、入社時に必要な書類の提出、入社後の通勤経路の申請をSmartHR上で進めてもらいます。
なかにはスマートフォンの操作に不慣れな方もいらっしゃいます。その場合、入社前に面談を実施し、対面でサポートしています。スマートフォンをお持ちでない場合、面談時に会社PCを使い、SmartHRの操作サポートにも対応しています。
無事入社日を迎え、SmartHR上で行政手続きを終えれば、労務課による一連の入社手続きが完了します。
入社予定者に早期にSmartHRの操作に慣れてもらう2つの理由
ご覧いただいたとおり、入社予定者には入社日以前からSmartHR上で入社手続きが進行できるフローを明確に設定しています。そこには2つの理由があります。
理由1:入社後の年末調整や人事評価、アンケート回答にスムーズに対応してもらうため
1つ目のポイントは、「初期段階からSmartHRに触ってもらう」です。
毎月の給与明細の受領や、各種申請、年末調整、評価入力やアンケート回答など、入社後は多岐にわたってSmartHRに触れるため、慣れてもらう必要があります。
そのため、入社前からSmartHRに触れる機会の創出やサポート、操作に関するマニュアルの整備を進め、入社後にはスムーズにSmartHR上での各種手続きや対応ができるような体制を整えています。
理由2 :業務効率化だけでなく、紛失リスク回避が期待できるペーパーレス化
2つ目のポイントは、「あえて紙でのやり取りを極力少なくする」です。
入社時の提出書類は、SmartHR上で提出をお願いしています。メリットとして、以下が挙げられます。
- 提出物が本社へ届くまでの時間短縮
- 書類保管場所の削減
- 書類紛失のリスク回避
提出書類を紙ベースで管理した場合、入社人数が増えると、保管する書類も増え、書類紛失などのリスクが高まります。さらなる規模拡大を目指す弊社にとっては、ペーパーレスによる業務効率化は重要なポイントです。
従業員エンゲージメント改善に取り組む背景
ここからはSmartHRの「従業員サーベイ機能」を活用した「従業員定着化」について紹介します。弊社が従業員エンゲージメント改善に取り組む背景・解決したい課題は3つありました。
- 定着率アップ
- 従業員のキャリア思考や従業員が保持する資格の把握
- 現場から降りてこない情報、または上長が拾えない情報を収集したい
続きまして、エンゲージメント改善のための組織体制です。エンゲージメント改善の取り組みは、組織開発課 組織制度チームが担います。各実施項目ごとに、担当制にしておりますが、作業ルールやマニュアルを作成し仕組み化することで、3名の間でジョブローテーションを可能な状態にしています。
具体的な従業員エンゲージメント向上施策の流れ
実際に弊社が取り組んでいる従業員エンゲージメント向上施策の流れを紹介します。
それぞれのフェーズについて具体例を用いて紹介します。
(1)方針決定
「方針決定」では、先述した「課題」に対して、具体的に何を実施していくかを決定します。
- 「定着率アップのための対策」 → 入社後アンケートや退職者アンケートを実施
- 「従業員のキャリア思考や保持する資格の把握」 → キャリアアンケートを実施
- 「現場から降りてこない情報、上長が拾えない情報の収集」 → 退職者アンケートや個別に設定したアンケートを実施
上記の各種アンケートにはSmartHRの「従業員サーベイ機能」を活用し、その回答結果をもとに、面談実施などのリカバリー施策を展開する方針を定めました。
なお、SmartHRユーザーのなかには、サーベイの設計・設定が難しそうと考え、活用を躊躇されている方もいらっしゃるかもしれません。「従業員サーベイ機能」にはプリセットサーベイというテンプレートが豊富に用意されているので、そのまま使用したり、少し編集するだけで、利用を開始できます。まずはプリセットレポートからはじめるのがオススメです。
(2)現状調査
「現状調査」では実際にサーベイを展開し、従業員から必要な情報を集めます。アンケートの回答率を上げるために、先述した「SmartHRの操作に慣れてもらう」だけでなく、「上長からの働きかけ」なども重要なポイントです。
「入社後アンケート」では、上長に相談できないことや不安に思っていること、採用面接時の話と比べてギャップがあるかなどの情報を収集します。
「退職者アンケート」では、定着率アップおよび、現場から降りてこない情報を収集するため、退職する「本当の」理由について情報収集します。
四半期ごとに実施している「キャリアアンケート」では、今後の働き方や、気になる他部署、または会社が考慮しておくべきプライベートでのライフイベントなどの情報を収集します。
たとえば、本人の管理職志望の有無によって、今後の担う業務領域や経験を考慮する必要があります。また、従業員個人のキャリア思考を知ることで、適切な人事異動や業務進行を阻害する要因を知るきっかけになります。
「キャリアアンケート」については、社内での認知度も上がってきており、かつ上長から部下へ回答を促す働きかけの効果もあり、回答率は99.9%となっております。
これに限らず、何かトラブルがあった部署に対し、個別でアンケートを作成し、展開する場合もあります。たとえば、人事部に届いたトラブル相談の事実情報を収集するために、同じ部署に在籍する従業員や、同じ上長の従業員を対象にして、アンケートを個別実施するケースもあります。
(3)分析・課題の特定
「分析・課題の特定」では実施したサーベイの内容から、解決すべきネガティブな回答を中心にピックアップし、解決すべき課題の仮説を立てます。今回は「入社後アンケート」と「退職者アンケート」の例を用いて紹介します。
「入社後アンケート」から、「採用面接で受けた業務内容と実際が異なる」と、回答があった場合は、「採用課が面接時に話している内容と実際の現場での認識の齟齬がある」などの仮説が立てられます。
「退職者アンケート」では、上長が人事部に提出している退職理由と本人が回答した「退職者アンケート」の退職理由に大きな違いがある場合は、マネジメントエラーが起きている可能性を疑います。
(4)打ち手を決める
「打ち手を決める」では、各アンケート回答から立てた仮説をもとに人事部の取り組みを工夫したり、該当部門を巻き込んだ改善アクションを定めたりします。
「入社後アンケート」でのネガティブな回答については、「採用面接時の対応改善」や「部門への仕組み化の提案」を実施しています。
マネジメントエラーによるものと判断できる場合は、アンケート回答者本人の了承を得たうえで、回答内容を責任者へ共有し、改善に向け一緒に対策を考えます。
また、アンケート回答者本人が希望する場合は、組織開発課との面談を実施します。回答内容の追加のヒアリングから、さらに具体的な打ち手を決めるケースもあります。
「退職者アンケート」で、マネジメントエラーだと判断できる回答があれば、回答者本人と面談にて、追加でヒアリングを実施し、課題の解像度を上げる必要があります。管理職側にも同様に面談を実施し、再発防止策を練ります。
部門内でトラブルだと判断した場合は、部門への仕組み化検討の提案や、実態調査を目的とした個別のアンケートを実施します。
また、アンケート回答者が退職を決断した背景が、異動によって解決できるケースもあります。「転職先が決まっていない」と回答した従業員については、本人のこれまでの取り組みや評価を確認し、他部署への異動を提案するのも有効な打ち手になります。
(5)効果測定・不測の洗い出し・ネクストアクション
最後に効果測定・不足の洗い出し・ネクストアクションの決定、実行をします。
アンケートは事実情報をどれだけ収集できるかがポイントです。
実施したアンケートで、組織開発課側が本当は収集したかった情報が得られなかった場合は、質問の文言や回答の選択肢を修正してブラッシュアップします。
たとえば、第1回目のキャリアアンケートで従業員の保有資格を収集する際、同じ看護師の資格でも、看護師と記入される方もいれば、正看護師と記入される方もいて、集計が難しいケースがありました。
よって、第2回目からは、自由記述から選択肢設定へ変更しました。
また、入社後アンケートにおいて、自由記述の設問への回答率が低く、情報収集に不足がでており、また回答してもらった場合でも、内容がよくわからないといったことがありました。
そこで、記載例を追記することで、どのように回答したらよいかが明確となり、回答率も上がり、回答内容もわかりやすくなりました。
エンゲージメント改善3つのメリットと今後の課題
ここまで、弊社の従業員エンゲージメント改善の流れを紹介しました。一連の取り組みを振り返ってみると、エンゲージメント改善に取り組んでよかったと思えるポイントが3つありました。
- 従業員の「本当の」声が聞ける → 面談に比べて、率直に思っていることを回答してくれる従業員が多い
- 見えていなかった課題の見える化ができた → 漠然とした課題の解像度が上がった
- 課題解決の仕組み化が可能となった → 課題の傾向と対策の知見が溜まり、対応の仕組み化につながった
正直なところ、アンケート回答者の本音に向き合うことに、当初は四苦八苦していました。回答はセンシティブな内容が多く、私がほぼすべての対応をしていた時期もありましたが、仕組み化が進み、組織開発課一丸となって取り組む体制になり効率化にもつながっています。
一方で、従業員エンゲージメント改善について、課題も見えてきました。1つ目は、エンゲージメント改善施策全体を通して回収した情報の数値化、つまり、成果を定量的に測れる状態にはなっていません。
2つ目は、アンケート回答情報とそのほかの情報のクロス集計です。たとえば、部門ごとのアンケートデータと、同じ部門の定着率をかけ合わせたクロス集計と、結果を検証できていないことが現状課題となっており、引き続き取り組んでいきたいです。
弊社では、SmartHR上で従業員情報の管理はできてきているので、今後はその情報を有効活用して、よりよい組織形成に努めていきたいと思います。
「従業員サーベイ機能」をまだ使われていない方がいらっしゃいましたら、まずは1つ部署に向けたアンケートから試してみるなど、スモールスタートからチャレンジしてみてください。
一緒に従業員定着化を進めていきましょう!
従業員エンゲージメントを向上させるサーベイ運用ノウハウ