サイバーエージェントの「人材科学センター」が取り組む“人事のマーケティング”とは?

2019.09.24 ライター:藤田隼

#01 [「負けないためにHRテクノロジーを、勝つためにピープルアナリティクスを」鹿内学さんが語る人事データのサイエンス]はこちら


2019年5月14日、日本の人事部主催「HRカンファレンス2019 -春-」が開催されました(後援・厚生労働省、経済産業省)。

同イベントで、SmartHR 代表取締役の宮田 昇始が、パネルセッション「社内に眠る人事データの活用で、組織にイノベーションを起こせるのか」のモデレーターとして登壇。

ヤフー株式会社 Yahoo!アカデミア学長 / 株式会社ウェイウェイ 代表取締役 伊藤 羊一さん、株式会社シンギュレイト 代表取締役 鹿内 学さん、株式会社サイバーエージェント 人材科学センター 向坂 真弓さんの、3名のパネリストと宮田の計4名でディスカッション内容を全5編でお届けします。

2本目となる本稿では、株式会社サイバーエージェント 向坂さんの取り組みをご紹介します。

人材科学センターが担う「人事のマーケティング」

向坂さん
株式会社サイバーエージェントの向坂です。「人材科学センター」という部署を3年前に立ち上げ、最近はメンバーが3人に増えたことでチーム感が出てきました。今日はよろしくお願いします。

私は2003年に新卒でサイバーエージェントに入社しました。弊社は、インターネットの広告代理店としてスタートし、現在ではメディアやゲーム事業を展開しています。

営業を経てマーケティング部門を立ち上げた後、家庭の事情で一度退職しましたが、復職したときに「人事で“マーケティング”をやらない?」と声をかけてもらい、今に至ります。もともと人事経験はありませんでした。

「人材科学センター」を立ち上げた狙いは、経験や勘による判断の多い人事領域でデータを活用することで、マーケティングのように人事全体をファクトで語れるようにしたかったからです。

その第一歩として、専門部署を立ち上げて、人や組織に関する意思決定の正確さとスピードの向上を目指しています。

具体的には、

(1)データ回収
(2)見える化
(3)分析

という手順で取り組んでいます。

社員アンケートデータで成果とコンディションを可視化

勤怠データや評価データなど様々あるなかで「何を見るためにどのデータを使うか」という設計が重要だと思います。

弊社では「社員が気持ちよく働き、能力を最大限発揮し、成果につながっているか」を見る目的で、社員アンケートデータとファクトデータを集めて分析しています。

アンケートは、自身の成果とチームのコンディションを可視化するために『GEPPO(ゲッポー』)というツールを用いて毎月実施しています。“快晴”から“大雨”までの5段階の天気で現状を教えてもらうなどの、1分程度で回答できる簡単な質問内容です。

たとえば、天気の変化を見ることで、気持ちが急変している人との面談を実施するなどの対策ができます。

これを月に1回、6年間続けています。毎月となると「情報が何に使われているのかわからない」「回答して意味があるのですか?」といった声が出たこともありますが「とにかく皆さんの声が欲しい」とお願いし続けました。

少し自慢ですが、6年間ずっと98%以上の回答率をキープしています。

集まったデータは、“可視化”をする前に“データを整備”するのが理想的ですが、時間がかかるからと半ば強引に“整備”と“可視化”を並行して始めました。

具体的には、Officeツールのほかに『タブロー(Tableau)』というBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを使い、人力で集計しなくても人事データをすぐに確認できる環境を構築しました。

これにより、各自があちこちからデータ持ってくる必要がなくなり、誰が確認しても同じ集計結果を出せるようになりました。これらは人事担当者であれば誰でもアクセス可能です。

メリットは、データの“粗”が見えることですね。お恥ずかしい話ですが、たとえばとある部門の男女比率を調べたときに「男性●%・女性●%・空白●%」と3つの情報が出てくることがあります。ベースとなるデータが整っていないために「性別不明」になっているケースがあるんです。このような“粗”を発見したら人事データを整える、これを繰り返しています。

主観×客観で、違和感を発見する

こちらの図の縦軸は、本人に「業務量と負担がどのくらいかかっているか」の実感値を数字で答えてもらったもので、横軸は同じ月のファクトとしての勤怠データです。

実感と実稼働時間をクロス集計すると、自分で「働き過ぎだ」と回答し実際に勤務時間が長い人もいれば、労働時間は平均的な位置にいますが「自分はすごく働いている」と主張している人もいる。

このデータをもとに後者に話を聞いてみると、業務量ではなく責任の大きさによる心理的負担があることがわかりました。アンケートと勤怠データを掛け合わせるだけでも、こういったことが見えてきます。

一方で、データ活用の課題もあります。

まず、データが整っていないとか、実際出てきた結果をどのように解釈して、それをどう活用すべきかわからないというなどの難しさがあると思います。

それを踏まえて、今後チャレンジしていきたいことです。

まず、データを整え一元管理することに注力していこうと考えています。最終的には、人事全員がダッシュボードのようにデータを扱うことで、各自が見たい切り口で自由に分析できる状態をつくることが理想的だと思っています。

そのために、データを扱うリテラシーや正しく判断する力を人事部全体で底上げしていきたいと考えています。

(了)

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藤田隼

SmartHR ガイド編集長。ソーシャル系スタートアップでSNSマーケティングや自社メディア運営に携わり、2015年よりメディアに特化した事業会社で複数サイトの制作ディレクターを経験した後、SmartHRにジョイン。
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