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【世界一×日本一の監督が語る】最高のチームを築くマネジメントとは〜心をつかみ、任せ、育てる〜【SmartHR Connect レポート】

公開日

この記事でわかること

  • マネジメントで意識して取り組むべきこと
  • 成長しないチームの課題と改善のポイント
  • メンバーのパフォーマンスを引き出す方法
目次

“人事・労務DXをリアルの場で加速させる”をテーマに6月13日(火)に実施されたオフラインイベント「SmartHR Connect」。

第5回WBC日本代表監督の栗山英樹さんと駒澤大学陸上競技部 総監督の大八木弘明さん、モデレーターにフリーアナウンサーの大熊英司さんを迎え、「【世界一×日本一の監督が語る】最高のチームを築くマネジメントとは〜心をつかみ、任せ、育てる〜」と題したトークセッションを開催しました。

  • 登壇者栗山 英樹 氏

    第5回WBC日本代表監督

    1961年(昭和36年)、東京都生まれ。創価高校、東京学芸大を経て84年ドラフト外でヤクルトスワローズへ入団。89年にゴールデングラブ賞を獲得し、90年シーズン限りで現役引退。引退後はスポーツキャスター、白鷗大教授などを歴任。2012年に北海道日本ハムファイターズの監督に就任。2021年まで10年間、指揮を執りパ・リーグ優勝2度。2016年には日本一に輝き、正力松太郎賞を受賞。2022年から野球日本代表「侍ジャパン」トップチームの監督を務め、2023年の第5回ワールド・ベースボール・クラシックで3大会ぶりの優勝を果たした。

  • 登壇者大八木 弘明 氏

    駒澤大学陸上競技部 総監督

    1958年(昭和33年)7月30日生まれ。福島県出身。中学時代から陸上をはじめ、高校卒業後、実業団の小森印刷(現・小森コーポレーション)へ就職。24歳で駒澤大学夜間部に入学し、箱根駅伝には3度出場。大学卒業後は、実業団のヤクルトを経て、1995年の4月より駒澤大学陸上競技部のコーチに就任。2004年4月から2023年3月まで監督を務める。2023年の4月からは総監督に就任し、陸上競技部を支える。コーチ時代も含めての28年間で「大学3大駅伝」で通算27回優勝に導いた。

  • モデレーター大熊 英司 氏

    フリーアナウンサー

    1987年テレビ朝日入社(アナウンサー職)。2020年ナレーター・フリーアナウンサーとして活動開始。

本講演以外にも「SmartHR Connect」のイベントレポートを公開中。人的資本経営・エンゲージメント向上などのお悩みの解決にぜひお役立てください。

指導のポイントは、選手が光り輝く方法を模索し、最後まで面倒を見る

大熊さん

本日はよろしくお願いいたします。最初に「指導者になろうと思ったきっかけ」と、「指導のスタンス」について伺っていきます。

栗山さん

指導者というより、一人ひとりの選手をマネジメントするという感覚ですね。プロ野球では、コーチが指導するので、監督が技術を教えることはあまりありません。それよりも、「選手がどのような方向に進めば光り輝くか」を考えることが多いです。

栗山さんと大八木さん

大八木さん

私は、大学3年のときにはプレイングコーチのようなかたちで選手を見ていました。当時、疲労骨折などで、私はまったく走れない時期もあったのですが、恩師が実業団に口利きしてくださって就職できたのです。その経験から、3年生のときには「将来的に監督、指導者になりたい」と思うようになりました。

また、「下の選手も最後まで面倒を見る」という恩師のおかげで今の私があるので、「全員の就職に関わろう」と思いながら指導しています。

一人ひとりの特徴を捉えて、パフォーマンスを引き出す

大熊さん

続いて、「選手の心を掴むためのヒント」について伺いたいと思います。

栗山さん

WBCに関しては、まず「どのような選手たちがいるチームであれば、プレーしたいと思うか」を考えました。その後の交渉で気をつけたのは、とにかく正直に自分の思いの丈を真っすぐにぶつけること。

たとえばダル(ダルビッシュ有投手)には「勝ち負けも大事だけれども、ダルが若いピッチャーに技術をすべて教えたら、日本球界のためになる」と訴えました。実は、ダルはWBCの食事会の費用をすべて出しているんです。監督が費用を出さない合宿は今までなかったと思いますが、彼は「親分肌なので僕が出します」という性格。ダルの性格を考えて、最も彼の心が震えると思う言葉を考えてぶつけました。

大熊さん

「選手のパフォーマンスを最大限に引き出すコツ」について、いかがでしょうか。

栗山さん

それができたら名将になれるのですが、なかなか難しいですね(笑)。

選手は苦しくなると、どうしても練習量を増やして調子を上げたいと思ってしまいます。しかし、やみくもに練習しても、「なぜ打てないのか」という本当の理由を捉えられない可能性があるのです。そのため、指導者は選手を客観的に見ながら話をして、結果を残せていない要因にもとづいた練習量になっているかの確認が必要だと思います。

大熊さん、栗山さん、大八木さん

大八木さん

駅伝は、選手の体質や性格をしっかり把握できていれば、区間ごとに適した配置ができます。たとえば箱根駅伝では、1区と6区は寒いから汗っかきには適していないなどが挙げられます。選手に最大のパフォーマンスを発揮してもらうためには、「指導者が一人ひとりを観察して見抜いた適材適所の配置」が大事ですね。

大熊さん

次のテーマは「パフォーマンスを持続させるコツはありますか」です。先ほどのお話にも通じる部分があると思うのですが、いかがでしょうか。

栗山さん

毎日コツコツ、同じテンションや必死さで、平凡なものが非凡に変わる瞬間まで待てるかどうかですよね。わかってはいるけど、どのようなアプローチで成長するのかを予想するのが非常に難しい。

僕は、選手との対話のなかで、「今日これをやることで、どのように成長すればよいのか」といった小さい目標に対する意識が芽生えるようにしています。

大熊さん

「任せて失敗したときの選手へのケア」についてはいかがでしょうか。

栗山さん

栗山さん

選手に任せて失敗した場合は、失敗がきっかけになって前に進むと思っているので、あまりケアはしません。ただ、選手が落ち込んだり気にしたりしていれば、もちろん話すようにしています。

大八木さん

駅伝の場合は、監督・コーチが適材適所の区間に配置します。そのため、選手が失敗してしまったら、指導者の責任だと思っているので、選手に謝罪しています。その後、もう一回試合でしっかり結果を出させて、やる気にさせるようにします。慰める言葉よりは、動機付けが必要ではないでしょうか。

大熊さん

でも、監督から「失敗したのは私が悪かったんだ」と言われたら、逆に選手はまた考えてしまいますよね。

栗山さん

本当にそうだと思います。スポーツや勝負ごとは、起用したスタッフにも責任があるので、僕もずっとそう言い続けました。

野球は、誰かのせいにするのが簡単なのです。しかし、それを言っても解決にはつながりません。すべてはスタッフの責任と伝えることで、選手は「僕のミスなのに」と思ってくれ、さらに努力を積み重ねることも多いため、チームとして前に進む感覚があります。

時代に合わせた変化がマネジメントに必須

大熊さん

続いては、「マネジメントで意識して取り組んでいること」についてです。

大八木さん

箱根駅伝の4連覇を達成したときは、一方的に「このメニューで絶対勝てる」と事前にしっかりミーティングして、選手を信じさせるようなかたちでした。

結果はついてきていたので、当時は多少の慣れやおごりがあったのかなと思います。その後、13年ぐらい箱根駅伝で勝てなかったときに、選手たちと一緒にいて「今の世代の選手たちには、私の言葉は効果が薄れている」と感じる部分がありました。

大熊さん

大八木さん

それからは変わろうと思って、自分から問いかけたり、コミュニケーションを取りに行ったりを繰り返しました。その結果、選手も「監督は自分の話を聞いてくれている」と思ってもらえるようになりました。そうすることで、選手もトレーニングに身が入って、今年も強いチームになっています。

大熊さん

大八木さんが変わるきっかけは、奥さまの「勝てなくなったのは、監督が動かなくなったから」という一言だと聞きました。

大八木さん

はい。私は自転車でずっと練習についていたのですが、年齢を重ねていくうちに、きつくなってきてしまい、勝てなかったときはただグラウンドにいただけでした。自分がやらなくてもいいという驕りがありましたね。今はまた、自転車で常に朝練に出たりするようになりました。

選手の能力を見極め、実績で道を示すことで信頼を得る

大熊さん

「選手を支えて育てるうえで大事にしていること」はいかがでしょうか。

大八木さん

選手の長所や短所をしっかり見て指導することですね。チームにはトラックとロード、どちらの選手もいますが、選手には1、2年生のうちにそれぞれのキャリアについて話します。選手たちはそれを聞いて、4年間で判断します。

たとえば、田澤 廉選手(現・トヨタ自動車)はスピードが持ち味なので、トラックから入って、最後はマラソン選手のキャリアを歩むようになりました。

栗山さん

能力の見極めには難しさもありますよね。

大八木さん

大八木さん

長年の経験や培ってきた感性もあると思います。私は、シナリオが次第に書けるようなイメージで、選手の特徴が見えてくるんです。栗山監督も、大谷投手の二刀流の才能を感じていたと伺っています。

栗山さん

僕の場合は批判もありましたけど、選手が言われたことを信じるかどうかも非常に重要視しています。

大八木さん

たしかに、今までの実績で示していく必要はあると思いますね。あとは、やはり監督が真剣にぶつかることです。情熱をなくしてしまうと「大八木はもう終わっている」と周りからも言われると思うので、情熱だけは落とさないでいたいです。

課題と改善のポイントは、本気で改革の姿勢を見せること

大熊さん

続いては「成長しなくなったチームの課題と改善のポイント」についてです。

大八木さん

成長しないチームには、何か原因があると思うので、指導者が原因を分析して立て直すのが大事だと思います。あとは、指導者が本気で改善する姿勢を明確に打ち出すかどうかですね。

栗山さん

栗山さん

人が前進できるかは、難しいことに当たったときの態度でわかると思います。

たとえば、ダルや翔平(大谷翔平選手)は、無茶苦茶なことを言うと、少し嬉しそうな顔をするんですよ。WBCの決勝戦の継投策についても、ダルや翔平には最後の最後まであまり話をしていませんでした。登板間隔が短くて怪我のリスクがある状況でしたし、自分から「投げます」と言うのと「投げてくれ」と言われて投げるのは、意気込みも変わってきます。

WBCの合宿では、継投策のイメージについて、「難しいよね」という会話をダルともしていました。でもダルも翔平も、みんながやれないことをできたら、自分のステージが上がるのは知っていて、みんながやりたがらないことを何かできないかと思ってくれる選手です。そのような選手は伸びると思っています。

「採用・育成」がスポーツマネジメントのビジネスとの共通性

大熊さん

ここからは「スポーツマネジメントをビジネスに応用する方法」についてお伺いします。

栗山さん

逆に、僕たちは「企業経営者に学べ」とずっと言われてきています。僕は、野球の書物よりも経営者や過去の偉大な方々の本ばかり読んできました。

たとえば、僕がファイターズ監督時代から心に置いていたのは、京セラ創業者・稲盛和夫さんの「大善とは非情に似たり」という言葉です。本当にその人のためになることは、非情な決断に見える。しかし、彼らのためにやらなければならないことは断行する。このような考え方は、ビジネスの世界から学びました。

大八木さん

大八木さん

チーム運営と企業経営には、人材面でとくに多くの共通点があると思います。

チームを強くするためには、スカウトでよい選手を採り、育てる必要がある。その一方で、スカウトはなかなか難しい。ブランド力のある大学に優秀な人材が流れてしまうことも少なくありません。そのため、「育成の駒澤」とアピールして、選手が「駒澤であれば伸びる」と思って入学してくれるようにしたいですね。

大熊さん

チームの強みと弱みをどのように評価して、改善策を立てる際のアプローチも重要になります。お二方はどのようにお考えでしょうか。

栗山さん

強みと弱みと簡単に言ってしまいますが、強みと思っている部分は、相手チームにとってそれほど怖くない可能性があります。まずは組織にとって、それは本当に強み・弱みなのかをチーム全体で考えます。

企業でも、昔は社長が強くて引っ張っていたけれども、事業が継続していくにつれ、人に任せて機能することがありますよね。全員が任されているという空気をつくったほうが、チームの強みや弱みをはっきり指摘してもらえるのかなと思います。

自分たちの熱意は若い世代にも伝わる

大熊さん

次のテーマは皆さまも聞きたいと思うのですが、「世代や背景の異なるメンバーと効果的にチームの一体感を醸成する方法」です。

栗山さん

今回WBCの選手のなかには、初めて同じチームになる選手たちもいたので、全選手に手紙を書きました。手紙慣れしていない世代には、手紙のほうがしっかり読んでくれるかなと考えたのです。

ただ、世代が違っても、こちらが粘り強く伝えようとしていれば、耳を傾けてくるようになるのではないかと思います。自分では無意識だったのですが、選手と話すときに、僕は自然と選手の真正面に立っていたのです。世代感を考えるよりも、自分の熱さを伝えて、選手が耳を傾けるようにしている感じですね。

大熊さん、栗山さん、大八木さん

大八木さん

私も選手と年齢が相当離れているので、寄り添おうと思ってコミュニケーションを図っています。それでも、選手たちに伝わらないところも多々ありますね。専門ごとにコーチをつけているので、選手に伝えるのはコーチに任せることもあります。

大熊さん

2023年の箱根駅伝は、4年生を中心に一体感がすばらしかったというお話ですが、チームはどのような雰囲気でしたか。

大八木さん

田澤選手をはじめ、キャプテン・副キャプテンの4年生を中心に、1週間に1回ほど選手たちでミーティングをしていましたね。

方法論は場所や世代を念頭に置くべきですが、最後の勝負どころや本質は、今の若い人たちも先輩たちの世代を見ているので、自分の姿が真っすぐに選手たちへ向いていれば問題ないと思います。

「準備」がプレッシャーに負けない唯一の工夫

大熊さん

次のテーマは「重要な試合やプレッシャーのかかる状況で、メンバーのパフォーマンスを最大限に引き出す方法」です。

大八木さん

やはり準備が重要ですね。控えの選手もきちんと準備していると、安心してレギュラーの選手に任せられるので、私は試合前3週間ぐらいから全選手のコンディションをチェックしています。前年に体調不良で選出しなかった選手には、「今年成功できたら、信頼度が上がるよ」と送り出すことや、「あなたなら、やれる」と伝えることも心がけています。

栗山さん

大八木監督のおっしゃるとおり、準備するしかないですね。野球も想定外のことも起こりますが、「想定外を起こすまい」とすべてのプレー状況をシミュレーションしていました。しかし、采配を考えているときに、別の判断をしなければならなくなるなど、想定外のことが起きてしまうこともありました。

すべて準備し尽くしたと思っても、まだできるところは多々あるので難しいですね。

大熊さん

最後に、マネジメントで苦労している人へのメッセージをいただければと思います。

栗山さん

マネジメントは大変な業務の1つなので、苦労して当たり前と思ったほうがよいと思います。チームを預かったりWBC監督をやったりするなかで、「組織全体を見る前に、選手にとってベストの準備をしよう。それが結果的に組織に生きて、チームは勝ちやすくなる」と信じてきました。僕は、「マネジメントを受ける人のためになるか」という判断基準が大事だと考えています。

大八木さん

自分のやりがいもそうですし、社員が幸せな会社をつくっていかない限りは、よい会社になっていかないと思います。私も新たな道を進んでいるので苦労はすると思いますが、皆さまにも思いやりをもって頑張っていただければと思います。

大熊さん

お二方とも、本日はお忙しいなか、本当にありがとうございました。

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