4年で50名から300名規模に成長!ベンチャー企業における人事労務DX成功例【PARK fes.2023イベントレポート】
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目次
株式会社SUPER STUDIO 人事戦略室 人事労務ユニット マネージャー/社会保険労務士
2010年株式会社NTTデータに新卒で入社し、NTTデータ社内の人事給与システムの開発などに従事。その過程で社会保険労務士の資格も取得し、2019年、株式会社SUPER STUDIO人事労務担当として入社。以後は50名規模から250名規模の人事労務として0から様々な運用を構築。
<推しのSmartHR機能>
カスタム従業員項目と申請機能の連携
SmartHRではユーザー同士で交流し、共に人事労務やSmartHRの活用方法について学びあうコミュニティ「PARK」を運営しています。
本稿では、2023年8月22日におこなわれたコミュニティイベント「PARK fes. 2023〜つながり、事例に学び、仲間をつくる1日〜」のなかから、ユーザー登壇パートのレポートをお届けします。
今回の登壇者は、統合コマースプラットフォーム「ecforce」の開発・提供や自社D2C事業を運営する株式会社SUPER STUDIO 人事労務ユニット マネージャー / 社会保険労務士 佐藤 耕平さん。佐藤さんはPARKをユーザーの立場から先陣切って盛り上げる「コミュニティリーダー」を担当されています。また、PARKの「コミュニティ内コミュニティ(通称:コミュコミュ)の一つであり、HR領域のDXについて情報交換し、効率化を目指す「DXコミュニティ」を運営されています。
従業員数が急拡大するなか、限られたリソースで人事労務オペレーションをミスなくこなすために取り組んだ、ITツールの導入や業務効率化、最適な運用構築についてお話しいただきました。
PARKの「DXコミュニティ」とは
まずはDXコミュニティについて、ご紹介します。
人事労務業務には、どうしてもアナログな部分が出てきます。DXコミュニティでは、そうしたアナログな部分をITツールによって効率化した事例などの情報交換ができるコミュニティです。
過去には、以下のようにDXに関してさまざまな角度で議論をしてきました。
- コミュニティ参加企業同士がそれぞれ使用しているシステムの全体構成図を見ながらの議論
- 勤怠管理ツールを各社がどのように使っているかを実際の画面を見ながら共有
SUPER STUDIO内の人事労務DX
それでは、弊社におけるITツールの導入の背景、実際に取り組んできた業務効率化や運用構築について紹介します。
SUPER STUDIOについて
弊社は主にEC事業をやりたいというお客様向けに、ecforceというプロダクトを開発・提供しています。このecforceは、EC事業に必要なカートシステムや広告機能、配送業者との連携機能など、必要な機能すべてを備えたプロダクトです。
このecforceを使って、我々もEC事業を展開しています。ecforceをさらに使いやすいプラットフォームにするために、実際に自分たちもEC事業を展開する当事者となって、プロダクトにフィードバックをし、ecforceの価値を高め、より多くのユーザーに満足してもらえるプロダクトを提供していきたいと考えています。
DXが求められた背景・変遷
私は2019年、SUPER STUDIOへ労務として入社しました。当時の従業員は約50名ほどでしたが、労務担当は私1人でした。CEOから託された労務業務でしたが、給与計算や勤怠の管理が煩雑で、毎月非常に苦労していました。
当時、私は労務の実務経験はゼロでしたが、もっていた労務の知識を活かして、「今から未来の労務領域をきれいに整えていく」というポリシーのもと、運用を構築していきました。
さすがに1人ではできることに限界があったので、労務経験のある社員M氏に参画いただき、2人で弊社の人事労務の運用基盤を構築していきました。その当時、従業員が約100名くらいの規模でした。ここでつくった運用フローなどが、今のSUPER STUDIOの運用基盤になっています。のちに、優秀なM氏は別の組織へ移りました。
従業員が170名ほどになった頃、もともと社会保険労務士法人に勤めていたT氏が入社しました。
私とT氏で運用していくフェーズでは、2人で労務業務を回すので手一杯でした。主な役割としてはT氏がオペレーションを担当、私が運用を構築する役割でしたが、スムーズな役割分担は難しい状況でした。
現在は、社内で労務未経験ながらも興味をもっていたS氏が、別組織から人事労務ユニットに異動し、 3名体制で従業員約270名分の労務を担当しています。
限られたリソースで人事労務オペレーションを正確かつ効率的に進めるには、DXが必須の状況にありました。
勤怠・給与システムの構成
現在の弊社の勤怠・給与システム周りの構成を紹介します。
まず人事データベースとして、SmartHRを基軸に従業員情報を管理しています。給与計算には、freee 人事労務を使用、勤怠管理としてラクローを使っています。
従業員情報は、基本的に従業員招待フォームや各種申請フォームから収集し、すべてSmartHRで管理しています。それをベースにfreee 人事労務やラクローに必要な情報を連携する仕組みです。
この連携はなるべくAPI連携を使いたいのですが、一部の情報はAPI連携を使っても取り込めない項目があるので、2023年8月現在は労務専門のアウトソーサーにマニュアルに沿って登録してもらっています。
これによりSmartHRを中心に、勤怠管理や給与計算に関わる情報が連携されている体制です。
- 勤怠情報をラクローに記録
- 月次でラクローからCSVでfreee 人事労務に勤怠情報を連携
- freee 人事労務で給与計算後に、給与明細の情報をSmartHRに連携
freee 人事労務の情報をSmartHRに給与明細として流す理由は、できるだけ従業員が触れるシステムを少なくしたいと考えているからです。仮にfreee 人事労務で給与明細を配付する場合、給与明細はfreee 人事労務、勤怠はラクロー、それ以外はSmartHRと、従業員が扱うシステムが増え、負担になる可能性があります。
そのため、できるだけ従業員が触れるものはSmartHRに集約しています。
実際に起きた事件について(勤怠給与編)
労務業務のDXを進めるなかで、弊社で起こった事件について紹介します。
人事情報どれが「正か」わからない問題
まずは「人事情報どれが"正か"わからない問題」です。多くの人事労務担当者の皆さまにも共感いただける課題ではないかと思います。
SmartHRを導入直後、これまで人事情報を複数のExcelやGoogle スプレッドシートで管理していたため、どれが正しいのかわからないという課題がありました。
まずは、ExcelやGoogle スプレッドシートに散らばっていた人事情報を、人事データベースとしてSmartHRへ集約することを優先して進めました。
振り返ると、人事情報の集約化においては「まずどのデータを信じたらいいか」をつくるのがすごく大事だったと思います。
人事データベースとしてSmartHRに人事情報を集約するメリットとして、「何かあったらSmartHR」という思考が人事労務だけでなく、総務や採用、人事企画や評価を行う他のメンバーにもどんどん波及していくことです。
仮にSmartHRがなかったら、「どの人事情報が正しいかわからない」という課題と戦っていたと思うとゾっとします。ぜひご興味ある方は、導入事例インタビューもあわせてご覧ください。
勤怠が正しく管理できてない事件
続いて「勤怠が正しく管理できてない事件」です。企業規模が100名ほどの時に発生しました。
2019年頃はラクローではなく、別の打刻システムを使っていました。1か月間の勤怠がすべて9:00から18:00になっている方が散見されました。
18:00で退勤打刻しているのにフロアでは勤務しているなど、明らかに勤怠実態に沿った勤怠管理になっていないことが課題でした。
実態に沿った勤怠管理には、ツールのリプレイスが必要だと考えラクローを導入しました。
ノートパソコンの開閉によって、出勤と退勤がそれぞれ自動的に記録されるシステムです。一部パソコンを使わない業務もあるので、そこは適宜修正してもらう形です。
実際に起きた事件について(規程管理編)
最新の就業規則どこにある問題
当時は従業員情報と同様、「最新の就業規則どこにある問題」が発生していました。
すべて文書作成ソフトで管理していると、どれが最新かわかりにくくなります。
当時は従業員100名ほどで、M氏と一緒に対応していました。改定時も文書作成ソフトの編集履歴を参照しながら運用していましたが、修正を繰り返すとその編集履歴さえも信じきれない状態になることもありました。KiteRaを導入していなかった時はすべて文書作成ソフトなどでやりとりをしていたので、負担が大きかったです。
現在、規定管理ツールはKiteRaで版管理、新旧対照表、労働基準監督署の電子申請において活用しています。
規定変更の場合は、弊社から外部の社労士さんに修正を依頼し、外部の社労士さんがKiteRa上で修正します。その後、弊社で内容をチェックし、問題がなければそれをPDFにして社内共有ポータルにアップする運用をしています。
KiteRaを導入後は最新の就業規則に皆がアクセスできるので、新旧対照表もKiteRa上で参照できます。修正の前後比較も簡単に確認できるので安心です。労働基準監督署の電子申請にも対応しているので助かっています。
実際に起きた事件について(問い合わせツール編)
SlackのDM増えすぎ問題
当時、従業員からの労務関連の問い合わせはSlack上でやり取りしていました。そこで、「SlackのDM増えすぎ問題」が発生していました。
Slackを利用中の方は共感いただけるかと思いますが、Slackは一定期間をすぎるとやりとりが消えてしまうこともあるので、ステータス管理が非常に難しいです。
当時は170名規模の対応を3人でSlackのDMで受けていましたが、DMが増えすぎて対応漏れなどが大量に発生する状態でした。
現在はJira Service Managementを導入し、迅速に問い合わせに対応できる状態です。
従業員は入力フォームに必要な問い合わせの内容を入力して送信するだけで、労務メンバーにメールとSlackで同時に通知が飛んできます。Jira Service Managementでチケット管理ができるので、対応漏れも起きない形になっています。
また、毎週月曜日の人事労務メンバーの朝会で、対応ステータスを確認する運用を取り入れ、漏れをなくすことができました。
もちろん、アナログな作業にツールを導入するだけでは解決しないこともあると思います。導入したツールと、最適な運用を組み合わせることが効果的なDXの肝になると思います。
未来の人事労務DXのあり方
まだ弊社でも、アナログな作業は残っています。それは勤怠チェックです。ラクローに蓄積した勤怠情報を、一人ひとり目検でチェックをし、各労務管理者にSlackのDMで修正依頼をしています。
今後従業規模が拡大していった場合、現状の運用では対応が難しいと考えています。そういった課題もこのDXコミュニティ内で解決できたら嬉しいです。
皆さまも解決したい課題があれば、ぜひPARKのDXコミュニティに入って相談してみてください。一緒に解決につながる議論ができる日を楽しみにしております。
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